リウマチ膠原病徒然日記

リウマチ膠原病疾患に関して日々疑問になったことを中心にまとめたものです。

全身性エリテマトーデスの鑑別疾患

 SLEのmimickerについてまとまった文献があったので、以下に日本語訳を示します。

 ご参考になれば幸いです。

 

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【参考文献】

Gatto M, et al. Nat Rev Rheumatol. 2019 Jan; 15 (1): 30-48. "New therapeutic strategies in systemic lupus erythematosus management."

リウマチ性多発筋痛症 vs 血清反応陰性の高齢発症関節リウマチ

 リウマチ性多発筋痛症(PMR)と血清反応陰性の関節リウマチ(Seronegative RA)はいずれも高齢者の炎症性リウマチ疾患の中で頻度の高い疾患です。

 

 今回はそんな二つの相違点に着目したReviewをご紹介します。

 

 おまけで血清反応陽性と陰性の関節リウマチの違いや、高齢発症と若年発症の関節リウマチの違いまで記載しています。

 

 例のごとく、お忙しい方はまとめをご覧ください。

 

 

まとめ

●PMRの最大の鑑別は高齢発症関節リウマチ(EORA)である(特に血清反応陰性の場合)。

●PMRと診断された患者をフォローすると、20%がSeronegative RAだったという報告がある。

●両者とも朝のこわばり、肩関節の病変、炎症マーカー上昇を来し得る。

●最大の鑑別点は、PMRで末梢の関節炎(手、MCP、PIP関節)や抗CCP抗体が出ない事。

●RFは高齢の健常者で上昇し得るため、陽性だからと言って、否定しない。

●肩関節の関節エコーは両者の鑑別に有用ではない(末梢関節のエコーは有用かも)。

●PMRの分類基準で有名なのでEULAR/ACRの2012年の分類基準だが、RAとの鑑別に使えるかどうかについては賛否両論ある。

●PMRではSeronegative EORA以外の鑑別疾患を除外する事も重要。

●PMRでは一定の割合で炎症マーカー正常が見られるという報告があるが、発表された年、PMRの診断根拠を吟味すべき。組み入れにそもそもSeronegative RAが含まれている可能性がある。

●PMRでは15mgのグルココルチコイドを3週間投与しても完全に反応するのは半数という報告があるが、この報告はSeronegative RAを含んでいる可能性が否定できないため、まだ『狭義のPMRは原則治療反応性が良い』と考えてよいだろう。

●一方他の鑑別疾患でもPSL15mgにほとんど反応してしまうので注意。

●血清反応陰性のRAは2010年のACR/EULAR分類基準の性質上、RFや抗CCP抗体が陰性だと、分類基準を満たすために、炎症マーカーが高くないといけなかったり、罹患関節数が多くないといけないため、血清反応陽性RAよりも診断時の活動性が高く、治療の反応がやや遅いが、治療反応性は極めて良好。

●ただし、2年間の観察では関節破壊は血清反応陽性RAと同程度なので、DMARDsによる治療は必要だろう。

 

概要

リウマチ性多発筋痛症

●70~80歳台で有病率が最も高く、90歳までゆっくり増加する。

●典型的な症状は両肩・大腿近位部の痛みや45分以上持続する朝こわばり。

●炎症マーカー(CRPや赤沈)は通常上昇するが、低値(もともとは”正常”であるという記載を小生が修正)である事で否定はできない。

 

※Lancet 2017のPMRのReview(PMID=28774422)では7~20%の症例で赤沈40mm/h未満とされています。言葉が一人歩きして、いろいろな文献ではこの40mm/hが『正常』と誤訳されています。

 

※さらに問題点は、Lancet Reviewで引用された元文献は1997年(PMID=9040299)と1999年であり、PMRの診断は①50歳以上、②近位側の痛み、③少量ステロイドに反応することでなされております。またこの年代は、抗CCP抗体が登場した1998年、ELISAの第一世代が使われ始めた2000年(PMID=10643712)の境界の時期であり、Seronegative RAの概念が存在していなかった事を考えると、PMRの最大の鑑別であるSeronegative RAの除外がなされていなかった可能性があります。

 

CRPに関しては用いている検査キットによって違いが生じる可能性があります。海外の正常の基準は往々にして日本のキットと異なりますので、海外の”CRP正常のPMR”が必ずしも日本でも同様と考えるべきではありません。

 

※なお、2018年の論文(PMID=29686435)ですら、炎症マーカー正常のPMRを謳うものがありますが、こちらでは関節エコーの所見が大事だと言っております。しかし関節エコーはEULAR/ACRの2012年のPMRの分類基準でも言われているように、肝心な関節リウマチとPMRを区別はできないと言っています。

 

※結論から申しますと、炎症マーカーが正常のPMRは関節リウマチの可能性を考えるべきであります。もちろん、可能性がゼロではありませんが、稀と考えるべきです(全PMRの1.5%→PMID=30649507)。

 

関節リウマチ

●関節リウマチは高齢者でも一般的な炎症性疾患であり、有病率は2%(PMID=11354562)。

●RF、抗CCP抗体陰性のものを血清反応陰性関節リウマチ(Seronegative RA)と呼ぶ。

 

※上述したように、抗CCP抗体と総称されたのが1998年頃、ELISAの第一世代が登場したのが2000年頃です。

 

●Seronegative RAはPMRのmimickerで、いくつかの研究では最初にPMRと診断された患者で20%以上がフォローアップ期間中にSeronegative RAと診断が変わったという(PMID=11602472)。

●1992年にHealey(PMID=1629826)はPMRとSeronegative RAは同一疾患である可能性を示唆したが、最近になり、この説はまた密かに浮上している(PMID=28638694)。

 

診断と分類基準

リウマチ性多発筋痛症

●診断のための特異的な検査はない。

●他のmimickerを除外することが大事。特に高齢発症の関節リウマチ(Elderly onset RA: EORA)は最大の鑑別。

●グルココルチコイド治療に迅速に反応することが診断の基準として用いられてきたが、15mgの経口グルココルチコイドを3週間投与しても完全に反応する患者は半数という報告がある(PMID=17530680)。

 

※この報告は2007年のものであり、関節リウマチの2010年の分類基準よりも以前になります。PMRの診断根拠は①炎症マーカー上昇(赤沈>30mm/h)、②朝のこわばり30分以上、③四肢近位の痛みとされています。Inclusionされた症例でもフォローアップで関節リウマチと判明したものもあります。診断があいまい、関節リウマチの完全な除外がされていない可能性がある事を加味すると、『PMRの半数はグルココルチコイドに反応しない』と結論づけるのは時期尚早かもしれません。

 

※また、15mgの経口グルココルチコイドへの反応は他のPMR mimickerでもしばしば見られるので注意が必要です。

 

●いくつかの分類基準があるが、最も新しいのはEULAR/ACRが2012年に出した分類基準である。

 

2012年 EULAR/ACR分類基準

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関節エコーなし:4点以上でPMRと分類

関節エコーあり:5点以上でPMRと分類

 

※この分類基準では関節エコーで関節リウマチとPMRを区別できないと結論づけておりますが、最もPMRらしい所見は末梢関節の滑膜炎がない事とのことです。RFやACPAが陰性であることも鑑別点に上がりますが、後述の通り、RFに関しては年齢とともに上昇する可能性があるため、RF陽性だからPMRは否定的と考えるべきではありません。

 

※ちなみに分類基準は診断のための基準ではないことに注意してください。

 

●EULAR/ACRの2012年の分類基準に関しては賛否両論があり、関節リウマチとPMRを区別できたという報告(PMID=24297384)もあれば、出来なかった(特に血清反応陰性の関節リウマチ)という報告(PMID=26834222)もある。

→『分類基準を満たすためPMR』という診療は危ないです


関節リウマチ

●1987年のACR分類基準と2010年のACR/EULAR分類基準がある。

●1987年のACR分類と比べて、2010年のACR/EULAR分類基準は血清マーカー(RFやACPA)を重視しているため、血清反応陰性の関節リウマチを見逃す可能性がある。

→ある報告では血清反応陰性の関節リウマチのうち、27.5%しか2010年のACR/EULAR分類基準を満たさなかったようです(PMID=29624625)。

→別の報告では234人のうち15.4%が血清反応陰性でした(PMID=30564452)。

 

1987年 ACR分類基準

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4項目以上と関節リウマチと分類

 

2010年ACR/EULAR分類基準

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6点以上を関節リウマチと分類
 

血清反応陽性 vs 血清反応陰性の関節リウマチ

●RFや抗CCP抗体は予後不良因子とされている。

●一方で、血清反応陰性の関節リウマチ患者の方が、関節エコーによる関節と腱スコア、腫脹関節、疾患活動性、医師のグローバルアセスメント(PGA)が高いという報告がある(PMID=30564452)。

●血清反応陰性の関節リウマチと比べて、血清反応陽性の関節リウマチは放射線で確認できる関節破壊の割り合いが高いという報告(PMID=22110122)があれば、上記の報告では、関節破壊の進行は血清反応陰性の関節リウマチと同程度であったという報告もある(PMID=30564452)。

 

※血清反応陰性の関節リウマチは2010年のACR/EULAR分類基準を満たそうとすると、RF、抗CCP抗体が陰性の分、どうしても罹患関節数が多くなったり、炎症マーカーが高くなったりするため、血清反応陽性の関節リウマチよりも診断時の疾患活動性が高く出てしまいます。治療反応はやや遅いですが、治療効果は良好という認識です。

 

※関節破壊の進行に関しては血清反応陽性と同等という上記の報告(PMID=30564452)がありますが、観察期間が2年と短いです。いずれにせよ、DMARDsによる治療は必要かもしれません。

 

※血清反応陽性の関節リウマチは関節破壊の高リスクであるため、DMARDsによる集学的な治療が必要な事は言うまでもありません(PMID=15308518/25903353)。

 

高齢発症 vs 若年発症の関節リウマチの違い 

●他疾患同様、関節リウマチには年齢層によって異なる集団がある。

●以下に高齢発症(Elderly onset RA: EORA)と若年発症(Young onset RA: YORA)の関節リウマチの違いをまとめる。

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DMARD:疾患修飾抗リウマチ薬、EORA:高齢発症型関節リウマチ、HAQ:健康評価質問票、N.E.:評価されていない、PMR:リウマチ性多発筋痛症、YORA:若年発症型関節リウマチ

 

●YORAは典型的には手指、手関節、足趾の小関節に対照的に生じる多関節炎であるが、肩関節病変はない。一方でEORAは25%がPMR様に発症する。

●RF陽性率に対する年齢の影響はよく知られており、高齢者では免疫系の加齢に伴う調節障害により、RFが高値になる可能性があるという説を唱えるものもいる(PMID=23556986)。

●高齢患者では多剤併用(ポリファーマシー)や他の併存疾患もあり、若年者と比較して積極的な治療が副作用を助長する可能性がある。

→Real world dataでも高齢者の方が生物学的製剤の使用率や2剤以上のDMARDsの併用率が低いというデータがあります(PMID=16414968)。

 

高齢発症関節リウマチ vs リウマチ性多発筋痛症の相違点

症状

●EORAはPMRの最大の鑑別。

●急性発症の肩関節炎に加えて、両疾患の特徴は45分以上の朝のこわばり、赤沈の上昇、低用量プレドニゾロンへの良好な反応性がある。

●臨床的にはプレドニゾロン12.5~25mg/日の治療で有意な改善が得られない場合は純粋なPMR以外の診断を視野に入れるべき。

●また、プレドニゾンプレドニゾロン以外のグルココルチコイドへの変更が有効な場合もあり、考慮すべき。

 

※ここはエビデンスは十分ではありませんが、エキスパートオピニオンとして、重要です。すでにPMRの半数は15mgのPSLに反応しなかったという報告をご紹介しましたが、基本的にはPSLの反応性がとても良いというのがPMRの特徴と考えるべきです。反応が乏しい場合は他の疾患を考慮する。そしてプレドニゾロンが無効の際にリンデロンにすると有効の場合もあります。

 

●発熱、食思不振、体重減少、倦怠感などの全身症状はEORA、PMRの両方でみられる可能性がある。

 

※ここでいう発熱は38度未満の微熱を指します。PMRで高熱が一過性に出る可能性はありますが、基本的に高熱が持続する場合はGCAを含めた他疾患を考えるべきでしょう。

 

●末梢の関節炎はPMRよりも関節リウマチ寄りだが、PMRでも手関節や膝関節に非対称性の単関節炎や多発単関節炎を呈することがある。しかし関節炎はびらん性ではなく、一過性、軽度でコルチコステロイドの増量で完全に消退する。

●PMRの関節炎はEORAとは対照的に再発時はほとんどが単関節炎として出現する。

●手関節炎が発症しているときに少なくとも1つのMCP、PIPに関節炎がある場合はPMRの診断の確率は下がる。

→末梢の関節炎はやはり関節リウマチらしさを上げます。ある前向き試験の結果では手関節、MCP関節、PIP関節に関節炎を呈するPMRは4.8%しかないといいます(PMID=18980958)。

