SLE EULAR recommendations 2019
SLEのEULAR recommendations 2019が出たので以下にまとめます。ご参考になれば。
お時間がない方は以下の表だけでも見ておきましょう!!
【ポイント】
・寛解は目指すべきだが, 達成困難である場合は, 低活動性(抗マラリア薬を使用してSLEDAI≤3, またはPSL≤7.5mgや免疫抑制薬を使用した状態でSLEDAI≤4, PGA≤1)状態を目指す
・禁忌でない限り、ヒドロクロロキンは全例で使用する
・グルココルチコイドは可能な限りPSLで7.5mg/日以下を目指したい
・免疫抑制薬の併用はグルココルチコイドの減量に必要不可欠だが, どの薬剤を使用するかは障害臓器によって異なる
・ループス腎炎と非ループス腎炎の治療は分けて考える
・ベリムマブも有効かも
こちらもご覧ください。
治療の目標
・完全寛解(臨床的活動性がなく, グルココルチコイドや免疫抑制薬を使用しない)は稀
・新しく定義された低活動性(抗マラリア薬を使用してSLEDAI≤3, またはPSL≤7.5mgや免疫抑制薬を使用した状態でSLEDAI≤4, PGA≤1)は障害インデックスの増加や再燃の予防の観点で寛解に匹敵する
・寛解を目指すべきだが, 達成が困難である場合は全てに臓器において低疾患活動性を目指すべき
・ループス腎炎では6-12か月以内に少なくとも部分的寛解(尿蛋白が50%以上の減少でネフローゼ状態を脱していること, Cre値がベースラインの10%以内)を目指すべき.
・腎病変の完全寛解(蛋白尿<500mg/24時間尿, Cre値がベースラインの10%以内)には1-2年以上かかることがある
・腎病変の治療反応性としては尿蛋白が0.8g/日よりも減少することが尿潜血の残存よりも重要
・重度の尿蛋白の場合や罹患期間が長い場合は治療に反応しくい場合があり, 反応に時間がかかる
・再発予防はもう一つ重要なことだが、定義は決まっていない
・どの専門家も治療変更を有する疾患活動性の上昇を再燃と考えている
・再燃はよく見られ, 臓器障害や予後不良に関係する
・再燃のリスクは若年発症, 抗マラリア薬の未使用, 一般的な疾患活動性や血清学的活動性(抗ds-DNA抗体, 低補体)が持続, などがある
・服薬遵守や頻回なモニタリング, 治療最適化は再燃リスクを減らす
治療
ヒドロクロロキン(HCQ)
・ヒドロクロロキンは全患者で推奨されるがアドヒアランス不良は稀ではない
・薬剤の血中濃度が服薬コンプライアンスの評価に使用可能(ルーチンで測定するにはデータが不十分)
・長期使用で網膜毒性が懸念されるが, 20年の持続投与で網膜異常は10%以上に上る
・主なリスクは治療期間(5年毎にOR4.71), 投与量(100mg/日毎にOR3.34), 慢性腎臓病(OR8.56), もともとも網膜・黄斑病変がある場合
・5mg/kg実体重以下であれば網膜毒性のリスクは非常に少ないため, 一日量はこれを超えないようにすべき
・ただし臨床試験でのHCQの有効性は6.5mg/kg/日で確立されており, 低用量で効果があるか確認すべき
・長期使用で寛解状態にある患者ではHCQの減量も考慮して良いが, 確認した研究はない
・他の抗マラリア薬としてキナクリンは網膜毒性でHCQが使用できない場合に皮膚病変に使用できる
グルココルチコイド
・長期使用で不可逆的な臓器障害を含む有害な副作用を起こし得るため, 中長期目標はグルココルチコイドは7.5mg/日以下に減少すべき
・リスクは7.5mg/日以上で増加するが, それ以下でも有害という研究がある
・様々な量(重症とや体重に基づく)のmPSLパルスは急速なnon-genomic effectsが期待できるが, 経口のグルココルチコイドを早く減量することができる
・早期に免疫抑制薬を併用することでステロイド減量を早められ, 中止できる
・高用量のmPSL(250-1000mg/日を3日間)は感染症の除外をした後に, 急性の臓器障害(ループス腎炎, 神経精神SLE)に使用する
免疫抑制薬
・免疫抑制薬を併用することでステロイド減量のスピードを上げることができる
・薬剤選択は疾患の表現型, 患者年齢, 妊孕性, 安全性, 費用などによる
・メトトレキサート, アザチオプリンはステロイドとHCQまたはHCQ単独で不十分な場合に考慮すべき
・エビデンス的にはメトトレキサートがアザチオプリンよりも有効性があるが, 妊婦にはアザチオプリンの方を考慮する
・MMFはループス腎炎, 非ループス腎炎(神経精神ループスは除く)に有効性がある
・最近のランダム化非盲検化試験では腎外SLEではenteric-coated mycophenolate sodium(EC-MPS)がアザチオプリンよりも寛解達成率と再燃減少で優位だった
