どう使い分ける?乾癬性関節炎ガイドライン
乾癬性関節炎のガイドラインは国内外で多岐に渡ります。エビデンスが十分でない事を反映して、ガイドライン毎に推奨事項が若干異なります。
関節リウマチと違って、どのガイドラインを選択するかによってマネジメントが大きく異なり、ガイドラインを妄信しているとかえって診療で混乱してしまう可能性があります。
本日は乾癬性関節炎の代表的なガイドラインについて、その背景に迫り、それらを比較検討する事で、現時点での乾癬性関節炎治療の推奨についてについて言及したいと思います。
この内容を通して、読者の皆様が複雑かつ多様な乾癬性関節炎診療について少しでも興味が湧いて頂ければ幸いです。
代表的なガイドライン・推奨
乾癬性関節炎のガイドライン・推奨の中でも知名度が高いもの、更新頻度が高いもの、国内のものをピックアップすると以下の4つが主になります。
これらのガイドラインが作られた団体や背景に特徴的な違いがあります。これにより治療推奨の違いが生じていると考えられます。次に、これらのガイドラインの特徴について述べます。
EULAR 2019
●EULARはリウマチ医が中心の欧州リウマチ学会です。
●乾癬性関節炎の治療推奨に関しては2012年の初版からエビデンスの集積に伴い、2015年と今回とで合計2回の改訂がなされています。
●推奨事項は6つの包括的原則と12の具体的推奨項目からなります。
●最大の特徴はリウマチ医の診療を想定しているため、筋骨格系症状の治療に重きを置いている点です。
●単一の筋骨格系症状(単・少関節炎、多関節炎、付着部炎、体軸関節炎)に合わせた治療アルゴリズムも、同学会が出す他の疾患ガイドライン同様に特徴的なところです。
●このアルゴリズムはフェーズがIからIVに分けられており、治療手順が簡潔に示されています。
●一方で皮膚や爪病変については皮膚科専門医への相談、連携を提唱し、詳細な記載はありません。
●また薬剤選択に関しては、有効性はもちろんですが、エビデンスが乏しい領域ではコストを重視した推奨となっています。
※1 予後不良因子:構造的損傷の存在, CRP/ESR高値, 指趾炎または爪病変
※2 体軸関節炎にグルココルチコイドは使用しない
※3 治療目標は寛解または低疾患活動性(長期罹患の場合)をtreat-to-target 戦略にて目標とする
※4 乾癬皮膚症状を有する(body surface area: BSA>10%)場合はIL-17阻害薬が好ましいが, 炎症性腸疾患やぶどう膜炎を合併する場合はTNF阻害薬が好ましい
※5 臨床的改善とは, 疾患活動性指標が少なくとも50%以上改善していることをいう
※6 メトトレキサートに追加投与として
※7 寛解を維持しながら, 薬剤の漸減を注意深く行う
※8 アバタセプトを含む
GRAPPA 2015/2020
●GRAPPAは2003年に組織された乾癬と乾癬性関節炎に特化した国際的なワーキンググループです。
●リウマチ科医の他に、多くの皮膚科医、さらには放射線科医、遺伝学者、疫学者、患者など約800人のメンバーからなります。
●2009年に初めて乾癬性関節炎に対する推奨を出してから2015年、さらにはコロナ禍のため公表が遅れていますが、2020年の改訂版が発表される予定です。
●本推奨の最大の特徴はEULARの末梢関節炎、体軸関節炎、付着部炎に、所属する皮膚科医の割合が多い事を反映して、指趾炎、皮膚、爪病変も加えた臨床病態(ドメイン)毎に治療推奨を出している点です。
●2020年の改訂ドラフト版では、さらに炎症性腸疾患とブドウ膜炎合併の2つのドメインを加え、合計8つのドメインの治療推奨を出しています。
●ただし薬剤選択に関しては現在の薬剤間での比較試験が少ない事を反映して、優先順位は付けずに、一部の条件を除けば、各病態に有効性のある薬剤を同列で推奨しています。
ACR/NPF 2018
●本ガイドラインは米国リウマチ学会(American college of rheumatology: ACR)と米国乾癬財団(National psoriasis foundation: NPF)が合同で公表したものです。
●公表されてから日が浅くまだ改訂はありません。
●本ガイドラインの最大の特徴は「無治療の活動性の乾癬性関節炎」「経口低分子薬無効時」「TNF阻害薬無効時」などと臨床状況に応じていくつかの治療選択を提示している点です。
●また患者の好み(経口薬希望など)や特別な臨床背景も配慮して二つの薬剤間で優劣を付けている点です(例:①経口薬を希望する場合はJAK阻害薬またはPDE4阻害薬、②感染症リスクがある場合はTNF阻害薬よりもアバタセプト、など)。
●しかし、実際にはこれらの二薬剤間の優劣を検討した試験は多くなく、エビデンスレベルは全体的に低い事に注意が必要です。
●また、薬剤のコストよりも有効性を重視した推奨となっており、他の推奨の治療選択がステップアップ方式となっている事と異なり、早期よりアグレッシブな治療を推奨している点にも注目したい。
乾癬性関節炎診療ガイドライン2019
●厚生労働省難治性疾患政策研究事業の研究班(朝比奈班)がまとめた診療ガイドライン(以下Japanese guideline for the management of psoriatic arthritis: JGM-PsAと称する)です。
●皮膚科医、リウマチ医、整形外科医、放射線科医など多岐に渡る研究班員が作成に関わっています。
●本ガイドラインの特徴はEULAR 2015とGRAPPA 2015、ACR/NPF 2018を参考に国内での保険適応も踏まえて独自のClinical question (CQ)を設け、それに対する推奨を打ち出している点です。
●ただし、薬剤間の選択の優先順位についてはエビデンスが乏しい事を踏まえて明確な方針を示してはいません。
各治療推奨・ガイドラインの違い
各治療推奨・ガイドラインの比較表を示します。ACR/NPF 2018はシナリオ毎の推奨となっているので、厳密に他のガイドラインと比較は難しく、ここでは省略としています。
初期治療
末梢関節炎
●EULAR 2019ではPhase Iで末梢関節炎を単・少関節炎と多関節炎に分けています。前者ではNSAIDs±局所グルココルチコイド注射となっていますが、4週間以内に治療目標を達成しない場合や、予後不良因子がある場合はPhase IIに移行し、csDMARDsを使用することとなっています。
●一方、多関節炎がある場合は最初から予後不良と考え、Phase IIのcsDMARDsが第一選択となります。csDMARDsの中で優先順位を付けているのはEULARとJGM-PsA 2019のみであり、メトトレキサートが優先されています。
●3か月以内に治療目標に改善しない場合、6か月以内に治療目標を達成出来ない場合、Phase IIIへ移行し、生物学的製剤を考慮する。NSAIDsの使用期限についてはEULARのみで記載があり、単剤の効果判定は4週間まで、使用期限は最長でも3か月以内としています。
●GRAPPA 2020では末梢関節炎に関しては罹患関節数に寄らずcsDMARDsが強く推奨されている事がEULARと異なる点です。これは乾癬性関節炎診療ガイドライン2019(JGM-PsA 2019)も同様です。ここで言うcsDMARDsはメトトレキサート、スルファサラジン、レフルノミドであり、2020年の推奨で付着部炎と指趾炎でのみMTXを条件付きで推奨していますが、原則は全て同列に扱っています。
●皮疹に有効性が示されているシクロスポリンに関しては、関節炎への有効性はまだ十分なデータがなく、GRAPPAでは皮疹のみへの推奨となっており、JGM-PsA 2019でも重症皮疹での使用が妥当としています。
●GRAPPAではcsDMARDsが無効の場合は、生物学的製剤を考慮します。
●グルココルチコイドの注射に関してはいずれのガイドラインでも強い推奨はなく、条件付きまたは補助療法としての位置づけです。
●ACR/NPF 2018はコストを重視した他のガイドラインと異なり、有効性を重視しているため、よりアグレッシブな治療、すなわち早期よりcsDMARDsなどの経口低分子薬ではなく、TNF阻害薬の使用が推奨されています。
●なお、ACR/NPFではグルココルチコイドに関する推奨は注射、内服共に記載されていなません。
体軸関節炎
●EULARはNSAIDs±局所グルココルチコイド注射、GRAPPAはNSAIDsに加えて理学療法が第一選択となっています。
●GRAPPAでは体軸関節炎に対するcsDMARDsは有効性の観点から強く推奨しない事となっています。
●JGM-PsA 2019でも詳細な記載はないが体軸関節炎でのcsDMARDsについて有効性は乏しいとしています。
●NSAIDsが無効時、生物学的製剤が選択肢となります(EULARではPhase III)。
●ACR/NPF 2018では体軸関節炎の第一選択こそ示されていませんが、NSAIDs不応時のシナリオで生物学的製剤が推奨されている点からはNSAIDsで治療開始する事を想定していると推測されます。
付着部炎
●EULARでは単・少末梢関節炎同様、NSAIDs±局所グルココルチコイド注射が第一選択となっています。
●GRAPPAでもエキスパートオピニオンですが、NSAIDsが第一選択となっています。グルココルチコイド注射に関しては明確なエビデンスがなく、条件付きの推奨となっています。
●JGM-PsA 2019では詳細な記載はありません。
●ACR/NPF 2018では経口低分子薬(csDMARDs、アプレミラストを含む)よりもTNF阻害薬が第一選択、その他NSAIDsやトファシチニブ(2018年時点ではJAK阻害薬と言えば、トファシチニブだけでしたが、現在はさらに適応が増えています)が推奨されています。
指趾炎、皮疹、爪病変
●GRAPPAにのみ記載があり、指趾炎では副腎皮質ステロイドの注射±条件付きでNSAIDs、皮疹では外用薬と光線療法が第一選択、爪病変では外用薬が条件付き推奨となっていますが、生物学的製剤が強い推奨となっています。
生物学的製剤の位置付け
いずれの推奨・ガイドラインでも、およそ共通する事は、皮疹が重度の場合はIL-17阻害薬、ぶどう膜炎を合併する場合はTNF阻害薬、炎症性腸疾患を合併するときはTNF阻害薬とIL-12/23阻害薬が推奨される事です。
一方、IL-17阻害薬は炎症性腸疾患を悪化させるため、全てのガイドラインで推奨されておらず、IL-12/23阻害薬も体軸関節炎への効果が不十分であり、推奨しないガイドラインが多いです。
EULAR
●生物学的製剤が登場するのは、末梢関節炎でcsDMARDsが不応の時、または付着部炎、体軸関節炎でNSAIDs±局所グルココルチコイド注射が無効時のPhase IIIです。