●しかし末梢手指の浮腫、手根管症候群はPMRでもEORAでも見られる。

●特にコルチコステロイドに反応性で予後良好(Remitting)、血清反応陰性(Seronegative)、左右対称性(Symmetrical)、滑膜炎(Synovitis)、手背の圧痕性浮腫(Pitting Edema)はPMR患者で頻繁に見られる。

 

検査

●EORAとPMRを鑑別するものとしての抗CCP抗体の有用性が協調されている。一方で前述したとおり、RFに関しては高齢で上昇するため、RF陽性でPMRを除外するべきではない

●肩と股関節の関節エコーはEULAR/ACRの2012年の分類基準で言われた通り、肩のその他の病変とPMRの鑑別に有用かもしれない。

●PMRでは三角筋下滑液包炎、上腕二頭筋腱鞘炎、転子部滑液包炎、滑膜炎を認める。

●しかし、上述した通り、関節エコーはPMRと関節リウマチとの鑑別には不向き。

 

※肩関節の関節エコーはPMRとEORAを鑑別出来ませんが、末梢の関節炎があるかを関節エコーで調べに行くことは重要であると考えます。

 

●18F-fluorodeoxyglucose PET-CTはPMRとEORAの鑑別の方法として提案されている。

→しかし、評価領域の数に差がある点や手技が標準化されていない点、PETへのアクセスが臨床現場では制限されている点、などの問題がある。

●PMRとEORAが同一の患者で存在し得ることも診断を難しくしている。

 

病態生理

●SeronegativeなEORAとPMRは同じHLAを有するという報告がある(PMID=11196513)が、まだ議論の余地がある。

●病原体関連分子パターンや内因性ペプチドを認識し、自然免疫応答を活性化するToll様受容体が活動性PMR患者の末梢単核球や関節リウマチの滑膜細胞に多く存在している。

●しかし、炎症性疾患や感染症と関連するTLR4遺伝子のコードバリアント(受容体機能を変化させ得るAsp299GlyとThr399lle)はPMR患者とSeronegative EORA患者で違いはなかった。

●NK細胞は定義上は骨破壊を起こすことで重要と考えられているが、PMRでは存在しない。

●結局のところ、両者の発症における誘因は未だ不明。

 

治療

リウマチ性多発筋痛症の治療

●PMRの治療には通常12.5~25.0mgのプレドニゾロンを用いる(PMID=26352874)。

●しかしこの用量はBMIや併存疾患、ステロイド関連副作用のリスクに応じて、患者個別に調整されるべきである。

PMR間に関するEULAR/ACRの推奨は1日のステロイド用量を分割するのではなく、単回投与する事を示唆している

→これは一部のエキスパートオピニオンによるが、分割の方が有益である場合がある。

ステロイドの開始量と減量レジメンについては十分研究されていない。

●初期量を3~4週間維持した後、4~8週間以内にプレドニゾロン10mgまで漸減することが推奨されている(PMID=26352874/26359489)。

●初期量のあとは、10mg/日になるまで2~4週ごとにPSL2.5mgずつ減量し、その後は1mgずつ1か月ごとに減量することが推奨される。

●再発(PMR症状の再発と炎症マーカーの上昇によって定義)した場合は、再発前の用量まで増量し、その後4~8週間以内に再発した時の用量まで漸減する。

●一部の患者では少量のグルココルチコイドが何年も、場合によっては一生必要な場合がある。

●近年、PMR治療でグルココルチコイドを減量させる薬剤としてメトトレキサートが提案されている。特に7.5~10.0mg/週の少量MTXは再発、治療の長期化、重篤な有害事象のリスクがある場合に、経口グルココルチコイドと併用する初期治療として、再発時やグルココルチコイドの反応不十分、グルココルチコイドの有害事象がある場合には、フォローアップ中の治療として提案されている。

ミゾリビンはミコフェノール酸モフェチルと類似した作用機序を持つ経口免疫抑制薬で、イノシン一リン酸脱水素酵素を阻害する作用を持つが、PMRやSeronegative EORA患者でグルココルチコイド量を減量させる薬剤としてMTXと劣らないと評価させた。

→しかし、日本では1984年から利用可能だが、いくつかの国では利用できないことが問題点。

●ヒドロクロロキン、アザチオプリン、レフルノミドなどの合成DMARDsはPMRでのデータが少ないため、治療オプションとして考えられていない。

●2015年のEULAR/ACRのRecommendationではPMRの治療にTNFα阻害薬を使用しないことを強く推奨されている。これはSeronegative EORAとは真逆である。

●IL-6阻害薬としてトシリズマブがPMRの治療として注目されたが、5つのRCTの結果にいて、MTX不応やTNF阻害薬不応の患者において有効性や安全性が実証されている。

 

高齢発症関節リウマチの治療

●EORAにおいてグルココルチコイドの全身投与の役割は制限されている。

●グルココルチコイドを使用してもDMARDなどを開始または変更する際の短期治療にとどめ、迅速に減量するべきである。

●一方で高齢者は糖尿病、高血圧症、骨粗しょう症、眼症状などのグルココルチコイド関連の副作用が起こりやすくなっている。

●よって、ステロイド治療のリスクとベネフィットを開始前に評価するべきである。

 

※その他の治療に関しては関節リウマチに準じます。患者ごとに治療のリスクは考慮すべきです。
 

【参考文献】

 Ciro Manzo, et al. EMJ . 2019;4[3]:111-119. "Polymyalgia Rheumatica And Seronegative Elderly-Onset Rheumatoid Arthritis: Two Different Diseases With Many Similarities"

Pubmedに収載されていない論文。Impact factorもそれほど高くない雑誌です。

→著者は炎症マーカー正常のPMRが存在すると訴える人物です。

強皮症の新しい治療ターゲット~IL-4/IL-13~

 強皮症は皮膚硬化を起こす自己免疫疾患ですが、間質性肺炎、心血管疾患、腎病変、消化管病変など様々な合併症が起こります。

 

 今までなかなか特効薬がなく、患者さんに申し訳なく思って来ましたが、病態が少しずつ解明され、新しい治療薬が出てくるようになりました。

 

 今日は簡単に線維化が起こるメカニズムと今海外で治験中の新薬についてご紹介いたします。

 

 お時間がない方はまとめをご覧ください。

 

 

強皮症とは

●皮膚、内臓に線維化を起こす自己免疫疾患。

●有病率は100万人あたり276~443人。

→日本では患者数は不明ですが、難病情報センターのHPからの情報では推定患者数は 2万人いると考えられています。

●発生率は1年あたり100万人あたり15~20件。

●男女比は1:4で、女性に多い。

●平均発症年齢は40~50歳。

●皮膚の線維化は手指、遠位四肢、顔に限局する限局皮膚硬化型全身性強皮症(lcSSc)とびまん性に皮膚硬化が起こる、びまん皮膚硬化型全身性強皮症(dcSSc)に分類される。

→ちなみに限局性強皮症は違う病気です。

 

全身性強皮症の病態

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●病相にはびまん性の血管障害、その後に自己免疫反応と軽度の炎症とそれに続く線維化が関与すると考えられている。

 

全身性強皮症におけるT細胞の役割

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●T細胞は、Th1Th2Th17TfhTregなどがあるが、全身性強皮症に関与するのはTh2である。

 

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●全身性強皮症の線維化が起こる前に、皮膚と肺の両方でTh2が優位になっている

●Th2は早期から血管周囲に存在する。

●Th2の分泌するサイトカインで重要なものはIL-4IL-13である。

●これらのサイトカインは、全身性強皮症の患者で有意に上昇している。

●また、IL-4とIL-13の産生を促進するのがCXCL4で、抗血管新生特性を持つという報告もある(PMID=24350901, NEJM 2014)。

 

インターロイキン-4(IL-4)の作用

●IL-4は強皮症以外にも心臓、肺、肝臓の線維化に関与することが知られている。

●In vitroではIL-4はヒト線維芽細胞を刺激して増殖させ、筋線維芽細胞に分化させてコラーゲンを生成する。

●IL-4はマクロファージをM2へ分化させ、さらにマクロファージにインスリン様成長因子-I(IGF-I)をSTAT6を介して分泌させることで筋線維芽細胞をアポトーシスから保護する。

●TSKマウス(全身性強皮症のモデルマウス)ではIL-4受容体αの発現が上昇しており、IL-4に反応できない遺伝的背景に戻し交配をすると皮膚硬化症が予防できる。さらにこの戻し交配はコラーゲンの長さ、皮膚の厚さ、ヒドロキシプロリン含有量を正常化し、トポイソメラーゼIに対する抗体形成を防ぐ。

●さらにこのモデルマウスでは、IL-4の中和抗体を投与する事で真皮の線維化の発症が予防され、真皮のコラーゲン量が正常化することが知られている。(PMID=9754550, Eur J Immunol 1998)。

●全身性強皮症患者では病変皮膚のCD4/CD8二重陽性T細胞が高レベルでIL-4を産生する可能性がある。

●IL-4は全身性強皮症患者の単球でa-smooth muscle actin(a-SMA)の発現を誘導し、これにより、筋線維芽細胞への単球の成熟が増加する。

●IL-4はコラーゲン遺伝子発現の転写調節に影響し、コラーゲンmRNAの安定性と転写を増加させるk十により、線維芽細胞におけるコラーゲン蛋白質の生合成を促進する。

 

インターロイキン-13(IL-13)の作用

●IL-4と合わせて、IL-13も様々な線維症に関連する。

●IL-13は線維芽細胞の増殖と分化を直接活性化し、I型コラーゲンと他の重要な線維症関連遺伝子(a-SMAなど)の発現を誘発する。

●マウスモデルでは、IL-13の過剰発現は肺線維症を引き起こすが、IL-13の遺伝子欠損では肺線維症の程度は弱まる。

●住血吸虫症によって誘発される実験的な肝線維症の発症は、IL-13阻害剤によって阻止することができる。

●IL-13は筋線維芽細胞の増殖を刺激するが、この活動は喘息の気道リモデリングにおいてSTAT6に依存している。

●さらに、IL-13は、JAK/STAT6シグナル経路を活性化してPDGFを生成し、rxtracellular signal-regulated kinase(ERK)1/2 mitogen-activated protein kinase(MAPK) signalingの活性化により、培養マウス気道線維芽細胞におけるコラーゲンI産生を刺激することがわかった。

●IL-13とIL-4は、TGF-β依存性とTGF-β非依存性の両方で線維症を誘発するよう。

●IL-4と同様に、IL-13もマクロファージのTGF-β産生を刺激することにより線維化効果を発揮する。

●全身性強皮症では、血清と病変組織のIL-13値が上昇している。

●IL-13は線維芽細胞を刺激して、細胞外マトリックスを増殖と合成をする。

●CD8陽性細胞障害性Tリンパ球は、高いレベルのIL-13を分泌する細胞型であり、全身性硬化症の患者の皮膚線維症を媒介することが示された。

●実際、IL-13を産生するCD8陽性T細胞は、全身性強皮症患者の皮膚にホーミング受容体を持つことが示されている。

●健康な皮膚線維芽細胞とのインキュベーションにより、これらの細胞から細胞外マトリックス(ECM)が上昇し、T細胞と線維症の間の機能的リンクが示される。

●また、全身性強皮症患者からのIL-13を分泌するCD3陽性T細胞を健康なドナーの皮膚線維芽細胞と一緒にインキュベートすると、コラーゲン遺伝子の発現が上昇することもわかった。これは抗IL-13​​抗体で減らすことができる。

●主にSTAT3を介して信号を送るIL-6とは対照的に、IL-13の下流の信号メカニズムは主にSTAT6によって媒介される。

 

全身性強皮症の治療

●現在使用される薬剤としては、血管拡張薬(カルシウム拮抗薬、プロスタノイド、ホスホジエステラーゼ5阻害薬、内皮受容体拮抗薬)、免疫抑制薬(ミコフェノール酸モフェチル、メトトレキサート、シクロホスファミド、コルチコステロイド、IVIGなど)が含まれる。

●しかし、満足できるものはなく、①血管障害、②炎症、③線維化の病相のいずれかに作用するのみである。

●初期のびまん性皮膚硬化型全身性強皮症におけるメトトレキサートや、間質性肺炎に対するPOCYやIVCYが有効であることはいくつかのRCTで示されている。

●ミコフェノール酸モフェチルは肺線維症の第一選択薬としてますます使用されている。

●自家造血幹細胞移植は臓器不全のリスクがあり、免疫抑制薬に治療抵抗性の進行性疾患患者にとって良い選択肢である。

●近年、標的治療が試されている(TNFα阻害薬、抗CD20薬、抗BAFF薬、アバタセプト、抗TGF-β薬、抗IL-6薬、イマチニブ、ニロチニブなど)。

●可能性のある新しい治療ターゲットは上記の病態に基づいて仮説を立てることができる。

●例えばIL-4やIL-13が新たな治療ターゲットになり得る。

 

全身性強皮症の新たな治療ターゲット

●以下にIL-4とIL-13シグナル伝達経路とその阻害薬の候補を示す。

・抗IL-4/IL-13抗体(SAR156597)

・抗IL-4受容体抗体(デュピルマブ)

・JAK阻害薬(バリシチニブ)

 