・しかし催奇形性(妊娠の少なくとも6週間前より中止)やメトトレキサート、アザチオプリンと比べて高額であることから, 生殖可能年齢の女性の非腎病変で一般的な推奨となりにくい
・シクロホスファミドは重篤な臓器障害(ループス腎炎, 心肺病変, 神経精神病変)で考慮され, 難治性の非主要臓器症状の救済治療としても使用される
・生殖年齢の男女では生殖毒性に注意しながら使用する
・GnRHアナログの併用はシクロホスファミドに関連した卵巣予備機能の枯渇を軽減させるため, 閉経前のSLE患者で推奨される
・シクロホスファミド治療前に卵巣凍結の可能性について情報提供されるべき
・悪性腫瘍や感染症のリスクについても考慮するべき
生物学的製剤
・SLEによけるB細胞標的薬の効果を支持するエビデンスがある
・ベリムマブは非腎病変で初期治療(プレドニゾロンとHCQの併用±免疫抑制薬)に効果を十分示せない(進行中の疾患活動性または頻回な再燃)場合, グルココルチコイドを許容できる量(最大7.5mg/日)まで減らせられない場合に考慮すべき
・持続的活動性がある場合, ベリムマブのが有効かもしれない
・高活動性(SLEDAI>10), PSL>7.5mg/日, 血清学的活動性(低C3/C4, 抗ds-DNA抗体高力価), 皮膚病変, 筋骨格病変, 血清学的異常を示す患者でも有用
・リツキシマブは無作為比較試験で否定的な結果が出たため, 他の免疫抑制薬またはベリムマブに抵抗性あるいはそれらに禁忌の患者で, 重度の腎病変または非腎病変(血球障害および神経精神ループス)患者に適応外使用している
・リツキシマブが効果を示す重症のITPや溶血性貧血を除き, 一般的にはリツキシマブ導入前に少なくとも1種類の免疫抑制薬に反応を示さないことを確認する
・ループス腎炎では第一選択(シクロホスファミド, ミコフェノール酸)で治療失敗や再燃例でリツキシマブが使用される
・最近ではLUNAR試験の事後解析でループス腎炎におけるリツキシマブ治療後のB細網の完全な枯渇は78週で高い完全奏効率に関連していることが示された
個別の病変
皮膚病変
・日焼け止めによる紫外線予防と禁煙が強く推奨される
・非典型例, 難治性では皮膚生検を考慮する
・初期治療は全身ステロイドの有無に関わらず局所療法(グルココルチコイドまたはカルシニューリン阻害薬)または抗マラリア薬である
・ヒドロクロロキンはクロロキンよりも網膜毒性が低い点, 有効性の点で優れている抗マラリア薬である
・効果が不十分な場合, 網膜毒性がある場合はキナクリンを追加または変更できる
・キナクリンは現時点では網膜毒性は起こさないと考えられている
・キナクリンは正解中でいくつかの国しか使用できないが使用可能となれば有用な代替薬である
・多数の患者(約40%)では第一選択に反応しない
・そのような患者ではメトトレキサートを追加することができる
・他の薬剤としてレチノイド, ダプゾン, ミコフェノール酸モフェチル, EC-ミコフェノール酸が挙げられる
・ベリムマブとリツキシマブは粘膜皮膚病変に有効性を示しているが, それらの研究では皮膚病変に対する有効な活動性スコアは含まれていない
・リツキシマブは慢性皮膚ループスでは効果が減る可能性がある
・サリドマイドは様々な種類の皮膚病変に効果があるが, 妊娠中の厳格な禁忌, 不可逆的な多発神経障害のリスク, 薬剤中止による頻回の再発のため, 複数の薬剤で失敗した患者に対して救済治療目的で使用されるべき
神経精神病変(NPSLE)
・NPSLEの治療の治療は機序が炎症性か、塞栓性/血栓性/虚血性かによって異なる
・グルココルチコイドや免疫抑制薬は前者に使われる一方、後者には抗リン脂質抗体が存在する場合には抗凝固薬や抗血小板薬が適応になる
・両者の区別は必ずしも容易ではないし、共存するかもしれない。このような患者では免疫抑制薬に加えて抗凝固薬/抗血小板薬を併用する
・脳血管疾患を伴うSLE患者では急性期は一般的脳血管疾患患者と同じ管理を行う
・免疫抑制療法はCNSループス以外の活動性のコントロールに加えて、抗リン脂質抗体がない時や他のアテローム性動脈硬化のリスクのない場合、再発性脳血管イベントの際には考慮される
・画像検査や髄液検査は免疫抑制薬を使用する際の根拠となる
・精神病に対する向精神薬や不安障害に対する抗不安薬などの対症療法は症状に応じて行う
血液病変
・SLE患者で頻回に抗炎症療法/免疫抑制療法を行う必要がある血液疾患として血小板減少症や自己免疫性溶血性貧血(AIHA)がある
・著明なループス性血小板減少症(Plt<30000/mm3)の第一選択は中等/高用量のグルココルチコイドに免疫抑制薬(アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル、シクロスポリン、シクロスポリンは骨髄毒性が低い)を併用することである