●2015年の推奨ではIL-17阻害薬、IL-12/23阻害薬よりもTNF阻害薬を優先する文言がありましたが、近年、前二者の有効性が確立されつつあるため、2019年の改訂では三剤は同列の扱いとなっています。
GRAPPA
●末梢関節炎、体軸関節炎、付着部炎、指趾炎、皮疹、爪病変、炎症性腸疾患・ぶどう膜炎合併、全てのドメインにおいて初期治療不応時に生物学的製剤が強く推奨されています。
●しかし重症度や患者背景を鑑みて、多くの病態で迅速治療として生物学的製剤を選択する事も許容しています。
●元来はTNF阻害薬が全てのドメインで強い推奨となっていましたが、エビデンスの蓄積に伴い、2020年版では一部のドメインを除き(炎症性腸疾患、体軸関節炎)、IL-17阻害薬やIL-12/23阻害薬が強い推奨、さらには新たにIL-23阻害薬も多くのドメインで強く推奨されるようになりました。
●ただし、2015年版、2020年版ともに生物学的製剤間での明確な推奨順位は示していません。
ACR/NPF
●ACR/NPFでは原則アグレッシブな治療を打ち出しているため、早期より活動性の乾癬性関節炎では禁忌がない限りTNF阻害薬を第一選択として推奨しています。
●体軸関節炎に関してはNSAIDsが無効時にはTNF阻害薬が推奨されます。
●生物学的製剤の推奨は概ねTNF阻害薬、IL-17阻害薬、IL-12/23阻害薬の順番です。
●また、ACR/NPFだけアバタセプトについて言及しており、繰り返す重症感染症がある場合にTNF阻害薬の代替薬として推奨されています。
JGM-PsA
●生物学的製剤の優先順位について記載は多くないですが、末梢関節炎についてはcsDMARDsが不応時、TNF阻害薬、IL-17阻害薬、IL-12/23阻害薬の順番で推奨しています。
JAK阻害薬
●EULAR 2015年時点の推奨では全く言及がなかったJAK阻害薬が2019年の改訂では生物学的製剤が無効の際にPhase III、IVで推奨されています。
●GRAPPAでも2020年版で初めてJAK阻害薬が登場し、かつ生物学的製剤と同列として記載されています。
●これはJAK阻害薬の疾患活動性抑制効果や一部では骨破壊への抑制効果が示されてきたためです。
●ACR/NPF 2018では、TNF阻害薬、IL-17阻害薬、IL-12/23阻害薬の次の選択肢としてJAK阻害薬であるトファシチニブが挙げられていますが、患者の経口志向に応じて処方する事が勧められています。
●JGM-PsA 2019では調査時点までの有効性や安全性(帯状疱疹、悪性腫瘍など)の十分なデータがないという事からその使用に関しては慎重な姿勢です。
●なお、有効性や安全性について日々エビデンスが出現しており、今後JAK阻害薬の立ち位置は関節リウマチ同様に生物学的製剤と対等、ないしはそれよりも優先される可能性すらあると考えます。
●2021年9月現在、国内ではトファシチニブ、バリシチニブ、ウパダシチニブの三剤が乾癬性関節炎の適応が通っています。
PDE4阻害薬
●PDE4阻害薬は皮膚病変と末梢関節炎に対して効果がある事が分かっているが、関節破壊抑制効果、体軸関節炎への有効性は明らかではありません。
●EULAR 2019では軽症でcsDMARDs不応、生物学的製剤やJAK阻害薬が適切でない時に推奨されていますが、GRAPPAでは末梢関節炎、付着部炎、指趾炎、爪病変、皮疹に対して他の生物学的製剤やJAK阻害薬同様に強い推奨となっています。
●ACR/NPFではTNF阻害薬に禁忌があり、経口薬を患者が希望する時の選択肢として挙げられています。
●JGM-PsA 2019では明確な推奨は記載されていませんが、皮疹や末梢関節炎には有効と記載されています。一方で関節破壊抑制効果はないとされています。
推奨・ガイドラインをどう使い分けるか?
●末梢関節炎、体軸性炎、付着部炎などの単一の筋骨格系症状が主である場合、初学者であれば、EULARの治療アルゴリズムが最も使いやすいと思います。
●しかし、ここに示されていない症状(皮疹、爪病変、指趾炎など)が強く前面に出る場合は、どの治療フローを進むべきか悩むと思います。
●GRAPPAの推奨はその点、全ての症状(ドメイン)に対する治療選択を示しているため使いやすいです。
●しかし、複数のドメインが同時に起こった場合、疾患の全体像を把握した上でそれぞれの病態に応じた薬剤を選択する必要がある事が難しい点があります。
●さらに薬剤毎の優先順位も設けていません。これは臨床医が患者の病態、合併症、患者の希望、コストなどを多面的に考えて治療選択をするように設定されているためです。状況によっては初期治療をスキップして迅速強化療法もできるようになっています。これらの観点からは玄人向きと言えるでしょう。
●実臨床ではEULARとGRAPPAのどっちかというよりも、両方を組み合わせて診療するのが良いと思います。
●ACR/NPFのガイドラインは、とある臨床シナリオにおける2つの薬剤の優劣をつけている点で前二者と性質が異なります。ただし、シナリオが煩雑で初学者向けでは全然ありません。
●しかし、ある薬剤が不応というシナリオの場合に、次の選択に迷う状況では、各薬剤の優劣をつけてくれている本ガイドラインは有用だと思います。
●注意しなければならないのは、二薬剤間での比較試験が乏しい現状ではエビデンスよりも作成したエキスパートの意見に基づく推奨となっている点です。
●日本で保険診療を行う上では、乾癬性関節炎診療ガイドライン2019を参考にする事は有意です。
●薬剤間の優劣は多くの場合つけていませんが、エビデンスが不足する領域であり、当然の態度だと思います。
●なお、乾癬性関節炎ではないですが、日本皮膚科学会より乾癬における生物学的製剤の使用ガイダンス(2019年度版)が出されています。
●副作用が発現しやすい患者への注意事項と安全対策マニュアルが充実しており、生物学的製剤を使用する前には必ず一読する事をお勧めしたいです。
参考文献
- Gossec L, Baraliakos X, Kerschbaumer A, de Wit M, McInnes I, Dougados M, et al. EULAR recommendations for the management of psoriatic arthritis with pharmacological therapies: 2019 update. Ann Rheum Dis. 2020 Jun;79(6):700–12.
- Coates LC, Kavanaugh A, Mease PJ, Soriano ER, Laura Acosta-Felquer M, Armstrong AW, et al. Group for Research and Assessment of Psoriasis and Psoriatic Arthritis 2015 Treatment Recommendations for Psoriatic Arthritis. Arthritis Rheumatol Hoboken NJ. 2016 May;68(5):1060–71.
- Coates LC, Soriano E, Corp N, Bertheussen H, Callis-Duffin K, Campanholo CB, et al. Op0229 the Group for Research and Assessment of Psoriasis and Psoriatic Arthritis (grappa) Treatment Recommendations 2021. Ann Rheum Dis. 2021 Jun 1;80(Suppl 1):139–40.
- Singh JA, Guyatt G, Ogdie A, Gladman DD, Deal C, Deodhar A, et al. Special Article: 2018 American College of Rheumatology/National Psoriasis Foundation Guideline for the Treatment of Psoriatic Arthritis. Arthritis Care Res. 2019 Jan;71(1):2–29.
- 乾癬性関節炎診療ガイドライン2019 日本皮膚科学会乾癬性関節炎診療ガイドライン作成委員会
コロナワクチンと免疫抑制患者~副反応・原疾患再燃~
免疫抑制薬を使用しているリウマチ膠原病疾患患者では、新型コロナウイルスワクチンの副反応が強く起こる事が危惧されています。また、原疾患の再燃の懸念もあります。
最近これらの懸念事項に関して、少しずつ研究結果が出てきたので、代表的な論文をまとめたいと思います。
結果まとめ
●免疫抑制薬使用患者で健常者と比較して副反応が多いという事はない。
●入院を要する重症副反応は『0』。
●原疾患の再燃は多いが、ほとんどが関節痛、関節腫脹、筋肉痛などの筋骨格系の症状であり、持続期間も2週間以内。治療はNSAIDsや経口ステロイドなどが多いが、治療期間は1週間程度が多い。
ワクチンの副反応
ドイツの研究(2021 March)
Ulf M Geisen, et al. Ann Rheum Dis. 2021, PMID=33762264
対象
●26人の慢性炎症性疾患患者と42人の健常対照者。
●副作用は2回目接種14日後にオンライン調査と病歴によって評価。
ワクチン
●5人がモデルナ、21人がファイザーのワクチンを接種。
患者情報
●乾癬、乾癬性関節炎を含めた脊椎関節炎や関節リウマチが最多。
●治療薬はTNF阻害薬が多い。その他IL-17阻害薬。PSL使用患者は5名しかいない。
結果
●慢性炎症性疾患患者では悪寒が少ないがそれ以外の副反応は有意な差はない。
My comments
●サンプルサイズが少なく、統計的な有意差は取れないが、傾向として副反応が強いという事はない。
ドイツの研究(2021 May)
David Simon, et al. Ann Rheum Dis. 2021, PMID=33958324
対象
●免疫介在性炎症性疾患84名と対照健常者182名。
患者情報
*Systemic lupus erythematosus, systemic sclerosis, IgG4-related disease, periodic
fever syndromes, giant cell arteritis, granulomatosis with polyangiitis and
polymyalgia rheumatic.