IL-4/IL-13阻害薬~ロミルキマブ~

 上記でIL-4とIL-13が線維化に関与することを示しましたが、これを中和する人工ヒト化二重特異性免疫グロブリンG4抗体であるロミルキマブの第IIa相ランダム化二重盲検プラセボ対照試験(NCT02921971)の結果が2020年のEULARで発表されました。まだ論文化されていないため、学会発表の抄録だけご紹介します。

 

方法

●免疫抑制療法の背景の有無にかかわらず、びまん皮膚硬化型全身性強皮症患者(疾患期間36か月以上、mRSS 10-35)を対象。

●患者をランダムに皮下ロミルキマブ200mgまたはプラセボを24週間投与する群に、全身性強皮症性間質性肺疾患の病歴に基づいて層別化。

●主要エンドポイントは、ベースラインから24週目までのmRSSの平均変化で、副次的評価項目はFVC(努力肺活量)/DLco(肺拡散能)HAQ-DI

●すべての分析は、片側p値<0.05を採用。

 

結果

●治療選択(プラセボ59.2% vs ロミルキマブ52.1%)を含む背景で、同様のベースライン特性(Table 1)を持つ97人の患者がランダム化された。

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プラセボ群で6人(12.2%)とロミルキマブ群で4人(8.3%)の患者は、早い段階で試験治療を中止。

 

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 ●主要エンドポイントであるmRSS(皮膚硬化スコア)は、プラセボ群とロミルキマブ群のmRSS(皮膚硬化スコア)はそれぞれ-2.45(0.85)、-4.76(0.86)低下しており、ロミルキマブ群で-2.31(1.219の差で有意に低下していた(p=0.029)(Table 2)。

●階層化基準に基づくサブグループ分析では、有意差はなし(p=0.731)。

●両治療群に基づくサブグループ分析は同様の治療効果を示し、プラセボ群を差し引いたmRSSの差は-2.69(1.83)および-2.38(1.59)であり、背景治療とロミルキマブ群の間の相加効果を示唆(Table 2)。

●副次的評価項目では、ロミルキマブ群とプラセボ群間に統計的に有意差はなかったが、ロミルキマブを使用した群ではFVCの減少は数値的に少なかった(Table 2)。

全体的な疼痛、レイノー症候群、手指潰瘍、およびEQ-5D-5L(健康関連QOL測定スコア)ではロミルキマブ使用群で低い傾向(Table 2)。

有害事象両群で有意差なし(プラセボ群 83.7% vs ロミルキマブ群 83.3%)。

プラセボ群とロミルキマブ群で重篤な有害事象が認められた患者はそれぞれ5人と4人。

●両群で1人ずつ死亡例が発生した(プラセボ群-心筋症、ロミルキマブ群-強皮症腎クリーゼ)。

 

まとめ

●全身性強皮症の病相にはびまん性の血管障害、その後に自己免疫反応と軽度の炎症とそれに続く線維化がある。

線維化にはTh2から産生されるIL-4IL-13が関与する。

●IL-4とIL-13を中和する人工ヒト化二重特異性免疫グロブリンG4抗体であるロミルキマブの第IIa相ランダム化二重盲検プラセボ対照試験の結果、皮膚硬化スコアは有意に低下、肺活量肺拡散能全体的な疼痛、レイノー症候群、手指潰瘍、およびEQ-5D-5L(健康関連QOL測定スコア)はロミルキマブ使用群で低い傾向。なお、有害事象はプラセボ群と同等で比較的安全。

●その他、IL-13の細胞内シグナル伝達経路はJAK/STAT6であるため、一部の患者ではJAK阻害薬も有効かもしれない。

 

【参考文献】

●Yannick Allanore, et, al. Nat Rev Dis Primers . 2015 Apr 23;1:15002. "Systemic Sclerosis" 

→全身性強皮症のReview

●Giulia Gasparini, et al. Cytokine . 2020 Jan;125:154799. "Interleukin-4 and interleukin-13 as Possible Therapeutic Targets in Systemic Sclerosis" 

→今回の論文『インターロイキン4と13が全身性強皮症の炎症と線維化に関与する』

●Jörg H W Distler, et al. Nat Rev Rheumatol . 2019 Dec;15(12):705-730. "Shared and Distinct Mechanisms of Fibrosis" 

→Nature Reviewの論文『線維化のメカニズムに関連する免疫細胞について』

関節リウマチは予防可能か?

 

 かつては関節の変形を防ぐことが出来なかった関節リウマチですが、早期発見、早期治療、そして治療選択の多様化のため、関節予後は各段と改善しました。

 今では関節の著明な変形を見る事が少なくなったという言うぐらいです。

 

 そこで、次の湧いてきたのは『そもそも関節リウマチの発症を予防出来ないか』という疑問です。

 

 前回関節リウマチの発症には6つのフェーズがあるとお伝えしました。

 

図:関節リウマチの6つの進展フェーズ

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 遺伝的要因、環境要因、局所(肺、歯槽、腸管)の自己免疫反応から全身性の自己免疫反応(RF、抗CCP抗体陽転化)が起こり、臨床的に関節炎のない関節痛の状態、そして未分類関節炎を経て、関節リウマチが起こるという流れでしたが、どの段階で介入すれば良いか疑問が湧きますよね。

 

 今回、関節リウマチの発症予防に割とついてまとまった論文があったので、ご紹介したいと思います。例のごとく、お時間がない方は最後のCommentsだけでも読んで感想をください。

 

 

概論  

 

●関節リウマチは世界人口のおよそ1%が罹患している一般的な全身性自己免疫性炎症性疾患である。

●罹患年齢は50代にピークがある。

●関節リウマチの病因には遺伝的要因環境要因があり、遺伝的に感受性がある個人において、環境因子が特異的な翻訳後修飾を誘導し、免疫系の活性化を引き起こすと考えられている。

●その中で、遺伝的要因の関与はわずかであり、環境要因が関節リウマチの発症に重要な役割を担う事が分かってきた。

●環境要因の中で、喫煙は唯一、再現性を持って関節リウマチの発展リスクを増加させる。

●本論文の目的は関節リウマチの予防のためのエビデンスを再検討する事である。

 

関節リウマチを予防するためにどんな戦略を考えるべきか

●心血管疾患、腎疾患、肺疾患などの慢性疾患ではダイエット、血糖や脂質異常の薬剤を用いたコントロール、禁煙が予防プログラムとして提唱されている。

●関節リウマチでは早期から治療介入する事で長期予後が改善するが知られている。

●関節炎を発症する前から早期に介入する事は、有効である可能性があると言われる。

●自己免疫性疾患の動物モデルでは、早期に治療介入する事で疾患の発展を予防した。

●シェーグレン症候群のモデルマウスでもヒドロキシクロロキンとtotal glucosides of peony(TGP)を投与することで、疾患の発症を遅らせる事が出来た(PMID=23333492)。

●関節リウマチのSKGマウスモデルでもメトトレキサートを投与する事で関節炎の発展を抑制できた(PMID=19578278)。

●ヒトでも薬物治療による関節リウマチの予防効果や、環境因子、ライフスタイルを変更する事の効果を評価するいくつかの臨床試験が進行中である。

 

 

関節リウマチの予防戦略はどんな方に有効か

●人口の1%しか罹患していないため、予防介入の試験をしようとすると、膨大なサンプルサイズとフォロー期間が必要となる

●しかし、関節リウマチ発症のハイリスク群に着目すると、より予防介入の試験がやりやすいかもしれない。

●ハイリスクの一つには一親等に関節リウマチがいる方(First-degree relatives of patients with RA: FDR-RA)が挙げられる。

FDA-RAの方で関節リウマチに進展するオッズ比は一般人口の5倍である(PMID=23897126)。

●遺伝的要因(FDR-RAは関節リウマチの進展に寄与するが、環境要因もリスクを促進する。

喫煙高齢FDA-RAの方において関節炎の有病率と罹患率の増加に関係する。

●50歳未満のFDR-RAの方で10 pack-years(10本/日×喫煙年数)以上の喫煙がある場合は、50歳未満で非喫煙者の方と比較して関節炎のリスクが高い(OR4.39(95%CI 2.22-8.66))

●臨床的な症状が起こる前の段階を"関節リウマチに関連した全身の自己免疫反応"と言うが、この時期は抗CCP抗体などが陽性となる。

●FDR-RAの方で抗CCP抗体が陽性となるのは3~6%で、一般人口の1%と比べて高い(PMID=28110385)。

●FDR-RAの方で抗CCP抗体が陽性となるのは以下の通り(PMID=28110385)。

 -女性(OR2.7(95%CI 1.1-6.5))

 -喫煙(OR1.8(95%CI 1.0-3.3))

 -年齢(45~55歳)(OR3.9(95%CI 1.6-9.2))

●女性のFDR-RAでは閉経後または閉経後初めの1年がACPA陽性と関連した(OR3.0(95%CI 1.0-8.9))。

●上記より、FDR-RA群かつ喫煙者閉経後早期の方関節リウマチのスクリーニングをするメリットがある

●しかし多くの関節リウマチを発症した患者はFDA-RAでもなければ特異的な環境要因もない。

●van de Stadtらは血清マーカー、臨床的、環境因子に基づいて、5年以内に関節リウマチを罹患する確率を、低リスク、中等度リスク、高リスクの3つに分けて、予測モデルを作成した(PMID=23178208)。

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●この予測ルールによると、高リスク群は低リスク群と比較して、関節リウマチに進展するhazard ratio(HR)が14.8(95%CI 8.4-28.3)であった。

 

関節リウマチの予防のためにどんな薬物療法が考えられるか

●いくつかの臨床試験は最近発症した未分類関節炎に焦点を当てている。

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以下に各試験の詳細を記載する。

PROMPT試験

低用量MTX未分類関節炎(phase E)が関節リウマチへ進展する事を予防できるかを見ている。

●12か月後MTXは漸減され、患者は30か月フォローされる。

●結果、ACPA陽性患者はMTX治療により関節リウマチの発症が有意に遅れた。

●しかし、"PROMPT試験"の事後解析では、妥当性が確認された上記の予測ルールを用いて、MTXの1年間の投与は、関節リウマチ発症に対する陽性適中率が84%を超える患者に対してのみ、関節リウマチ発症の予防に有効であることが実証された。

 

SAVE(Stop arthritis very early)試験

16週間未満の炎症性関節炎(phase E)患者383人に単回の120mgのmPSLを投与した場合、プラセボと比較して関節リウマチの発症や薬剤フリーの臨床的寛解に有意な差はなかった。

 

ADJUST試験

●ADJUST: Abatacept study to determine the effectiveness in preventing the development of RA in patients with undifferentiated inflammatory arthritis

●50人のACPA陽性の未分類関節炎患者にアバタセプトまたはプラセボを6か月投与。

●アバタセプトは~10 mg/kg、30分で投与(Days 1, 15, 29, 57, 85, 113, 141, 169)。 

●1年間のフォロー後、アバタセプトとプラセボ群で関節リウマチになったのは46% vs 67%。

 

Bosらの試験

ACPA陽性の関節炎を認めない関節痛患者に100mgのデキサメサゾンを2回投与した群プラセボをを比較した試験。

→この試験はphase Dの患者を対象としています。

●デキサメサゾン群は自己抗体の抗体価を減らしたが、関節炎の進展は抑制しなかった(20% vs 21%)。

 

PRAIRI試験

関節リウマチの高リスク患者リツキシマブ1000mg単回投与プラセボを比較。

●高リスク患者は、2つの自己抗体(IgM-RF、ACPA)と関節痛があり、少なくとも(1)CRP>0.6mg/l、(2)MRIやエコーで認められる無症候性の滑膜炎、の内1つを満たす患者と定義した。

●81人の被験者がリツキシマブで治療された。

●フォローアップの中央値は29か月。

●フォローアップ期間中の関節炎への進展リスクはプラセボ群で40%、リツキシマブ投与群で34%で有意差はなかった。

●しかし、12か月の時点でリツキシマブ単回投与群は関節リウマチの発症は予防しなかったが、関節炎の進展を遅らせられた。

 

DNORA試験

12~16週間1か所以上の滑膜炎を有する患者を対象。

インフリキシマブ+メトトレキサー vs メトトレキサート単剤 vs プラセボの試験。

●フォローアップ期間は12か月。

●12か月時点で寛解率はインフリキシマブ+MTX群で32.4%、MTX単剤は14.3%、プラセボでは0%と有意な差が出た。

●2年の時点でインフリキシマブ+MTXでは25%が寛解を維持し、MTX単剤で寛解維持出来たのは0%だった。

 

●あるシステマティックレビューとメタ解析ではグルココルチコイドcsDMARDsbDMARDsの関節リウマチ発展の予防または発症の遷延の効果が示された(PMID=29884751)。

●このメタ解析は関節炎を認めない関節痛患者への介入を対象としたものであり、9つのRCT試験を含んでいるが、2つの試験(PMID=19363022, 30504445)では、52週間時点での薬物療法は関節リウマチの発症を十分に減少させなかったが、7つの試験では未分類関節炎に対する薬物療法は関節リウマチの発症を十分に遅らせた

 

●いくつかのランダム化試験が現在進行中(例:アバタセプト(ABT)、アトルバスタチン、ヒドロキシクロロキン(HCQ)、メトトレキサート)。

●APIPPRA試験:自己抗体が陽性の関節痛患者にABTを投与。

●StopRA試験:自己抗体陽性(ACPAが正常上限の2倍以上)のFDR-RAにHCQを投与。

 

 

関節リウマチの予防のために非薬物療法は可能か?

