リウマチ膠原病徒然日記

リウマチ膠原病疾患に関して日々疑問になったことをまとめたものです。

稀だが忘れてはならない脅威~リウマチ性血管炎~

 滑膜炎が主体である関節リウマチに血管炎が生じた場合にリウマチ性血管炎と呼びます。日本では予後の悪さのため、悪性関節リウマチと言われており、難病の指定にもなっております。

 最近、入院患者でリウマチ性血管炎が疑われる患者を担当したので、まとめました。

 

【ポイント】

・長期コントロール不良の重症関節リウマチの合併症の一つにリウマチ性血管炎がある

・日本の悪性関節リウマチは欧米で提唱されているリウマチ性血管炎とはやや異なる病態も含む(難治性や重症の関節リウマチ)

・関節リウマチの治療戦略の向上とともに、リウマチ性血管炎の頻度は下がってきているが、死亡率は相変わらず高いままであるため、早期の認知と治療が必要

・病態は小血管や中血管の血管炎

・罹患臓器は皮膚、神経、心血管、眼が多いが、腎、肺、消化管、中枢神経などは稀

・血管炎の重症度や罹患臓器によって治療を選択する

・グルココルチコイドが第一選択だが、軽症であれば中等量、重症であれば高用量

・その他、重症であればシクロホスファミド、リツキシマブ、血漿交換など

・ヒドロキシクロロキンと低用量アスピリンは予防に有用

・喫煙は唯一の環境因子であるため、禁煙は必須

 

【概要】

・1898年にBannatyneによって初めて報告され、1984年にScottとBaconによって定義された

・日本では悪性関節リウマチと呼ばれているが、欧米ではリウマチ性血管炎と呼ばれる

 →日本の悪性関節リウマチには難治性や重症例の関節リウマチが含まれてしまっているため、厳密に言えば、海外で提唱されているリウマチ性血管炎とは同一の病態を示している訳ではない

・長期、重症、Seropositive(RF、抗CCP抗体が陽性)、コントロール不良の関節リウマチの合併症の一つ

小血管中血管に壊死性または白血球破砕性血管炎を起こす

・様々な生物学的製剤が登場し、関節リウマチがコントロールできるようになってから、リウマチ性血管炎は稀になってきた

・しかし、一度罹患すると、経済学的にも、生命予後的にも不良であるため、早期の認知と治療が必要

 

【病因】

抗内皮細胞抗体

・抗内皮細胞抗体が関節リウマチ患者では15~20%発現するのに対してリウマチ性血管炎患者では約75%に見られる

・これらの抗体は抗体依存性細胞傷害性(ADCC)と抗体依存性補体媒介性細胞傷害性(CDC)に関与する可能性がある

免疫複合体の沈着と補体の活性化

・循環免疫複合体は全ての患者で認められ、リウマチ性血管炎のマーカとなり得る

・特にIgA型免疫複合体は感度が低いが特異的

・IgG型やIgM型免疫複合体は古典的補体経路を介して補体を活性化させるが、IgA型は代替経路を活性化させる

・IgA型免疫複合体はIgG型免疫複合体のように赤血球への結合能がないため、肝臓や脾臓でトラップされず、それら以外の臓器に沈着し、血管炎を起こす可能性がある

・また活動性の関節リウマチ患者とリウマチ性血管炎患者の単球は寛解期の関節リウマチ患者の単球と比べるとIgG型免疫複合体への結合と分解能力が落ちている

・これは補体受容体の発現低下と活性化されたC3bを分解する能力の低下による

・さらにリウマチ性血管炎患者で見られるC1q抗体は免疫複合体の正常な補体オプソニン効果を阻害する

TNFα

・TNFαや他のサイトカインレベルが上昇すると内皮細胞が白血球接着分子を発現し、循環白血球が結合して活性化しやすくなる

・TNFα自体が血管透過性を亢進させ、一酸化窒素シンターゼ活性の起こす活性化内皮細胞フェノタイプを誘導する

・TNF活性化内皮細胞によって産生された一酸化窒素は活性酸素と相互作用して内皮細胞を傷害する

細胞接着分子

・ICAM-1、E-セレクチン、TNFαの著明な発現が活動性リウマチ性血管炎に多く見られるが血管炎を伴わない関節リウマチでは見られない

細胞性免疫

・健常者では見られないCD4+CD28欠損 T細胞が血管障害に関係する

・この細胞は細胞傷害性Tリンパ球やNK細胞と同じ機能を持ち、大量のインターフェロンγを放出する、また細胞溶解性顆粒を放出する

・血管炎以外にも関節外症状を持つ患者ではCD4+CD28欠損 T細胞が炎症部位で高頻度で見られる

・グランザイムBを発現しCD25(IL-2受容体)・PD1陰性のCD8陽性T細胞もCD4陽性T細胞よりも血管壁に浸潤している

遺伝子

 

・遺伝子的解析ではHLA-DRB1、HLA-C*03、KIR2DS2遺伝子が発症に関連している

・HLA-DRB1(*0401/*0401, *0401/*0404, *0101/*0401)がリウマチ性血管炎と関連している

・HLA-DRB1*04を持っていない患者ではHLA-C3が関与する

KIR2DS2(killer cell immunoglobulin-like receptor)遺伝子がリウマチ性血管炎で健常者、血管炎のない関節リウマチ患者と比べて多くみられる

・HLA-C ligandと共に、この遺伝子はCD4+CD28欠損T細胞による血管障害に重要な役を担っている

 

環境因子

喫煙が最も発症に関連する

喫煙はB細胞やT細胞を介して動脈内膜の障害、内皮細胞の機能不全、細胞成長を調整するp53遺伝子を変異させる可能性がある

 

その他

グルココルチコイドウイルス感染がトリガーとして考えられているが、根拠は薄い 

 

【疫学】

・NORVASCのデータより、罹患率は1988~2000年では9.1人/100万であったが、2001-2010年では3.9人/100万と低下傾向である

・別の報告より、1985~1994年のコホートと比較して1995~2007年のコホートでは他の関節外症状は減少していないが、リウマチ性血管炎だけが低下している(3.6% vs 0.6%)

 

・日本では平成28年度の指定難病受給者証を持っている患者は6067名で関節リウマチ患者の0.6%→ただし、この難病申請のための診断基準は緩く、結構な確率で難病登録できてしまうため、正しい数であるとは限らない

 

・近年リウマチ性血管炎が減少傾向であるが、これは関節リウマチの治療が強化されたこと、禁煙が進んだことによる

・リウマチ性血管炎の発症年齢の中央値は63歳

・リウマチ性血管炎を起こす関節リウマチの平均罹患期間は10.8~15.6年

男性関節外症状強力な治療が必要な重症関節リウマチに多い→日本では女性

・Mayo Clinicの報告ではリウマチ性血管炎患者の1/3が喫煙者、1/3に関節外症状あり

 

・関節リウマチ発症から5年以内にリウマチ性血管炎を起こした報告があるが、この場合は予後は不良

 

【リスク】

・男性→日本では男女比は1:2と女性に多い

・関節リウマチの長期罹患歴

・診断時の喫煙の習慣(OR1.98)

・末梢血管疾患の併存(OR3.98)

・脳血管疾患の併存(OR6.48)

・重症患者(リウマチ結節、関節手術の既往、X線で骨びらんあり)(OR2.02)

・生物学的製剤の使用(OR2.80)→これは単に重症関節リウマチだからなのかもしれない

 

【臨床症状】

・全臓器の小血管炎中血管炎が主体

・全身症状として発熱、体重減少など

・障害臓器として皮膚末梢神経が最多、次いで心血管

・腎、肺、消化器、中枢神経病変は稀だが致死的

・結節性多発動脈炎と似て多発単神経炎、紫斑、消化器血管炎を起こすが、微小動脈瘤は起こさない

・関節外症状、皮膚症状としてリウマチ結節を認める(30-44%)

関節炎が燃え尽きた後に起こると言われるため、関節腫脹や圧痛がないことが多い

 →日本の様々な大学、難病情報センターのホームページでは『関節炎があるところに加えて』と、関節炎の併存を悪性関節リウマチの条件としていますが、どちらが正しいのでしょうか…

・関節炎が燃え尽きた患者では併存症(心血管、末梢神経疾患)や関節外合併症が多い(Felty症候群、肺線維症)

・Felty症候群を呈する患者ではリウマチ性血管炎を起こす傾向にある

・最近の報告では治療成績の向上のため、リウマチ結節とFelty症候群の罹患率が減少

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 a:手指梗塞, b:下腿の紫斑, c:手背の壊疽性膿皮症, d:強膜炎

 

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皮膚病変(90%)

・全身の症状がないnail fold inferctionが最も多い

・その他、難治性下腿潰瘍、触知可能な紫斑、壊疽性膿皮症、下肢優位の趾虚血など

・下腿潰瘍は動脈硬化性病変と異なり、足背、足関節近位(内果、外果)に起こる

 →中型動脈の壊死性血管炎の結果

・リウマチ結節は他の皮膚症状と独立して存在する

末梢神経病変(40%)

・末梢の感覚・運動神経障害

・重症の多発単神経障害が多い(非対称性、非同期性、遠位神経優位)

・血管炎性ニューロパチーは急速に進行する

・血管炎性ニューロパチーの回復は非常に遅く、通常12~18か月かかる

・血管炎性ニューロパチーは原則として痛みは顕著ではない

眼病変(16%)

