IgG4関連疾患のフェノタイプ
Wallace ZS. et al. Ann Rheum Dis 2019;78:406-412. Clinical phenotypes of IgG4-related disease: an analysis of two international cross-sectional cohorts.
IgG4関連疾患は全身の臓器を侵す免疫介在性疾患で、主に唾液腺、膵胆管、リンパ節、肺、腎、後腹膜を侵します。
全身を侵すため、症状が多彩で分類ができないかと思われておりましたが、この研究では493名のIgG患者を対象に症状により4つのフェノタイプに分けられるというスタディです。これはわかりやすい。これからはIgG4関連疾患を疑う患者がいれば、どのタイプなのかという議論になりそうですね。
【ポイント】
・IgG4関連疾患は4つのタイプに分けられる
-Group1(膵肝胆型):31%
-Group2(後腹膜+大動脈型):24%
-Group3(頭頚部限局型):24%
-Group4(ミクリッツ症候群+全身型):22%
・頭頚部限局型は女性に多く、他は男性に多い
・ミクリッツ症候群+全身型は血清IgG4値が高い
・アジア人はそれ以外の人種と比べて発症時、診断時年齢が高く(発症時61.2歳vs55.1歳、診断時62.6歳vs57.2歳)、血清IgG4値が高く(666mg/dl vs 240mg/dl)、頭頚部病変が多い(67.8%vs42.8%)
・アジア人ではそれ以外の人種と比べて診断までの期間は短い(1.4年vs2.2年)
・Group3(頭頚部限局型)が圧倒的に女性が多い(76%)
・Group3(頭頚部限局型)は診断時での平均年齢が若い(55歳)が、診断までに平均期間が長い(2.3年)
・Group4(ミクリッツ症候群+全身型)は血清IgG4値の中央値が高い(1170mg/dl)が、Group2(後腹膜+大動脈型)は血清IgG4値の中央値が低い(178mg/dl)
《結果》
・322名(65.3%)が男性、208名(42.2%)がアジア人、105名(21.3%)が日本人
・発症時と診断時の平均年齢はそれぞれ57.7歳、59.5歳
・診断までに要した平均期間は1.8年
・IgG4値の上昇は388(78.7%)に見られた
・平均罹患臓器は2.9
・最も罹患された臓器は膵肝胆系(235名、47.7%)、次いで唾液腺(186名、37.7%)
・425名(85.4%)が少なくとも1回生検されたが特徴的な花筵状線維化は195名(39.6%)しか認められなかった
・男性は女性よりも発症時、診断時の年齢が高く(発症時59.9歳 vs 53.4歳、診断時61.7歳 vs 55.4歳)、頭頚部病変が少ない(46.9% vs 65.5%)、後腹膜線維症は男性で多い(19.3% vs 9.4%)
・アジア人はそれ以外の人種と比べて発症時、診断時年齢が高く(発症時61.2歳 vs 55.1歳、診断時62.6歳 vs 57.2歳)、血清IgG4値が高く(666mg/dl vs 240mg/dl)、頭頚部病変が多い(67.8% vs 42.8%)
・アジア人ではそれ以外の人種と比べて診断までの期間は短い(1.4年 vs 2.2年)
《4つのフェノタイプ》
・IgG4関連疾患は4つのタイプに分けられる
-Group1(膵肝胆型):31%
-Group2(後腹膜+大動脈型):24%
-Group3(頭頚部限局型):24%
-Group4(ミクリッツ症候群+全身型):22%
・Group3とくらべてGroup4の方が耳下腺病変が多い(22% vs 49%)
・Group3はGroup4よりも眼窩病変が多い(22% vs <1%)
・平均罹患臓器はGroup4が他よりも多い(G4:5.2箇所, G1:2.1箇所, G2:2.1箇所, G3:2.7箇所)
各Groupの罹患臓器を頻度別に可視化したのが以下になります
これはわかりやすい!!4つのフェノタイプで他の臓器症状がどれくらいの頻度なのかが色と四角の大きさが一目瞭然です。
各Groupを比較したものです
・Group3(頭頚部限局型)が圧倒的に女性が多い(76%)
・アジア人はGroup3(頭頚部限局型, 67%), Group4(ミクリッツ症候群+全身型, 52%)が多い
・Group3(頭頚部限局型)は診断時での平均年齢が若い(55歳)が、診断までに平均期間が長い(2.3年)
・Group1(膵肝胆型)は診断までの平均期間が一番短い(1年)
・Group4(ミクリッツ症候群+全身型)は血清IgG4値の中央値が高い(1170mg/dl)
・Group2(後腹膜線維)は血清IgG4値の中央値が低い(178mg/dl)
・コーカサス人は膵肝胆型、後腹膜+大動脈型が多い
《その他》
・ACR/EULARのIgG4関連疾患の分類基準2018年を満たす割合はGroup1が86%、Group2が77%、Group3が84%、Group4が84%
・診断までの時間が長いほど、複数の臓器に病変が生じ、永久的な臓器障害のリスクが高まる
ちなみにACR/EULARのIgG4関連疾患の分類基準2018年は下記をご参照ください。