・メチルプレドニゾロンパルスによる初期治療(1~3日)に推奨される
・免疫グロブリン点滴療法は高用量のグルココルチコイドに十分反応しない場合やグルココルチコイド関連の感染合併症を避ける際の急性期に使用を考慮する
・血小板減少症の治療は通常長時間要し、グルココルチコイドの減量中にしばしば再燃する
・グルココルチコイドに反応しない場合(血小板が5万以上に達しない)、または再発例ではリツキシマブがITPでの効果を考慮して検討されるべき
・シクロホスファミドも上記の状態では考慮されてもいい
・トロンボポエチンアゴニストや脾摘は最後の手段として保留されるべき
・自己免疫性溶血性貧血は血小板減少症よりもはるかに少ない
・治療はグルココルチコイド、免疫抑制薬、リツキシマブと血小板減少症と同じ
・自己免疫性白血球減少症はSLEで一般的だが、滅多に治療を必要としない
・白血球減少症の他の原因を除外する精査が推奨される(特に薬剤性)
腎病変
・腎病変を発症するリスクが高い患者(男性、若年発症、抗C1q抗体を含む血清学的に活動性がある)は、腎病変の早期徴候を得るために注意深くモニタリング(少なくとも3か月毎)する
・腎生検で確定診断がついた後、治療は初期導入期とそれに続く、長期の維持期からなる
・ミコフェノール酸モフェチルとシクロホスファミドは寛解導入に適した免疫抑制薬
・低用量のシクロホスファミド(Euro-Lupusレジメン:500mgを0, 2, 4, 6, 8, 10週目に投与)は高用量シクロホスファミド(0.75-1 g/m2 BSA/月を6か月)と有効性が同等で、生殖毒性リスクが低いため、より好まれる
・末期腎臓病に進展するリスクと関連する重症型(糸球体濾過率低下、線維性半月体の存在、フィブリノイド壊死、尿細管壊死/間質性線維症)ではミコフェノール酸モフェチルと高用量シクロホスファミドの併用が好まれる
・腎病変の良好な長期アウトカムの予測因子は早期に尿蛋白が低下することである(6か月で1g/日以下、または12か月で0.8g/日以下)
・ミコフェノール酸モフェチルまたはアザチオプリンは維持療法に使用されるが、ミコフェノール酸モフェチルでは再発率が低い
・治療の選択は導入期に使用される薬剤と患者の年齢、人種、妊娠希望によって異なる
・難治性や再発例ではリツキシマブを考慮する
・2012年のループス腎炎に対するEULAR勧告に従い、増殖性ループス腎炎を単独でまたはマルチターゲット療法(タクロリムスとミコフェノール酸モフェチルの併用)でのカルシニューリン阻害薬に関していくつかの研究がある(主にアジア人を中心に行われ、追跡期間は短く、多人種で長期の調査が必要)
・それらによると現時点でカルシニューリン阻害薬は3~6か月の標準治療にも関わらず、主に膜性ループス腎炎、ポドサイト障害または難治性ネフローゼ症候群を伴う増殖性疾患における寛解導入療法または維持療法の第二選択として考えられている
・難治性ネフローゼ症候群を伴う増殖性疾患においてはカルシニューリン阻害薬はミコフェノール酸モフェチルと併用したり、単独投与することができる
・観察研究レベルだが、標準治療抵抗例ではカルシニューリン阻害薬とミコフェノール酸モフェチルの併用療法は有効である
・血清Cre値と血中薬物濃度を測定して慢性薬剤毒性を避ける必要がある
併存症
抗リン脂質抗体症候群
・抗リン脂質抗体の存在は血栓症や産科的合併症、臓器障害のリスクの上昇に関連する
・SLEを有する抗リン脂質抗体キャリアのサブグループでは低用量アスピリンを血栓症の一次予防として投与することが支持されている
・しかし出血リスクの観点からは何らかの抗リン脂質抗体を有する患者か、抗リン脂質抗体のハイリスクプロファイル(抗リン脂質抗体が3つとも陽性、ループスアンチコアグラントまたは抗カルジオリピン抗体が高力価)を有する患者のみに適応を限定すべきか明らかにされていない
・SLEで抗リン脂質抗体を有する患者では血栓症のリスクが高い期間(妊娠中または術後)は低分子ヘパリンなどの抗凝固薬を使用されることもあるが、この問題に研究は取り組まれていない
・SLE-APS患者を対象とした研究はいくつかのSLEによる二次性APSの研究を除いて実施されていないため、SLEの二次性APSの治療は原発性APSの治療とは異なるべき
・APSにおいてリバロキサバンとワーファリンを3つの抗リン脂質抗体が陽性の患者(約21%がSLE-APS)で比較した無作為非盲検化試験ではリバロキサバン群で多くの血栓塞栓症が生じたため、早期に中止となった
・よって、SLE-APS患者では二次予防のための新規経口抗凝固薬の使用は避けるべき
・しかし限定された患者(低リスク抗リン脂質抗体プロファイル、動脈血栓症の既往がない)でINRのコントロールが難しい場合はワーファリンの代替として有用かもしれない