●禁煙が自己抗体陽性の関節リウマチの発症予防や発症遅延を可能にすることが示されている。

●喫煙は関節リウマチのリスクを上昇される(HR1.47(95%CI 1.27-1.72))。特にseropositiveな関節リウマチで上昇するが(HR1.67(95%CI 1.38-2.01))が、seronegativeな関節リウマチではリスクは上昇しない。

●禁煙期間が延びる程、関節リウマチのリスクは下がる(特にseropositive)。

●ある報告では30年以上禁煙を続けた患者では5年しか禁煙していない患者よりも関節リウマチのリスクが低下する(PMID=30790475)。

●関節リウマチの高リスク集団における非薬理学的予防戦略に関する研究は少ない。現在進行中のコホート研究では、過剰体重、口腔衛生不良、栄養習慣、喫煙に関する教育、初期の関節症状、徴候など、他の危険因子を修正することの有効性が検討されている。

 

関節リウマチの予防戦略を取る際の問題点は?

●既存の試験はほとんどがACPAが陽性の未分類関節炎の段階をターゲットにしているが、効果がなかったという結果もあり、この段階は関節リウマチの発症を予防する段階としては既に手遅れかもしれない。

●関節症状が出現する前に介入する戦略はより効果的かもしれないが、関節リウマチ高リスクの個人を特定できるようなバイオマーカーが必要である。

●加えて、関節リウマチ発症前の段階でリスクがある患者の明確な定義も必要である。

●リスクがある個人のスクリーニングにMRIやエコーを使う事は費用がかかる。

●関節リウマチ発症予防にアバタセプトやリツキシマブを使用するのも高価である。

●Seropositiveの個人でも必ずしも関節リウマチに発展するわけではない。

●過剰に診断する事は過剰治療につながる可能性がある。

 

Comments

 予防の分野はまだまだ発展途上だと認識しました。というのも、関節リウマチを発症する前段階の定義があまりされて来なかったためです。

 6つのフェーズが提唱されたのが8年前の2012年で、最大の曖昧さがあったphase Dの臨床的関節炎のない関節痛の定義も、2016年にやっとされました。それまでは、予防の臨床試験をしようとしても、各臨床試験が自前で関節リウマチ発症前段階の定義をしていたので、それらの結果は一般化出来ませんでした。phase Eの未分類関節炎を一つ取っても、何を持って未分類関節炎とするかは、論文毎に統一させなければいけません。

 遺伝的要因に関しては、予防の介入試験はありません。この段階の方は無症状でほぼ健常者ですから、捕まえて来て遺伝子検査をしようものなら、莫大な費用と時間が必要になるため、そもそも臨床試験が成り立ちません。ハイリスク、つまり一親等に関節リウマチがいる方を対象にして、発症まであまりにも長期間観察しなければならない上、薬剤などを使用するにして、いつまで使用するのか、評価はいつやるのか決められないと思いますので、この段階での予防的介入はほぼ不可能でしょう。

 そもそも、遺伝的要因よりも環境要因の方が重要と考えられているため、一等親に関節リウマチの患者がいるからと言って、必ず自分も発症すると考えなくてもと良いかもしれません。

 環境要因では喫煙虫歯菌などが局所炎症からRFや抗CCP抗体陽転化などの全身性自己免疫反応を引き起こす原因となります。ただ、喫煙や虫歯がある方が結構な確率で関節リウマチになるかと言うと、そうではありません。喫煙者や虫歯患者の母数からすれば関節リウマチ発症数はそれほどではないので、全員を追跡するのに、これまた費用と時間が莫大に必要となります。しかし、当然介入試験はありませんが、観察研究レベルでは禁煙者は関節リウマチ発症のリスクが喫煙者よりも低い事が分かっているため、禁煙は積極的にして悪い事はないでしょう。また、虫歯は放っておいて良い事はありません。治療できるのであれば、積極的に治療しましょう。 

 次の段階として、RFや抗CCP抗体が陽性の全身性自己免疫反応の段階ですが、これらについてはそれぞれ陽性だったときに5年以内に関節リウマチを発症する陽性的中率は1.5%と5%と言われております(PMID=14872479)ので、これらが陽性だから、予防介入をするメリットはあまり高くないように思います。

 遺伝的要因、環境要因、全身性免疫反応(RF、抗CCP抗体陽性)の3つを一括りにしてハイリスク患者を求める予測モデルが関節リウマチの発症を予測し得たという報告もありますが、この予測モデルのハイリスク患者を対象にした臨床試験はこれからあっても良いと思います。ただ、予測モデルも皆さんあまり使っていないのが現状です…

 次の段階が臨床的関節炎のない関節痛患者ですが、ここになると抗CCP抗体などが陽性だと関節リウマチを発症するリスクがぐっと上がります。EULAR(欧州リウマチ学会)はここに予防的介入するために2016年に定義を定めましたが、まだ4年しか経過していないため、今後臨床試験が待たれます。

 現状では未分類関節炎への予防的介入試験が最も多いです。しかし、もともと未分類関節炎は3割ぐらいは自然に改善する事が多いので、生物学的製剤を使用したから改善したのか、自然に改善したのか分かりません。また、毎度の事ですが、費用は馬鹿になりません。結局予防効果も完璧ではないので、費用対効果はそれほどではないかもしれません。

 以上、関節リウマチの予防について考えてみました。非薬物療法として禁煙や虫歯治療などは効果は不明ですが、やっておいて損はないでしょう。薬物療法については関節リウマチの前段階の定義がなされたばかりであるため、これからの予防介入試験の結果が待たれます。しかし、費用の問題もあるため、より関節リウマチ発症リスクが高い患者群の同定が重要と思われます。


【参考文献】
 

Alpizar-Rodriguez D, et al. Clin Rheumatol. 2020 Feb 3. "Is the prevention of rheumatoid arthritis possible?"

関節リウマチはどうやって発症するのか?~関節リウマチの自然史~

 関節リウマチがどうやって発症して行くのか分かりますか?

 

 EULAR(欧州リウマチ学会)は2012年に、関節リウマチになるまでの段階(自然史)を下図の通り、6つのフェーズに分けて定義しました(1)。

 

 関節リウマチが発症してからの治療はかなり確立して来ましたが、発症の仕方が分かれば、発症前に予防するが出来たらいいですよね。

 

 今回は、この関節リウマチの自然史について6つのフェーズの中身を、一つずつ説明していきたいと思います。

 

 お時間がない方は関節リウマチの自然史の概要だけご覧ください。より知識を深めたい場合は各フェーズの詳細をご覧ください。元論文のIDも記載していますので、宜しければご覧ください。

 

  

関節リウマチの自然史の概要

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図は論文(2)より引用

 

注意すべきは以下の二つです。

①全ての関節リウマチ患者がこれらのフェーズを経る訳ではない事。

②ここのフェーズは互いに排他的でない事(同時に2つのフェーズが起こり得る)。

 

Phase A: 関節リウマチの遺伝的リスク

  関節リウマチの一番最初のステップは、ある個人が関節リウマチの遺伝的リスクを有する事から始まります。特にRF, 抗CCP抗体などの自己抗体が陽性である方の5割が遺伝的リスクを有すると言われています。

 遺伝的リスクの代表的なものが特定のHLAであり、中でもShared Epitope(以下に解説あり)を有する方は関節リウマチの発症のリスクが3倍上がるという日本からの報告があります。

 注意すべきは、このフェーズにいる方は遺伝的リスクを持っているものの、基本的には健常者である事です。無症状なのに、家族が関節リウマチだから、心配で来られる患者様はいらっしゃるかもしれませんが、リスク遺伝子があるからと言って、必ず関節リウマチを発症するわけでもありません

 また、強いリスクと言われているのは血縁関係にある一親等に関節リウマチ患者がいる場合です。つまりは親や子供に関節リウマチ患者さんがいる場合はリスクはあるかもしれませんが、兄弟や祖父母、叔父、叔母が関節リウマチを発症していても、自分が関節リウマチを発症するリスクは、一親等よりも低いです。もちろん血縁関係にない配偶者やその両親は該当しません。

 

Phase B: 関節リウマチの環境リスク

 遺伝的に同一である双子でも環境が異なると、抗CCP抗体の陽性に差が出る事が分かってから、遺伝的リスクだけでなく、環境要因も重要である事が言われるようになりました。環境要因の中でも喫煙はRFや抗CCP抗体が陽性、さらには関節リウマチの発症に関係していると言われています。

 

Phase C: 関節リウマチに関連する全身性自己免疫

 遺伝的要因と環境要因が重なると関節リウマチが発症しやすくなると言いましたが、次の段階は、全身性の自己免疫反応が起こる段階です。全身性の自己免疫反応というのは、具体的にはRF抗CCP抗体などの自己抗体が産生される段階です。

 RFと抗CCP抗体はそれぞれ、臨床症状が現れる2.0年4.5年前から陽性となる事が分かっていますが、この時期は無症状である事が多いです。

 外来ではしばしば『自己抗体が陽性だから、関節リウマチを発症するリスクが高い』と紹介されます。実際、自己抗体が陽性の場合、どれくらい関節リウマチに発展するでしょうか。

 RFが陽性の場合、5年以内に関節リウマチを発症する確率1.5%抗CCP抗体でも5%しかありません。つまり、それほど心配はしなくても良いのです。

 

 

 なお、全身性の自己免疫反応に先立ち、口腔消化管の局所粘膜での炎症・免疫異常が起こると考えられております。例えば、前述したたばこでの炎症から、抗CCP抗体の抗原であるシトルリン化蛋白が産生されますし、歯周病の原因菌であるPorphyromonas gingivalisや、消化管Prevotella copri, Lactobacillusなどがそれぞれ局所で炎症・免疫異常を来すことで抗CCP抗体が産生されることが分かっています。

 

Phase D: 臨床的関節炎のない症状(関節痛)

 さて、次の段階が、関節炎(関節の腫脹など)は起こしていないにも関わらず、関節痛が出現する段階です。この段階の患者(関節痛がある患者)では、RFや抗CCP抗体が陽性である場合、1年以内に関節リウマチを発症する確率が30%という報告があります。つまりは"Phase Dの関節痛を有し、自己抗体が陽性の患者"は、前述した”Phase 3の症状がなく、自己抗体が陽性のみの患者”と比較すると、格段に関節リウマチを発症する確率が高いという事です。

 ただ、今まで関節炎が起こる前段階の定義が各医師毎にバラバラで曖昧でした。そこで、2016年にEULAR(欧州リウマチ学会)は、臨床的に関節痛が疑われる患者(Clinically suspect arthualgia: CSA)と定義しました。このように定義されることで、今後の関節炎を発症する前の段階の患者さんの研究がしやすくなりました(各フェーズの詳細に定義を記載しています)。

 さて、この段階は診察では関節炎がないものの、MRIをすると、関節炎が所見が見られたという報告があります。しかし、コストの問題と、感度が高すぎるために健常者でも非特異的な炎症所見が見られることがある問題のため、わざわざそこまでして異常を見つけて治療する意義があるかについてはまだ定かではありません。

 じゃあ関節エコーはどうかというと、確かにコストの面ではMRIより断然安いです。感度に関してはMRIよりやや劣りますが、身体所見で異常がなくても滑膜炎を検出できるため、個人的にはエコーで滑膜炎が見られたら、有意と取っても良いかもしれません。ただ、この滑膜炎も本当に関節リウマチに発展するかについては分かっていません。注意深く様子を見ながら、持続する場合はNSAIDs軽めのcsDMARDs(サラゾスルファピリジン, ブシラミン)などを使用しても良いのかもしれません。個人的にはケアラム(イグラチモド)が有効な事が多いです(COIはありません)。

 関節痛の段階での画像検査があまり当てにならない(特異性が不明である)事は申しましたが、関節リウマチの発症を症状や自己抗体、バイオマーカーなどで予測する流れがあります。過去の記事でも取り上げましたが、以下のような予測モデルがあります。

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Phase E: 未分類関節炎

 このフェーズは関節痛だけでなく、腫脹を伴う関節炎はあるものの、早期関節リウマチの分類基準を満たしていない状態を指します。Phase Dの関節痛のように、一部は自然に改善する可能性がある一方、長期フォローすると、2割程度に関節リウマチを発症したという報告があり、特にRF抗CCP抗体が陽性の場合は関節リウマチに発展しやすいとのことです。

 このフェーズで重要な事は関節炎はあるものの、ACR/EULAR 2010年の早期関節リウマチの分類基準を満たさないという事です。この分類基準で重要なのは関節炎の数です。数が多ければ点数も多くなるため、早期関節リウマチ(Phase F)と分類できる可能性があります。外来で関節炎はあるものの、関節炎の数が少ないために分類基準を満たさない患者では、関節エコーなどで積極的に滑膜炎がないかを見に行く必要があります。実際、関節エコーでの所見も滑膜炎としてカウントして上記分類基準を補完すべきという論文も出ています。 

