リウマチ膠原病徒然日記

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リウマチ膠原病疾患に関して日々疑問になったことを中心にまとめたものです。

クリオピリン関連周期熱症候群(CAPS)の診断基準2017

クリオピリン関連周期熱症候群は、NLRP3(クリオピリンタンパク)の遺伝子に異常があることにより発症する、稀な自己炎症症候群の一つです。

 

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クリオピリンは細胞内に存在する自然免疫系のパターン認識受容体であるNOD様受容体の1つで、病原微生物などに反応してNLRP3-インフラマソームを形成します。

 

形成されたインフラマソーム蛋白複合体はカスパーゼ1を活性化し、カスパーゼ1はIL-1βの前駆体からIL-1βの産生を更新します。これによって炎症が惹起される事となります。

 

クリオピリン関連周期熱症候群では、NLRP3の遺伝子変異により、病原体微生物由来物質などの刺激がなくても、自発的にNLRP3インフラマソーム複合体が活性化し、過剰なIL-1βが産生される事が病態とされています。

 

その診断基準が2017年に提唱されていましたので以下に示します。実はいくつか診断基準があります。

 

クリオピリン関連周期熱症候群の診断基準2017年

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ちなみにこの診断基準の感度は81%、特異度は94%だそうです。

 

※その他、ここには示されていませんが、強膜炎、結膜炎、ブドウ膜炎などもみられることがあります。

 

※この診断基準の問題点は遺伝的検査が含まれていないことです。そのため、実際にCAPSでなくても、そのように診断されてしまう可能性があります。

 

以下に参考として、難病情報センターの診断基準をお示しします。

 

診断基準
以下の①ないし②を満たした患者をクリオピリン関連周期熱症候群と診断する。

NLRP3遺伝子検査は必須検査とする。


①NLRP3遺伝子に疾患関連変異を認める。

②NLRP3遺伝子に疾患関連変異が同定されないが、以下の2項目のいずれも認める
 a) 乳児期発症の持続性の炎症所見
 b) 骨幹端過形成、蕁麻疹様皮疹、中枢神経症

  (うっ血乳頭、髄液細胞増多、感音性難聴のいずれか)のうち2項目を満たす。

診断の手順についての補足
典型的な臨床症状よりクリオピリン関連周期熱症候群を疑い、NLRP3遺伝子検査にて確定診断する。ただし、一部患者にNLRP3疾患関連変異が認められない事が知られており、NLRP3疾患関連変異陰性例でも②を満たす場合はクリオピリン関連周期熱症候群と診断する。なお遺伝子検査はNLRP3モザイク検査まで含めて行う。


【参考文献】

●Jasmin B Kuemmerle-Deschner, et al. Ann Rheum Dis . 2017 Jun;76(6):942-947. "Diagnostic criteria for cryopyrin-associated periodic syndrome (CAPS)"

●小児慢性特定疾患情報センター https://www.shouman.jp/disease/details/06_05_016/

●アバス-リックマン-ピレ 分子細胞免疫学 原著第9版