・強膜炎が最多だが、最も重症なのは潰瘍性角膜炎。いずれも眼痛が特徴的

・両側性強膜炎も稀ではない

・強膜炎はびまん性、結節性、壊死性に分けられるが、それぞれが移行することはない

・壊死性は最も重篤で血管炎と高度に関連し、強膜軟化症になる可能性がある

・壊死性強膜炎はしばしば潰瘍性角膜炎と共存する、いずれも緊急疾患

・孤発性の上強膜炎は一般的に予後良好だが、強膜炎を伴う場合がある

心血管(30%)

・冠動脈炎と大動脈炎も起こし得る(NORVASCとMayo Clinicのデータでは冠動脈炎は認めなかったが)

・心膜炎も見られる

肺病変(稀)

・びまん性肺胞出血はANCA関連血管炎やGoodpasture症候群に似る

間質性肺炎は関節リウマチでも比較的見られるため、血管炎によるものと区別が必要

・リウマチ結節が肺にできることもある

 

【検査】

・しばしば炎症マーカ(CRP、ESR)が上昇する

・RFと抗CCP抗体は関節リウマチよりも高値となるが、リウマチ性血管炎の独立したリスクファクターではない

・RFと抗CCP抗体異常高値がなければ90%の確率でリウマチ性血管炎ではない

・RFのうち、IgG型はリウマチ性血管炎の疾患活動性に関与するが、通常のIgM型は疾患活動性に関与しない

・免疫複合体は全ての患者で見られる

・IgA免疫複合体は感度が低いが特異的(研究室レベルでの検査となる)

・抗核抗体が非特異的に見られることもあるが、関節外疾患や関節リウマチの合併症に関連して見られ、死亡率の予測因子となり得る

・その他、血小板増加、貧血、低アルブミン血症

低補体血症クリオグロブリン血症が認められるが、これらは関節リウマチ患者では診られない

・C4低下は予後不良マーカ

・p-ANCA(核周囲)が36-48%に見られるが、MPO/PR3は陰性

 →おそらくは他の核周囲のANCA抗原(ラクトフェリン、エラスターゼ、カテプシンGなど)に反応していると思われる

・確定診断には血管炎の証明が必要(皮膚・神経・筋肉生検)、口唇生検も有用かも

・組織学的には全ての血管層に好中球、リンパ球、形質細胞が浸潤し、血管壁が破壊されている

・SLEでは後毛細血管細静脈が典型的には障害される

・神経伝導検査で末梢神経障害を証明する

・消化器病変がある場合は結節性多発動脈炎の微小動脈瘤の有無を確認するために腸間膜血管造影が必要

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【組織】 

・単球、好中球の血管壁への浸潤、血管壁の破壊(壊死、白血球破砕、弾性繊維の破壊)

・血管壁の3層以上障害が感度、特異度ともに高い

・関節リウマチでも限局型毛細血管炎、血管壁への細胞浸潤を伴わない血管周囲の細胞浸潤を認めるk十があるが、これらを間違えてリウマチ性血管炎と診断しない

・結節性多発動脈炎で見られる微小動脈瘤は見られない

 

ちなみに指定難病の診断基準は以下の通りです

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ACR/EULAR による関節リウマチ分類基準2010年を満たし、上記に掲げる項目の中で

(1)Aの臨床症状・検査所見の内、3つ以上を満たすものまたは

(2)Aの臨床症状・検査所見の内、1つ以上とBの組織所見を満たすものを

悪性関節リウマチと診断しています。

 

こちらもご覧ください

 

【鑑別診断】

・点状出血や紫斑は他の血管炎と区別する所見にならない

・下腿潰瘍の分布と治療への反応性、生検が動脈硬化性潰瘍との区別になる

・TNF阻害薬やトシリズマブの使用がリウマチ性血管炎のリスクとなるため、薬剤性血管炎も鑑別に考慮する

・その他、HBV関連血管炎、HCV関連クリオグロブリン血症、ANCA関連血管炎

・難病申請の際の除外疾患としては感染症、続発性アミロイドーシス、治療薬剤(薬剤誘発性間質性肺炎、薬剤誘発性血管炎など)の副作用、が挙げられる

・またその他の膠原病(全身性エリテマトーデス、強皮症、多発性筋炎、シェーグレン症候群)との重複症候群、痛風、乾癬性関節炎にも留意する

・リウマチ性血管炎に10%合併するというFelty症候群にも注意する

 

ちなみに一般的な血管炎のミミックはこちら

f:id:tuneYoshida:20190810193925p:plainRCVS: reversible cerebral vasocnstriction syndrome

 

【治療】

・血管炎の重症度障害臓器に応じた治療をする

寛解導入》

全身性のリウマチ性血管炎の特徴がない皮膚潰瘍患者

・創傷ケアと局所感染予防

・静脈うっ滞があれば解除する

①潰瘍径が1㎝未満で徐々に進行する場合

プレドニン0.5~1.0mg/kg/日を重症度に合わせて経口投与

②潰瘍径が1㎝を超える場合

・7日間注意深く観察し、急速に進行しない場合はプレドニン1mg/kg/日経口投与

③急速に進行する直径2-3㎝を超える複数の潰瘍

・経静脈的コルチコステロイドの投与(パルス3日後、後療法を行う)

TNFα阻害薬使用中の皮膚血管炎

・TNFα阻害薬に関連した血管炎である場合は、通常中止で改善する(2-4週間経過観察)

・全身性壊死性血管炎はTNFα阻害薬関連血管炎では稀

・潰瘍病変悪化傾向であれば上記に準じて治療する

全身性リウマチ性血管炎の場合

・難治性皮膚潰瘍、深部潰瘍、深部潰瘍を伴わない難治性蕁麻疹様血管炎などの他の重症皮膚病変、重度の強膜炎、血管炎性ニューロパチー、重症指趾虚血、腎・肺疾患、心膜炎などの内臓病変を含む

・高用量コルチコステロイド(パルス後、高用量ステロイド)+リツキシマブが推奨される

・リツキシマブが使用できない場合はIVCYを選択する

・妊孕性の観点からはリツキシマブ、血漿交換を行う場合はリツキシマブの有効性が下がる可能性があり、シクロホスファミドを選択する

・メトトレキサートを既に内服している患者でリツキシマブを使用する場合はメトトレキサートは継続することが推奨される

・メトトレキサートを既に内服している患者でシクロホスファミドを使用する場合はメトトレキサートは免疫抑制の観点から中止することが推奨される(レフルノミドも)

・TNFα阻害薬、他の生物学的製剤、JAK阻害薬などはリツキシマブまたはシクロホスファミド使用中は中止する

・リツキシマブまたはシクロホスファミドの初期治療に不応な場合、グルココルチコイドの量を増やし(高用量経口またはパルス)、リツキシマブ→シクロホスファミド、またはシクロホスファミド→リツキシマブへと切り替える(リツキシマブ→シクロホスファミドの場合はリツキシマブ4回投与後に切り替え、シクロホスファミド→リツキシマブの場合、6-8週間の初期治療に反応がない場合はリツキシマブに変更)

血漿交換も選択肢のひとつ

・リツキシマブとシクロホスファミドが使用できない場合や不応の場合、アザチオプリンやミコフェノール酸モフェチル(1000~1500mgを1日2回)を使用する

 

ステロイド

・治療2か月間で20mgまで下げ、その後4~8か月で5mg/日以下にする

・20mgまでは毎週5mgずつ下げる、その後は1mgずつ

リツキシマブ

・375mg/m2を毎週投与を計4回または2週間感覚で2回1000mgを投与する

・効果は同等

・リツキシマブが有効であった報告(Arthitis Care Res. 2012;64(3):331-9.)

・抗CCP抗体、免疫複合体が異常高値の場合はリツキシマブ(B細胞減少療法)が有効かもしれない

シクロホスファミド

・2週間毎に15mg/kg(最大1200mg)を3回、その後3週毎に15mg/kg(最大1200mg)

寛解に達するとさらに3か月追加する

・ANCA関連血管炎での寛解は通常6-7回の投与で得られる

・経口シクロホスファミド最大2mg/kg/日も有用だが、ステロイドパルスを併用することが必要

アザチオプリン

・2mg/kg/日で開始する(最大用量は成人で2.5mg/kg/日 or 250mg/日を超えない量)

・開始前にチオプリンメチルトランスフェラーゼ(TPMT)対立遺伝子の存在を調べる

 

 

・Mayo Clinicの報告ではほぼ全例で高用量コルチコステロイド、29%がシクロホスファミドを使用している、その他55%がアザチオプリン、メトトレキサート、ミコフェノール酸モフェチル、TNFα阻害薬、リツキシマブ、アバタセプト、アナキンラなど

 

寛解維持》

リツキシマブで導入後

・6か月ごとに2週間で2回リツキシマブ500mgを投与する

・メトトレキサートを継続することが望ましい(25mg/週+葉酸1~3mg)が、難しい場合、リツキシマブ療法開始から4~6週間以内にアザチオプリンを使用する、通常2mg/kg/日経口投与

・6-12か月後に再発がない場合は慎重に減量する

シクロホスファミドで導入後

・アザチオプリンで寛解維持を行う(通常2mg/kg/日経口投与)

・6-12か月後に再発がない場合は慎重に減量する

・代替薬はメトトレキサートまたはミコフェノール酸モフェチル

・導入後3か月以内に血管炎が寛解に達した場合、シクロホスファミドによる治療3か月後に維持療法に切り替える

・3か月で寛解導入に至らない場合でも導入療法を6か月以上継続することは避ける

・維持療法は好中球数1000/μL以上になるまで保留する

・リツキシマブで維持を行う場合、シクロホスファミド導入後3か月経過した時点で2週間で500mgを2回、その後6か月、12か月、18か月に1回投与する

・リツキシマブは炎症性関節炎に関してはMTXやアザチオプリンよりも有効

 

・疾患活動性を示唆する症状や所見がなく、炎症マーカが正常化した患者では約9か月で維持療法を中止し、少なくとも月1回のフォローを6~12か月行う

 

その他

・喫煙者ならば禁煙を勧める

・血圧のコントロール、皮膚潰瘍の局所治療も重要

ヒドロキシクロロキン低用量アスピリン(81mg)が予防に有効(3)

 

あるReviewが提唱するマネジメント案をお示しします(2)

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【予後】

・死亡率は26-30%(1年死亡率は12%、5年死亡率は60%という報告もある)

・死因は臓器障害と感染症

・リウマチ結節や孤発性爪郭梗塞は全身性リウマチ性血管炎への進展リスクが少ないため、予後良好

・関節リウマチの治療が強化されているが、リウマチ性血管炎の死亡率は以前と変わらない

・難病情報センターより、軽快21%、不変26%、悪化31%、脂肪14%、不明・その他8%という報告あり


【参考文献】

(1) Kishore S, et al. Curr Rheumatol Rep. 2017 Jul;19(7):39. Rheumatoid Vasculitis: A Diminishing Yet Devastating Menace.

