リウマチ膠原病徒然日記

リウマチ膠原病疾患に関して日々疑問になったことをまとめたものです。

後腹膜線維症

"Idiopathic retroperitoneal fibrosis and its overlap with IgG4-related disease."

Rossi GM et al. Intern Emerg Med. 2017 Apr;12(3):287-299.

 

後腹膜線維症についてまとめてみました。この疾患はほんとに鑑別が難しいです。この論文で特に炎症性大動脈瘤、大動脈周囲炎などの用語の使い分けがよくわかりました。 

 

特発性後腹膜線維症(Idiopathic retroperitoneal fibrosis:IRF)

【疾病分類学

・後腹膜線維症は大動脈、腸骨動脈を包む線維組織で、尿管を包み、閉塞することが特徴的

・大動脈壁(特に外膜)単独を含むこともあるし、他の膜を含むこともある、大動脈拡張を含むこともある

・ここが重要だが、特発性後腹膜線維症、炎症性腹部大動脈瘤、傍大動脈瘤性後腹膜線維症は臨床的には連続する病態であり、慢性大動脈周囲炎にまとめられる

・後腹膜線維症は特発性と二次性に分けられる

・特発性はIgG4関連とIgG4非関連に分けられる

・二次性の鑑別は以下

 

《二次性後腹膜線維症の鑑別》

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※悪性腫瘍にはSarcomaも含まれる

※Erdheim-Chester病は非ランゲルハンス細胞組織球症

 

【疫学】

・年間罹患率は1.3/10万(オランダからの報告)

・平均発症年齢は64歳

・男性優位(男性:女性>3:1)

 

【臨床症状と検査所見】

・閉塞性尿路障害が最も頻度が高い臨床的合併症

・非特異的な症状として倦怠感、食思不振、体重減少などの消耗症状

・他に頻度が高い症状は背部、季肋部、腹痛(便秘を伴うことも)、精巣痛

・精巣静脈が巻き込まれると陰嚢水腫や精巣静脈流が起こる

・稀な症状としては射精障害、勃起障害、頻回の血尿、排尿障害など

・検査所見としては炎症マーカ上昇が一般的だが、発症の指標となる上、寛解と共に低下するが、再発に同期するわけではない

・急性期の炎症マーカが高い場合は症状も強いが、治療への反応性を規定するものではない

 

【腎合併症】

・両側尿管閉塞が起こった場合は急性腎不全を起こし得る

・1/3の患者は水腎症を来さず腎低形成または萎縮を起こし得る

 

【血管合併症】

・特発性後腹膜線維症(IRF)は腎血管を圧迫する可能性がある

・腎静脈が圧迫されれば腎梗塞を起こす(±血栓症)、ゆっくり圧迫されれば側副血行路ができる

・下大静脈圧排症候群、DVT、肺塞栓を起こすことも

新規の高血圧または既存の高血圧が悪化することはIRFを疑うサインで1/3の患者で見られる

・腎動脈圧迫による腎血管性高血圧症は稀

・腹部・胸部大動脈瘤と同時に認めることもある

・腸骨動脈を圧迫して跛行を起こすことは稀

 

【性器と腹部合併症】

・精巣静脈を圧迫すると精巣静脈瘤、陰嚢水腫を起こし、精巣痛を起こすことがある

・便秘も頻回に起こる

・腸管膜、小腸、十二指腸、大腸を含むと重篤な症状を起こしやすい

・稀だが、小腸虚血は重要な合併症の一つ

 

【画像】

超音波

・下位腰椎、仙骨岬前方の低エコー域

 

CT

・大動脈周囲の辺縁不整の境界明瞭な腫瘤

・腎動脈から腸骨動脈まで認める

・より頭側、十二指腸、腎盂、腎を含むことがあるが、この場合、必ず悪性腫瘍を除外する

線維組織のCT吸収値は大体、腸腰筋と同じくらい

・造影した場合、早期には造影効果が強く、晩期には造影効果が乏しい

・その他、水腎症やDVT、腎動脈病変を認めることも

・1/4に線維性腫瘍の近傍に1cm未満のリンパ節腫大を認めることがある

・大動脈や下大静脈の後方のリンパ節がそれらの血管の前方にまで腫脹してきた場合、悪性腫瘍を疑う

 

MRI

・CTよりもガドリニウム造影しなくてもコントラストがはっきりしている

・T1低信号、T2で様々な信号、活動性が高い場合はT2ガドリニウム造影で造影される

寛解になった場合はガドリニウム造影の造影効果は認めなくなる

 

核医学

・活動性を評価できるため、診断にもフォローアップにも有用(CRPよりも有用)

・活動性がない場合は免疫抑制薬の利益は得られない

 

【組織学】

・細胞外マトリックスI型が沈着している

・リンパ球、形質細胞、マクロファージを含む炎症像を認める

・結節性の集積では胚中心のように中心部にB細胞、周辺にCD4陽性T細胞が認めあれる

・好中球や肉芽は稀

・IgG4陽性形質細胞がIgG陽性形質細胞の40%以上の時や、花むしろ構造の線維化、閉塞性静脈炎が併存する時、IgG4関連疾患の組織クライテリアを満たし、IgG4関連疾患と診断出来る

 