感染症
・SLEでの感染症のリスクは疾患そのものと治療の要因の両方に関連する
・高用量グルココルチコイド治療、シクロホスファミド、ミコフェノール酸モフェチル、リツキシマブは全て感染症のリスクを上げる、一方、高疾患活動性、重症の白血球減少症、腎病変の存在(±ネフローゼ症候群における低ガンマグロブリン血症)も独立して感染症のリスクに寄与する
・感染症の一次予防と同時に早期発見、治療が大事
・SLE患者はEULARが勧めるワクチンを受けるべきである
・季節性インフルエンザワクチンはもちろん、肺炎球菌ワクチン(PCV13、PPSV23)は症状が安定している時に強く推奨される
・帯状疱疹ワクチンは一般人口で受けられるが、SLEでの研究は十分なされていない
・迅速な敗血症の診断と治療は不可欠である
・qSOFA(sBP≤100mmHg、呼吸数≥22/分、GCS<15の意識変容の内2つ以上陽性で死亡リスクが増加または集中治療室での滞在期間が長期化することと関連)などのスコアは予後不良のハイリスク患者を特定するのに有用
心血管病変
・SLEは一般的なリスクに加えて、疾患関連のリスク(持続的疾患活動性、ループス腎炎、抗リン脂質抗体の存在、グルココルチコイドの使用)などによって心血管疾患の独立したリスク因子である
・頸動脈プラーク、頸動脈内膜中膜厚(cIMT)、冠動脈石灰化などのアテローム性動脈硬化症の代替検査はSLEでの無症候性心血管疾患の同定に頻回に使用される
・低用量アスピリンはSLEにおける偶発的な心血管疾患のリスクを下げる可能性があるため、一次予防として考えられている(後方視的研究ではHR0.24)
・しかし最近研究では糖尿病や高齢さではアスピリンの心血管疾患の一次予防としての利益は大出血のリスクに相殺されていることを考慮すべき
・SLE患者でのスタチンはプラセボを上回る有益性を示していない(cIMTを心血管疾患の代替指標として使用)ため、ルーチンでの使用は推奨されないが、脂質の値や他の心血管疾患リスクがある場合は考慮されるべき
・Systematic Coronary Risk Evaluation(SCORE)を使用して10年心血管疾患リスクを計算すべきだが、SLE患者では過小評価されている
薬剤の投与量
※因みにEULARで推奨されている薬剤の投与量は以下の通りになります。日本では使用しないような量も散見されます。使用時には添付文書に基づいて使用してください。
Supplementary Table 5. Recommended doses of drugs mentioned in the EULAR recommendations
Drug |
Recommended dose |
Dose adjustment needed in CKD |
Glucocorticoids |
Mild-Moderate disease: Start with ≤ 0.5 mg/Kg/day with gradual tapering Severe/Organ-threatening disease: Consider IV MP pulses 250-1000 mg/day for 1-3 days - Continue with PO 0.5-0.7 mg/Kg/day with tapering All circumstances: Avoid starting with 1 mg/Kg/day oral prednisone - Keep maintenance prednisone dose at ≤ 7.5 mg/day |
No |
Hydroxychloroquine |
≤ 5 mg/Kg/day (usually 300-400 mg/day) In patients in remission, consider tapering to 200 mg/day |
Yes |
Methotrexate |
10-25 mg/week in 1-2 doses |
Yes |
Azathioprine |
2-3 mg/Kg/day in 2-3 doses In patients in remission, consider tapering to < 2 mg/day |
Yes |
Mycophenolate mofetil |
Severe/Organ-threatening disease or “Induction” therapy in LN: 3 g/day in 2 doses Mild-Moderate disease or “Maintenance therapy” in LN: 1-2 g/day in 2 doses |
Yes |
Cyclophosphamide |