 また別の注意点としては未分類関節炎は関節リウマチ以外にもあらゆる膠原病、その他の疾患で起こり得るという事です。関節リウマチと決めつけずに長期的に経過を見ていく事が重要かもしれません。その時はPhase D同様、NSAIDs軽めのcsDMARDsを使用しても良いかもしれません。

 

ACR/EULAR 2010年の早期関節リウマチの分類基準

※6点以上を関節リウマチと分類する

f:id:tuneYoshida:20190805183051p:plain*:MCP, PIP, MTP2-5, 第1IP, 手首を含む

**:肩, 肘, 股関節, 膝, 足首を含む

***:手指・足趾のDIP, 第1CMC, 第1MTPは除外

****:顎関節, 胸鎖関節, 肩鎖関節を含む

低値の陽性:正常上限以上だが、正常上限の3倍以下

高値の陽性:正常上限の3倍より大きい

 

Phase F: 関節リウマチ

 関節リウマチには早期関節リウマチと確立した関節リウマチがあります。早期関節リウマチは上述した通り、ACR/EULAR 2010年の早期関節リウマチの分類基準を用いて診断します。この分類基準は早期の関節リウマチを拾い上げるために、感度が高いものの、特異度が低くなっている事が問題です。つまりは他の疾患でも分類基準を満たしてしまう点です。ただし、RFや抗CCP抗体などが異常に高値である場合は関節リウマチと診断してしまっても良いでしょう。

 発症から時間が経過した関節リウマチの診断には1987年のACR分類基準を用いることが良いです。この分類基準は感度は低いものの、特異度が92.9%と非常に高いのが売りです。ただし、早期に専門医を受診する事が多くなったためか、初診時にリウマトイド結節やX線で骨びらんが見られる患者さんは少なくなりました。

 

ACR1987年の関節リウマチの分類基準

※4項目以上を関節リウマチと分類する

f:id:tuneYoshida:20200606210339p:plain

 

 

各フェーズの詳細

Phase A: 関節リウマチの遺伝的リスク

Genetic

●関節リウマチの遺伝的リスク要因ですが、Seropositive(RFまたは抗CCP抗体が陽性)の関節リウマチ患者の50%までに遺伝的リスク要因が関与すると言われています。

●特に一親等(親と子供)に関節リウマチ患者がいる個人(FDR-RA)では関節リウマチ発症のリスクが約3倍になります(PMID=23897126 )。

●遺伝的リスク要因の中でも3割を占めるのはHLAであり、特にHLA-DRB1(DR4)の遺伝子型のDR抗原のβ鎖をコードするHLA-DRB1 の対立遺伝子*0101、0401、0404、0405などが関連していることが判明しております。

●これらの対立遺伝子の超可変領域の70~74番目に人種を超えて共通する(Q/R)(K/R)RAAというアミノ酸配列がある事が判明し、Shared Epitope(SE)と呼ばれております。これを持っていると関節リウマチの発症リスクが3倍上がると言われています(PMID=10765919)。

●興味深い事に、HLAが関与するのは抗CCP抗体が陽性の群だけです。

●その他にも、以下のように多数の遺伝子が関節リウマチに関連する報告があります。

f:id:tuneYoshida:20200319181827p:plain

文献(3)より

 

Epigenetic

●EpigeneticはDNA塩基配列の変化を伴わない細胞分裂後も継承される遺伝子発現あるいは細胞表現型の変化を言います。

DNAのメチル化ヒストンのアセチル化などが含まれます。

●関節リウマチではEXOSC1のメチル化が見られる場合があります。

●抗CCP抗体が陽性のHLA-DRB1がある喫煙者ではDNAのメチル化レベルが高いと言われます。

●2つの研究から、関節リウマチ患者では滑膜線維芽細胞でのDNAのメチル化と翻訳のパターンが関節毎に異なる事が報告されております(PMID=28332497)。

→これは、何故関節リウマチでは、ある関節だけが重度の傷害を受けるのかの説明になるかもしれません。

 

Phase B: 関節リウマチの環境リスク

●遺伝的に同一である双子でも環境が異なると抗CCP抗体陽性に差が出る事が言われてきました。そのため、遺伝的リスクだけでなく、環境要因も重要ではないかと考えられました(PMID=24276366)。

●環境要因の中では喫煙は明確なリスクとなることが言われております。

●喫煙と関節リウマチの関係はRF抗CCP抗体が陽性患者で強く示されています(PMID=19174392, 27477806)。

●喫煙は肺の粘膜のシトルリン化に関係し(PMID=18413445)、シトルリン化蛋白は抗CCP抗体の抗原となります。

●その他のリスク因子には、肥満、低社会経済的教育ステータス、紫外線曝露、シリカ曝露などが含まれます。

●2001年に世界貿易センターがテロにより崩壊した事は有名ですが、その救助にあたった消防士達が後に関節リウマチを含む様々な全身性の自己免疫性疾患のリスクが上昇したと言います(PMID=25779102)。

●一方で長期の母乳栄養、中等度のアルコール摂取は関節リウマチの予防に関係すると言われます(PMID=22819092, 22120459 )。

→だからと言って飲酒を強く勧める訳ではありません。これは単に統計的な有意差が出ただけかもしれません。

 

 

Phase C: 関節リウマチに関連する全身性自己免疫

全身性の自己免疫

●RF(IgM型)と抗CCP抗体はそれぞれ、臨床症状が現れる2.0年(中央値、範囲0.3~10.3年)、4.5年(中央値、範囲0.1~13.8年)前から陽性となる事が分かっています(PMID=14872479)。

●抗CCP抗体が上昇すると、血清のサイトカインやケモカインが上昇する事が報告されており、臨床的な症状が出る前から関節リウマチに関連した炎症が起こっている事を示唆します(PMID=22662108)。

●一方で、上記の自己抗体が単独で陽性の時、5年以内に関節リウマチを発症する陽性的中率はRF(IgM)でPPV1.5%、抗CCP抗体でPPV5%しかないありません。一方でハイリスク群では陽性的中率はそれぞれPPV37.7%、PPV69.4%に上昇します(PMID=14872479)。

→よってRFや抗CCP抗体の単独陽性は健常者では関節リウマチの発症を予期しません。

●抗CCP抗体の様なシトルリン化蛋白に対する抗体よりもカルバミル化蛋白に対する自己抗体が関節リウマチ患者で発見され、抗CCP抗体やRFよりも高い特異性があると言われております(PMID=21987802)。

→ただしこの抗体は今まで血清反応陰性の関節リウマチでは陽性とならず、また、関節リウマチの発症を予測するものではないようです。

●遺伝的要因や環境要因が重なって全身性自己免疫を起こす事が知られておりますが、Phase AやPhase B以外の要因でも全身性自己免疫を起こす可能性があります。

●全身性自己免疫反応が起こる事に先立ち、肺や口腔、消化管の局所粘膜での免疫異常が起こると考えられております。

 

局所粘膜での自己免疫

●IgA型の抗CCP抗体が関節リウマチ患者で発見されていますが、これは歯周(Porphyromonas gingivalis, Aggregatibacter actinomycetemcomitans)、消化管(Prevotella copri, Lactobacillus)などの粘膜での微生物に対する免疫が自己免疫を惹起する事を示唆します。

●例えば、Porphyromonas gingivalis歯周病の原因菌ですが、peptidylarginine deiminase(PPAD)によってアルギニンをシトルリン化出来ます。これによりシトルリン化された自己抗原が口腔粘膜で産生され、免疫寛容が破綻し、抗CCP抗体などの自己免疫反応が惹起されると考えられております(PMID=23902301)。

●腸内細菌叢の変化も関節リウマチの発症に関係します。例えば、Lactobacillus属(PMID=23483307)やPrevotella copri(PMID=24192039)は無治療の関節リウマチ患者で増加している事が知られています。

●以下に局所免疫と関節リウマチのリスクの関係を検討した研究の一覧を載せます。

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Phase D: 臨床的関節炎のない症状(関節痛)

●RFや抗CCP抗体が高い患者さんは、関節炎はなくても関節痛を有する場合、一定の割合で関節リウマチに移行する事が様々な報告で分かっています。

●例えば、関節痛があり、自己抗体を持つ個人は、1年以内にRAを発症する可能性が約30%という報告があります(PMID=21062853)。

●また、確率が高い所では、抗CCP抗体が陽性の関節症状がある個人では関節リウマチを発症するリスクが約50%まで上昇するという報告もあります(PMID=24728331)。

●関節痛が一過性に改善してしまう場合も多いですが、関節リウマチに発展するリスクがある関節痛を想起に同定する事が大事ですが、今まで、どのような関節痛が関節リウマチに発展しやすいか定義が曖昧でした。

●それを解決するべく、EULARは2016年に以下のように関節リウマチに発展するリスクがある関節痛を"臨床的に関節痛が疑われる患者"と定義しました(PMID=27991858)。

臨床的に関節痛が疑われる患者(Clinically suspect arthralgia: CSA)

病歴
▸ 1年以内の関節症状の発症
▸ 症状がMCP関節に限局している
▸ 朝のこわばりが60分以上
▸ 最も重い症状が早朝に起こる
▸ 一親等に関節リウマチの患者がいる
身体所見
▸ 拳を握れない
MCP関節のスクイーズテストが陽性

→3項目以上で感度90%以上、4項目以上で特異度90%以上

 

●関節リウマチを発症するリスクがある関節痛を定義した事により、今後の研究がさらに発展するものと思われます。

  

●"臨床的に関節痛が疑われる患者"の画像的な評価を検討した文献も散見されます。例えば、関節炎がなくても、関節痛の段階で、MRIでは44%に関節の炎症所見が認められていたようです(PMID=24718962)。

→この結果からは、関節痛患者では早期にMRIを行う方が良いのでは、と思うかもしれませんが、MRIのコストが高い事と、健常者でも年齢とともに滑膜炎所見が見られることがあるため、関節炎との区別がつかない事が問題点として挙げられます。

MRIは値段が高く、感度が良すぎる割に、特異度が低いという事ですね。MRIで滑膜炎があった=ただちに治療にはならない事に注意してください。

●関節エコーでこの"臨床的に関節痛が疑われる患者"を診断する研究もあります。結果はMRIと比較すると、グレースケールで滑膜炎を検出する感度は50~78%、特異度は80~94%、パワードップラーで滑膜炎を検出する感度は19~58%、特異度は98~100%とやや劣っておりました(PMID=30764862)。

→コストの面では、身体所見で関節炎がない患者では関節エコーを行い、本当に滑膜炎がないかを見ることが重要でしょう。

→しかしここでも問題となるのが、エコーで認めた滑膜炎が果たして今後、関節リウマチになるのかどうか、という点です。

→長期的な予後が分かっていない現状では、直ちに関節リウマチの強化療法を行うというよりも、NSAIDsや軽めのDMARDsなどを行う事が良いのかもしれません。

 

●関節痛の段階での画像検査があまり当てにならない(特異性が不明である)事は上述しましたが、関節リウマチの発症を症状や自己抗体、バイオマーカーなどで予測する流れがあります。

●過去の記事でも取り上げましたが、以下のような予測モデルがあります。

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●別の予測モデルでは臨床的特徴、血清学的所見にエコー所見などを組み合わせたものもあります(PMID=24728331)。

 

Phase E: 未分類関節炎

●このフェーズは関節炎はあるものの、早期関節リウマチの分類基準を満たしていない状態を指します。

●未分類関節炎は関節リウマチ以外にも様々な膠原病になり得ます。

●Phase Dの関節痛のように、一部は自然に改善する可能性がある一方、長期フォローすると、2割程度に関節リウマチを発症したという報告(PMID=25936224)があり、特にRFや抗CCP抗体が陽性の場合は関節リウマチに発展しやすいとのことです。

●このフェーズで重要な事は関節炎はあるものの、ACR/EULAR 2010年の早期関節リウマチの分類基準を満たさないという事です。

ACR/EULAR 2010年の早期関節リウマチの分類基準

※6点以上を関節リウマチと分類する

f:id:tuneYoshida:20190805183051p:plain*:MCP, PIP, MTP2-5, 第1IP, 手首を含む

**:肩, 肘, 股関節, 膝, 足首を含む

***:手指・足趾のDIP, 第1CMC, 第1MTPは除外

****:顎関節, 胸鎖関節, 肩鎖関節を含む

低値の陽性:正常上限以上だが、正常上限の3倍以下

高値の陽性:正常上限の3倍より大きい

 

●ただし、ここにもピットフォールがあり、診察で有意な数の関節炎を認めなくてもエコーなどの画像検査でちゃんと広い上げることが重要です。

●実際、この関節エコーでの所見も滑膜炎としてカウントして上記分類基準を補完すべきという論文も出ております(PMID=27553213)。 

 

Phase F: 関節リウマチ

●関節リウマチには早期関節リウマチと確立した関節リウマチがあります。

●早期関節リウマチは上述した通り、ACR/EULAR 2010年の早期関節リウマチの分類基準を用いて診断します。

●この分類基準は早期の関節リウマチを拾い上げるために、感度が高いものの、特異度が低くなっている事が問題です。つまりは他の疾患でも分類基準を満たしてしまう点です。ただし、RFや抗CCP抗体などが異常に高値である場合は関節リウマチと診断してしまっても良いでしょう。

●今ではあまりありませんが、患者さんがずっと症状を放っておいて時間が経った関節リウマチの診断には1987年のACR分類基準を用いることが良いです。

●この分類基準は感度は低いものの、特異度が92.9%と非常に高いのが売りです。

 

ACR1987年の関節リウマチの分類基準

※4項目以上を関節リウマチと分類する

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【参考文献】

(1) Gerlag DM, et al. Ann Rheum Dis. 2012 May; 71 (5): 638-41. "EULAR recommendations for terminology and research in individuals at risk of rheumatoid arthritis: report from the Study Group for Risk Factors for Rheumatoid Arthritis."