†Apremilast, canakinumab and vedolizumab.
bDMARDs, biological disease-modifying antirheumatic drugs; BMI, body mass
index; csDMARDs, conventional synthetic disease-modifying antirheumatic drugs;
CV, cardiovascular; HC, healthy controls; IBD, inflammatory bowel disease; IL,
interleukin; IMIDs, immune-mediated inflammatory diseases; JAK, Janus kinase;
MTX, methotrexate; RA, rheumatoid arthritis; SpA, spondyloarthritis (including axial
spondyloarthritis and psoriatic arthritis); TNF, tumour necrosis factor; tsDMARDs,
targeted synthetic disease-modifying antirheumatic drugs.
●女性65.5%、年齢の中央値は53.1歳、BMI26.8と高め、糖尿病7.1%。
●背景疾患は脊椎関節炎32.1%、関節リウマチ29.8%。
●無治療が28.6%、csDMARDs単剤23.9%、生物学的製剤42.9%(TNF阻害薬が最多13.1%)。
結果
●接種による各副反応の頻度はは健常者と比べて際立って高いわけではない。
My comments
●免疫介在性炎症性疾患患者でも特に接種による副反応が強く出るという訳ではない。むしろ少し頻度は低いか!?
●基礎疾患の再燃の割合も知りたかった。
イスラエルの研究(2021 June)
Victoria Furer, et al. Ann Rheum Dis. 2021, PMID=34127481
対象
●自己免疫性炎症性リウマチ性疾患患者686名。
●コントロールは健常者121名。
●2回目接種後、2-6週間後に採血(SARS-CoV-2三量体スパイクS1/S2糖蛋白質に対する抗IgG中和抗体価を測定)。
●有効性はワクチン接種後にPCRによって確定されたCOVID-19に感染したかアンケートまたはカルテデータレビューにて評価。
●安全性は2回目接種2週間以内、2~6週間以内に電話質問で確認。
●ワクチン接種期間中はリツキシマブを遅らせる以外、全ての免疫抑制治療は継続!!
ワクチン
●BNT162b2 mRNA(ファイザー)のみ。
患者情報
●関節リウマチや乾癬性関節炎を含む脊椎関節炎が多いが、SLEや血管炎もそれなりに含まれている。
●全体ではグルココルチコイドの使用は2割弱、MTXは26%弱、TNF阻害薬は25%、リツキシマブは13%弱。
●本文にはPSLの使用量は6.7±6.25mg/日と記載がある。またリツキシマブの投与量は1656.1±623.6mg。リツキシマブの最終投与とワクチン接種の間隔は平均で51±83日。
結果
●ワクチンの副反応は健常者と同じ。重大な有害事象はない。
●ワクチン接種群で死亡は2名で、1名は低用量PSLを使用して寛解状態のANCA関連血管炎の患者で、2回目のワクチンを受けた3週間後に劇症出血性皮膚血管炎を発症し、その後敗血症を合併し、亡くなった。もう1名は糖尿病、虚血性心疾患を含む多数の併存疾患がある乾癬性関節炎患者で、2回目のワクチン接種2か月後に心筋梗塞で亡くなった。
My comments
●副反応は健常者と変わらない。
●ワクチン接種後の死亡については2名(0.3%)であり、ワクチンとの直接の関連はない印象。
アメリカの研究(2021 August)
Caoilfhionn M Connolly, et al. Arthritis Rheumatol. 2021, PMID=34346185
対象
●1377名のリウマチ性筋骨格系疾患患者を対象。
●1回目と2回目の接種7日後、2回目接種1か月後にアンケート調査を実施。
ワクチン
●BNT162b2 mRNA(ファイザー)55%、mRNA-1273(モデルナ)45%。
患者情報
●年齢の中央値は47歳。女性は82%、白人9割。
●炎症性関節炎が最多で47%、次いでSLE20%、オーバーラップが20%。
●csDMARDsは26%、生物学的製剤は22%、ステロイド単剤は3%のみ、csDMARDsと生物学的製剤の併用は50%。
●56%の患者がワクチン接種6か月前までに再燃している。SARS-CoV-2既感染は3%。
結果
●局所反応と全身反応の頻度は上記。
●8割が何らの副反応を示す。
●多いのは注射部位疼痛(1回目接種(D1) 87%, 2回目接種(D2) 86%)、倦怠感(D1 60%, D2 80%)。
●2回目接種後に増える症状は倦怠感(80%)、頭痛(65%)、筋肉痛(63%)、悪寒(42%)。
●日常生活に影響を与える副反応は倦怠感(19%)で最多。
●一人(0.07%)だけ接種後に下痢のために入院したと。
My comments
●健常者と比較していないが、一般的なワクチン接種の副反応が出ており、特別な副反応が出ている訳ではない。
●倦怠感が日常生活に影響を及ぼす可能性があるため、十分に休養すべき。
●ワクチン毎に副反応に差があるため、分けて示すべきだと思う。
原疾患の再燃
ドイツの研究(2021 March)
Ulf M Geisen, et al. Ann Rheum Dis. 2021, PMID=33762264
対象
●26人の慢性炎症性疾患患者と42人の健常対照者。
●原疾患の疾患活動性はDAS28、PGA、PhGAを用いて評価。1回目ワクチン接種7日後、2回目接種日、その7日後、および定期的な時点で評価。
ワクチン
●5人がモデルナ、21人がファイザーのワクチンを接種。
患者情報
●乾癬、乾癬性関節炎を含めた脊椎関節炎や関節リウマチが最多。
●治療薬はTNF阻害薬が多い。その他IL-17阻害薬。PSL使用患者は5名しかいない。
結果
●2回目の接種後、42日後まで疾患活動性は上昇傾向は示さなかった。
My comments
●DAS28という客観的な指標とPGAという主観的な指標を用いて疾患活動性を評価している点が良かったが、この評価指標の項目としての腫脹関節数、圧痛関節数、CRPなどの炎症マーカー、患者VAS(患者全般評価)などはいずれもワクチンの副反応でも上昇し得る項目であるため、厳密に原疾患の再燃と区別は出来ないのではないかと思った。
●サンプルサイズが多ければ有意な差がない事を示せたと思う。
アメリカの研究(2021 June)
Medha Barbhaiya, et al. Ann Rheum Dis. 2021, PMID=34158370
対象
●ワクチン接種を受けたリウマチ疾患外来患者1101名。
●自己申告による再燃は「ワクチン接種後2週間以内の関節炎の突然の悪化」と定義。
患者情報
●白人84.2%、女性81.8%、年齢の中央値58.7歳、BMI26.8。
●597名(54.2%)がファイザー、483名(43.9%)がモデルナ、16人(1.5%)がヤンセン、3人(0.3%)がアストラゼネカのワクチンを接種。
結果
●本文では165名の患者で202回の再燃が観測されたと記載あり。
→下表では117名(10.4%)
●ファイザーかモデルナを接種した方は654名(59.4%)でうち113名(17%)で再燃あり。
●26名(23%)が初回接種後のみ、48名(42.5%)が2回目接種後のみ、37(32.7%)が2回の接種後いずれも再燃した(本文記載のみ)。
●ファイザーとモデルナを比較すると1回目、2回目後の再燃はそれぞれ1回目F10.3% vs M9.6%、2回目F10.9% vs M16.3%(本文記載のみ)。
●以下に層別化した表を記載。
●再燃の重症度は1回目接種後、軽症42.7%、中等症41.9%、重症15.4%
2回目の接種後、軽症37.7%、中等症51.8%、重症10.6%
●再燃の症状では関節痛が最多(1回目83.8%、2回目87.1%)、次いで筋肉痛(1回目48.7%、2回目56.5%)、関節腫脹(1回目47.9%、2回目44.7%)。
→倦怠感はワクチン接種の副反応であり、再燃ではない可能性もある。
●再燃は7日以内に起こる事がほとんど(1回目88.9%、2回目89.1%)。
●1回目接種後21日以降まで症状が持続する患者も15.4%いる。
●治療をしていない割り合いが1回目54.7%、2回目30.6%。治療内容はアセトアミノフェンが最多。コルチコステロイドが必要だったのは5%前後。
My comments
●メールでの調査であり、明確に再燃したかは不明。
●倦怠感、関節痛などはワクチン接種の副反応と区別が出来ない可能性がある。
●とはいえ、本論文での原疾患の再燃はそれほど頻度が高いわけではない。
●治療もアセトアミノフェンのみで経過を観察されているよう。
●原疾患の治療を強化する必要があったかなど、客観的情報が必要。
イスラエルの研究(2021 June)
Victoria Furer, et al. Ann Rheum Dis. 2021, PMID=34127481
対象
●自己免疫性炎症性リウマチ性疾患患者686名。
●コントロールは健常者121名。
●2回目接種後、2-6週間後に採血(SARS-CoV-2三量体スパイクS1/S2糖蛋白質に対する抗IgG中和抗体価を測定)。
●有効性はワクチン接種後にPCRによって確定されたCOVID-19に感染したかアンケートまたはカルテデータレビューにて評価。
●安全性は2回目接種2週間以内、2~6週間以内に電話質問で確認。
●ワクチン接種期間中はリツキシマブを遅らせる以外、全ての免疫抑制治療は継続!!