“Induction” therapy in LN: IV 500 mg on weeks 0, 2, 4, 6, 8 and 10 (Euro-Lupus regimen) Organ- or life-threatening disease: IV 0.75-1 g/m2 BSA/month for 6 months (NIH regimen) - Avoid continuation after this period |
Yes |
Cyclosporine A |
1-3 mg/Kg/day or 100-400 mg/day in 2 doses |
Avoid overall |
Tacrolimus |
0.05 to 0.1 mg/Kg/day or 2-4 mg/day in 2 doses - Titrate to target blood concentration 4-6 ng/ml 12 hours after dose |
Yes |
Intravenous immunoglobulin |
1 g/Kg/day for 1-2 days |
No |
Rituximab |
1000 mg on days 1 and 15 - re-administration every 6 months or “on-demand” |
No |
Belimumab |
IV: 10 mg/Kg on weeks 0, 2, 4, then every 4 weeks SC: 200 mg weekly |
No |
IV: Intravenous; MP: Methylprednizolone; PO: Per os; LN: Lupus nephritis; BSA: Body surface area; NIH: National Institutes of Health; SC: Subcutaneous
【参考文献】
Fanouriakis A, et al. Ann Rheum Dis. 2019 Jun;78(6):736-745. 2019 update of the EULAR recommendations for the management of systemic lupus erythematosus.
どれを使う?~SLEの活動性評価~
SLEの活動性の評価方法は複数あります。そのどれも優劣があります。
今回は様々な活動性評価方法を比較してみます。
【改訂】
第2版: 2019-11-13(青字部分)
【ポイント】
・再燃を評価できるのはPGA、BILAG、SELENA-SLEDAI
・主観的な評価項目が含まれるのはPGA、BILAG、SLAM(-R)、ECLAM
・SELENA-SLEDAIのみ過去10日以内、BILAG、SLAM(-R)、SELENA-SLEDAIは1か月以内の各種項目の評価
・血清学的活動性マーカーが含まれるのはSELENA-SLEDAI、ECLAM
・SRIは3つの評価方法を利点を組み合わせた評価方法だが、臨床で使用するには不便
・現時点でSLEの活動性の評価に適した指標はないが、総合評価したSLEDAIや臓器ごとに評価したBILAG、それらを組み合わせたSRIが有効かもしれない
こちらもご覧ください。
【SLE評価法の3つの大きなカテゴリー】
①Global measures(総合的に評価する指標)
・SLEDAI, SLEDAI-2K, SELENA-SLEDAI
・SLAM, SLAM-R
・ECLAM
②Organ specific indices(臓器ごとに評価する指標)
・BILAG, BILAG2004
・CLASI
・Renal activity score
③Patient-reported outcome
・SF-36
・SSC
・Lupus Pro
《Physician Global Assessment: PGA》
・医師による疾患活動性の評価
・0~3点の3段階に分けて、医師が評価した箇所に印をつける
・ベースラインからの0.3点以上の増加は疾患活動性の悪化を示唆する
・欠点は評価する医師間で点数が変わる可能性があること
・正確性や信頼性、再現性を保つためには医師の判断に影響を与え得るその他のスコア(SELENA-SLEDAI、BILAGなど)をつける前にPGAを付けるべき
《The British Isles Lupus Assessment Group: BILAG》
・1988年にイギリスより提唱された活動性評価項目
・過去1か月以内の8種類の臓器病変について86項目を評価
・いずれの臓器もA~Eの5段階で重症度が評価される
・A(最も活動的)、B(中等度の活動性)、C(軽度の活動性)、D(安定)、E(今まで認めない)
・さらにA=9点、B=3点、C=1点、D=0点、E=0点と点数化