(2) Mankia K, et al. Arthritis Rheumatol. 2016 Apr; 68 (4): 779-88. "Preclinical Rheumatoid Arthritis: Progress Toward Prevention."

(3) Yamamoto K, et al. Proc Jpn Acad Ser B Phys Biol Sci. 2015; 91 (8): 410-22. "Genetic studies of rheumatoid arthritis."

ANCA関連血管炎の長期寛解維持にリツキシマブは有効か?

 ANCA関連血管炎のMAINRITSAN3試験の結果が出ました。

 

 ANCA関連血管炎(AAV)の寛解導入においてリツキシマブがエンドキサンと同等である事は既に示されております(RITUXVUS試験)。リツキシマブを含むレジメンが登場してから、AAVの寛解率は53%から88%へと改善しました(PMID=20647199/19451574)。

 

 さらに寛解後の維持療法におけるリツキシマブの効果を検証したMAINRITSAN1試験では、IVCYで寛解導入後、寛解維持療法においてリツキシマブ(Day0, 14, 6か月, 12か月, 18か月に500mg投与)がアザチオプリンよりも優位であった事も示されました。

 

 これにより、諸外国ではAAVの寛解も維持もリツキシマブを使うという流れが出来ました。

 

 リツキシマブの寛解維持における投与方法については、寛解維持においてリツキシマブ定期投与(Day0, 14, 6か月, 12か月, 18か月)にする群と、3か月毎に採血で末梢血のB細胞の出現やANCA力価の上昇をフォローし、出現した場合に投与する群(個別リツキシマブ投与)を比較した試験(MAINRITSAN2試験)があり、結果、両者に違いはなく、いちいち末梢血のB細胞やANCAを測定しなくても6か月毎の固定打ちで良いという結果となりました。

 

 さて、寛解維持においてもリツキシマブの有効性を示したMAINRITSAN1試験でしたが、リツキシマブの投与を中止した後、高確率で再発が起こってしまいました(リツキシマブ最終投与から32か月時点で57.9%の患者が再発)。

 

 これでは元も子もないという事で、リツキシマブを中止せずに、長期維持療法に使ったらどうかという試験が行われました。それが今回のMAINRITSAN3試験です。

 

お時間がない方は、以下のまとめCommentsだけご覧ください。

 

 

まとめ

寛解維持においてリツキシマブ定期投与(Day0, 14, 6か月, 12か月, 18か月)にする群と、3か月毎に採血で末梢血のB細胞の出現やANCA力価の上昇をフォローし、出現した場合に投与する群(個別リツキシマブ投与)を比較したMAINRITSAN2試験の続きとなる試験が今回のMAINRITSAN3試験。

●MAINRITSAN2試験でリツキシマブを使用し、18か月経過したあと、さらに18か月間、リツキシマブ500mgを6か月毎に投与する群とプラセボを投与する群(すなわちリツキシマブは終了)を比較した。

●リツキシマブを6ヶ月ごとに500mgを投与することを延長する事は、寛解の維持に有効であることが示された。

●リツキシマブ群の有害事象の頻度もプラセボ群より高くなかった。

●再発は従来と同様、PR3-ANCA陽性例で多い。

●再発とANCA陽転化、末梢血でのCD19陽性B細胞の出現に強い関連性は見られなかったが、再発したプラセボ群12例中7例でANCA陰性から陽転化した。

●ANCAと末梢血でのCD19陽性B細胞が両者とも陰性の場合は、再発は見られなかった。

 

Comments

MAINRITSAN2試験からの延長である事を意識しなければなりません。MAINRITSAN2試験は寛解導入にシクロホスファミドを使用した患者が100名(61.7%)、リツキシマブが61名(37.6%)、メトトレキサートが1名(0.6%)でした。

→つまりはMAINRITSAN3試験は『シクロホスファミド6割、リツキシマブ3割8分で寛解導入され(MAINRITSAN2試験の前段階)、寛解維持療法は、リツキシマブ500mgを6か月毎に投与するか、3か月に1回採血し、ANCAが上昇したり末梢血のCD19陽性B細胞が出現したタイミングで投与した患者ら(MAINRITSAN2試験)を、さらに18か月間6か月毎にリツキシマブ500mgを投与する事が寛解維持に有効かどうか』を見た試験という事になります。

●MAINRITSAN3試験ではMAINRITSAN2試験で重篤な有害事象が生じた患者は除外されているため、選択バイアスの可能性はあります。

●また、試験の対象患者はGPAが多くMPAが少ないのは、日本と真逆です。日本ではMPAが多いです。

●EGPA患者はMAINRITSAN2試験同様、含まれていません。なので全てのANCA関連血管炎に適応できるという訳ではありません。※EGPAは別に考えて下さい。

●結構本文中に引用されていましたが、肝心のSupplement dataがインターネットから見られませんでした…

●ANCA関連血管炎の一般的なマネジメントについては以下をご覧ください。 

 

 

Methods

Overview

以下が概要。

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●この試験はリツキシマブの寛解維持における投与方法(固定投与 vs B細胞、ANCA上昇に合わせて投与)について検討したMAINRITSAN2試験の延長の他施設ランダム化二重盲検比較試験である。

●MAINRITSAN2試験は28か月のフォローアップ期間だが、MAINRITSAN3試験ではそこからさらに28か月間フォローアップしている。

●2015年3月から2016年4月の間に2群無作為割り付け、2018年8月に終了している。

●MAINRITSAN2試験終了時にmajor relapseがなく、完全寛解状態に至った患者をMAINRITSAN3試験にエントリーしている。

→完全寛解の定義はBVAS version 3で0点(0~63点、高いほど高活動性)。

●患者はリツキシマブ投与群とプラセボ投与群の1対1に振り分けられた。

●リツキシマブ投与群は6か月毎に500mgの固定投与(0, 6m, 12m, 18mの4回投与)。

プラセボ群はリツキシマブ群と同様の投与回数。

 

Outcomes and follow up

●Primary end point:ランダム化28か月時点での無再発率

→再発はAAV症状の再出現や悪化(BVAS>0)と定義

●Secondary end point:major/minor relapse free survival

→Major relapse:life threateningまたはmajor organを1つ以上含む

→Minor relapse:AAV症状再出現または悪化+BVAS>0、Major relapseではない

●他のSecondary end point:臓器障害(VDI)、health related quality of life(Physical Functioning Scale and Mental health Component scores of the Medical Outcomes Study 36-Item Short-Form Health Surver/Health Assessment Questionnaire)、ANCAやCD19陽性B細胞数と再発の関係、累積グルココルチコイド量、血清ガンマグロブリン値、死亡、全副作用(治療関連orそれ以外)

●ランダム化後28か月経過するまで3か月毎に通院して頂いた。

●28か月まで、受診毎にBVASが計算され、血液サンプル(CD19陽性B細胞、ANCA)採取。

→B細胞数の減少でリツキシマブ使用が分かってしまう事を恐れて、血液検査は第3者が評価していたという徹底ぶり…

 

Results

Patient Characteristics

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● MAINRITSAN2試験の患者162名から最終的に97名がランダム化された。

●GPA68名(70%)、MPA29(30%)、新規のAAV診断は57名(59%)、40名(41%)は再発。

●50名(52%)はリツキシマブ投与継続群、47名(48%)はプラセボ群。

●以下に背景を示す。

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●リツキシマブ投与群では42名の患者が4回全てのリツキシマブの投与を受けたが、8名は途中で治療を中断した。

プラセボ群では37名の患者が4回全てのプラセボ群投与を受けたが、10名の患者は途中で治療を中断した。

●それぞれの群で1名ずつフォローアップ期間である28か月を待たずしてフォローアウトした。

 

Primary end point

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リツキシマブ群の28か月時点での無再発率は96%(95%CI, 91%~100%)。

プラセボの28か月時点での無再発率は74%(95%CI, 63%~88%)。

●ハザード比は7.5(CI, 1.67~33.7, p=0.008)

●死亡者は両群でいなかった。

●再発はリツキシマブ群で2名

 ・1名:MPO-ANCA陽性MPA

  →ランダム化後3か月時点で発熱性好中球減少症を発症し退薬、14か月時点で再発

 ・1名:PR3-ANCA陽性GPA

  →ランダム化後7か月時点、リツキシマブ投与1か月後に再発

プラセボ群で再発した12名のうちGPA10名(83%)、MPA2名(17%)。12名中6名は最初の再発。10名はPR3-ANCA陽性、2名はMPO-ANCA陽性。

●12名の内5名はMAINRITSAN2試験で個別リツキシマブ投与、7名はリツキシマブ固定投与を受けていた。

●再発までの中央値はプラセボ群でMAINRITSAN2試験でリツキシマブ投与終了後から22か月(IQR, 20~23か月)。

 

Secondary end point

Major and Minor Relapses

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●メジャーな再発フリー生存率はリツキシマブ群100%(CI, 93%~100%)、プラセボ87%(CI, 78%~97%)(p=0.009)。

プラセボ群の6名がメジャーな再発を来した。

 ・3名:腎病変の悪化

 ・3名:肺病変の悪化(肺胞出血、気管支狭窄、肺結節)

→全ての患者は新しい寛解導入療法(PSL大量+リツキシマブ)を受けて寛解した。

→1名の患者は持続的腎機能障害を来したが、透析は不要だった。

●マイナーな再発フリー生存率はリツキシマブ群96(CI, 91%~100%)、プラセボ87%(CI, 78%~97%)(p=0.134)。

 

Damage and Quality of Liife

●平均Vasculitis Damage Index scoreは開始時、リツキシマブ群2.2(SD, 1.9)、プラセボ1.6(SD, 1.6)、28か月後、リツキシマブ群2.2(SD, 1.8)、プラセボ1.7(SD, 1.6)。

●両群の有意差はなかった。

QOLのアウトカムも有意差が見られなかった。

 

ANCA陽性またはB細胞増加と再発の関係

●28か月時点リツキシマブ群の14/47名(30%)がANCA陽性、プラセボ群の24/42名(56%)がANCA陽性であった(p=0.057)。

●最初にANCAが陰性であり、その後に陽転化する事は再発と関連しているようである。

→再発群の50%に陽転化が診られたが、無再発群では15%しか陽転化しなかった。

●ANCAが持続的に陰性であるにも関わらず再発したのは1名のみであった。

●ANCAとCD19陽性B細胞がない患者は再発しなかった。

プラセボ群ではPR3-ANCA陽性の内10/25名(40%)が再発し、MPO-ANCA陽性の内2/17(12%)が再発した。

 

グルココルチコイドの使用

●ランダム化後の平均累積グルココルチコイド量はリツキシマブ群とプラセボ群では有意差がなかった(2565mg[SD, 2932] vs 3376mg[SD,3371], p=0.22)。

●試験終了時(28か月後)、リツキシマブ群では19/49名(39%)がグルココルチコイドを処方されており、プラセボ群では23/46名(50%)がグルココルチコイドの処方を受けていた。

●試験終了時のグルココルチコイド量の中央値はリツキシマブ群で5mg(IQR, 5~5mg)、プラセボ群では5mg(IQR, 5~8.75mg)。

 

Safety

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●リツキシマブ群で46名(92%)、プラセボ群で44名(94%)は少なくとも1回副作用を経験した(p=068)。少なくとも1回重大な副作用を経験したのはそれぞれ12名(24%) vs 14名(30%)(p=0.65)。

●リツキシマブ群では6名(12%)の患者に9回の重症感染症が起こった(2例は敗血症性ショックと尿路感染症、1例はライム病、胆管炎、好中球減少症、気管支炎、肺炎)、一方、プラセボ群では4名(9%)に6回の重症感染症が起こった(4例は肺炎、1例はインフルエンザ、1例はニューモシスチス肺炎)。

●試験終了時の平均γグロブリン値はリツキシマブ群で6.6g/L(SD, 1.9)、プラセボ群で7.9g/L(SD, 2.9)(p<0.001)。

●試験終了時に低ガンマグロブリン血症を呈していたのは以下。

 ・4d/L未満:リツキシマブ群2/48(4%)、プラセボ群3/43(7%)

 ・5d/L未満:リツキシマブ群10/48(21%)、プラセボ群6/43(14%)

●最終IgG, IgMの平均値はリツキシマブ群で6.60g/L(SD, 1.97)、0.44g/L(SD, 0.37)。

●最終IgG, IgMの平均値はプラセボ群で8.02g/L(SD, 2.92)、0.48g/L(SD, 0.43)。

 

【参考文献】

Pierre Charles, et al. Ann Intern Med . 2020 Jun 2. doi: 10.7326/M19-3827. Online ahead of print."Long-Term Rituximab Use to Maintain Remission of Antineutrophil Cytoplasmic Antibody-Associated Vasculitis: A Randomized Trial"