【病因】

※以下別の論文(J Am Soc Nephrol 27:1880-1889,2016.)からの抜粋です

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アスベストやたばこなどの環境暴露とHLA II型(HLA-DRB1*03)などの遺伝的要因が関係する

・この特定の遺伝子型が発現していると免疫細胞が自己抗原に対して活性化した状態(antigen-driven)となる

・自己免疫を発症させる自己抗原は特定できていないが、抗原提示細胞がそれらの抗原を大動脈壁内または周囲の後腹膜でCD4陽性T細胞に提示する

・CD4陽性T細胞はIL-6を分泌し、B細胞と線維芽細胞を活性化させる

・CD4陽性T細胞はあらにIL4、IL-10、IL-13などのTh2型サイトカインを分泌し、B細胞を形質細胞に分化させる

・この過程でIgG4優位の形質細胞になる

・リンパ球はeotaxin-1を分泌し、好酸球と肥満細胞が動員される、これらの分泌物がさらに線維芽細胞を活性化させる

・線維芽細胞は活性化すると筋線維芽細胞となり、コラーゲンを分泌する

・これが線維症を起こす機序と考えられている

 

【診断】

・基本的に除外診断(二次性の除外をする)

・閉塞性尿路障害がある場合は積極的に疑い、画像診断(エコー、CT、MRI)を行う

・生検が次に大事だが、常に免疫抑制薬を開始する前に二次性を意識すること

・特に悪性腫瘍と感染症の除外が大事

・筆者はHBVHCVHIV、梅毒、血培、腫瘍マーカを検査していると

・腎周囲の病変がある場合はErdheim-Chester病を強く疑い、骨シンチを行う

 

【関連する疾患】

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・IRFは大きく2つの疾患グループに区別される、線維炎症性疾患と自己免疫介在性疾患

・最も関連するのは橋本病、併存するだけでなく、経過中に25%が発症する

・ANCA関連血管炎、SLE、膜性腎症、関節リウマチ、強直性脊椎炎、乾癬も関連する

・線維炎症性疾患にはRiedel甲状腺炎、硬化性膵炎・胆管炎、硬化性唾液腺炎・涙腺炎、眼窩偽腫瘍、硬化性縦隔炎が含まれ、これらはIgG4関連疾患と定義された

・関連疾患を検索するために、ルーチンでANCA、ANA、補体価、C3、C4、甲状腺自己抗体を測定することを推奨される

 

【治療と予後】

・筆者は一般的にFDG-PETでのSUVを治療の指標としている様子

・治療の第一目標は尿路閉塞の解除

・これに対しては内科的な治療が不成功であったとき、保存療法が困難であったとき、外科的な処置を行う

・尿路閉塞がない場合や軽症の場合、腎機能障害が兄場合、免疫抑制療法が第一選択

・中等度から重度の腎機能障害がある場合は尿管ドレナージが第一選択でその後免疫抑制療法を行う

 

内科的治療

・免疫抑制療法の第一選択はコルチコステロイド0.75-1mg/kg/dayで徐々に6-9か月以内に5-7.5mg/dayに減量し中止する

寛解の基準は水腎症、症状の改善、炎症マーカの正常化、腫瘤の消退

・コルチコステロイドを使用すると第1週目から腫瘤が消退する

ステロイド単独では5-25%に治療失敗あり

・Steroid Sparing drugとしてはミコフェノール酸モフェチル、メトトレキサート、アザチオプリン、シクロホスファミドなどが挙げられるが症例報告レベル

・Steroid Sparing drugが入った場合でも少量のステロイドは継続する

・Steroid Sparing drugの追加でも効果不十分な場合、リツキシマブかトシリズマブを使用するが、効果は不十分

・何もかもが効果ない時、尿管剥離術の適応

・IRFでは70%に再燃あり

・臨床症状、炎症マーカ、エコー、CT、MRI、FDG-PETなどを駆使する

・再燃しても予後は良好、死亡率は3-7%

・一方で1/3にCKDが起こるが、透析または腎移植なが必要な末期腎不全が起こる可能性は稀

 

 

外科的治療

・尿管ステント留置(double J型)を留置することがあるが感染のリスクのため、6か月ごとに交感する

・尿管ステント留置が困難な場合、経皮腎瘻造設術を行う

・経皮腎瘻造設術は尿管ステントよりも感染リスクが高いと言われているが、最近は同等

・両者が失敗したら尿管剥離術を行う

 

【IgG4関連の後腹膜線維症】

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・IgG4関連後腹膜線維症は30-59%

・最初で最も全体的に出現するのは1型自己免疫性膵炎(膵尾部が腫大する)、その他、唾液腺炎、涙腺炎、リンパ節、硬化性胆管炎

・腎、肺、後腹膜病変は稀

 

ちなみにIgG4関連疾患の難病情報センターの診断クライテリアは下記

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※血清IgG4値が高値でも臓器病変がない場合、組織所見が典型的なものでなければ診断してはいけない

 

《IgG4関連と非関連後腹膜線維症の比較》

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・IgG4関連は高齢、男性に多い

・IgG4関連で後腹膜以外の多臓器病変が多い

・IgG4関連でCTで大動脈石灰化が多い

・IgG4関連で抗核抗体が高値で背部や腹部症状が少ない

・IgG4関連で再燃率が高い