・最大点数は72点(BILAG-1988)、81点(BILAG-2004)
〈利点〉
・各項目の有無だけでなく、その項目が2か月前と比較して①新規のものか、②悪化しているか、③改善しているか、④今まで存在しないのかを評価できる
→再燃を評価できる
・1988年の報告当初は眼病変と消化器病変は含まれていなかったが、2004年に改訂(BILAG-2004)されてから含まれるようになった
〈欠点〉
・評価項目が多いため、時間を要する、外来診療に向かない
・主観的な評価項目が含まれる(倦怠感)
・血清学的活動性マーカーは含まれない
・過去1か月との変化率に重きを置くため、同じ活動性でも過去との変化率が変わる可能性がある
《The Systemic Lupus Activity Measure: SLAM》
・1989年に初めて報告され、2001年にSLAM-Rに改訂された
→SLAM-Rでは評価の難しい強膜炎、心膜炎、肺臓炎が削除された
・過去4週間の活動性を評価する
・31項目、最大84点
〈利点〉
・SLEDAIよりも広くSLE病態を網羅している
・疲労度なども評価できる
〈欠点〉
・SLEDAIやECLAMと比べて血清学的活動性マーカーが評価項目に含まれない
・BIRAGやELCAM同様、主観的な項目(倦怠感など)が含まれる
・レイノー現象や血圧など活動性と関係の薄い項目が多い
→これらの項目もウエイトが重要臓器病変と同程度
《The Systemic Lupus Erythematosus Disease Activity Index: SLEDAI》
・1992年に米国とカナダから報告され、2000年に改訂された(SLEDAI-2k)
・24項目について評価する
・合計点数は0~105点
・活動性なし(SLEDAI=0)、低疾患活動性(SLEDAI=1~5)、中等度疾患活動性(SLEDAI=6~10)、高疾患活動性(SLEDAI=11~19)、非常に高い疾患活動性(SLEDAI=20以上)
・SLEDAIスコアの増加>3を“再燃”、スコア減少>3を“改善”、スコアの±1~3の変化を“持続的に活動性を有する"、0を“寛解”と定義
〈利点〉
・臨床で容易に用いやすい
・血清学的マーカーである抗ds-DNA抗体や補体価を含むのが特徴
・レトロスペクティブな研究でも使用可能
〈欠点〉
・蛋白尿、皮疹、脱毛、粘膜病変に関しては新規または再燃した場合はカウントできるが、慢性的に持続するものはカウントできない
・どのバージョンでも軽度な改善や増悪は特定できない
・過去10日以内の疾患活動性を評価するが、それ以前から出現し持続あるいは悪化している症状や徴候については評価対象に含まれない点が問題
・各項目の評価がある・なしのみで重症度を反映しない
・臓器病変によって点数に偏りがある(CNSループス、ループス頭痛に点数が偏り、ループス腎炎や血球異常は点数が低くなりがち、膿尿や血尿も活動的なくても4点)
・腸炎、溶血性貧血、肺胞出血、肺高血圧症、横断性脊髄炎は評価対象外
《SELENA-SLEDAI》
・2005年に報告された
・過去10日以内の9臓器、24項目について評価
・合計点数は0~105点
〈利点〉
・皮疹、脱毛、粘膜病変が慢性的に持続するものでも評価できるよう改良
・蛋白尿について新規発症だけでなく、再燃・悪化を含めるために>0.5g/日の増加を項目に含めている
・再燃が細かく定義されている(Severe, mild ore moderate)
・主観的な評価項目が含まれない
〈欠点〉
・痙攣を加齢に伴う不可逆性の中枢神経障害によるものを除き、視覚障害については強膜炎、上強膜炎を含め、中枢神経障害についてはめまいを含めている、脳血管障害については高血圧性のものを除外している
・臓器病変によって点数に偏りがある(CNSループス、ループス頭痛に点数が偏り、ループス腎炎や血球異常は点数が低くなりがち)
《SLEDAI, SLEDAI-2K, SELENA-SLEDAIの比較》
《The European Consensus Lupus Activity Measurement: ECLAM》
・1992年に初めて報告された
・1か月以内の15の臨床項目と血清学的項目をそれぞれ有無の二択で評価
・合計点数は0~10点
・他の評価項目との相関係数は0.63~0.92と中等度から高度の相関を示す
〈利点〉
・Pediatric versionがある
・大規模の実際の患者を用いた研究から作られた
・レトロスペクティブな研究でも使用可能
・SLEDAIになかった腸炎、溶血性貧血、肺病変が評価可能
・新規腎症、皮膚症状は、新規 or 悪化時に+2点と出来る
〈欠点〉
・関節痛や倦怠感など主観的な項目が含まれる
・再燃を評価できない