(2) Makol A, et al. Curr Opin Rheumatol. 2015 Jan;27(1):63-70. Rheumatoid vasculitis: an update.

(3) Makol A, et al. Rheumatology (Oxford). 2014 May;53(5):890-9. Vasculitis associated with rheumatoid arthritis: a case-control study.

(4) 難病情報センターホームページ『悪性関節リウマチ』

(5) UpToDate『Etiology and pathogenesis of rheumatoid vasculitis』Last Update:Jun 01, 2018.

(6) UpToDate『Clinical manifestations and diagnosis of rheumatoid vasculitis』Last Update:Feb 07, 2019.

(7) UpToDate『Treatment of rheumatoid vasculitis』Last Update:Feb 12, 2019.

関西に多い!?~パンケーキ症候群~

  最近『パンケーキ食べた~い』という芸人が活躍していますが、皆様、パンケーキ症候群をご存じでしょうか。関西に住んでいると特に意識しなければならない疾患の一つです。

 

【概論】 

・1993年に初めて報告された、パンケーキを食べた後にアナフィラキシーを起こす疾患

・パンケーキに含まれる小麦粉に対するアレルギーではなく、粉に混入したダニに対するダニアレルギー

・別名『口腔ダニアナフィラキシー(Oral mite anaphylaxis)』

 

【原因食物】

・欧米ではパンケーキ食が多いが、日本では少なく(11%)、お好み焼き(82%)やたこ焼き(11%)を食べた後に起こすことが多い(1)

・小麦粉よりもミックス粉が多い(1)

 →アミノ酸が含まれ、ダニの成長に必要な栄養価が高いため

・ミックス粉を開封後、常温の環境下で長時間放置することでダニが混入する

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・調理粉を1か月以上(ほとんどが6か月以上)放置した場合にダニの混入が多くなる(1)

 

【原因ダニ(1)(2)

屋内ダニ

チリダニ科

◎コナヒョウダニ:Dermatophagoides farinae

◎ヤケヒョウダニ:Dermatophagoides pteronyssinus

貯蔵庫ダニ

 ムギコナダニ:Aleuroglyphus ovatus

◎サヤアシニクダニ:Lepidoglyphus destructor

◎ケナガコナダニ:Tyrophagus putrescentiae

 ムシクイコナダニ:Thyreophagus entomophagus

 ネッタイタマニクダニ:Blomia tropicalis

◎アシブトコナダニ:Acarus siro

※◎がつくダニはコマーシャルベースで特異的IgEが測定できるものです

 

・貯蔵庫ダニが原因として多いように思うが、実際は屋内ダニであるチリダニ科のコナヒョウダニとヤケヒョウダニが最も多い

・これはチリダニ科のダニ抗原と貯蔵庫ダニのダニ抗原とが交差反応を示すためである

・これらのダニはアトピーや、気管支喘息アレルギー性鼻炎・結膜炎の原因ともなるため、もともとこれらのアレルギー疾患の既往がある患者が、ダニ混入粉を摂取することでアナフィラキシーを起こす

 

【リスク】

 (1) アトピー疾患の既往

 (2) ダニ過敏症

 (3) NSAIDsの過敏性

 (4) ダニが混入している小麦粉やその他の食べ物の摂取

 (5) 1g以上のダニ抗原(1gあたり500個以上のダニ)の摂取

 

【症状】

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・蕁麻疹/血管浮腫(64%)、呼吸苦(53%)、wheeze(44%)

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・ほとんどの患者は摂食後15-30分以内に症状が出現している

 

【診断】

・パンケーキ症候群の診断には決まったものがない

・以下にあるグループが提唱する診断基準案を示す(3)

・救急外来では摂食した調理粉を少量スライドグラスに撒き、油滴し、顕微鏡でダニを観察することが最も簡便で早い

・後日、皮膚テストや血液検査で特異的IgEを検査する

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★パンケーキ症候群の診断基準案(3)

 (1) 小麦商品接種後の症状発現

 (2) アレルギー性鼻炎気管支喘息アトピー性皮膚炎、食物アレルギーの既往歴

 (3) ダニ特異的IgEが陽性

 (4) 被疑粉の皮膚テストが陽性

 (5) ダニ非混入の小麦粉の皮膚テストが陰性

 (6) ダニ非混入の小麦粉の摂取で症状が出ない

 (7) 顕微鏡下で被疑粉の中にダニを認める

 (8) 被疑粉の中のダニ抗原が陽性

 (9) アスピリン・NSAIDs過敏症

※ただし、何項目で陽性か明確に決まっているわけではない

 

・海外ではアスピリンやNSAIDsの過敏症の率が高い(50-70%)が、日本人は少ない(10%)

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・機序としてはNSAIDsによってCOX-1が阻害されるとシスチニルロイコトリエンが調節できなくなり、IgEが産生され、アレルギー性炎症が増加するためと考えられている

 

 

・果物などの摂取後に起こる口腔アレルギー症候群と鑑別を要するが、口腔アレルギー症候群では加熱により、アレルゲン性が低下するのに対して、パンケーキ症候群のダニ抗原(特にDer2)は100度で1時間以上加熱してもアレルゲン性が残る

 

【重症度】

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・75%がアナフィラキシーの重症度スコア4と重症が多い

 

【治療】

アナフィラキシーに準じて治療を行う

 

【予防】

・一度開けた調理粉は必ず低温(冷蔵庫)で保存し、早めに使い切る

 

 

 

 

【参考文献】

 

(1) Takahashi K, et al. Allergol Int. 2014 Mar;63(1):51-6. Oral mite anaphylaxis caused by mite-contaminated okonomiyaki/ pancake-mix in Japan: 8 case reports and a review of 28 reported cases. PMID=24569151

(2) Sánchez-Borges M, et al. World Allergy Organ J. 2009 May;2(5):91-6. Pancake syndrome (oral mite anaphylaxis). PMID=23283016

(3) Sánchez-Borges M, et al. J Allergy Clin Immunol. 2013 Jan;131(1):31-5. Anaphylaxis from ingestion of mites: pancake anaphylaxis. PMID=23154081

関節リウマチの鑑別診断

 関節リウマチは早期の診断と早期治療介入により、関節予後が大幅に改善しました。

 ACR/EULARは2010年に下記の分類基準を発表しましたが、分類基準ではあるものの、日常診療において早期関節リウマチの診断において、強力な助太刀となりました。

 

《ACR/EULAR  2010年 RA分類基準》

※6点以上を関節リウマチと分類する

f:id:tuneYoshida:20190805183051p:plain*:MCP, PIP, MTP2-5, 第1IP, 手首を含む

**:肩, 肘, 股関節, 膝, 足首を含む

***:手指・足趾のDIP, 第1CMC, 第1MTPは除外

****:顎関節, 胸鎖関節, 肩鎖関節を含む

低値の陽性:正常上限以上だが、正常上限の3倍以下

高値の陽性:正常上限の3倍より大きい

 

 しかし、この分類基準は1987年のACR分類基準と比較して感度は高くなったものの(47.1%→73.5%)、特異度が低くなってしまった(92.9%→71.4%)ことが問題となりました(2)。つまり、他の疾患でも上記分類基準を満たしてしまうということです。

 

 特に血清反応陰性例や大関節罹患型の症例では診断が難しくなることがしばしば指摘されております。

 

 そこで日本リウマチ学会は日常診療において鑑別診断を補助する目的で、難易度別の鑑別診断リストを発表しました(3)。この表、本当に良く出来ております。初期診療では関節リウマチを疑う患者では、まずはこの表の疾患を考慮することが重要と考えます。是非ご活用下さい。

 

《関節リウマチの鑑別診断》

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鑑別難易度高:頻度もスコア偽陽性になる可能性も比較的高い

鑑別難易度中:頻度は中等または高いが、スコア偽陽性の可能性は比較的低い

鑑別難易度低:頻度もスコア偽陽性になる可能性も低い

 

【参考文献】

(1) Aletaha D, et al. Ann Rheum Dis. 2010 Sep;69(9):1580-8. 2010 rheumatoid arthritis classification criteria: an American College of Rheumatology/European League Against Rheumatism collaborative initiative.

