HCV感染により陽性となる自己抗体たち
C型肝炎患者では、関節リウマチ、血管炎(特にクリオグロブリン血症性血管炎)、Sicca症候群など、多彩な自己免疫性リウマチ性疾患を併存する事は良く知られております。
しかし、自己免疫疾患の症状がなくても、多彩な自己抗体が検出される事も報告されております。例えば、抗核抗体の陽性率は報告にも寄りますが、4~41%と比較的検出されやすいです。
今回ご紹介するのは、C型肝炎で検出される自己抗体を健常者で検出されるものと比較した論文です。
お忙しい方はまとめだけ読んで下されば良いです。
Methods and Materials
●2016年4月14日から2016年7月5日まで。
●HCV IgG陽性血清サンプル100例とHCV IgG陰性血清サンプル100例を用いて抗ENA抗体(可溶性核抗原に対する抗体)を測定した。
●HCV IgG陰性の100サンプルの背景はHIV感染症、急性ウイルスまたは細菌感染症、肝炎または肝疾患、自己免疫性リウマチ性疾患、炎症性疾患、慢性腎臓病などを含む。
※HCV抗体が陽性であるものの、C型肝炎と診断されているわけではない事に注意してください。
※また、抗ENA抗体は血清中に溶解している核抗原に対する抗体であり、主には抗Sm抗体、抗RNP抗体、抗Scl-70抗体、抗Jo-1抗体、抗SS-A抗体、抗SS-B抗体などを指します。
Results
●HCV抗体陽性患者100人のうち14人(14%)も抗ENA抗体が陽性となった。
●上記は陽性となった14人のプロファイルである。
●HCV抗体陽性患者の内、慢性C型肝炎と診断されたのは14人だけだった。
●HCV抗体陽性かつ抗ENA抗体も陽性である患者の14人のうち、慢性C型肝炎と診断されたのは6人(43%)であった。
●HCV RNAはHCV抗体陽性患者100人中80人で実施され、55人(68.8%)で陽性となった。平均コピー数1.27×10[6]
●抗ENA抗体陽性のHCV抗体陽性患者14人中、11人でHCV RNAが実施され、9人(75%)が陽性であった。平均コピー数1.07×10[6]
●HCVジェノタイプは55人のHCV RNA陽性患者のうち25人で実施され、1a型が14人(56%)、1b型が4人(16%)、3型が6人(24%)、1型が1人(4%)であった。
●14人のHCV抗体陽性患者のうち10人が間接蛍光抗体法が陽性となった。
●陽性のパターンは核パターンが5人、核及び細胞質パターンが1人、細胞質パターンが4人であった。力価は1:40から1:160の範囲。
●HCV抗体陽性患者は14%(14/100)が抗ENA抗体陽性となった。
●HCV抗体陰性患者は3人%(3/100)しか陽性とならなかった。
●年齢や性差に有意差はなかった。
HCV抗体陽性患者の自己抗体のパターン
↓この図は重要です。
● HCV抗体陽性患者のうち、抗SS-A抗体、抗ds-DNA抗体が最も陽性となりやすく(4人ずつ、28.6%)、次いで抗RNP抗体及び抗Scl-70抗体が陽性となった(3人ずつ、21.4%)。
●抗セントロメア抗体は1人だけ陽性となっている。
●健常者では抗RNP抗体が2人、抗Scl-70抗体が1人陽性となった。
まとめ
●HCV感染患者ではC型肝炎になっていなくても、健常者よりも自己抗体が陽性となりやすい。
●およそHCV感染患者の14%に抗核抗体が陽性となる。
●ただし、力価は40倍から160倍と低い。
●特異抗体は特に抗SS-A抗体、抗ds-DNA抗体、抗RNP抗体、抗Scl-70抗体は陽性となりやすい。
→HCV感染患者でこれらが陽性となっても臨床症状がなければ慌てないようにしましょう。
【参考文献】
Litwin CM, et al. J Clin Lab Anal. 2018 Mar; 32 (3). "Anti-ENA antibody profiles in patients with hepatitis C virus infection."