・各臓器病変の重症度は評価できない
・肺高血圧症、横断性脊髄炎あ評価対象外
・腎症のウエイトが0.5点と倦怠感と同じ(臓器の重みづけに疑問あり)
《Systemic Lupus Erythematosus Responder Index: SRI》
・PGAとSELENA-SLEDAIとBILAGを合算したもの
・SELENA-SLEDAIが全般的な疾患の改善をカバーし、BILAGが臓器特異的な疾患の増悪、改善をカバー、PGAは二つの方法の保険
・改善の定義は以下、これら3つすべて満たすものが『レスポンダー』
①SELENA-SLEDAIがベースよりも4点以上改善
②PGAの悪化がない(0.3点以上の増加
③BILAGでカテゴリーAの悪化臓器がない、カテゴリーBの悪化臓器が2つ以上ない
・SRIから抗ds-DNA抗体、低補体(C3/C4)を除いたmodified-SRIがより有効
・この指標を用いたおかげで臨床試験でベンリスタの有効性が示された
〈利点〉
・3つの評価方法の利点を組み合わせているため、他の評価方法よりも優位
〈欠点〉
・3つの評価項目をすべて評価しなければならないため、時間がかかる
・SLEDAIの弱点が出やすい
・BILAGの欠点である経過途中での関節炎や一過性の蛋白尿(>0.5g/日)、膿尿(WBC>5/hpf)、血尿(RBC>5/hpf)などで容易に再燃されやすい
・血球減少中心の病態には点数が低くなりがちで不向き
・SLEDAIの非常に高い患者では4点の改善は比較的容易であり、BILAGとPGAの悪化なければ、活動性が実際あっても寛解達成となってしまう
《各評価項目の比較》
《Systemic Lupus International Collaborating Clinics Damage Index: SDI》
・SLE発症後の不可逆的な臓器障害の発生を評価
・厳密には活動性の評価ではない
・12臓器、41項目を評価、少なくとも6か月間存在する障害臓器を評価する
・スコアは全て1点
・少なくとも6か月以上間隔を空けて反復して認められた場合にはスコアを2とする
・同一病変はスコア2としない
・スコアの合計が患者の障害度、最大47点
〈利点〉
・点数が予後不良や死亡率の増加に関連
【参考文献】
・Luijten KM, et al. Autoimmun Rev. 2012 Mar;11(5):326-9. The Systemic Lupus Erythematosus Responder Index (SRI); a new SLE disease activity assessment.
・Lam GK, et al. Clin Exp Rheumatol. 2005 Sep-Oct;23(5 Suppl 39):S120-32. Assessment of systemic lupus erythematosus.
・天野浩文, リウマチ科, 43(6): 585-592, 2010
・図はhttps://gskpro.com/ja-jp/disease-info/sle/score/#link06より引用
”Vesperの呪い” ~夜間に増悪する腰痛の鑑別~
担当ではありませんでしたが、先日の当直中、肺炎で入院中、夜間に悪化する腰部から両下肢の疼痛を訴える患者さんの診察依頼がありました。腰部脊柱管狭窄症の既往があり、診察では軽度うっ血性心不全の兆候がありました。
調べてみると”Vasperの呪い”という現象があるそうです。
《Vasperの呪い》
右心不全があると臥位で脊柱管の圧が上がり、腰部脊柱管狭窄症の症状が悪化するというものです。
→心不全の治療で改善すると…意外と見逃しているかもしれません…
《機序》
①右心のコンプライアンスが減少
②静脈のボリュームが増加
③傍脊椎のバトソン静脈叢での圧が上昇
④脊柱管狭窄症症状が悪化する
"Vasperの呪い"は右心のコンプライアンスが低下する病態であればCOPDでも起こり得るとのこと、また臥床だけでもバトソン静脈叢の圧が上がるので、右心不全がなくとも何らかの原因で臥床になった方で腰痛が起こる場合は考えても良いかもしれません。
※ちなみにバトソン静脈叢とは、以下の通り椎体周囲の静脈叢を言います。
→弁構造がないため、うっ滞や逆流がしやすく、感染や転移の経路となり得ます。
【参考文献】
LaBan MM, et al. Am J Phys Med Rehabil. 1988 Aug;67(4):155-60. "Night pain associated with diminished cardiopulmonary compliance. A concomitant of lumbar spinal stenosis and degenerative spondylolisthesis."