ワクチン
●BNT162b2 mRNA(ファイザー)のみ。
患者情報
●関節リウマチや乾癬性関節炎を含む脊椎関節炎が多いが、SLEや血管炎もそれなりに含まれている。
●全体ではグルココルチコイドの使用は2割弱、MTXは26%弱、TNF阻害薬は25%、リツキシマブは13%弱。
●本文にはPSLの使用量は6.7±6.25mg/日と記載がある。またリツキシマブの投与量は1656.1±623.6mg。リツキシマブの最終投与とワクチン接種の間隔は平均で51±83日。
結果
●関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、SLEのいずれもワクチン接種後は疾患活動性指標は安定していた。
●疾患活動性が上昇したのは関節リウマチや脊椎関節炎、強直性脊椎炎で2割弱
My comments
●原疾患の再燃がほとんどない事は重要。関節リウマチの疾患活動性であるSDAIは関節痛などが評価対象に含まれるため、ワクチンの副反応の関節痛などを含んでしまっている可能性がある。
●また、再燃の評価タイミングが明記されていない。おそらく2回目接種後2~6週間の間とかなり幅があるため、厳密には比較できない。
●原疾患の治療を有した割り合いが知りたい。実臨床では治療強化はほとんど必要ない印象。
アメリカの研究(2021 August)
Caoilfhionn M Connolly, et al. Arthritis Rheumatol. 2021, PMID=34346185
対象
●1377名のリウマチ性筋骨格系疾患患者を対象。
●1回目と2回目の接種7日後、2回目接種1か月後にアンケート調査を実施。
ワクチン
●BNT162b2 mRNA(ファイザー)55%、mRNA-1273(モデルナ)45%。
患者情報・結果
●年齢の中央値は47歳。女性は82%、白人9割。
●炎症性関節炎が最多で47%、次いでSLE20%、オーバーラップが20%。
●csDMARDsは26%、生物学的製剤は22%、ステロイド単剤は3%のみ、csDMARDsと生物学的製剤の併用は50%。
●56%の患者がワクチン接種6か月前までに再燃している。SARS-CoV-2既感染は3%。
●再燃群と非再燃群を比較すると、csDMARDsと生物学的製剤を使用している患者は非再燃群で多かった。
●csDMARDsと生物学的製剤を併用している患者は再燃群で多かった。
●ワクチン接種6か月前までに再燃している患者は再燃群で多かった。
再燃患者の特徴
●1377名のうち、151名(11%)が1回目接種以降に、中央値5日で再燃を報告。
●うち90名(全体の7%、151名中では60%)が2回目接種後、中央値11日で再燃を報告。
●再燃症状の持続は10日間。
●治療はNSAIDsが全体の4%(再燃報告患者151名中50名で30%弱)、経口ステロイドが114/151(75%、全体では8%)、治療期間の中央値は7日間。
再燃時の症状
●再燃の症状は今までの症状が悪化したもの(91%)と、新規に発症するもの(72%)どちらもある。
●しかし、いずれも関節腫脹や筋肉痛など、筋骨格系症状が多い。
基礎疾患毎に分けた再燃患者の特徴
●再燃の治療としては経口ステロイドが5-8割。
●免疫グロブリン大量療法、入院、ICU入室はいずれの疾患でも『0』。
●いずれの疾患も再燃症状として関節痛・腫脹、筋肉痛など筋骨格系の症状が多い。
●シェーグレン症候群は口渇も7割程度悪化したとの事。
再燃のリスク因子
●治療が必要な再燃に関連した要因はSARS-CoV-2の既感染(IRR 2.09 95%, CI 1.21-3.60)、csDMARDsと生物学的製剤の併用療法(IRR 1.95 95% CI 1.41-2.68)。
●しかし、csDMARDs (IRR 0.52, 95% CI 0.34-0.80)または生物学的製剤(IRR 0.60,95% CI 0.39-0.93)を使用している患者では再燃リスクが低い結果であった。
副反応
●局所反応と全身反応の頻度は上記。
●8割が何らの副反応を示す。
●多いのは注射部位疼痛(1回目接種(D1) 87%, 2回目接種(D2) 86%)、倦怠感(D1 60%, D2 80%)。
●2回目接種後に増える症状は倦怠感(80%)、頭痛(65%)、筋肉痛(63%)、悪寒(42%)。
●日常生活に影響を与える副反応は倦怠感(19%)で最多。
●一人(0.07%)だけ接種後に下痢のために入院したと。
My comments
●再燃の症状はほとんどが筋骨格系の症状で入院を要する重度の再燃はない事は安心。
●症状の持続も10日前後で、ステロイド治療が75%とされるが、7日程度しか治療を要さない事も重要。
●csDMARDsと生物学的製剤の併用が再燃リスクと関連していたが、今回の患者群では6か月以内の再燃が多く、再燃しやすい方が併用療法が多く、その方々が再燃したため、リスク因子となったと考えられる。ワクチン接種前の疾患活動性での調整が必要。
コロナワクチンと免疫抑制患者~免疫原性~
免疫抑制薬を使用している患者では、新型コロナウイルスワクチンの免疫原性が低下する事が危惧されています。
最近少しずつこれに関して研究結果が出てきたので、その代表的な論文をいくつかまとめたいと思います。
- 結果まとめ New!! 2021.08.11 updated
- 感想 New!! 2021.08.11 updated
- ドイツの研究(2021 March)
- アメリカの研究(2021 May)
- イスラエルの研究(2021 June) New!! 2021.08.09 updated
- スイスの研究(2021 July)
- オーストリアの研究(2021 July) New!! 2021.08.10 updated
- イギリスの研究(2021 August)
- オランダの研究(2021 August) New!! 2021.08.11 updated
結果まとめ New!! 2021.08.11 updated
●自己免疫性炎症性リウマチ性疾患患者では健常者と比較するとワクチン2回接種による抗体陽性率はやや低い(80%程度)。
●抗体価も健常者と比較すると低いが、中和抗体を有するとされる15U/mlよりは数倍高い値となる上、中和能力のある抗体が8割得られる報告もある(スイスの研究(2021 July))。
●一方、ワクチン接種によってIgA抗体が誘導されるという報告がある(ドイツの研究(2021 March))。
●薬剤毎ではリツキシマブ使用患者では多くの文献で抗体の陽転化率が低い事、抗体価が低い事が指摘されている。
●一方でリツキシマブ使用患者でも末梢血B細胞が少しでもあれば抗体価が上昇する可能性が示唆されている(オーストリアの研究(2021 July))。
●またリツキシマブ使用中でも、T細胞による細胞性免疫は保たれる事が示されている(オーストリアの研究(2021 July)・イギリスの研究(2021 August))。
●MTXに関しても使用患者では統計学的に抗体陽転率の減少と関係したという研究(アメリカの研究(2021 May)・オランダの研究(2021 August))としなかったという研究(イスラエルの研究(2021 June))がある。全体として抗体の陽転化率と抗体価は健常者と比較すると低いと考えられるが、中和抗体が得られる抗体価の数倍には上昇する事が考えられる。さらには細胞性免疫も保たれている。
●その他の薬剤の免疫原性についてはデータは十分ではない。
●現時点で免疫抑制療法の減量、中止、延期を指南出来るデータは揃っていない。
●SARS-CoV-2既感染患者では1回目の接種後より抗体産生が著明に上昇する。感染がブースター効果を示している可能性が示唆されている(オーストラリアの研究(2021 July))
●リツキシマブ使用患者での研究では、抗体価や細胞性免疫は少なくとも5-6週間維持されることが示されている(オーストラリアの研究(2021 July))が、長期的にどのくらい持続するかは現時点で不明。
●自己免疫性炎症性リウマチ性疾患患者においてワクチン接種による感染・重症化・死亡への影響については現時点でまだ報告されていない。
感想 New!! 2021.08.11 updated
●ワクチン接種による中和抗体を含む抗SARS-CoV-2IgG抗体の抗体価の陽転化は、健常者と比較すると低下しているものの、8割近くは得られる。抗体価は低いが、それでも既感染患者で陽性となる値よりは十分高いのでやはり接種が望ましい。
●アバタセプト、ミコフェノール酸モフェチル使用で抗体陽転化率、タクロリムス使用で細胞性免疫が低下する事が示唆されているが、データが不十分で、治療の中止や延期に直結するものではない。
●また、抗体産生が抑制されていても細胞性免疫が保たれていたり、細胞性免疫が抑制されていても抗体産生が保たれていたりと、必ず補完があると考えられる。
●SARS-CoV-2既感染患者では抗体価が有意に上昇する傾向からは、ワクチンにおいても3回目以降の追加接種が有効の可能性がある。
●個人的には中和抗体などの推移を見ながら、3回目以降の追加接種を検討するストラテジーがあると良いと思う。
●ファイザーのワクチンのデータが多く、日本で主流のモデルナ、今後導入される予定のアストラゼネカのデータも欲しい。
●今までの既報は、抗体価や細胞の活性化を客観的に見ているデータが多いが、重要なアウトカムは実際の重症化、死亡率などで、今後、データの追加が待たれる。
ドイツの研究(2021 March)
Ulf M Geisen, et al. Ann Rheum Dis. 2021, PMID=33762264
対象
●26人の慢性炎症性疾患患者と42人の健常対照者。
●副作用は2回目接種14日後にオンライン調査と病歴によって評価。
ワクチン