(2) 金子祐子. SAKURAコホートによる検証. 分子リウマチ治療 2011; 4: 182-185.

(3) 日本リウマチ学会 新分類基準検証委員会 2016年11月14日改訂

【永久保存版】強皮症の自己抗体

 皮膚筋炎や強皮症などの疾患は自己抗体が診断に有用であることはもちろん、ある程度、病因臨床経過障害臓器予後に関係することが分かっております。

 今回は強皮症の自己抗体についてまとめたいと思います。

 

【ポイント】

・抗トポイソメラーゼI抗体(抗Scl-70抗体)、抗セントロメア抗体、抗RNAポリメラーゼIII抗体の3つが保険適応で強皮症の50%を占める(抗RNAポリメラーゼIII抗体は出し忘れが多いので注意しましょう!!)

・3つの抗体はお互いに排他的であり、2つが陽性であることは稀と言われている

 ※抗トポイソメラーゼI抗体(抗Scl-70抗体)、抗セントロメア抗体がともに陽性となるのは0.6-5.6%程度(2)

・近年、抗体同定の技術が進歩し、研究室レベルでは上記以外の抗体が同時に陽性となることは稀ではない

・陽性となった抗体が正常化する事は少ないが、正常化する場合は予後良好を示唆する

・予後良好:抗セントロメア抗体、抗RNAポリメラーゼIII抗体、抗U1RNP抗体、抗PM-Scl抗体、抗Ku抗体

予後不良:抗トポイソメラーゼI抗体(抗Scl-70抗体)、抗Th/To抗体、抗U3RNP抗体

 

 全抗体のまとめです。

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dcSSc:びまん皮膚硬化型全身性強皮症

lcSSc:限局皮膚硬化型全身性強皮症

 

 

【強皮症特異抗体】

セントロメア抗体

・強皮症に認められる抗体で最多、かなり特異的

・ただしSLEやシェーグレン症候群、原発性胆汁性肝硬変、レイノー現象で認められることもある(2)

・白人女性に多く、黒人には少ない

セントロメア蛋白Bが抗原

・抗セントロメア抗体陽性のレイノー現象陽性患者では強皮症に進展するリスクがある

・限局皮膚硬化型全身性強皮症に関連(5-7%はびまん皮膚硬化型全身性強皮症)

・肺線維症や腎クリーゼ(1)、心病変(2)が少ない

・肺線維症がなくても肺高血圧症が多い

 ※抗Scl-70抗体は肺線維症がなければ、単独で肺高血圧症にはならない

・重症の手指血管症、手指潰瘍のリスクは少ない

・抗セントロメア抗体陽性の強皮症患者は原発性胆汁性肝硬変のリスクが高くなるが、強皮症のない原発性胆汁性肝硬変患者よりも肝臓の予後は良い

・血清抗セントロメア抗体値は臨床経過と関係しない

 

抗トポイソメラーゼI抗体(抗Scl-70抗体)

・抗トポイソメラーゼI抗体は70kDaの蛋白に反応するため、かつては抗Scl-70抗体と呼ばれていたが、これは間違いで、70kDaの蛋白はもともとは100kDaの蛋白の分解産物であるため、現在は抗トポイソメラーゼI抗体と呼ぶことが正しい(2)

・ 免疫拡散法では強皮症に特異的だが、ELISA法では特異性は減少する(他の結合織病でも陽性となる)

・強皮症に90-100%の特異性を持つ(2)

・抗トポイソメラーゼI抗体陽性例の60%がびまん皮膚硬化型全身性強皮症

・抗トポイソメラーゼI抗体陽性のレイノー現象陽性患者では強皮症に進展するリスクが高い(2)

・肺線維症や手指潰瘍(1)、関節病変、腱摩擦音、重症の心病変を起こす(2)

・抗トポイソメラーゼI抗体値はスキンスコア値、疾患の重症度、活動性に関連する

・経過中に抗トポイソメラーゼI抗体値が20%が正常化する(2)が、その場合は、疾患の活動性が軽症となり、予後良好となる

 

RNAポリメラーゼIII抗体

・抗RNAポリメラーゼII抗体はSLEに見られるが、抗RNAポリメラーゼIII抗体(IとIIとIIIが一緒に陽性となる場合)は強皮症に特異的

・抗RNAポリメラーゼIII抗体陽性例の67-93%がびまん皮膚硬化型全身性強皮症

・腎クリーゼに関連(抗RNAポリメラーゼIII抗体陽性例の43%が発症)

・逆に腎クリーゼ患者の59%が抗RNAポリメラーゼIII抗体陽性

・抗RNAポリメラーゼIII抗体値は臓器障害や疾患の予後に関連しないが皮膚病変の重症度には関連する

・腱摩擦音、滑膜炎、筋炎、関節病変、悪性腫瘍とも関連する(2)

 

抗Th/To抗体

・抗原はsmall nuclear ribonucleoproteins(RNPs)でRNase MRP, RNase Pの構成因子

・強皮症にかなり特異的(特異度99%)だが、陽性は稀

・関節リウマチ、SLE、多発筋炎、シェーグレン症候群患者で稀に陽性となる

・限局皮膚硬化型全身性強皮症に関連(抗Th/To抗体陽性例の21%がびまん皮膚硬化型)

・28-32%が肺高血圧症を発症する

・肺線維症を発症するリスクが高いが、抗Scl-70抗体と異なり、重症の手指血管症は少ない

・腎クリーゼを発症する頻度も高い(2)

 

抗U3RNP抗体

・34kDaのフィブリラリン(small nuclear RNP)が抗原

・他の結合織病でも陽性となるが、強皮症に特異的

・アフリカ-アメリカン人種に多い(2)

・黒人の男性で多い、白人の女性では少ない

・黒人で陽性例は予後不良と関連する

・びまん、限局皮膚硬化型全身性強皮症のいずれも呈するが、びまん型が多い

・抗U3RNP抗体陽性例の25-33%が筋病変(近位筋筋力低下、CK上昇、筋電図異常、筋生検で筋炎所見)を有する

 

・肺高血圧症(1)、心病変や腎クリーゼ(2)と関連する

・重症の小腸病変と関連するという報告もある

 

抗U11/U12RNP抗体

・スプライソゾームが抗原

・報告は少ないが強皮症に100%の特異性があるかもしれない

・肺線維症(1)に加えてレイノー現象や消化器病変(2)と関連

 

【強皮症オーバーラップ関連抗体】

抗PM-Scl抗体

・ヒトエキソソームが抗原でPM-Scl75とPM-Scl100が最も認識されている構成因子

・PM-Scl75c(PM-Scl75のN末端が延長したタイプ)が最も多い抗体のエピトープ

・強皮症に特異的ではなく、多発性筋炎/皮膚筋炎(55%)やSLE、シェーグレン症候群で陽性となる

・肺線維症(抗PM-Scl抗体陽性例の85%)、手指潰瘍の高リスクである

・肺高血圧症にはなりにくい

・欧米ではしばしば報告されるが、日本からの報告は稀

 

抗Ku抗体

・全身性強皮症の2%に認める稀な抗体

・非特異的で未分類結合織病、SLE・多発性筋炎/皮膚筋炎・強皮症・シェーグレン症候群のオーバーラップ症候群で見られる

・多発性筋炎/皮膚筋炎、SLE、強皮症単独ではあまり認めない

・筋病変、関節病変と関連するが、重症の手指血管症は稀

 

抗U1RNP抗体

・オーバーラップ症候群(SLE、RA、筋炎)に関連する

・限局皮膚硬化型全身性強皮症に多い

・抗U1RNP抗体陽性例のいくつかはMCTDの分類基準を満たす

・抗U1RNP抗体陽性例はしばしば抗Ro/SSA抗体、抗La/SSB抗体、抗Sm抗体が陽性となる

 

抗リン脂質抗体

抗リン脂質抗体症候群を発症する

・強皮症患者では抗カルジオリピン抗体、抗β2GP1抗体が陽性となった報告あり

・抗カルジオリピン抗体陽性例は肺高血圧症と関連する

・抗β2GP1抗体陽性例は重症手指血管症と関連する

 

《抗体別生存率》

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抗トポイソメラーゼI抗体(抗Scl-70抗体)陽性患者では長期生存率は他と比べると低い(間質性肺炎合併のため)

RNAポリメラーゼIII抗体陽性患者の生存率が改善したのはACE阻害薬の登場による

・ここに載っていないが、抗PM-Scl抗体抗Ku抗体陽性例は予後良好抗Th/To抗体抗U3RNP抗体陽性例は予後不良

 

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※ここから下は専門的な内容です。読み飛ばして頂いて構いません※

 

 最近になり、核以外の抗原に対する抗体が強皮症で見つかって参りました(2)

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・抗fibroblast抗体によってfibroblastがin vitroで活性化させるとコラーゲンマトリックスが減少し、MMP-1が産生される

・抗fibrillin-1抗体はin vitroでfibrobrastを活性化させ、TGF-βを産生させる結果、コラーゲンと細胞外マトリックスが産生される

・抗TGF-β抗体は抗fibrillin-1抗体によるfibroblastの活性化を減少させる

・抗MMP-1/MMP-3抗体はコラーゲンや細胞外マトリックスの過剰状態を是正すると考えられる

・抗内皮細胞抗体は重症の血管病変に関連し、内皮細胞の活性化とアポトーシスを誘発させる

・強皮症患者の皮膚の血管内皮細胞ではfibrillin-1の遺伝子と蛋白発現が増加している

・抗内皮細胞抗体を加えることで、アポトーシスを起こした皮膚の血管内皮細胞内でfibrillin-1が著明に増加する

・抗PDGF受容体抗体は強皮症患者で100%見られるが特異的ではない

・強皮症患者のIgGがPDGF受容体を活性化させ、Ha-Ras-ERK1/2経路とROS(reactive oxygen spesies)を誘導する、これらはI型コラーゲン遺伝子の発現を刺激し、fibroblastを活性化myofibroblastにさせる

・抗AT1R/ETAR抗体は肺線維症、肺高血圧症、高い死亡率に関連する

・これらは内皮細胞のそれぞれの受容体に結合し、TGF-β遺伝子発現を増加させ、線維化を促進させる

・抗AT1R/ETAR抗体によってhuman microvascular endothelail cells(HMEC-1)の活性化が起こる

・HMEC-1が活性化するとIL-8やvascular cell adhision molecule-1(VCAM-1)のmRNAが増加し、好中球の遊走が増加する

・fibroblastも抗AT1R/ETAR抗体によってI型コラーゲンを大量に産生するようになる

 

【参考文献】

(1) Nihtyanova SI, et al. Nat Rev Rheumatol. 2010 Feb;6(2):112-6. Autoantibodies as predictive tools in systemic sclerosis.