手足が痺れる多発神経障害・ポリニューロパチーの鑑別
病棟でも外来でも手足が痺れる患者さんは少なくありません。
今回は多発神経障害(ポリニューロパチー)の考え方をまとめてみました。
【ポイント】
・多発神経障害(ポリニューロパチー)は意外と多い
・手袋靴下型の神経障害では多発神経障害を疑う
・症状は神経の長さに依存することが多く、つま先から始まる
・手の症状は下腿の症状が膝まで達したら起こる
・多発神経障害を疑った時には症状と身体所見から大径線維障害か小径線維障害か区別する
・ 大径線維障害では触覚・位置覚・振動覚の障害が出る、小径線維障害では温痛覚障害が出る
・小径線維障害では灼熱感のような疼痛が特徴的
・神経伝導検査では大径線維障害のみ異常となる
・異常となるパターンは軸索障害が最も多い
・多発神経障害の原因で最も多いのは糖尿病で多くて半数を占める、次いでアルコール性など(ビタミンB群欠乏も多いという報告あり)
《多発神経障害の疫学》
・ポリニューロパチーは一般人口では2-3%, 55歳以上では8%以上の有病率があると言われております(Lancet. 2004 Jun 26;363(9427):2151-61.)
《多発神経障害の特徴》
・どんな患者さんでポリニューロパチーを疑うかというと
以下のように神経障害が左右対称性で手袋靴下型の場合に考えます
・一般に症状は長い神経ほど早く発症(length-dependent)しますので、両下腿のつま先から発症します
・両上肢(特に手指)までの神経の長さはおおよそ両膝までの神経の長さと等しいため、両上肢の痺れは、下腿の痺れが膝に達してから発症します(2)
・多発神経障害はさらに神経の太さにより、大径線維ニューロパチー、小径線維ニューロパチーに分けて考えるとわかりやすいです
・運動神経は大径線維に分類される
・感覚神経では触覚/振動覚/位置覚は大径線維に分類され、
温痛覚/自律神経は小径線維に分類されます
大径線維と小径線維の神経障害は以下の通り鑑別します
・多くの場合は問診と身体所見である程度どちららしいか目星をつけます
・疾患によっては大径線維障害と小径線維障害が混在することがあります
・小径線維の神経障害の場合, 痛覚を司るため, “焼けるような痛み”を訴える患者さんが特徴的です
・神経伝導検査で脱髄や軸索障害などの障害パターンを示すのは大径線維のみということがポイントです
・神経伝導検査が正常であっても小径線維の神経障害は否定できません
以下に多発神経障害のアルゴリズムをお示しします
・神経伝導検査で軸索障害または脱髄所見があれば大径線維ニューロパチーを疑い、正常であれば小径線維ニューロパチーを疑います、小径線維ニューロパチーの診断には皮膚生検で小径神経線維が消退していることを確認することが重要です
・なお、皮膚生検の診断率は24-94%と言われております
大径線維と小径線維に分けるメリットはそれぞれで若干鑑別が変わるためです
《多発神経障害の鑑別(1)》
・上記にお示ししている通り、多発神経障害は多くの場合は軸索障害を示していることが多いです、これは神経伝導検査で検出できる障害であるとも言えます
一方、小径線維ニューロパチーの鑑別は以下の通りになります
《小径線維ニューロパチーの鑑別(2)》
・小径線維ニューロパチーの場合、特発性が半数と言われております
・また糖尿病は大径線維ニューロパチーも起こしますが、小径線維ニューロパチーの3-5割を占める重要な疾患です
・興味深いのは糖尿病の前段階である耐糖能異常の状態でも小径線維ニューロパチーが起こりえるということです
・さらに高トリグリセリド血症でも糖尿病と関係なく、小径線維が障害されるそうです
”こんなに多くは覚えられないよ!”という方には以下の2つのカテゴリーの暗記をお勧めします
《多発神経障害の検査》
神経伝導検査で障害されている神経と障害パターンがある程度わかったら追加検査を実施します
【参考文献】
(1) Azhary H, et al. Am Fam Physician. 2010 Apr 1;81(7):887-92. "Peripheral neuropathy: differential diagnosis and management.“
(2) Terkelsen AJ, et al. Lancet Neurol. 2017 Nov;16(11):934-944. "The diagnostic challenge of small fibre neuropathy: clinical presentations, evaluations, and causes"
LDHが異常に高い時に考えること
LDHが時々高いことを見かけますが、以下の論文ではLDHが異常高値である入院患者に着目し、その原因疾患をまとめたものです。
LDHが高値となるのは以下のスライドに示す通り、様々な疾患がありますが、
カットオフ値を800IU/Lと設定した際に、鑑別に挙がる疾患は心血管疾患、固形癌、肝転移、血液疾患、肺炎となります。カットオフ値を800IU/Lとした理由は書かれておりませんでした。
【参考文献】
(1) Erez A, et al. Isr Med Assoc J. 2014 Jul;16(7):439-43. Diagnostic and Prognostic Value of Very High Serum Lactate Dehydrogenase in Admitted Medical Patients