●5人がモデルナ、21人がファイザーのワクチンを接種。
患者情報
●乾癬、乾癬性関節炎を含めた脊椎関節炎や関節リウマチが最多。
●治療薬はTNF阻害薬が多い。その他IL-17阻害薬。PSL使用患者は5名しかいない。
結果
A:2回目接種7日後の抗SARS-CoV-2IgG抗体価は健常者(HCo)と比較して有意に低値。
B:2回目接種0日と7日では抗SARS-CoV-2IgG抗体価は上昇し、カットオフ値を超える。
C:2回目接種7日後の中和抗体も健常者(HCo)と比較すると有意に低い。
D:2回目接種7日後の中和抗体は上昇を認めるが、HCoよりも低い。
E:2回目接種7日後の抗SARS-CoV-2IgA抗体価は健常者(HCo)よりも有意に高値。
→慢性炎症性疾患患者、健常者の何人かは上昇している。
F:抗SARS-CoV-2IgA抗体も2回目接種7日後では上昇傾向を示している。
G:年齢ごとに比較すると健常者との抗SARS-CoV-2IgG抗体価の差は見られなくなる。
→慢性炎症性疾患患者でも健常者でも年齢が上がるにつれて抗体価は低下する傾向。
H:中和抗体も同様に年齢による健常者との抗体価の差はなくなっている。
My comments
●サンプルサイズが少ないため、参考にしかならないが、最も驚いたのはワクチンによって抗SARS-CoV-2IgA抗体が上昇する事。IgAは粘膜免疫で重要な役割を果たす抗体であるため、ワクチン接種によって、SARS-CoV-2の侵入を抑制できる可能性が示唆された。
●TNF阻害薬とIL-17阻害薬が使用されているが、抗体産生に関与するB細胞を枯渇させるリツキシマブなどの使用例がない事が難点。
アメリカの研究(2021 May)
Rebecca H Haberman, et al. Ann Rheum Dis. 2021, PMID=34035003
対象
●メトトレキサートまたは生物学的製剤、または両者を使用している免疫性炎症性疾患患者51名。対照は健常被験者26名。
●Validation cohortにはドイツから健常者182名、免疫性炎症性疾患患者31名が取り組まれた。
ワクチン
●BNT162b2 mRNA(ファイザー)。
患者情報
●メトトレキサート使用の有無で群分けして検討している。
●本文より免疫性炎症性疾患患者のほとんどは乾癬・乾癬性関節炎と関節リウマチであった。
●MTXを使用している患者は有意に高齢。
●MTXの平均値は15.7±5mg→日本人よりも多い。中央値ではない点に注意。
結果:液性免疫
●免疫性炎症性疾患患者でMTXを使用している患者では、していない患者、健常者と比較して抗SARS-CoV-2IgG(S)抗体が有意に低下。
→ただし、ワクチン接種後、いつの時点で評価しているか不明。
結果:細胞性免疫
●ベースラインおよび2回接種後の採血。
●スパイク蛋白特異的B細胞(A)、Tfh(B)、活性化CD4陽性T細胞(C)、HLA-DR+CD8陽性T細胞(D)のいずれも健常者、MTXを使用していない免疫性炎症性疾患患者、MTXを使用している患者でワクチン投与後に有意に上昇している。
●活性化CD8陽性T細胞(D→E?)、グランザイムB産生CD8陽性T細胞(E→F?)はMTX使用患者ではワクチン接種後に有意に上昇していない。
→Dが二つあるが誤植。
My comments
●この研究ではMTX使用患者では非使用患者と比較して抗体産生、細胞性免疫が低下する事が指摘されているが、サンプルサイズが少ない事が難点。
●誤植もあるが、いち早くデータを出さなければならないという執念を感じた。
→UpDate版が現在出されており、まだ査読されていない様子。
→普通なら取り下げするのが筋だが、UpDateという形をとる裏ワザ。
●また、最大の欠点が、ワクチン接種の何日後に血液検査を実施したのかわからなかった点。
→この期間は重要で、バラバラの期間であれば結果の解釈が変わる可能性が高い。
●個人的には参考にならない研究。
イスラエルの研究(2021 June) New!! 2021.08.09 updated
Victoria Furer, et al. Ann Rheum Dis. 2021, PMID=34127481
対象
●自己免疫性炎症性リウマチ性疾患患者686名。
●コントロールは健常者121名。
●2回目接種後、2-6週間後に採血(SARS-CoV-2三量体スパイクS1/S2糖蛋白質に対する抗IgG中和抗体価を測定)。
●有効性はワクチン接種後にPCRによって確定されたCOVID-19に感染したかアンケートまたはカルテデータレビューにて評価。
●安全性は2回目接種2週間以内、2~6週間以内に電話質問で確認。
●ワクチン接種期間中はリツキシマブを遅らせる以外、全ての免疫抑制治療は継続!!
ワクチン
●BNT162b2 mRNA(ファイザー)のみ。
患者情報
●関節リウマチや乾癬性関節炎を含む脊椎関節炎が多いが、SLEや血管炎もそれなりに含まれている。
●全体ではグルココルチコイドの使用は2割弱、MTXは26%弱、TNF阻害薬は25%、リツキシマブは13%弱。
●本文にはPSLの使用量は6.7±6.25mg/日と記載がある。またリツキシマブの投与量は1656.1±623.6mg。リツキシマブの最終投与とワクチン接種の間隔は平均で51±83日。
結果
●自己免疫性炎症性リウマチ性疾患患者でも86%に抗体の陽転化が見られる。
●炎症性筋疾患やANCA関連血管炎では3割と低めであった。
●TNF阻害薬、IL-6阻害薬(トシリズマブ)、IL-17阻害薬を使用している患者では健常者と比較して遜色ない高い抗体陽転化率を示した。TNF阻害薬とMTXを併用しても陽性率は93%と保たれている。
●MTX使用患者では抗体陽転化率が84%、ミコフェノール酸モフェチルは64%とやや低下した。
●アバタセプトはMTXと併用すると抗体の陽性率が40%まで低下する。
●リツキシマブは単独でも4割程度まで抗体の陽性率が低下するが、MTXと併用すると36%まで低下する。
●リツキシマブの最終投与とワクチン接種のタイミングを見ると、最終投与から6か月以内にワクチン接種をすると、陽性率は20%未満、1年経過していると50%弱まで上昇した。
●多変量解析では年齢(>65歳)、原疾患が関節リウマチ、炎症性筋疾患、ANCA関連血管炎、リツキシマブ療法、グルココルチコイド療法、アバタセプト+MTX、ミコフェノール酸モフェチルが抗体陽性率の低下と関連した(調整因子は年齢、背景疾患、MTX、リツキシマブ治療)。
●データは示されていないが、グルココルチコイド、ミコフェノール酸モフェチル、リツキシマブ、アバタセプトの免疫原性への影響は他のDMARDs使用とは独立していた。
●なお、ワクチン接種をした自己免疫性炎症性リウマチ性疾患患者686名はフォローアップ期間中、誰もCOVID-19に罹患しなかった。
My comments
●抗体の陽転化率を健常者と比較して有意差がある事を示したのみで、細胞性免疫については触れられていない。新型コロナウイルスワクチンは細胞性免疫も惹起するため、抗体が産生されないからと言って必ずしも効果がないとは言えない。
●フォローアップ期間中にCOVID-19に誰も罹患しなかったとの事は朗報だが、期間の詳細は記載して欲しかった。
●この研究ではMTXの使用は抗体陽性率にあまり関係しないという結果。
●リツキシマブ投与が6か月以内だと抗体陽性率がやはり低い。1年に延長すると上昇するが、それでも5割弱。新しい戦略が必要。
●多変量解析をする際に用いる独立変数が多く、サンプルサイズが解析に足るものか疑問に思った→統計学的手法に問題がないか、統計専門家の意見求む。
スイスの研究(2021 July)
Andrea Rubbert-Roth, et al. Lancet Rheumatol. 2021, PMID=34124693
対象
●DMARDs使用中の関節リウマチ患者53名と健常比較対照者20名。
●最初のワクチン接種3週間後と2回目のワクチン接種2週間後に採血。
ワクチン
●9名はmRNA-1273(モデルナ)、その他はBNT162b2 mRNA(ファイザー)。
患者情報
●女性54.7%、年齢の中央値は64.6歳。
●MTXの中央値は15mg(本文に記載)。
●csDMARD単剤30.2%、生物学的製剤47.2%(うち単剤は36%)、JAK阻害薬22.6%(うち単剤は41.7%)、プレドニゾン32.1%(平均5±1.9mg/日)。
結果
●健常者と比較すると劣るが、関節リウマチ患者でも2回目のワクチンを接種する事で中和能力のある抗体価が得られることがわかった。
●本文にはcsDMARDs使用でも81%、生物学的製剤使用でも94%、アバタセプト使用でも80%、JAK阻害薬使用では67%、2回のワクチン接種により、中和能力のある抗体価が得られたとされている。
My comments
●サンプル数が少なく、評価タイミングが2回目接種後2週間と短期だが、免疫抑制薬使用中の患者でも健常者と比較すると低いが、抗体価が十分(およそ8割)に上がる事は重要である。
オーストリアの研究(2021 July) New!! 2021.08.10 updated
Daniel Mrak, et al. Ann Rheum Dis. 2021, PMID=34285048
※リツキシマブ使用患者に特化した研究
対象
●リツキシマブ使用患者74名。
ワクチン
●mRNA-1273(モデルナ)13名、BNT162b2 mRNA(ファイザー)61名。
●2回目接種後に平均21.9日(範囲:7~49日)後に採血。
患者情報
●平均年齢61.7歳、女性が77%。
●疾患は関節リウマチが44.6%、結合組織病が29.7%、血管炎が23%。
●末梢血でB細胞が同定できたのは51.4%。
●リツキシマブとワクチン接種の間隔の平均が6.9か月。