関節リウマチ以外の疾患での抗CCP抗体陽性率

前回、抗CCP抗体は脊椎関節炎で高率に陽性になると話しました。

しかし、それ以外の疾患でも陽性になる事が知られています。

今回は関節リウマチ以外の疾患での抗CCP抗体陽性率についてまとめたいと思います。

お時間がない方は最後のまとめからお読み下さい。

 

脊椎関節炎での抗CCP抗体陽性率に関してはこちら。

 

 

抗CCP抗体の他疾患での陽性率(2009年)

f:id:tuneYoshida:20200519092035p:plain

●上記の表は2009年に報告された論文で、それまでに関節リウマチ以外の疾患で抗CCP抗体が陽性となった報告から陽性率をまとめたものです(文献1)。

●これを見ると、乾癬性関節炎の抗CCP抗体陽性率は前回にご紹介した論文(PMID=32340503)では30%を超えていますが、この報告では8.6%となっています。

●その他SLEシェーグレン症候群全身性強皮症でも5%以上、血管炎でも4.7%に陽性が認められます。

●リウマチ膠原病疾患以外では、圧倒的に結核で陽性率が高い事が分かります。

 

●その他C型肝炎B型肝炎、変形性関節症、線維筋痛症でも陽性が見られます。

 

My Comments 

●関節リウマチ以外の膠原病脊椎関節炎血管炎で抗CCP抗体の陽性率が高い事に加えて、結核C型肝炎でも陽性率が高い事が分かります。

●抗CCP抗体の抗原となるシトルリン化蛋白は、炎症(PMID=16540548)細胞のアポトーシス(PMID=11094435)が起こる部位で産生される事が知られています。結核では慢性炎症性肉芽腫の部位でシトルリン化蛋白が産生され、そして抗CCP抗体が産生されているのではないかと考えられています(PMID=18512773)。

●注意しなければいけないのは、この報告がされた後に各々の疾患の分類基準が変わっている場合があります。例えば、関節リウマチは2010年にACR分類基準が、SLEは2012年にSLICCの分類基準が発表されています。よって、このデータが現在の関節リウマチ以外のリウマチ膠原病疾患の抗CCP抗体陽性率を直接反映するかどうかはわからない事に注意が必要です。

●また、この報告はある一時点での横断的な報告ですので、実は長期フォローをすると、抗CCP抗体が陽性であった膠原病疾患に関節リウマチが併発する可能性については否定できません。

●特にSLEやシェーグレン症候群、強皮症は関節リウマチとしばしば併発しますので、長期的なフォローをした際に関節リウマチを発症したかどうかの結果が求められます。

 

抗CCP抗体の他疾患での陽性率(2014年)

●2014年にも関節リウマチ以外の疾患の抗CCP抗体陽性率を調べた大規模な研究がありました(文献2)。

●この研究では関節リウマチを含めた患者1140人の抗CCP抗体を調べています。

※患者の詳細は以下。

・RA 36.6%(n=417)

・PsA 10.7%(n=122)

・Spondyloarthritis(SpA) 6.7%(n=76)

・Unclassified rheumatism 5.4%(n=62)

Juvenile arthritis 3.9%(n=44)

・SSc 3.2%(n=37)

・SS 2.9%(n=33)

・SLE 2.7%(n=31)

・Mixed connective tissue disorder 2.4%(n=25)

・Unclassified connective tissue disorder 1.2%(n=14)

・Noninflammatory diseases 24.3%(n=279)

 

●結果は以下の通りになりました。

f:id:tuneYoshida:20200519100344p:plain

●それぞれの疾患の抗CCP抗体陽性率は以下。

RA 292/417(70.0%)

PsA 13/122(10.7%)

Other SpA 2/76[2.6%; SAPHO 1;  Reactive arthritis 1]

・Unclassified rheumatism 13/62(20.9%)

SS 11/33(33.3%)

SLE 5/31(16.1%)

Mixed connective tissue disorder 2/25(8.0%)

SSc 4/37(10.8%)

・Unclassified connective tissue disorder0/14(0.0%)

Juvenile arthritis 7/44(15.9%)

・Noninflammatory diseases 6/279(2.1%; Osteoarthritis 3; Metabolic rheumatism 3)

 

この研究では各疾患での抗CCP抗体の力価についても調べています。

各疾患における抗CCP抗体抗体価の違い 

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 ●抗CCP抗体陽性疾患の抗体価の平均値は以下の通りで有意差なし(p = 0.865)。

・関節リウマチ:854.8(±959.8) U/ml

・他の疾患:922.7(±1070.0) U/ml

 

My Comments 

●やはり『関節リウマチ以外の膠原病での抗CCP抗体陽性率は高いという結果です。

→前述した通り、抗CCP抗体の抗原であるシトルリン化蛋白は疾患を選ばず、炎症がある部位に発生するため、上記の様な慢性の炎症を起こす可能性がある疾患は抗CCP抗体が産生されるようになってもおかしくないと考えるべきでしょう。

●こちらの研究も前述したように、長期的なフォローの中で関節リウマチを併発する可能性は否定できません。

→しかし著者らは抗CCP抗体測定時の各疾患の平均罹病期間13.2年(±10.5年)であると示しており、そもそも原疾患の罹病期間が長いので、そこからさらに関節リウマチを併発する可能性は低いのではないかと考察しています。

●驚くべきは、関節リウマチと各々の疾患の間で抗CCP抗体の抗体価に差がないという事です。これでは抗CCP抗体が高いから関節リウマチだと言い切れなくなります。

●ちなみにこの研究で用いられている抗CCP抗体は日本のものとは違い、カットオフ値が25 U/mlとなっています。抗CCP抗体は様々な会社から測定キットが出されており、論文を読む際にはカットオフ値の違いがある事に注意が必要です。

 

抗CCP抗体の検査キット

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●上記は文献3より引用した表です。

●カットオフ値が4.5 U/ml25 U/mlのものがある事に注意しましょう。

●ちなみに今巷で流行している抗CCP抗体は第2世代で第1世代よりも精度が良くなっています。上記に第3世代のキットも示しておりますが、第2世代と第3世代とでは精度がそれほど変わらないと言われております。 

 

まとめ

●抗CCP抗体は陽性率に差はあるものの、関節リウマチ以外の膠原病(SLE、シェーグレン症候群、全身性強皮症、混合性結合組織病)や脊椎関節炎(特に乾癬性関節炎)、血管炎、さらには慢性炎症を起こし得る結核C型肝炎などで陽性となる。

●抗CCP抗体の抗原であるシトルリン化蛋白がそもそも炎症部位細胞がアポトーシスを起こす部位で頻繁に産生される。

→それに対する抗体は慢性炎症疾患では陽性になり得る。

関節リウマチと各々の疾患の間で抗CCP抗体の抗体価に差がない

→『抗CCP抗体が高いから関節リウマチ』だとは言い切れない。

 

【参考文献】

(1) Aggarwal R, et al. Arthritis Rheum. 2009 Nov 15; 61 (11): 1472-83. "Anti-citrullinated peptide antibody assays and their role in the diagnosis of rheumatoid arthritis."

(2) Payet J, et al. J Rheumatol. 2014 Dec;41(12):2395-402. "Anticyclic citrullinated peptide antibodies in rheumatoid and nonrheumatoid rheumatic disorders: experience with 1162 patients."

(3) Hayashi N, et al. Nihon Rinsho Meneki Gakkai Kaishi. 2013; 36 (2): 104-14. "Comparison of nine second- and third-generation anti-cyclic citrullinated peptide antibody assays for the diagnosis of rheumatoid arthritis"

脊椎関節炎でも抗CCP抗体は高い陽性率を示す

先日、他院で『関節リウマチ』として治療されている患者さんが、小生の一般内科外勤に降圧薬の処方と、ついでに関節痛の増悪を訴えて来院されました。

 

もともと『抗CCP抗体強陽性』のため、関節リウマチと診断されたとの事ですが、診察すると足関節炎、肘関節炎に加えて、『指炎』『pitting nail』『アキレス腱炎』『膝の落屑を伴う紅斑』を認め、乾癬性関節炎が疑われました。

 

抗CCP抗体は関節リウマチに特異的と言われて来ましたが、様々な疾患で偽陽性になる事が分かっており、乾癬性関節炎を含む脊椎関節炎患者でもしばしば陽性となる報告がされています。

 

その陽性率を調べてみると、つい最近、日本から乾癬性関節炎を含む脊椎関節炎における抗CCP抗体の陽性率について報告した論文が見つかりました。

 

今まで乾癬性関節炎や強直性脊椎炎の抗CCP抗体陽性率について調べた論文はありましたが、この論文では脊椎関節炎を細かく分類し、それぞれの疾患における抗CCP抗体の陽性率を比べたところに新規性があるので、以下にまとめたいと思います。

 

 

My Comments

●単施設の後ろ向き研究ですが、日本からのこういう情報はとても大事だと思います。

●脊椎関節炎でも抗CCP抗体が陽性となる事は良く聞きますが、脊椎関節炎患者の15%抗CCP抗体陽性というのは意外に多いなと思いました。

強直性脊椎炎は抗CCP抗体陽性がほとんどなく、一方で、乾癬性関節炎3割を超える高い陽性率で驚きました。

乾癬性関節炎の皮疹が出ていない初期には抗CCP抗体が陽性というだけで関節リウマチと誤診されている方も多いかもしれません。

→初期治療はメトトレキサートなので間違いではありませんが、その後の治療が若干変わります。

●この研究では関節リウマチの1987年のACR分類基準を満たす患者は除外されていますが、2010年のACR/EULARの早期関節リウマチの分類基準は用いていません。もしかしたら、研究に含まれている患者の中で、こちらを満たす患者はいるのかもしれません。

●また、抗CCP抗体が陽性の脊椎関節炎患者を長期的にフォローアップしたら、関節リウマチを発症するかどうかは興味がある所です。

●せっかくならば、抗CCP抗体の抗体価まで比較して欲しかったです。

●あと、もとサイトを見ても、Supplementがなぜが見れない状態でした。

 

Results

SpA患者の疾患の特徴と分布

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●109名の脊椎関節炎患者のうち、強直性脊椎炎、SAPHO、乾癬性関節炎、分類不能脊椎関節炎、反応性関節炎、炎症性腸疾患関連関節炎と診断されたのはそれぞれ39.5%、11.9%、18.4%、24.8%、2.7%。

●ASは女性の割合が低く、他の疾患に比べて罹患期間が長く、発症年齢も若かった。●PsA群は他の群の平均年齢に比べて比較的高齢であった。

 

脊椎関節炎における抗CCP抗体陽性率

●脊椎関節炎における抗CCP抗体陽性率は15.3%(16/109)。

●各疾患における抗CCP抗体の検出率は以下。

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AS: ankylosing spondylitis; SAPHO: synovitis, acne, pustulosis, hyperostosis, and osteitis syndrome; PsA: psoriatic arthritis; uSpA: undifferentiated spondyloarthritis; ReA: reactive arthritis; IBD: inflammatory bowel disease-associated spondyloarthritis.

●陽性率が最も高かったのは乾癬性関節炎、次いで炎症性腸疾患関連、SAPHO、分類不能脊椎関節炎。

→炎症性腸疾患関連関節炎は患者数が少ないので、ここでは参考程度にとどめるべきでしょう。

●強直性脊椎炎では抗CCP抗体陽性率は低い。

→反応性関節炎でも陽性は0ですが、患者数が3人しかいないので参考底後にとどめるべきです。

●ノンパラメトリック多重比較分析により、強直性脊椎炎と乾癬性関節炎の抗CCP抗体の陽性率に有意差を認めた(P<0.01)。

●統計的に有意差はなかったが、SAPHO(P=0.058)、分類不能脊椎関節炎(P=0.22)では強直性脊椎炎と比較して抗CCP抗体陽性率が高かった。

 

抗CCP抗体陽性と臨床的特徴の関係

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●抗CCP抗体の有無に関する臨床的特徴の分布を上記Table 2に示す。

●抗CCP抗体陽性群と陰性群の間で、年齢、発症年齢、ESR、RF、ACRスコア、3関節以上の関節炎、手関節炎、RF陽性率に有意差を認めた。

 

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●上記の因子のロジスティック線形回帰分析を行うと、脊椎関節炎患者において、抗CCP抗体の陽性と、手関節炎ESRが有意に関連していることがわかった(それぞれP=0.005, P=0.033)。

→この解釈はどうするべきか検討がつきません。

 

Patients and Methods

●1993年から2018年までに雪岡病院で追跡調査を行った合計111人のSpA患者を対象。

●それぞれの患者は以下の診断基準を満たすか、リウマチ専門医によって診断。

●診断基準

 ・強直性脊椎炎:修正ニューヨーク基準

 ・SAPHO症候群:Benhamouらの基準

 ・乾癬性関節炎:CASPER基準

 ・末梢性/体軸性SpA, 分類不能脊椎関節炎, 反応性関節炎, IBD関連:ASAS分類基準 

※SAPHO症候群は脊椎関節炎以外に分類されることが多いですが、この研究では脊椎関節炎の一部として取り入れています。

●関節リウマチの1987年ACR分類基準を満たす患者は除外。

→これにより2人の患者が除外され、最終的には合計109人の解析となった。

●抗CCP抗体はSRLの酵素結合免疫吸着方(ELISA)を用いて測定。カットオフ値4.5 U/ml。

●抗CCP抗体と臨床的特徴との相関を評価するために、カルテよりCRP、ESR、RF、MMP-3、RA criteria scoreなどを抽出。

●基本的特徴の統計は、Studentt検定またはFisher検定を用いた。

●疾患サブグループ間の抗CCP抗体陽性の有病率の比較には、ノンパラメトリック多重比較検定であるSteel法を用いた。対照群として抗CCP抗体価が比較的低いことが知られている強直性脊椎炎患者を含めた。

●抗CCP抗体陽性と検査データとの相関を確認するために、まず各変数についてカイ二乗検定を行い、その後ロジスティック線形回帰分析を行った。

●統計ソフトはJMP Pro version 3.1を用いた。

 

【参考文献】

Yamazaki H, et al. Mod Rheumatol. 2020 Apr 28:1-13. "Prevalence of anti-cyclic citrullinated peptide antibodies in patients with spondyloarthritis: a retrospective study" 

軟骨の減少だけが変形性膝関節症の痛みの原因か?