(2) Kayser C, et al. Front Immunol. 2015 Apr 15;6:167. Autoantibodies in systemic sclerosis: unanswered questions.

チューインガムテスト~巨細胞性動脈炎の顎跛行の身体所見~

 側頭動脈病変を含む巨細胞性動脈炎では顎跛行は頻度は50%未満ですが、特徴的な症状となります。

 しかし、問診で顎跛行を尋ねても、本人の自覚は不明なことも少なくなく、身体所見で確認することがなかなか出来ませんでした。

 そこで今回は『チューインガムテスト』という身体所見を紹介したいと思います。

 2016年にNEJMに掲載されたLetterですが、側頭動脈病変を含む巨細胞性動脈炎2例についてガムを噛んでもらって顎跛行を確認できたとのことです。

 

【方法と解釈】

・ガムを1秒間に1回のペースで噛んでもらう

・2-3分噛んでもらい、顎の痛みが生じたら陽性

 

 上記の2例とも、治療後ガムを噛める時間が延びたとのことです。こんな簡単な身体所見で顎跛行が診断出来るのであればやってみたいですね。

 今後、追加研究がされれば、そのうちガイドラインにも載ってくるかもしれません。

 

【参考文献】

Kuo CH, et al. N Engl J Med 2016; 374:1794-1795. "Chewing Gum Test for Jaw Claudication in Giant-Cell Arteritis."

 

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悩ましいステロイドミオパチーについて

 ステロイド治療を行っている患者が、筋力低下を訴えた時、それが原疾患によるものか、ステロイドによるミオパチーなのかいつも悩みます。今回はステロイドミオパチーについてまとめたいと思います。

 

【イントロダクション(3)

・一番最初は1932年にHarvey CushingによってCushing症候群の中で報告された

・1950年代になり、グルココルチコイドが治療薬として使われ始めてから、ステロイドミオパチーの認識が高まった

・薬剤性ミオパチーの中では最もコモン

・頻度は報告によってステロイド使用患者の2-60%とまちまち(4)

 

【病因】

・グルココルチコイドは蛋白合成を減少させ、異化を亢進させる(3)

・グルココルチコイドは糖新生の基質であるアミノ酸を提供する中間代謝に影響して、骨格筋に直接異化作用を及ぼす

・グルココルチコイド受容体のアンタゴニストによって筋傷害が防止できるため、グルココルチコイド受容体の活性化が関与すると考えられている

・実験モデルでは、グルココルチコイド療法がインスリン様成長因子-1(IGF-1)シグナル伝達を阻害することで、筋細胞のアポトーシスが増加する

Akt1(Aktの主要なアイソフォーム)として知られるタンパク質キナーゼ活性を持つ細胞内シグナル伝達分子は、グルココルチコイドとIGF-1に対する筋の萎縮と肥大反応において重要な役割を持つ

・グルココルチコイドによるAkt1の抑制によって、筋肉タンパク質を分解するユビキチン-リガーゼ-アトロギン-1(MAFbx)の量が増加する

IGF-1シグナル伝達は筋萎縮を抑制し、筋肥大を誘導するAkt1の活性を増加させる

・ユビキチン化による筋肉分解の増加に加えて、グルココルチコイド自体も筋肉の分化を低下させる

この効果は、筋肉の発達と再生のための主要な転写スイッチであるMyoDのユビキチン化を介した分解の促進によって仲介されているよう

 

【リスク】

・高齢者

・担癌患者

・負の窒素バランス(異化状態)

・呼吸筋を侵す疾患(3)

・低活動性(3)

・一方、デキサメタゾンとフェニトインの併用ではリスクが下がる

 →理由は明らかではないが、フェニトインによるデキサメタゾンの肝臓代謝の誘導によるのかもしれない

 

【臨床所見】

・典型的には緩徐な近位筋優位の筋力低下とそれに続く筋萎縮

脊柱起立筋もしばしば侵す(2)

・上肢より下肢の方が先に早く症状が起こり、重症となる

筋肉痛筋把握痛ない

・問診では椅子からの立ち上がり、階段昇降、頭上の作業が困難になることを聞き出す

MMTも良いが等尺性筋力(関節を動かさない筋収縮)を測定するのも簡便で有効である(2)

症状発症の時間的経過(治療開始後数週間から数ヶ月)には大きなばらつきがあり、部分的にはグルココルチコイド用量による

・報告では連日のデキサメタゾンで治療された原発性脳腫瘍患者の報告では2/3が治療3-4か月で症状が出現した

満月様顔貌、バッファローハンプ、糖尿病、気分の変化、皮膚の脆弱性骨粗鬆症などのクッシング症候群の他の特徴がしばしば存在する

全身性悪性腫瘍患者のステロイドミオパチーでは、呼吸筋も侵されることがある

 

 グルココルチコイド投与量との関係

・発症までの投与量と投与期間はまちまち

・数週間の低用量ステロイドで発症する患者もいれば、数か月または数年の高用量ステロイドを投与されてもミオパチーを発症しない患者もいる

・しかし、プレドニゾン10mg/日未満場合はステロイドミオパチーは稀

・グルココルチコイドの投与量が多いほど、ミオパチーを発症する可能性が高くなり、筋力低下の発症が早くなる

・40mg-60mg/日以上のプレドニゾンでは2週間以内に臨床的な筋力低下が起こり、1か月以内にほとんど全例で幾分か筋力低下が生じる

 

グルココルチコイド製剤

・全身性グルココルチコイド療法で起こりやすい

・吸入グルココルチコイドによるものはめったにない(J Neurol Sci. 2014 Mar 15;338(1-2):96-101.)

・高用量の吸入グルココルチコイド服用患者は、投与量の20-40%が吸収され、全身徴候がでることがあるが、グルココルチコイド療法の中止で改善するのは数例のみ

・硬膜外グルココルチコイド注射後のミオパチーの報告もある

・非フッ素化ステロイドであるプレドニゾンプレドニゾロンよりもフッ素化ステロイドであるデキサメタゾン(デカドロン)ベタメタゾン(リンデロン)トリアムシノロン(レダコート、ケナコルト)でミオパチーのリスクが高い

 

【診断】

・確定的な診断方法はない

・アルドラーゼ、AST、CKは正常が基本(3)

・CKやアルドラーゼは若干上昇していても良い(3)

・ただし重症患者では50%にCK上昇が見られる(3)

・尿中3-メチルヒスチジン(3-MH)/クレアチニン比の増加が有用であるという報告あり

 →ただし、食事や薬剤、運動により増減する可能性あり

・%クレアチン尿も診断に用いられてきたが診断率は高くなく、推奨されない

・ほとんどが筋電図は正常または軽度の運動神経の低振幅と低活動性が見られる程度(2)

 →晩期には異常が出ても良い(3)

 →ステロイドミオパチーでは2b型筋線維の萎縮が起こるが、筋電図では1型筋線維の異常しか検出できないためである(2)

・診断はグルココルチコイド暴露の病歴と時期、他のミオパチーの原因の除外に基づく

MRIで炎症性ミオパチーを除外する

・筋力低下が起こる用量がまちまちであるのと同様に十分な用量減量も患者によって変わる

一般的に十分な用量減少(10mg/日未満)後、3-4週間以内に症状が改善する

 

【病理(2)

・壊死や炎症の兆候はない(1)

・2b型筋線維(=白筋、速筋)の萎縮が特徴的

 →2b型筋線維は高い解糖系を持ち、酸化活性は低い筋線維である

・ただし2型筋線維の萎縮は年齢や神経障害、慢性疾患による筋疲労でも起こり得る

・重症の場合は1型筋線維(=赤筋、遅筋)も萎縮する

・グルココルチコイドの退薬後も筋萎縮は起こり得る

・病理で2b型筋線維の萎縮を見る感度は高いが特異度は低い

 →中枢神経障害による麻痺、廃用性萎縮、低栄養、高齢者でも見られる(4)

 

【鑑別診断(4)

・炎症性ミオパチー 

筋ジストロフィー

・薬剤誘発性ミオパチー(100g/日以上・10年以上のアルコール飲用者、スタチン使用者)

・糖尿病性筋萎縮症

甲状腺機能亢進症、副甲状腺機能亢進症、高アルドステロン血症に伴うミオパチー

・低カリウム性ミオパチー

・周期性四肢麻痺

・重症筋無力症

 

