ステロイドの内服量、期間と感染リスク
Dixon WG. Ann Rheum Dis. 2012 Jul;71(7):1128-33. "Immediate and delayed impact of oral glucocorticoid therapy on risk of serious infection in older patients with rheumatoid arthritis: a nested case-control analysis."
ステロイドは免疫抑制薬の中で最も感染症のリスクを上げると言われております。しかも少量のステロイドでも感染症のリスクが上がると言われております。少し古いですが、2012年に発表された本論文はコホート内症例対照研究という研究手法で、ステロイドの用量と期間による高齢RA患者における重篤な感染症のリスクを評価したものです。
なお、重症感染症は以下の通り規定されています。
①寄生虫感染
③循環器:急性・亜急性感染性心内膜炎
④呼吸器:急性呼吸器感染症、肺炎、インフルエンザ
⑤腎泌尿器:腎盂腎炎、膀胱炎
⑥皮膚軟部組織:皮膚・皮下組織感染症
⑦筋骨格:化膿性関節炎、特定できない感染性関節炎、骨髄炎、骨膜炎
【ポイント】
・ステロイド5mgであれば1か月までは重症感染症リスクは、非使用患者と同等
・5mgでも3か月以上で使用期間が長くなるほど重症感染症のリスクは上がる
・5mgを6か月内服していても中止すれば半年で重症感染症のリスクは非使用患者と同等になる
・ステロイド30mgであっても7日間までであれば重症感染症のリスクは非使用患者と同等
《特徴》
・65歳以上のRA患者16207名の内、重症感染症を罹患した1947名(ケース)と罹患していない9735名のコントロールを比較
・ケースの方がNSAID使用率、家庭医や専門医を受診する率が高く、重症を疑わせます
・またケースの方が合併症を多く有することがわかります
《結果》
見づらいですが…以下に結果をまとめます(→は私の意見です)
①②について
・5mgを7-28日内服している群と内服していない群では重症感染症のリスクはほとんど変わらない
→短期使用する場合でも5mgを1か月までにするべし
③④⑤⑥について
・しかし、5mgでも3か月、6か月、1年、3年と継続して内服していると重症感染症のリスクは漸増していく
→生理的ステロイド量と言われている5mgでも長期間は感染症のリスクですね…
⑦⑧について
・過去に5mgを6か月内服している患者でも6か月前に内服を中止した場合は、感染症のリスクはステロイドを内服していない患者とほぼ同じに下がる
・ステロイド5mgを現在6か月間内服している患者は5mgを過去に6か月内服したことがあり、6か月前に中止した患者よりもリスクは高い
→ステロイド5mg長期内服は割と色んな分野で見かけることがありますが、中止すれば半年でリスクは下がるので、止められるならステロイドはやめたい
⑨について
・ステロイド30mgでも7日までならば、非使用患者と重症感染症のリスクは同等
→喘息や重症肺炎などで使用する短期ステロイドはそれほどリスクはないのでしょうか
⑩⑪⑫について
・ステロイド30mgはステロイド5mgよりも1か月、3か月、6か月内服継続した際の重症感染症のリスクは著明に高い
→ステロイド30mgを3か月、6か月使用する疾患はほとんどないとは思いますが、1か月持続する場合はしっかり感染症予防をすべき
⑬⑭⑮について
・ステロイド30mgを30日内服している患者群とステロイド30mgを30日内服したが14日前、1か月前、3か月前にそれぞれ中止した群を比較したとき、14日前、1か月前に中断しても重症感染症リスクは内服継続群と同等からやや低下するぐらいだが、3か月前に中止した群ではリスクは下がる
→30mg内服していても3か月ほど中止すればリスクは下がる
⑯について
・ステロイド30mgを14日間内服している群と30mgを14日間内服していて1か月前に中止した群では重症感染症のリスクは同等
→ステロイド30mgを2週間内服している群でも、感染症のそれほどリスクは高くない
⑰⑱⑲⑳について
・ステロイド10mgを2年間使用した群と、10mgを2年間内服後、2週間前、1か月前、3か月前、6か月前に中止した群と比較したとき、中止後1か月までは内服継続群と重症感染症のリスクは同等だが、3か月中止するとリスクは下がる
→ステロイド10mgを長期内服していると、3か月ぐらい中止しないと感染症リスクは下がらない
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