変形性膝関節症の患者さんが痛みを訴える時、『軟骨が擦り減っているから』と説明している医師は少なくないかと思います。広告でも『軟骨を守る』などと謳っている健康食品も多いように思います。

 

果たして”軟骨のすり減り””関節痛”が本当に関係するのでしょうか。

 

軟骨のすり減りと関節痛の関係については、X線関節裂隙の狭小化の進行膝関節痛などの臨床症状の関係性を調べた研究(PMID=9135820)があり、結果、両者に強い関係性はないと報告されています。

 

一方、MRIを用いた横断研究(ある一時点での研究)では、軟骨が減少している事膝関節痛には相関関係があると報告されてきました(PMID=22012846/)。

 

 

軟骨の時間的な変化と関節痛の関係をMRIで調べた研究(PMID=26316262)では、24~48か月間の膝関節内側の軟骨のすり減り関節痛はわずかであはあるもののの、関係性があることが報告されました(オッズ比1.3 [95% CI 1.1-1.6]; P<0.01)。

 

これらの事より、『軟骨を保護する事で、変形性膝関節症の痛みを和らげることが出来るのではないか』という考えが広まり、薬剤の開発が求められました。

 

2019年にsprifermin(FGF(Fibroblast growth factor)-18)という、軟骨の減少を防ぐ薬剤が大規模のランダム化比較試験を受け、結果が報告されました(PMID=31593273)。

 

しかしこの薬剤は、軟骨の減少には効果があったようですが、関節痛などの臨床症状には効果が認められませんでした。

 

この事は、改めて『軟骨の減少が本当に痛みと関係するのか』という疑問を湧かせてくれるきっかけとなりました。関係がないのならば、軟骨の減少を抑制する薬剤はあまり意味がない事になります。 

 

長い前置きとなりましたが、今回ご紹介するのは、MRI軟骨の擦り減りの時間的変化変形性膝関節症の疼痛の関係性について調べた論文です。

 

既に調べられているじゃないかと思われるかもしれませんが、今回の研究では、関節痛の原因となり得ると言われている、変形性膝関節症による滑膜炎骨髄病変についても評価しています。

 

 

My Comment

●この論文から言えることは以下の3つです。

 ①軟骨の経時的な減少はわずかに膝関節痛と関連する事

  →0.1mmの減少がWOMAC疼痛スケール(0~20段階)で1点未満の増悪と関係

 ②骨髄病変がもともとある場合は、疼痛増悪しやすいかもしれない事

 ③軟骨の減少による疼痛増悪の14~20%には二次的な滑膜炎が関与する事

●一般的にWOMACスコアの有意な変化は2点以上(PMID=29793007)と言われていますが、今回の試験では24~36か月でわずか0~20段階で0.62~0.93しか悪化しておらず、軟骨の減少も24か月で0.1mmと少なく、もう少し長期の変化を見たいなと思いました。

→おそらく、長期の場合の成績も数年後には出してくれるでしょう。期待します。

●一方で滑膜炎も疼痛の原因である可能性が示唆されており、一部の患者さんでは疼痛がNSAIDsなどでコントロール不良の場合は、免疫調整薬(イグラチモドなど)の効果が期待できるかもしれません。

●『媒介解析』という解析を初めて知りました。ちゃんと使えるようになりたいです。

 

Results

●患者の背景を以下に示す。

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●平均年齢は62歳で女性が59%とやや多く、BMI31と肥満が多い。

●うつ症状は10%。

●疼痛スケールの増加は24~36か月でわずか(0~20段階で0.62~0.93)。

●軟骨の減少は24か月で0.1mm。

●滑膜炎のスコアは24か月で0.23増加。

●骨髄病変のスコアは24か月で-0.45とわずかに減少。

 

軟骨の減少と疼痛増悪の関係

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●軟骨が0.1mm減少することは24, 36か月時点での疼痛スコアの増加に有意に関連する。

→軟骨の減少は疼痛スコアの増加と関係しそう…

●もともと骨髄病変がある患者は24, 36か月時点での疼痛スコアの増加が有意に高い。

→既に骨髄病変がある人は痛みがあるという事ですね。

●一方、本文では軟骨の減少は滑膜炎の増加とも有意に関係すると書かれております。

 

そこで、軟骨の減少そのものが直接疼痛を起こしたのか、二次的に滑膜炎を起こして痛みを起こすのかを調べたのが以下になります。

 

二次的な滑膜炎と疼痛増悪の関係

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→これは24か月時点での軟骨の減少に関連して二次的な滑膜炎が起こる事によって疼痛が増悪するかを調べたものですが、軟骨の減少による疼痛増悪の14%二次的な滑膜炎を介している事が分かります。

→一方、骨髄病変はそれほど、軟骨の減少による疼痛増悪に関与していません。

 

同じ結果は36か月時点でも見られます。

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Patients and Methods

●データはFNIH OA Biomarkers Consortium Project16(https:// nda. nih. gov/ oai)を含むOsteoarthritis Initiative(OAI) cohort,から収集。

●膝関節痛症状がある45~79歳の男女を600人を選出。4つのサブグループに分けた。

●サブグループ

①関節裂隙(内側大腿脛骨)の狭小化+持続して増強する疼痛: n=194

 -関節裂隙の狭小化: ≥0.7mm

 -疼痛の持続増強: ベースラインから24~48か月経過後のWestern Ontario and

                                McMaster Universities Osteoarthritis Index(WOMAC) pain score

                                (≥9 on a 0–100 scale)

②関節裂隙の狭小化がない+疼痛増悪がない: n=200

③関節裂隙の狭小化のみ: n=103

④疼痛増悪のみ: n=103

●全ての被験者はベースライン、24か月時に膝関節MRIを施行。

●軟骨の厚さとボリュームを定量し、構造的特徴をMRI Osteoarthritis Knee
Score (MOAKS)を用いて半定量した。

●軟骨の変化は0.05~0.1mmで評価。

●疼痛は上記WOMAC score(スケール0~20)を使用。

●骨髄病変の評価には独自にスコア(スケール0~45, 15か所の骨髄病変の大きさの合計)を作成(PMID=21645627)し、ベースラインから24か月後の変化を計算した。

●滑膜炎は独自にスコア(スケール0~6, Hoffa-滑膜炎、関節液の合計)を作成(PMID=21645627)し、ベースラインから24か月後の変化を計算した。

 

以下に本研究の計画表を示す

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●軟骨の減少が24~36か月後の疼痛の増悪に与える影響を調べるために以下の媒介分析を行った。

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→ここでは青の軟骨の減少による膝関節痛への直接的な影響と二次的に滑膜炎を起こす事による膝関節痛への間接的な影響の両者を調べています。

 

【参考文献】

Bacon K, et al. Ann Rheum Dis. 2020 May 7. pii: annrheumdis-2020-217363. "Does cartilage loss cause pain in osteoarthritis and if so, how much?"

ITPはSLE発症のハイリスクである

 本日ご紹介するのは、免疫性血小板減少減少性紫斑病(ITP)と全身性エリテマトーデス(SLE)の関係について考察した短い論文です。

 

 結論から申し上げますと、ITPはSLE発症のハイリスクであるため、ITPの診断の入り口である血液中の先生とリウマチ内科医が協力しなければならないという事です。

 

 広範に免疫性血小板減少性紫斑病を見たときにどのようにSLEを精査するかについてアルゴリズムがございます。

 

 

 免疫性血小板減少性紫斑病(以下ITP: Immune thrombocytopenic purpura)は、以前は特発性血小板減少性紫斑病(ITP: idiopathic thrombocytopenic purpura)として知られていました。同じITPという略語が少しややこしいです。

 

 ITPは一過性または持続的な血小板数減少と、出血リスク(血小板減少の程度に応じて)が上昇する後天性免疫介在性疾患です。

 

 脾臓濾胞ヘルパーT細胞の異常反応、自己反応性B細胞の分化と増殖と抗血小板自己抗体の産生脾臓でのマクロファージによる貪食(抗原提示細胞としても機能)が主病態です。巨核球に対する免疫反応によって、不適切な骨髄産生も血小板減少に寄与します。一方で巨核球の成長因子である循環トロンボポエチンの低下も見られます。

 

 遺伝子解析ではヘルパーT細胞の活性化と分化、自己抗体反応、補体活性化に関与する遺伝子異常が見られます(PMID=23138397/23303824)。

 

 血小板抗原に対する自己抗体はITPの診断に特徴的ですが、患者の50%にしか検出されないようです。

 

 ほとんどの血小板抗原は細胞内由来で、アクチン細胞骨格と重要な関係があり、アポトーシスを制御するものです(PMID=26628061)。

 

 ITPの病因発生メカニズムは全身性エリテマトーデス(SLE)の発生メカニズムと類似していると考えられます。

 

 実際、血小板減少症はSLEの一般的な臨床症状の一つであり、有病率は20%もあり、血液学的な分類基準にも含まれております。

 

 最近の平均罹病期間が3年未満のSLE患者のコホートでは15.2%の患者に血小板減少が見られ、4.6%の患者で重症(Plt≤20000/μl)であったとの事です(PMID=31704720)。他のコホート(Attikonコホート)ではSLEの診断時12%累積では16%と決して少なくない頻度です(PMID=32106788)。

 

 古い研究ではSLE患者の12%までの患者が最初の診断がITPだったと言います(PMID=9150074)。

 

 平均80か月の追跡調査の結果ではITP患者のSLEの新規発症リスクが25.1倍(本文では26.8倍と書かれておりましたが、元論文は25.1倍でした)と非常に高い値となりました(PMID=32241798)。(その他のSLE新規発症リスクは性別が女性、シェーグレン症候群の合併などがあります)

 

 これらの所見は、ITP患者(特に抗核抗体が陽性の患者)は、ITPの診断後、2~5年以内はSLEの有無を注意深く観察し、リウマチ専門医によって血液学以外の徴候や症状を評価しなければならない事を意味します。

 

 血小板減少症はSLEの予後不良因子である事がいくつかの研究で示されておりますが、SLE(特にループス腎炎)に早期に気が付き、マネジメントする事が重要です(PMID=12393658/16100344)。

 

免疫性血小板減少性紫斑病のマネジメントアルゴリズム

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 小児の慢性ITP患者は小児リウマチ専門医によるルーチンのSLEの評価を受ける事が推奨されます。

 

 ITPとSLEは最初は同じ治療薬(ステロイド)で管理されますが、SLEを意識する事で、難治性のITPで脾臓摘出を遅らせる事ができリツキシマブやIVCY(シクロホスファミド静脈投与)などのSLEの治療を考慮する事が出来ます

 

 ITP患者で抗核抗体が陽性であったり、SLEの分類が不十分(不完全型SLE)の患者はヒドロキシクロロキンによる治療を検討しても良いかもしれません。

→これを調べたフランスの小規模な報告があります(PMID=24254965)。

 

 この研究では抗核抗体が陽性で血小板数が5万未満で初期ステロイド治療に反応しないITP患者28名とSLEとITPを合併した患者12名にヒドロキシクロロキンを投与した所、副作用による中断はなく、40名中24名(60%)に治療効果が得られたとの事です。SLE+ITP患者の方が治療反応は良かったものの(83% vs 50% p<0.05)、抗核抗体が陽性のITP患者でもヒドロキシクロロキンの効果が半分には見られたという貴重な報告でした。

 

 SLEに関連した免疫性血小板減少か、純粋な免疫性血小板減少性紫斑病かは遺伝的背景でわかるかもしれません。

→SLEで特異的なI型インターフェロンplasmablastの遺伝子異常(PMID=27040498/31167757)は純粋な免疫性血小板減少性紫斑病では見られない可能性があります。これは今後の研究に期待です。 

 

【参考文献】

Fanouriakis A, et al. Ann Rheum Dis. 2020 Apr 20. pii: annrheumdis-2020-217356. "Population-based studies in systemic lupus erythematosus: immune thrombocytopenic purpura or 'blood-dominant' lupus?"