●何らかのDMARDs使用患者は56.8%、うちメトトレキサートが最多(32.4%)、プレドニゾンは29.7%。
●本文より観察期間中にSARS-CoV-2感染の既往、または新規感染患者はいないと。
結果
●リツキシマブ使用患者では29名(39%)で抗体の陽転化を認める。
●陽転化群では末梢血で同定できるB細胞が有意に多く、リツキシマブ投与からワクチン接種までの期間が有意に長い傾向。
結果:液性免疫
A:健常者ではワクチン接種により抗SARS-CoV-2(S-RBD)抗体が上昇する。
B:リツキシマブ使用患者では末梢血にB細胞が検出されていない患者では1名を除いて抗SARS-CoV-2(S-RBD)抗体価は上昇しなかった。一方で末梢血でB細胞が検出された患者では74%が抗体価の陽転化を認めた。
C:末梢血でのB細胞の割合と抗SARS-CoV-2(S-RBD)抗体の抗体価は相関する。
D:末梢血のB細胞の割合が0~1%でも45%に抗SARS-CoV-2(S-RBD)抗体の陽転化が見られた。
A:リツキシマブ投与からワクチン接種までの期間は末梢血B細胞の値に相関する。
B:リツキシマブ投与からワクチン接種までの期間は抗SARS-CoV-2(S-RBD)抗体価に相関する。
ロジスティクス回帰分析では末梢血B細胞数が抗体陽転化に関連する。
リツキシマブ使用患者におけるcsDMARDsの併用は抗体価の増減に関連しない。
上記は36名の血清で比較
A:抗SARS-CoV-2(S-RBD)抗体(SC)陽性患者では中和抗体(NT)も陽性だが、陰性の場合は中和抗体も陰性。
B:中和抗体価と抗SARS-CoV-2(S-RBD)抗体価には相関関係がある。
上記は36名の血清で比較
C:1名を除いて末梢血B細胞がない患者では中和抗体も陰性。
D:末梢血B細胞の割合と中和抗体価は相関する。
結果:細胞性免疫
上記は45名の末梢血で比較
A:パンデミック前の血清(健常者)ではS1/S2蛋白に反応するT細胞はないが、ワクチンを接種した場合、健常者でもリツキシマブ使用患者でもS1/S2蛋白に反応するT細胞が検出される。
B:S1/S2蛋白でT細胞を刺激すると、健常者では反応するT細胞の割合が上昇する。
C:抗SARS-CoV-2(S-RBD)抗体(SC)の有無で反応するT細胞の割合は変化しない。
D:抗SARS-CoV-2(S-RBD)抗体価と反応性T細胞の割合との間に相関関係はない。
→リツキシマブ使用患者でも抗SARS-CoV-2(S-RBD)抗体価に無関係でT細胞は活性化。
結果:液性免疫と細胞性免疫の時間的変化
A:t1は2回目接種後平均15日後、t2は37日後に測定された抗体価(42名)。
→少なくとも接種後5週間は抗体価は低下しない。
B:t1は2回目接種後平均15日後、t2は42日後に測定された反応性T細胞の割合(9名)。
→少なくとも6週間はT細胞応答が持続する。
My comments
●データ多すぎ。あまり重要でないSupplementの表を2つほど省略しております。
●リツキシマブに特化した研究で面白かった。
●抗SARS-CoV-2(S-RBD)抗体価は末梢血B細胞の割合に相関するが、1%でもあれば抗体が産生される事が判明した点は面白い。リツキシマブ使用患者で末梢血B細胞の測定がワクチン接種のタイミングを規定する可能性が出てくる(例えば1%超えてから接種など)。
●また抗体産生とは無関係に反応性のT細胞ができる点でやはり液性免疫だけでなく、細胞性免疫がワクチンによって誘導される事を証明するものであった。
イギリスの研究(2021 August)
Maria Prendecki, et al. Ann Rheum Dis. 2021, PMID=34362747
まとめ
●初回後、28.6%(34/119)で抗体が陽転化、26%(13/50)がT細胞応答を示した。
●2回目接種後、59.3%(54/91)で抗体が陽転化、82.6%(38/46)がT細胞応答を示した。
●リツキシマブによるB細胞枯渇は抗体産生低下に関与するが、T細胞応答は保たれる。
●タクロリムス療法はT細胞応答の低下に関与。
●抗体産生もT細胞応答もなかった患者はわずか8.7%(19/140)のみ。
対象
●140人の免疫抑制を受けている患者(糸球体腎炎、血管炎)。
●初回接種28日(中央値)後に最初の採血、103人が2回目のワクチンを接種。
●その21日後に2回目の採血。
●健康なボランティアや医療従事者が比較対照に。
ワクチン
●BNT162b2 mRNA(ファイザー)とChAdOx1 nCoV-19(アストラゼネカ)
※アストラゼネカも含めて初回接種後、中央値30日で2回目接種している。
患者情報
●男性53.6%、年齢中央値52歳、アジア人は27.9%
●ANCA関連血管炎/抗GBM抗体型腎炎が最多(36.4%)、次いで膜性腎症(MN)が22.1%、微小変化型糸球体腎炎(MCD)/巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)が21.4%、SLEが15.7%
●リツキシマブ過去の使用歴が82.1%過去(6か月以内が56.1%、ワクチン接種時B細胞が枯渇していたのは60.5%)、現在の治療ではプレドニゾロンが42.1%、ミコフェノール酸モフェチルが16.4%、タクロリムスが16.4%
結果:液性免疫
A:投与前、初回、2回目投与後と、経時的に抗スパイク蛋白抗体IgGが有意に上昇。
→82.6%で反応あり。
B:過去6か月以内にリツキシマブを投与している患者(B細胞枯渇患者)では抗体は上昇傾向を示すも、枯渇していない患者と比べると有意に抗体価が低い。
→多変量解析でもリツキシマブによるB細胞枯渇と抗体価の非上昇は関連(OR 0.3, p=0.03)。
C:BNT162b2 mRNA(ファイザー)とChAdOx1 nCoV-19(アストラゼネカ)を比べると、ファイザーのワクチンで2回目接種後に有意な抗体価の上昇が見られた。
D:健常者(HV)比較すると抗体価は1回目、2回目接種後ともに有意に低い。
→年齢をマッチさせたコホートでもこの有意差は残存。
E:抗体価とB細胞数には一定の相関関係あり。
F:SARS-CoV-2感染の既往がある方ではB細胞の枯渇の有無に関わらず、1回目のワクチン接種後に有意な抗体価の上昇が見られた。2回目の接種後、さらに抗体価は上限を超えて上昇。
結果:細胞性免疫
A:投与前、初回、2回目投与後と、経時的にT細胞応答率が有意に上昇した。
B:タクロリムス使用患者ではT細胞応答が有意に低下した。
C:BNT162b2 mRNA(ファイザー)とChAdOx1 nCoV-19(アストラゼネカ)を比べると、アストラゼネカのワクチンでT細胞応答が1回目接種後有意に上昇。
D:健常者(HV)と比較すると、1回目接種後はT細胞応答率が有意に低いが、2回目接種後は遜色ない反応率となっている。
E:抗スパイク蛋白抗体が陽性になった方となっていない方を比較してもT細胞応答に有意な差はなかった→抗体ができなくてもT細胞応答が得られる。
F:年齢とT細胞応答に相関関係はなかったが、T細胞応答が得られない方では唯一年齢がパラメータであった。応答があった年齢の中央値は51.9歳、なかった年齢の中央値は61.5歳。
My comments
●対象が腎疾患に限られている事に注意。
●SARS-CoV-2に対する免疫では抗体だけでなく、T細胞性免疫も重要な役割を果たす。
●健常者と比較する低いが、免疫抑制療法を受けていても2回ワクチンを接種したら、抗体価上昇、T細胞免疫はそれぞれ6割、8割得られる。
●リツキシマブ投与によってB細胞が枯渇していても、T細胞免疫は得られる。
●B細胞が枯渇していても既感染者ではワクチン接種により抗体価が上昇していた事より、3回目以降の追加接種も検討しても良いかもしれない。
●アストラゼネカのワクチンは初回接種後、8週間以降に2回目を接種する事で最も効果が得られるとのことである。今回の試験ではおよそ4週間後に2回目接種を受けているため、推奨の通りに接種する事でより、抗体価、T細胞性免疫が上がった可能性は否定できない。
●接種後1か月での抗体価、T細胞免疫の評価であり、より長期の評価が待たれる。
オランダの研究(2021 August) New!! 2021.08.11 updated
The Lancet Rheumatology, Available online 6 August 2021
『Antibody development after COVID-19 vaccination in patients with autoimmune diseases in the Netherlands: a substudy of data from two prospective cohort studies』
→まだPubmed収載されていない。
対象
●2つの前向きコホートの患者(リウマチ性疾患患者3682名、多発性硬化症患者546名)。
●健常対照者1147名。
●血液検査は自己免疫疾患の患者(632名)と健常被験者(289名)からワクチン1回目接種後(患者507名、健常被験者239名)、2回目接種後(患者125名、健常被験者50人)に採取された。
●19各は、ワクチンの1回目または2回目の投与後に採血。採血のタイミングは1回目後14日から2回目の投与後3日までと、2回目接種後少なくとも7日後。
●疾患活動性はRAPID3(問診だけで得られる疾患活動性指標)、HAQ2(機能評価指標)を用いて関節リウマチ患者のみ評価。
→いずれも質問票に基づく。
●強直性脊椎炎ではBASDAIを使用。
ワクチン