炎症性ミオパチー vs ステロイドミオパチー 

・グルココルチコイドは炎症性ミオパチー(皮膚筋炎、多発性筋炎、またはHIVミオパチーなど)の治療に使用されている場合は、原疾患の悪化か、ステロイドミオパシーによる筋力低下か区別する問題がしばしば起こる

・グルココルチコイド療法が開始してから1か月以上経過した後の筋力低下で、他のクッシング症候群の症状が存在する場合、CK値などが正常の場合はステロイドミオパチーを疑う

・グルココルチコイドを減量して筋力をフォローしていく。十分な用量減少後3-4週間で症状が改善する場合はステロイドミオパチーを疑う(炎症性ミオパチーでは症状は悪化する)

・筋電図と筋生検は鑑別に役立つことがあるが通常は必要ない

 

以下は文献(3)からt転載した炎症性ミオパチーとステロイドミオパチーの鑑別点です

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グルココルチコイドと神経筋遮断薬
 

・大量の静脈内グルココルチコイドと神経筋遮断薬必要とする患者(しばしば重症の喘息で機械的換気が必要なため)は、重症びまん性近位および遠位筋筋力低下を特徴とする急性の重症疾患ミオパチー(Clitical illness myopathy)を発症することがある

・頻度はステロイドと神経筋遮断薬の併用の30%であるという報告がある

重症疾患ミオパチーの電気生理学的所見には、正常から低振幅の運動反応、正常またはほぼ正常な感覚電位と組み合わされた短期間の運動単位電位が含まれる

・針筋電図は、早期または通常のフルリクルートメントを示す

・病理所見はミオシンの喪失

・血清クレアチンキナーゼ(CK)の上昇は、患者の約半数に見られる

重症疾患ミオパチーは通常数週間から数ヶ月で元に戻るが、長期的なICU滞在と入院期間の増加をもたらす

・治療はできるだけ早くグルココルチコイドの中止または減少

 

【治療と経過】

・十分な用量減少後3-4週間以内に筋力低下が改善し始め、グルココルチコイド療法が中止できれば最終的にすべての患者で改善する

 →逆に改善しなければ他の疾患の可能性を考慮する

デキサメタゾンなどのフッ素化ステロイドを使用している患者ではグルココルチコイド療法から離脱できない場合はプレドニゾンなどの非フッ素化ステロイドに変更する

・投与方法を隔日投与にする

運動療法が推奨される(Med Sci Sports Exere. 1998 Apr;30(4):483-9.)

IGF-1、分岐鎖アミノ酸、テストステロン、nandrolone、DHEAが試験的に使用されることもある(3)

 

【参考文献】

(1) UpToDate "Glucocorticoid-induced myopathy" Last updated: Oct  17, 2017.

(2) Minetto MA, et al. Endocrine. 2018 May;60(2):219-223. "Diagnostic work-up in steroid myopathy."

(3) Pereira RM, et al. Joint Bone Spine. 2011 Jan;78(1):41-4. "Glucocorticoid-induced myopathy."

(4) 今日の診療サポート"ステロイドミオパチー"

蕁麻疹を起こすウイルス達

 蕁麻疹と言えば、何らかの抗原に対するアレルギーを考えますが、原因不明も多いのが現状です。しかし、医療者は食べ物との関連を疑うことが多く、結果的に患者さんに〇〇アレルギーなどと、レッテルを貼り、過剰な不安を与えてしまうかもしれません。

 しかし、一部の蕁麻疹ではウイルス感染に関連して起こることがあります。先日、先行感染歴があり、その後に蕁麻疹が出現し、ウイルス性が疑われた患者さんがおりましたので、調べました。

 

【ポイント】

・先行感染歴のある蕁麻疹はウイルス性蕁麻疹を疑う

・血液検査で異型リンパ球が出現すればより疑う

ヘルペス属ウイルスと肝炎ウイルスが多い

 

【急性蕁麻疹:6週間未満の持続】

ヘルペス属(EBV、CMV、HHV-6)

・パルボウイルスB19

 +慢性蕁麻疹初期の可能性(原因に以下のウイルスを含む)

 

 【慢性蕁麻疹:6週間以上の持続】

HSV-2

ノロウイルス

A型肝炎ウイルス

B型肝炎ウイルス

C型肝炎ウイルス

 

HSV、HHV-6、EBV、CMVは小児に多く、肝炎ウイルスは成人に多い傾向がある

 

【参考文献】

Imbalzano E, et al. Allergy Asthma Proc. 2016 Jan-Feb;37(1):18-22. “Association between urticaria and virus infections: A systematic review.”

血管内リンパ腫細胞が血管内に留まる理由

 分子免疫学を勉強していると臨床で抱いた疑問がしばしば解決することがあります。

今回はこの疑問『なぜIVL細胞が血管内に留まるのか?』に対して分子免疫学的視点から迫ってみようと思います。

 

リンパ球の分類と成熟部位

 まず、リンパ球は T細胞B細胞に分けられ、それぞれ、胸腺骨髄で成熟します。T細胞はヘルパーT細胞と細胞傷害性T細胞に、B細胞もさらに細かく分類できますが、ここでは割愛します。大雑把に言うと、両者とも抗原を認識して免疫においては重要な細胞となります。血管内リンパ腫(IVL)細胞が血管内に留まる理由

 

 成熟にするまでにT細胞もB細胞も既に認識できる抗原が決まっております。つまり体の中には、最初から無数の抗原を認識できるT細胞とB細胞が用意されているということです。体って不思議ですね。 

 

 しかし活性化するためには実際に抗原と結合し、認識する必要があります。認識できる抗原と結合すると、T細胞もB細胞も爆発的にクローン増殖し、その抗原を排除できるようになります。

 

 成熟したT細胞もB細胞もはじめは抗原を認識していないので、ナイーブT細胞ナイーブB細胞と言います。言わば“赤ちゃんリンパ球”です。

 

 これらのナイーブ細胞は通常1-3か月生存可能なのですが、その間に自分とマッチする抗原を探すために体中を巡っています。巡っていると言ってもリンパ系血液系を行ったり来たりしているわけです。

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リンパ球の血液液とリンパ系の行き来

 さて、問題なのはどうやってリンパ系と血液系を行き来しているかです。血液中のリンパ球はそれぞれのリンパ節を介してリンパ系に入ります。一方リンパ球を含んだリンパ液は右上肢右リンパ本幹、その他のリンパ節からのリンパ液は胸管に集められ、それぞれ右左の静脈角に注ぎ込まれます。

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看護roo(https://www.kango-roo.com/sn/k/view/1844)より引用

 

 ナイーブT細胞とナイーブB細胞が血液系からリンパ節に入る時、リンパ節の動脈と、それに続く高内皮細静脈を通ってリンパ節実質内に侵入します。

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 重要なのはこの高内皮細静脈を通過してリンパ節実質内に入るときの機序です。

 

リンパ球の高内皮細静脈を介した侵入機序

 リンパ球が高内皮細静脈の壁を通過するためにはまず、高内皮細静脈に結合する必要があります。

f:id:tuneYoshida:20190725110704p:plain図:リンパ球が高内皮細静脈の壁に接着している様子

f:id:tuneYoshida:20190725111041p:plainf:id:tuneYoshida:20190725111559p:plain

 

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  リンパ球の表面にはL-セレクチンという接着分子がありますが、高内皮細静脈上のPNAdと結合することで接着が始まります。なお、この結合は弱いものなので、白血球は高内皮細静脈にくっついては離れを繰り返し、内皮細胞の表面を転がるように動きます(Rolling)。

 次にT細胞はCCR7、B細胞はCCR7CXCR4CXCR5などのタンパク質がそれぞれ高内皮細静脈の表面のCCL19/CCL21CCL19/CCL21CXCL12CXCL13が結合します。

 これにより、より強固な白血球細胞表面の接着分子であるインテグリンファミリーの白血球機能関連抗原1(LFA-1)が活性化します。このLFA-1が高内皮細静脈の細胞表面のICAM-1と結合することで高内皮細静脈と強力に接着し、内皮細胞の隙間からリンパ節実質内に侵入します。

 

血管内リンパ腫(IVL)細胞の接着分子

 一方、血管内リンパ腫細胞では一部のインテグリンなどの接着分子が細胞表面に発現していないことが報告されております。そのため、血液系からリンパ系に移行する際に高内皮細静脈に結合できないため、リンパ節に侵入できないのではないかと言われております。

 リンパ節に入れない血管内リンパ腫細胞は血液内で増殖し、あらゆる臓器の毛細血管で詰まるのではないでしょうか。

 信じるか、信じないか、はあなた次第です。

 

【参考文献】

・分子細胞免疫学 原著第9版

田中稔之 ~リンパ管と血管による細胞動態制御から見た免疫学~ J Jpn Coll Angiol, 2008, 48: 151-157

・Ponzoni M, et al. Hum Pathol. 2000 Feb;31(2):220-6. "Lack of CD 29 (beta1 integrin) and CD 54 (ICAM-1) adhesion molecules in intravascular lymphomatosis."

・Zuckerman D, et al. Oncologist. 2006 May;11(5):496-502. "Intravascular lymphoma: the oncologist's "great imitator"."

