再発性多発軟骨炎⑤~診察と検査と鑑別と~
複数の軟骨病変を呈する再発性多発軟骨炎ですが、診察を丁寧に行わなければなりません。今回は診察、必要な追加検査、各軟骨病変の鑑別についてまとめたいと思います。
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再発性多発軟骨炎の診断を確立するためには徹底的な病歴と身体所見が必要です。
《病歴と身体所見》
●耳介軟骨病変:紅斑、圧痛、耳介軟骨変形
※注意点はイラストの赤い部分の耳垂には軟骨がないこと。
●鼻軟骨病変:紅斑、圧痛、鞍鼻
※注意点は鼻の上部は軟骨ではなく、鼻骨であること。
●眼病変:結膜炎、強膜炎、上強膜炎、ブドウ膜炎
※上強膜炎は角膜輪付近に限局した結膜充血と上強膜充血が見られる浅部の炎症
※強膜炎は上強膜炎よりも深部の炎症で、深部の血管の充血が見られる
※両者の鑑別には1000倍希釈したエピネフリン点眼試験が有用で、点眼後充血が取れれば上強膜炎
●前庭蝸牛病変:難聴、耳鳴、めまい
●気管病変:喘鳴、咳嗽、呼吸苦
※喉頭で狭窄を認めればStriderとなる
●関節病変:関節炎
※MCP、PIP、膝、手関節に多い
●肋軟骨病変:前胸部痛
※側胸部には肋軟骨がない事に注意
●その他
・心血管病変(大動脈炎、冠動脈病変、AR、MR)
・腎病変(半月体形成性糸球体腎炎など)
・ANCA関連血管炎の除外目的でしびれ、紫斑などの症状も聴取する。
《初期検査》
血液検査
●白血球数、BUN、Cre、CRP、ESR、補体(CH50、C3、C4)
●除外目的でMPO/PR3-ANCA、抗核抗体
●関節病変がある場合は抗CCP抗体、RFも
●抗II型コラーゲン抗体
・30-50%で陽性となる
・疾患活動性と一致すると言う報告もある
・非特異的で関節リウマチなどの疾患でも陽性
※関節リウマチでは変性した抗II型コラーゲン抗体が検出されるのに対して、再発性多発軟骨炎では未変性抗II型コラーゲン抗体を認める
※これは、未変性の抗II型コラーゲン抗体が再発性多発軟骨炎の発症に関わっている可能性を示唆する
尿検査
・腎病変のスクリーニング
画像検査
●胸部X線
・気管狭窄、気管石灰化、気道狭窄・閉塞に伴う肺炎・無気肺の確認
・心拡大の確認
生理検査
●心電図
・不整脈の確認
《追加検査》
●胸腹部造影CT
●PET-CTまたはGaシンチ
●呼吸機能検査
●気管病変が疑われる場合は4DCT(吸気、呼気での気管の虚脱を見る)
●弁膜症が疑われる場合は心エコー
《組織生検》
●両側の耳介軟骨炎である場合は生検は必ずしも必須ではないが、非典型的な病歴や片側の場合、PSL治療に反応しない場合は生検により確定診断を行う。
●生検では場合によっては真菌や抗酸菌の培養なども追加する。
●浸潤性皮膚疾患や皮膚白血病、皮膚リンパ腫などを除外する。
《コンサルト》
●すべての患者で耳介病変だけでなく、上気道の評価目的で耳鼻科コンサルトすべき。
●眼病変がある場合は眼科コンサルト。
●気管病変がある場合は呼吸器科コンサルト。場合によっては挿管、気管切開の可能性もある。
→多岐にわたる病変であるため、各専門家と協同しながら、診断治療を行っていく。
《鑑別》
【参考文献】
UpToDate『Diagnostic evaluation of relapsing polychondritis』Last update: Jun 16, 2018より一部改変