●ChAdOx1 nCoV-19(AstraZeneca)、BNT162b2(tozinameran; Pfizer-BioNtech)、CX-024414(elasomeran; Moderna)、およびAd.26.COV2.S(Janssen)。
●うちAd.26.COV2.S(Janssen)は1回接種。
●1回目と2回目の投与間隔はChAdOx1 nCoV-19で12週間、BNT162b2で6週間、CX-024414で4週間。
患者情報
●最終的にリウマチ性疾患574名、多発性硬化症58名、健常被験者289名。
●平均年齢63歳、女性67%、BMI26。
●関節リウマチ41%で最多、その他脊椎関節炎など。SLEや血管炎は少ない。
●無治療20%、csDMARDs50%(うちMTX35%[半数以上が15mg/週以上])。
●生物学的製剤32%、うちTNF阻害薬22%、リツキシマブ4%。
●プレドニゾン17%。
●SARS-CoV-2感染確定15%、血清学で陽性11%、PCRで陽性8%。
●アストラゼネカのワクチン接種が多い!(欧米だからか…)
●1回目接種後の血清は接種後中央値34日で80%得られ、2回目接種後中央値38日で20%得られた。
結果
●SARS-CoV-2感染の既往がない場合は健常者では1回目接種後73%、2回目接種後95%抗体が陽性になる。
●リウマチ性疾患患者、多発性硬化症患者全体では1回目接種後49%と低いが、2回目接種後92%抗体が陽転化する。しかし、抗体価の中央値は健常者の約半分(48.6AU/ml)。
●MTXを使用していても2回接種で抗体は高率に陽転化する(78%)が、抗体価の中央値は健常者のおよそ半分程度。
●リツキシマブ使用患者では2回目接種後も抗体陽性率が低く(43%)、さらに抗体価も著明に低い。
●SARS-CoV-2感染の既往があると、健常者では1回目接種で抗体の陽転化率が上昇するが、2回目接種で陽転化率はやや低下する。しかしこれはおそらく陰性から陽性への変化の率が低いのであり、実際の抗体価の数値は高い水準を維持している。
●リウマチ性疾患患者や多発性硬化症患者でも同様の傾向が見られる。
●SARS-CoV-2既感染のMTX使用患者では2回目接種後に何故か抗体価がやや減少する。
●リツキシマブ使用患者はデータが不十分。
●SARS-CoV-2感染の既往がない場合、MTX単剤使用、TNFと併用、リツキシマブ使用では1回目接種後(一番上)、2回目接種後(真ん中)、いずれでも抗体価が低い事が分かる。
●しかし、SARS-CoV-2既感染では1回目接種後リツキシマブ使用患者以外は抗体価が上昇している事が分かる。
●抗体上昇と負の関係にある因子としてはリウマチ性疾患・多発性硬化症疾患、MTX使用(用量に関わらず)、リツキシマブ使用が挙げられた。
●SARS-CoV-2感染の有無で分けた場合に、非感染最初のワクチン接種を受けた場合にはMTXは抗体価の非上昇に関連するが、2回目接種後は関連しなくなっている。
●SARS-CoV-2既感染患者ではMTXは抗体価の非上昇と関連しない。
My comments
●SARS-CoV-2感染既往の有無に分けていたことが面白い。感染者は1回目の接種で抗体の陽転化と抗体価の著明な上昇が見られており、感染がブースター効果を表している事が考えられる。
●SARS-CoV-2非感染患者ではMTXは1回目、2回目接種ともに抗体価の上昇は健常者よりも低いが、いわゆる中和抗体が獲得できるとされる15U/mlよりも3倍近く高いため、それほど心配はないのではないかと思う。
●また、既感染患者ではMTXを使用していようがいまいが、抗体価は2回接種で著明に上昇する(ただし15mg未満)。この事はワクチン3回目以降の接種で同様に抗体価が上昇する可能性を示唆していると思う。
リウマチ膠原病疾患へのアプローチ
リウマチ膠原病は多彩な症状を呈し、非典型例も多いため、苦手とする方も多いかもしれません。リウマチ膠原病診療への苦手意識をなくすには、文献的学習だけではなく、可能な限り多くの疾患を診る事に限ると思いますが、初見で診断する事は難しい事も少なくありません。
どうにかリウマチ膠原病診療の苦手意識をなくすことが出来ないか、専門医が偏在する地域で診療に当たる先生方に考え方を共有出来ないか、と考え、私なりにリウマチ膠原病疾患へのアプローチをまとめてみました。
最初は何の事か分からないかもしれませんが、反復してトレーニングすると、見えてくるものがあるかと思います。皆様のお役に立てれば幸いです。
リウマチ膠原病疾患への4ステップ
Step 1:主たる症状、障害臓器を同定
Step 2:リウマチ膠原病疾患・クラスターの同定
Step 3:他の症状、身体所見の吟味
Step 4:疾患に特異的な検査を実施
Step 1:主たる症状、障害臓器を同定
まず何よりも大事なのは、目の前の患者さんの症状、障害臓器が何なのか、どこなのかを同定する事です(例:皮膚なのか、肺なのか、腎臓なのか)。
ここでは可能な限り臓器毎に漏れなく抽出しましょう。
Step 2:リウマチ膠原病疾患・クラスターの同定
次に、その症状を呈するリウマチ膠原病疾患・クラスターを同定します。
クラスターというのは以下の5つのグループです。これは聖路加の岡田先生らが提唱するものを改変したものです。より日常診療で間違えやすい疾患群をまとめました。
SLE:全身性エリテマトーデス、APS:抗リン脂質抗体症候群、PM:多発筋炎、DM:皮膚筋炎、MCTD:混合性結合組織病、SSc:全身性強皮症、SjS:シェーグレン症候群、RA:関節リウマチ、Crystal:痛風・偽痛風、OA:変形性関節症、PMR:リウマチ性多発筋痛症、SpA:脊椎関節炎、AAV:ANCA関連血管炎、GCA:巨細胞性動脈炎、TA:高安動脈炎、PN:結節性多発動脈炎、CV:クリオグロブリン血症性血管炎、IgA:IgA血管炎、BD:ベーチェット症候群、AOSD:成人Still病、FMF:家族性地中海熱、TRAPS:TNF受容体関連周期性症候群、CAPS:クリオリピン関連周期熱症候群、IgG4RD:IgG4関連疾患、RP:再発性多発軟骨炎、CD:Castelman病
症状から疾患クラスターあるいは疾患を同定するには、リウマチ膠原病疾患症状早見表を活用すると良いでしょう。
当該症状の行を横に見て行きながら、該当するクラスター・疾患を同定します。
例えば、肺胞出血を起こしやすいのは、抗核抗体関連疾患と血管炎と、クラスターを同定する事が出来れば十分ですが、余裕があれば、クラスター内の各疾患まで絞れると良いでしょう。
Step 3:他の症状、身体所見の吟味
さらに目の前の患者さんの主要症状、障害臓器に該当するクラスター・疾患があった場合、表を縦に見て行き、他の症状や身体所見がその疾患に該当するか検討します。
より当てはまる症状・障害臓器が多い疾患をピックアップします。
専門医の場合は、ここまでを無意識に行っている事が多いように思います。
この無意識にやっている事を言葉にすると以下のようになります。
Step 4:疾患に特異的な検査を実施
疾患ないしクラスターが絞れたら、そのクラスターに関連のある検査を実施します。
症状によっては複数のクラスターで認め、分類が難しい場合があるかと思います。
また、クラスターから疾患まで絞れない場合もあるかもしれません。
その場合は、該当するクラスターの検査を広めに実施する事も許容されます。
リウマチ膠原病疾患クラスター毎の特徴
リウマチ膠原病疾患のクラスター毎にいくつかの特徴があります。
思いついたものを以下にまとめます。 徐々に改変していく可能性があります。
抗核抗体関連疾患
・抗核抗体関連疾患は全身の臓器に症状を来します。
・抗核抗体が身体の至る所で免疫複合体を形成し、細胞・臓器を傷害する事をイメージすると良いでしょう。
・クラスター内の疾患はオーバーラップをする事が多く、一つを疑った場合はその他の合併も考えます。
・このクラスターと血管炎は多くの症状を共有しますが、鑑別点にはレイノー症候群、皮疹のパターン、造血器官の異常(リンパ節腫脹、血球異常)があります。
・レイノー症候群は疾患特異性こそありませんが、このクラスターとの親和性は非常に高く、スクリーニング症状として有用です。
・多くの疾患で爪周囲の紅斑や爪上皮下出血斑が見られます。皮膚筋炎のゴットロン徴候やSLEの蝶形紅斑など特徴的なものもあります。
・リンパ節腫脹や血球減少などはこのクラスターの特徴的所見ですが、薬剤性やウイルス性を除外しなければいけません。
・抗核抗体の染色パターンが特異抗体と対応している事が多いです。
滑膜・腱・滑液包疾患
・滑膜・腱・滑液包疾患はリウマチ膠原病疾患の中で最も頻度が高いです。
・骨関節症状は他疾患でも認めるため、他疾患を疑う併存症状がない時に初めて本クラスターを考えます。関節以外の症状の念入りな問診と身体所見が重要です。
・滑膜・腱・滑液包疾患はさらにRA/PMR、結晶性、SpA/SAPHO群に分けられます。
・結晶群は急性発症し、発熱を伴う事が特徴的であります。
・SpA/SAPHO 群は皮膚、付着部、眼、消化器、泌尿生殖器症状に着目します。
血管炎
・血管系のサイズによって大きく症状の出方が異なります。
・大血管炎は頭頚部と四肢に虚血症状を起こしますが、小血管炎は全身の臓器に症状を起こします。
・抗核抗体関連疾患と障害臓器の分布は似ますが、レイノー症候群、皮疹のパターン、造血器官の異常(リンパ節腫脹、血球異常)が鑑別点です。
・クリオグロブリン血症性血管炎を除いて原則レイノー症候群は起こしません。
・皮疹も小血管炎で点状の紫斑、中血管炎で潰瘍や結節性紅斑などと、皮疹の性質も異なります。
・EGPAでの好酸球増多を除いて著明な血球異常を起こすことも多くありません。
・特徴的な症状としてはEGPAにおける心筋症には注意が必要です。
自己炎症関連疾患
・自己炎症関連疾患はそれ自体が多くないので、まず疑う必要はありません。