肺胞出血UpToDate

 肺胞出血の患者がいるため、復習しています。UpToDateが最新で最もまとまっていたため、訳してみました。

 リウマチ膠原病領域では低酸素血症、貧血、新規陰影の場合に常に鑑別に挙がる病態です。

 

 肺胞出血は肺胞上皮細胞、基底膜、肺毛細血管の破綻によって赤血球が肺胞内へ流出する状態で、病理組織学的パターンによって3つに分けられる。

 ①肺胞毛細血管炎(Pulmonary capillaritis)

 ②淡い肺出血(Bland pulmonary hemorrhage)

 ③びまん性肺胞損傷(Diffuse alveolar damage)

 

①肺胞毛細血管炎

・好中球の肺胞中隔、間質への直接浸潤、分裂した好中球からの産物(酸素ラジカル、タンパク質分解酵素)によって肺障害が起こされる

・全身性血管炎、抗糸球体基底膜(抗GBM、Goodpasture)病、リウマチ疾患、特定の薬剤、特発性ヘモジデローシス、特発性肺胞毛細血管炎(pauci-immune)などが含まれる

・特発性肺胞毛細血管炎は血清学的に陰性だが、病理組織で血管炎所見を認めることで診断できる

 

肺胞毛細血管炎の原因

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②淡い肺胞出血

・肺胞構造の炎症破壊なしに肺胞腔への出血を来す

・原因には左心室拡張期血圧上昇、出血性疾患、抗凝固療法がある

・時に抗GBM病、SLEなどが原因となり得るが、一般的には肺胞毛細血管炎を起こす

 

淡い肺胞出血の原因

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③びまん性肺障害

・びまん性肺胞傷害が根底にあるARDSでは肺胞出血を起こす可能性がある

・肺胞中隔の浮腫、肺胞腔を覆う硝子膜の形成が特徴

・細胞傷害性、非細胞毒性薬物、感染症、リウマチ疾患、ARDSなどが原因

 

びまん性肺障害の鑑別

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《臨床症状》

・発症はしばしば急激、または短期間(7日未満)

・赤、喀痰、発熱、呼吸困難が初期症状

・喀血は3分の1の患者では認めない

・聴診は非特異的、頻呼吸、Crackle、気管支呼吸音が聞こえることがある

 

放射線画像所見》

X線は非特異的、斑状またはびまん性の透過性低下

・CTでは通常は両側性でびまん性のすりガラス影または浸潤影だが、時に片側性

・しばしば末梢側よりも中枢側寄りの傾向がある

・肺胞出血を繰り返すと肺線維症につながる可能性がある

 

《検査異常》

・非特異的

・Hb、Ht低下、WBC上昇は一般的だが、必須ではあに

・血小板は増加も低下もし得る

・ESRは全身性疾患によって起こされる肺胞出血では亢進する

・凝固異常は血小板数、PT-INR、APTTでチェックする

・再発性の肺胞出血では鉄欠乏症が存在する可能性がある

・壊死性糸球体腎炎合併を除外するために尿検査、クレアチニン値をチェックする

 

《診断評価》

・DLCOの増加は診断に有用だが、多くの場合呼吸状態が安定せず実施困難

・喀血は33%の患者では見られないが、Hbが低下している場合は肺胞出血を疑う

・鑑別にはARDS、多葉性肺炎、誤嚥性肺炎、急性好酸球性肺炎、肺水腫、急速進行癌(例として精巣生殖細胞腫瘍)

・気管支鏡検査で肺胞出血を確認し、感染、好酸球増多症、悪性腫瘍を除外する

 

気管支肺胞洗浄

・BALは診断に最も有用

・50-60mlの生食で3回洗浄し、次第に血性になることで診断する

・Prussian blue染色によってヘモジデリンを含むマクロファージがBAL液内で認められたら特徴的、明らかな喀血やBALで出血を認めなくても染色が陽性なら診断可

・200個のマクロファージのうち、20%以上がヘモジデリンの染色で陽性であればDAHと診断できる

 

肺機能検査

・ほとんどの患者は肺機能検査を実施することができない

・DLCOが100%を超える場合はDAHと診断できる高感度マーカー

・DLCOの増加は肺胞内のヘモグロビンが呼気から一酸化炭素を除去するため

・DLCOのモニタリングは特発性肺ヘモジデローシスや抗糸球体基底膜疾患の患者のDAHの悪化の指標にもなる

・時々、閉塞性肺疾患が再発性肺胞出血患者や顕微鏡的多発血管炎による二次性肺胞毛細血管炎患者で認められることがある

 

《特定の病因の手がかり》

病歴

・アブシキシマブ、アミオダロン、カルビマゾール、コカイン、レフルノミド、ニトロフラントイン、ペニシラミン、プロピオチオウラシル、シロリムス、TNFα阻害薬、トリメリト酸無水物などの薬剤への暴露

・コカインの吸入は肺胞の障害や毛細血管炎を引き起こす

・肺胞出血症例の10%は薬剤性

・ARDSを引き起こす状況の確認

・造血細胞移植、肺移植、化学療法への暴露

・喫煙は抗糸球体基底膜抗体を有する患者の肺胞出血の強い危険因子

・SLEやAPSなどの全身性血管炎、リウマチ疾患、血栓性静脈炎、血小板減少症の病歴
・間欠的な胸痛、動機、末梢浮腫は僧帽弁疾患を示唆

・げっ歯類や家畜への暴露、暴露地(東南アジア)への旅行はレプトスピラ症を示唆

 

身体所見

・身体所見は非特異的、ブドウ膜炎、鼻・口腔潰瘍、触知可能な紫斑、下垂足、関節炎の存在は全身性疾患を示唆

 

臨床検査

・特定の病因を特定するための追加検査は以下

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・重要な事は感染症を除外すること

・肺腎症候群を評価するためにBUN、Cre、尿検査を全患者で実施すべき

・僧帽弁狭窄症または肺水腫が疑われる場合はBNP、NT-proBNPを測定する

・抗GBM抗体は陽性であれば抗GBM病を強く示唆するが、禁忌でない限り確定診断のために腎生検が行われる

・SLEが疑われる場合は抗核抗体、補体、抗ds-DNA抗体などを検査するが、薬剤性SLEが疑われる場合は抗ヒルトン抗体を追加すべき

・抗トランスグルタミナーゼ抗体や抗筋内膜IgA抗体はセリアック病と肺ヘモジデローシスが合併するレーンハミルトン症候群(Lane-Hamilton症候群)で計測する

・特発性肺ヘモジデローシスは30歳未満の小児および若年成人に起こる

 

放射線所見および心エコー所見

・肺胞出血では通常心臓の大きさは正常

・全身性血管炎やリウマチ疾患に関連する肺胞出血では心拡大(心筋炎または心嚢液貯留による)が見られることがある

・僧帽弁狭窄症では左心房拡大により異常な左心の輪郭が見られることがある

・肺梗塞は肺胞出血として現れることがあるがX線写真の特徴は異なる

→肺梗塞は部分的、楔形、胸膜寄りの透過性低下、同側の胸水を認める

・胸部X線でKerley B linesは僧帽弁狭窄症や肺静脈閉塞症の可能性を示唆

・心エコーは僧帽弁狭窄症の評価に使用する、左心機能不全、肺動脈圧の上昇も

 

気管支肺胞洗浄

・肺胞出血の診断には有用だが、病因の特定は難しい

・ARDSの場合では培養、イムノアッセイ(PCP、ウイルス)、細胞診が病因の特定に有用になり得る

 

生検

・上記すべてで診断が不明瞭である場合に肺や腎、皮膚の生検を行う

・生検部位は侵襲が最小限となるところ(皮膚)や診断の可能性が高いところ(通常では肺病理は腎病理よりも特異的)を選択する

・皮疹がある場合、白血球破砕性血管炎やRGPA、その他の血管炎の診断に皮膚生検が有用

・肺毛細血管基底膜に沿った線状のIgG沈着は抗GBM抗体(Goodpasture病)を疑う、時に肺のみに限局する(5-10%の症例)

・リウマチ疾患、特にSLEは肺毛細血管基底膜に沿った顆粒状の免疫複合体沈着が見られる。しかし、免疫沈着物が主にIgAである場合はIgA血管炎(HSP)またはIgA腎症が考えられる

・GPA、MPA、孤立性肺毛細血管炎に起因するDAH患者の肺生検では典型的に毛細血管壁への好中球の浸潤および出血を認める。大血管は関与しない。点状の好中球の集塊および小血管の白血球破砕性血管炎が見られることがある

 

全身所見のないDAH

・薬剤、環境暴露、僧帽弁疾患、出血性疾患、ARDSを引き起こす疾患を除外したら、以下の4の疾患の可能性が残る
①肺に限局した抗GBM抗体疾患(Goodpasture病)
②肺限局型毛細血管炎(MPO-ANCA)
③自己抗体のない肺限局型毛細血管炎
④特発性肺ヘモジデローシス

・Goodpasture病は時折、糸球体腎炎のない肺胞出血として存在するが、抗GBM抗体はしばしば存在せず、診断を確立する唯一の方法は肺組織で線状の免疫染色を確認すること、淡い肺胞出血、肺毛細血管炎のいずれも取りうる

MPO-ANCAの有無に関わらない孤発性肺胞毛細血管炎は、肺限局型の小血管年の一形態である

・ある報告ではANCA陰性の患者を4年間フォローアップしても全身性血管炎を起こさなかった

・特発性肺ヘモジデローシス(IPH)は除外診断。20%のみが成人に起こるが主に若年患者

・小児患者ではセリアック病に関連し、50%でIgAが上昇する

・特発性肺ヘモジデローシスは免疫複合体のない無傷の肺出血を示す肺生検によって確立される

・病理では毛細血管病変に慣れていないことがあり、肺限局型毛細血管炎の症例は特発性肺ヘモジデローシスと診断されている可能性が高い

 

