リウマチ膠原病徒然日記

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リウマチ膠原病疾患に関して日々疑問になったことを中心にまとめたものです。

【簡易版】抗核抗体の国際分類基準2019

 前回、抗核抗体の国際分類基準について細かくまとめましたが、正直、リウマチ専門医でも、普段見慣れていないと分かりづらいかもしれません。

 

 臨床で忙しい先生方、非リウマチ科医の先生方でも、簡単に理解できるよう表を作成してみました。従来の分類からの変更点についても私見を織り交ぜてまとめたので、ご覧ください。

 

 元はこちらです。


抗体の出現頻度については論文(2)を参考にしました。

 

 

従来の抗核抗体の分類

抗核抗体は従来、

①Homogeneous

②Peripheral(Homogeneousと区別できず、含まれる場合もある)

③Speckled

④Centromere(Discrete speckled)

⑤Nucleolar

の5つに分けられます。

また、厳密にはに対する抗体ではなく、抗細胞質抗体を示す⑥Cytoplasmicも抗核抗体の結果で報告されることがあります。

 

新分類基準の核染色パターン

赤枠は従来の分類、青枠は新規分類、赤字は商業ベースで測定できる項目

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AIH:自己免疫性肝炎、AIM:自己免疫性筋炎、APS:抗リン脂質抗体症候群CD:クローン病CLE:皮膚型エリテマトーデス、DIL:薬剤性ループス、GVHD:移植片対宿主病、HCV:C型肝炎ウイルスJIA:若年性特発性関節炎、LcSSc:限局型全身性強皮症、MCTD:混合性結合組織病、PBC:原発性胆汁性肝硬変、RA:関節リウマチ、SjS:シェーグレン症候群、SLE:全身性エリテマトーデス、SSc:全身性強皮症

 

新分類の注意点と従来の分類からの変更点

●従来通り、Homogeneousパターンは抗ds-DNA抗体と、Centromere(Discrete speckled)パターンはセントロメア抗体と一対一対応と考えて良さそうです。

 

●注目点はSpeckledパターンとNucleolarパターンがかなり細分化されており、かつ、多数の自己抗体が両パターンを示す点です。

 

●残念ながら、日本でこの細かい分類が適応されるのは数年後以降であると思われるため(もしかしたら適応されないかもしれませんが)、SpeckledやNrcleolarパターンとなった際には該当する自己抗体を網羅的に提出するのではなく、臨床的に疑わしい疾患に応じた抗体を提出すべきであると考えます。

 

●従来のPeripheralパターンは抗ds-DNA抗体を示しますが、新分類基準ではこのパターンは消失しております。このパターンはもともとHomogeneousパターンと同様に核が均一に染色され、かつ中でも核の辺縁が強く染色されるパターンを示したものでした。しかし、Homogeneousパターンと区別がつきにくく、結局は同じ抗ds-DNA抗体を示すため、おそらくはHomogeneousパターンと統合されたと考えられます。

 

●抗核抗体の染色結果がSpeckledパターンの場合は大まかにはSLE皮膚筋炎シェーグレン症候群の臨床所見を再検索し、Nucleolarパターンの場合は強皮症の臨床所見を再検索すると良いかもしれません。

 

抗トポイソメラーゼI(以前のScl-70)抗体は従来Speckledパターンとして分類されておりましたが、新分類では特徴的な染色から、新たにAC-29TOPOI-likeパターンとしてSpeckledと区別して分類しております。

 

●従来RNAポリメラーゼIII抗体Nucleolarパターンとされておりましたが、実は抗RNAポリメラーゼIII抗体はAC-5Speckled(Coarse speckled)パターンを示します。Nrcleolarパターンを示すのは研究室でしか測定できない抗RNAポリメラーゼI抗体の方ですが、これが存在するときは常に抗RNAポリメラーゼIII抗体が存在するため、商業ベースで測定できる抗RNAポリメラーゼIII抗体をチェックする事が勧められております。ちなみに抗RNAポリメラーゼI抗体はNucleolarパターンの中でもPunctate nucleolarに細かく分類されております。

 

新分類基準の細胞質染色パターン

赤枠は従来の分類、青枠は新規分類、赤字は商業ベースで測定できる項目

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ACV:アシクロビル、ADPN:後天性脱髄性ポリニューロパチー、AH:アルコール性肝疾患、AIH:自己免疫性肝炎、AIM:自己免疫性筋炎、ARS:アミノアシルtRNA合成酵素AZP:アザチオプリン、CH:慢性肝炎、CLL:慢性リンパ性白血病COPD:慢性閉塞性肺疾患CVD:Collagen vascular disease、GB:神経膠芽腫GPA:多発血管炎性肉芽腫症、HCV:C型肝炎ウイルスHD:橋本病、ICA:特発性小脳性運動失調、IDN:炎症性脱髄性ニューロパチー、IFN:インターフェロンIM:伝染性単核球症IMNM:免疫介在性壊死性ミオパチー、IPE:特発性胸水、IPF:特発性肺線維症、JNC:若年性鼻咽頭癌、LC:肝硬変、LcSSc:限局型全身性強皮症、LN:ループス腎炎、MCTD:混合性結合組織病、MMF:ミコフェノール酸モフェチル、M/S:Motor/Sensory、MTX:メトトレキサート、NF:神経線維腫、NPSLE:神経ループス、PBC:原発性胆汁性肝硬変、PCD:腫瘍随伴小脳変性、PM:多発性関節炎、RA:関節リウマチ、RBV:リバビリンSjS:シェーグレン症候群、SLE:全身性エリテマトーデス、SSc:全身性強皮症

 

新分類の注意点と従来の分類からの変更点

●細胞質染色(Cytoplasmic)パターンは厳密には核に対する抗体ではなく、細胞質に対する抗体を示唆するため、抗核抗体とは言えません。しかし、抗核抗体の間接蛍光抗体法で細胞質の染色も見られるため、従来から報告されます。

●大きな変更点としてはCytoplasmicパターンが細分化されている点です。

Cytoplasmicパターンを見たら、自己免疫性肝炎原発性胆汁性肝硬変皮膚筋炎・多発性筋炎抗ARS抗体症候群中枢神経ループスが多いので、臨床症状を確認し、該当する抗体を提出するようにしましょう。

●検査会社であるSRLの分類では、抗SS-A抗体もCytoplasmicパターンとされておりますが、新分類ではCytoplasmicパターンではなく、AC-4のFine speckledパターンに含まれております。

 

新分類基準の有糸分裂パターン

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DLE:円板状エリテマトーデス、CLL:慢性リンパ性白血病LcSSc:限局型全身性強皮症、PNH:発作性夜間ヘモグロビン尿症、PMR:リウマチ性多発筋痛症、RA:関節リウマチ、RP:レイノー現象、SjS:シェーグレン症候群、SLE:全身性エリテマトーデス、SSc:全身性強皮症、UCTD:特定できない結合組織病

新分類の注意点

●有糸分裂パターン自体、今まで報告されているのを、見たことがありません。新分類では詳細な分類を報告する事が推奨されております。

●商業ベースで測定できるものがないため、日常診療ではあまり気にしなくても良いかもしれません。

 

【参考文献】

(1) Damoiseaux J, et al. Ann Rheum Dis. 2019 Jul; 78 (7): 879-889. "Clinical relevance of HEp-2 indirect immunofluorescent patterns: the International Consensus on ANA patterns (ICAP) perspective."

(2) Agmon-Levin N, et al. Ann Rheum Dis. 2014 Jan; 73 (1): 17-23. "International recommendations for the assessment of autoantibodies to cellular antigens referred to as anti-nuclear antibodies."