・ベーチェット症候群と成人Still病は一般内科で最初に診る事も多い疾患であり、押さえておく必要があります。
・ベーチェット症候群は皮膚、眼、粘膜、関節に症状を起こすため、全ての症状が揃えば診断はそれほど難しくありませんが、実際は不全型が多く、ヘルペスウイルス感染症との鑑別を要します。
・神経、腸管、血管病変は特殊型と呼ばれ、特に注意が必要です。
・成人Still病も山口分類が診断に用いられることがありますが、多くの感染症が満たし得る基準で、除外診断が基本です。
・自己炎症症候群は発熱が遷延し、その他の疾患が除外されている時のみ疑います。
その他
・キャッスルマン病とIgG4関連疾患はともにリンパ節が腫れる疾患ですが、前者は著明な炎症所見や発熱を呈する事が多いです。また特徴的な症状の組み合わせにより、TAFRO症候群やPOEMS症候群などの派生疾患があります。
・再発性多発軟骨炎は見慣れないと診断が難しいです。発熱に加えて、耳、鼻、気管軟骨の病変に注意が必要です。
代表的症状から迫るリウマチ膠原病疾患
発熱
・発熱を来す膠原病は多いため、鑑別に有用な症状ではありません。
・考える順番:血管炎、抗核抗体関連疾患>>自己炎症関連疾患
・血管炎、抗核抗体関連疾患は他の症状が前面に出る事が多く、その組み合わせで診断します。
・鑑別が難しい場合は両クラスターの自己抗体を提出します。
・両クラスターともらしさがない場合に、自己炎症関連疾患を考えます。ベーチェット症候群や成人Still病はその他の症状が前面に出る場合が多いですが、自己炎症症候群は発熱が前面に出て、その他の症状が付属する場合が多いです。付属するパターンで鑑別します。
眼病変
・眼症状はその種類によってある程度、疾患への絞り込みが可能です。
・結膜炎は一般的に見られる症状です。シェーグレン症候群で見られる乾燥性角結膜炎を除いて膠原病に特異的という訳ではありません。
・一方でぶどう膜炎と強膜炎は膠原病の可能性を一気に上げます。前者は抗核抗体関連疾患、血管炎、脊椎関節炎で見られます。
・強膜炎は関節リウマチと再発性多発軟骨炎だけ覚えておけば良いです。
・自己炎症症候群でもぶどう膜炎などが見られる事もありますが、このカテゴリーは最後に考えます。
・眼球運動障害や視力障害は大血管炎をまず考えます。
耳病変
・外耳に問題が生じるのは再発性多発軟骨炎のみ。内耳中耳は血管炎を想起します。
鼻病変
・代表的な鼻病変を来す疾患は多発血管炎性肉芽腫症と再発性多発軟骨炎。
口腔・上気道病変
・難治性口内炎で考えるのは全身性エリテマトーデスとベーチェット症候群。
・シェーグレン症候群の口腔乾燥はしばしば見逃されやすいです。
肺病変
・間質性肺炎と言えば、抗核抗体関連疾患、血管炎を考えます。
・抗核抗体関連疾患では皮膚筋炎、強皮症、混合性結合組織病が圧倒的に多いです。
・血管炎はANCA関連血管炎を考えます。
・間質性肺炎が先行する場合もあるため、これらの自己抗体を全て提出します。
・滑膜・腱・滑液包疾患では関節リウマチが間質性肺炎を起こしますが、関節症状が前面に出るため、迷う事は少ない印象です(例外は間質性肺炎が先行する場合)。
心病変
・心病変はどの膠原病でも起こって良いですが、頻度が低く、初発症状で見られることは多くありません。
・しかし、心不全徴候が見られる場合は致死的であるため、抗核抗体関連疾患、血管炎の抗体を網羅的に提出し、早期治療に踏み切る事が多いです。
・好酸球疾患は心筋障害の頻度が高く、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症では特に注意が必要です。
消化器病変
・消化管出血・潰瘍では抗核抗体関連疾患、血管炎、ベーチェット症候群を考えます。
・胆管炎・膵炎などはIgG4関連疾患をまず考えます。
腎病変
・抗核抗体関連疾患、血管炎をまず考えます。
・腎後性腎不全ではIgG4関連疾患をまず考えます。
骨・関節病変
・ほとんど全てのカテゴリーの疾患が骨・関節症状を呈するため、鑑別に有用ではありません。
・頻度としては滑膜・腱・滑液包主体疾患が圧倒的に多いですが、これらは脊椎関節炎やSAPHO症候群を除いてほとんど他の部位の障害を認めないため、全身の臓器障害の有無を評価してから考えます。
・全身のその他の症状がある場合は抗核抗体関連疾患や血管炎などを疑います。
皮膚病変
・ほとんど全ての膠原病は皮膚症状を有します。
・ただし、皮膚症状のパターンが異なり、診断に有用である場合が多いため、成書をご覧ください。
動静脈病変
・このカテゴリーは抗核抗体関連疾患、血管炎、ベーチェット症候群を考えます。
・レイノー症候群は抗核抗体関連疾患が圧倒的に多く、その他ではクリオグロブリン血症性血管炎を考えます。
神経病変
・末梢神経障害では抗核抗体関連疾患、血管炎の中でもANCA関連血管炎、結節性多発動脈炎を考えます。
・中枢神経障害はクラスターによって症状の出方が異なります。抗核抗体関連疾患では脳髄膜炎を呈する事がありますが、小血管炎では肥厚性硬膜炎が多いです。
・大血管炎では脳梗塞を起こします。
リウマチ膠原病疾患症状早見表
皆様にリウマチ膠原病疾患をより理解して頂くために、どうしたら良いずっと考えております。リウマチ膠原病疾患は症状が多彩で捉えどころがない事が苦手な要因ではないかとふと思い、それならば症状がまとまった一覧があれば、と思い立ちました。
リウマチ膠原病疾患の症状をExcelで即興でまとめたので、良かったら参考にしてみてください。情報の統一性を持たせるために、ソースは難病情報センターから取りました。特定疾患に定められていないものは大学のホームページなどを参考にしています。
頻度に関しては恣意的かつ大雑把に以下のようにまとめました。
◎: 30~50%以上
〇: 5~30%
△: 5%未満、症例報告レベル
×: なし
こちらまだドラフト版であり、添削頂ける方を募集致します。ご協力頂ける方は間接・直接ご連絡下さい。謝礼はございませんが、文末に協力者としてお名前を記載させて頂きます。
まずリウマチ膠原病疾患は以下のカテゴリーに分ける事が出来ると思います。
リウマチ膠原病疾患のクラスター
SLE:全身性エリテマトーデス、APS:抗リン脂質抗体症候群、PM:多発筋炎、DM:皮膚筋炎、MCTD:混合性結合組織病、SSc:全身性強皮症、SjS:シェーグレン症候群、RA:関節リウマチ、Crystal:痛風・偽痛風、OA:変形性関節症、PMR:リウマチ性多発筋痛症、SpA:脊椎関節炎、AAV:ANCA関連血管炎、GCA:巨細胞性動脈炎、TA:高安動脈炎、PN:結節性多発動脈炎、CV:クリオグロブリン血症性血管炎、IgA:IgA血管炎、BD:ベーチェット症候群、AOSD:成人Still病、FMF:家族性地中海熱、TRAPS:TNF受容体関連周期性症候群、CAPS:クリオリピン関連周期熱症候群、IgG4RD:IgG4関連疾患、RP:再発性多発軟骨炎、CD:Castelman病
各カテゴリー、疾患毎の症状以下になります。多すぎて見えないですよね。
各カテゴリー毎に分けたのが以下になります。
抗核抗体関連疾患
滑膜・腱・滑液包主体疾患
血管炎
自己炎症関連疾患
その他
改訂記録
#1. 2021-06-15 謝辞:以下2件、リウマチ内科医tsussy先生
【RA:血球異常】→【△(Feltyの場合)】を追加
【EGPA:血球異常】→【◎(好酸球増多)】を追加
#2. 2021-06-21
【RA:皮膚障害△】→【△(リウマチ結節)】を追加 謝辞:今村竜太先生(岡山市民)
【PNの:胞出血】→【〇→△】へ変更
#3. 2021-06-24 謝辞:吉田知宏先生(倉敷中央)
【DM】結膜炎→【〇→△】へ変更、骨・関節障害→【〇~◎(特にARS, MDA5)】へ変更
【各種抗核抗体関連疾患】皮膚障害→【皮膚障害(レイノー含む)】へ変更
【PM】心病変→【△→〇】へ変更
【MCTD】中枢神経障害→【”三叉神経障害、無菌性髄膜炎”の注釈】追加
【SSc】腎障害◎→【クリーゼの場合】追加
【GPA】鼻病変→【出血】追加、動脈病変→【顎】追加
【TA】心病変→【AR】追加、皮膚病変→【〇(結節性紅斑)】追加
【BD】心病変→【△(AR)】追加、腎・泌尿器→【外陰部潰瘍】追加
皮膚病変→【結節性紅斑】追加
緊急性の高いリウマチ膠原病疾患
リウマチ膠原病内科はまったりしている印象ですが、1分1秒を争うような緊急性の高い疾患や状態があります。以下にその例を挙げます。
【生命に関わる危機】
●抗MDA5抗体陽性筋無症候性皮膚筋炎(CADM)
●関節リウマチ(RA)の環軸椎亜脱臼による脳幹圧迫
●全身性エリテマトーデス(SLE)、ANCA関連血管炎による肺胞出血
●SLE、抗リン脂質抗体症候群(APS)に合併した血栓性微小血管障害症(TMA)
●NPSLEによる痙攣重積
●SLE、好酸球性多発血管炎性肉芽腫(EGPA)による心筋炎
●劇症型APSによる多発塞栓症
●強皮症腎クリーゼ
●成人Still病に併発する血球貪食症候群
●巨細胞性動脈炎(GCA)、高安動脈炎の冠動脈病変による心筋梗塞
●血管ベーチェットの多発塞栓症と動脈瘤破裂
●結節性多発動脈炎(PN)による腹腔内動脈瘤破裂
●RA、再発性多発性軟骨炎、多発血管炎性肉芽腫による上気道閉塞
【臓器予後に関わる危機】
●GCAによる視力低下
●全身性強皮症、PN、APSによる急性四肢壊死
●神経ベーチェット
●ループス腸炎
その他、1分1秒ほどではないですが、以下の場合もかなり早期に治療を開始します。
●ループス腎炎、ANCA関連血管炎による急速に進行する腎機能障害
●抗TIF-1γ抗体陽性皮膚筋炎による嚥下機能障害
●ANCA関連血管炎による多発単神経炎
●皮膚筋炎、全身性強皮症、関節リウマチなどに合併した間質性肺炎の急性増悪
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