《治療》
支持療法

・酸素療法

・ECMO:抗凝固による出血のリスクあり

・過剰な抗凝固の補正

 

毛細血管炎を伴う肺胞出血

・全身性グルココルチコイド、シクロホスファミド、リツキシマブ、血漿交換が必要
・毛細血管炎(例えば全身性血管炎、抗糸球体基底膜症候群、リウマチ疾患)に起因する肺胞出血患者ではグルココルチコイドの速やかな全身投与が必要
・mPSL500-2000mgを最高5日間投与し、徐々に減量して経口製剤に移行

・GPAやMPAステロイド単独よりもシクロホスファミド、リツキシマブ併用が推奨

・シクロホスファミド(腎機能が正常であれば0.75g/m2)を1回静脈内投与

・リツキシマブでは具体的に375mg/m2を週1回、4週間行う

・重症混合型クリオグロブリン血症ではほとんどが抗ウイルス療法の前(C型肝炎)または後(HIVまたはB型肝炎)の免疫抑制療法で治療する。典型的にはグルココルチコイドパルスとそれに引き続くリツキシマブ、またはシクロホスファミド

 

薬剤誘発性DAH

・被疑薬を中止する

・重症呼吸不全患者では全身性グルココルチコイドを投与する

以下にDOACの場合の対応についてまとめます

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過剰な抗凝固作用または出血性疾患

・出血性素因を補正する

・ビタミンK、4因子プロトロンビン複合体(PCC)、抗線維素溶解薬または血小板輸血

・ITP、TTP、HUSはそれぞれの治療を行う


特発性肺ヘモジデローシス

・全身性グルココルチコイド療法が推奨

・1-2mg/kgのmPSLを投与する

・シクロホスファミド、アザチオプリン、ヒドロキシクロロキンを使用することもある

 

びまん性肺胞障害

・感染に伴う肺胞出血では抗菌薬治療が必要、場合によっては抗ウイルス療法を含む

 

上昇した肺毛細血管圧
・肺静脈狭窄症、肺静脈閉塞性疾患、肺毛細血管血管腫、僧帽弁狭窄症は個別の管理を行う

 

《予後》

・肺胞出血のエピソードは特発性肺ヘモジデローシス、GPA、僧帽弁狭窄症患者では不可逆的な間質性線維症を起こす可能性がある

・さらに重度の進行性閉塞性肺疾患および肺気腫からなる肺胞出血後症候群は微小多発性血管炎による再発性肺胞出血患者にみられる

・短期、長期生存率は肺胞出血の背景疾患によって変化する
→SLE、血管炎、抗糸球体基底膜抗体疾患、特発性肺ヘモジデローシスを有する患者は早期死亡率が25-50%と非常に高い

 

【参考文献】

 UpToDate “The diffuse alveolar hemorrhage syndromes” Last updated Jun 11, 2019.

どう違う?~SLEの分類基準~

 SLEの2大分類基準としてACR1997とSLICC2012があります。今回はこれらの特徴や違い、使い分けについてまとめたいと思います。最後に2019年にACRとEULARから提唱された新しい分類基準についても触れています。いずれの分類基準も臨床でSLEを診断する事を目的とした診断基準ではなく、研究の際に効率良くSLE患者を分ける目的の分類基準であることに注意が必要です。

 

こちらもご覧ください。

 

【ACR criteria 1997(1)

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※観察期間中, 経時的あるいは同時に11項目中4項目以上存在すればSLEと分類する

〈特徴〉

・日光過敏は患者の病歴でも良いが、口腔潰瘍は医師の観察によるもの

・関節炎は2箇所以上で末梢関節に限定、非びらん性であることも強調

・漿膜炎は胸膜炎と心膜炎のみ

・血球異常は白血球とリンパ球減少は2回以上必要

・抗核抗体は蛍光抗体法で、どの時点で陽性でも良い

 

〈欠点〉

・頬部発疹と光線過敏症などの皮膚ループス症状が重複し、過剰に評価されている

・早期のSLEに対しては感度が低い

・一部のループス腎炎は診断出来ない

・神経ループスが痙攣と精神症状のみ

・活動性の指標としての低補体血症が含まれない

 

そして、ACR分類基準1997年で不足している点を追加し、改良したものが以下のSLICC2012の分類基準です。

 

【SLICC 2012(2)

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〈特徴〉

・臨床項目と免疫項目のそれぞれから少なくとも1項目以上、計4項目以上陽性を必要とする

・腎生検でループス腎炎の所見(国際腎臓学会2003年分類に従う)を認めれば、抗核抗体陽性、あるいは抗ds-DNA抗体が陽性であればSLEと診断可能

・皮膚ループスはそれぞれ急性と慢性に分けられた

・脱毛が1項目として加わった

・口腔内潰瘍は『通常無痛性』の記載が除外され、口内炎を呈する他の疾患が除外項目として挙げられた

・関節炎は非びらん性関節炎と定義されていたが、びらんを呈するSLE関節炎も存在するため、『非びらん性』が消された

・関節の圧痛と30分以上のこわばりが関節炎とみなした

線維筋痛症とSLEのオーバーラップもあるため、びまん性疼痛ではなく、関節のラインでの圧痛を確認することが必要

・蛋白尿はテステープ測定ではなく、スポット尿(蛋白尿/尿クレアチニン比)、あるいは蓄尿測定による定量が必要となり、円柱は赤血球円柱に限定された

神経症状として脊髄炎や末梢神経炎も加えられた

・1項目だった血球異常は溶血性貧血、白血球減少、血小板減少として独立した3項目とされた

・リンパ球減少は1500/mm3未満が1000/mm3未満とされ、白血球減少とともに2回以上の異常が、少なくとも1回でよく、他の疾患を除外することとなった

・免疫項目は抗核抗体と抗ds-DNA抗体、抗Sm抗体、抗リン脂質抗体のいずれかの2項目のみであったが、後の3項目は独立し、さらに低補体と直接クームス陽性が加わり、合計6項目となった

・抗ds-DNA抗体はELISA法では特異性が低いため、基準範囲の2倍を超えることとしている

・抗リン脂質抗体については抗β2GP1抗体が加わった

・抗カルジオリピン抗体の定義は非特異的な『低値』は除外された

・抗β2GP1抗体と抗カルジオリピン抗体についてはIgG/IgMに加えてIgAも追加された

・直接クームスに関しては臨床項目の溶血性貧血を満たす場合は重複を避けるため、『溶血性貧血がない場合』としている

〈欠点〉

・早期発症のSLEの診断には依然不利

 

《ACR1997とSLICC2012の感度、特異度》

SLICC2012の元論文(2)では感度、特異度は以下の通りでした

・ACR1997:感度83%、特異度96%

・SLICC2012:感度97%、特異度84%

→ACR1997は“誤診断”が少ない分、“見逃し”が多い

→SLICC2012は“見逃し”が少ない分、“誤診断”が多い

(※ちなみにSLICC2012はUCTD(特定できない結合織病)に対して用いた際に誤診が多い傾向です)

→実臨床ではどちらか一方を使用するのではなく、両方とも使用します

 

 また最近のメタ解析(3)では成人と若年のSLEでACR1997とSLICC2012の感度、特異度が若干異なるようです

成人

・ACR1997:感度89.6%、特異度98.1%

・SLICC2012:感度94.6%、特異度95.5%

若年

・ACR1997:感度84.3%、特異度94.1%

・SLICC2012:感度99.6%、特異度82.0%

→メタ解析の結果だと、成人ではSLICC2012の特異度がACR1997よりも低いものの、上昇していることが驚きです、成人ではSLICC2012単独の使用でも十分有用かもしれません

→一方、若年SLEではACR1997の方が圧倒的に特異度が高いことがわかります、成人と若年のSLEで分類基準を使い分けても良いかもしれません

 

 SLE mimickerを除外し、より真の自己免疫疾患に焦点を当て、さらに若年発症のSLEとSLICCでカバーできない早期のSLEに適応できるように2019年にACRとEULARから新しい分類基準が発表されました。

 

【ACR/EULAR 2019(4)

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・臨床項目7つと免疫項目3つで合計22項目にそれぞれ点数化されており、合計点数10点以上でSLEと分類する〈特徴〉

・抗核抗体の陽性(HEp-2細胞に対して少なくとも80倍以上)が必須項目となっている

・発症早期に比較的頻度が高い『発熱』が項目として追加されている

・SLICC2012を踏襲し、腎生検でclass IIIまたはIVであれば診断確定

・感度96.1%、特異度93.4%とSLICC2012公開当初よりも特異度が高くなっている

・ただし、この分類基準もあくまでも『研究目的』であり、診断は常に臨床医の中にあることを意識することが重要

 

【参考文献】

(1) Hochberg MC. Arthritis Rheum. 1997 Sep; 40 (9): 1725. Updating the American College of Rheumatology revised criteria for the classification of systemic lupus erythematosus.

(2) Petri M, et al. Arthritis Rheum 2012; 64 (8): 2677-86. Derivation and validation of the Systemic Lupus International Collaborating Clinics classification criteria for systemic lupus erythematosus.

(3) Hartman EAR, et al. Autoimmun Rev. 2018 Mar;17(3):316-322. Performance of the 2012 Systemic Lupus International Collaborating Clinics classification criteria versus the 1997 American College of Rheumatology classification criteria in adult and juvenile systemic lupus erythematosus. A systematic review and meta-analysis.

(4) Dörner T, et al. Lancet. 2019 Jun 8;393(10188):2344-2358. Novel paradigms in systemic lupus erythematosus.