リウマチ膠原病徒然日記

リウマチ膠原病徒然日記

リウマチ膠原病疾患に関して日々疑問になったことを中心にまとめたものです。

再発性アフタ性口内炎(Recurrent Aphthous Stomatitis: RAS)

【分類】

・再発性アフタ性口内炎(Recurrent Aphthous Stomatitis:RAS)は口腔粘膜の慢性炎症性疾患 (2)

・頬粘膜、口唇粘膜、舌に後発する(2)

・高度に角化した粘膜(口蓋、歯肉)には稀(2)

・再発性アフタ性口内炎はMinor、Major、ヘルペス状の潰瘍の3つに分類される(1)

・85%以上がMinorで大きさ1㎝未満で瘢痕を伴わない(1)

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・Majorは1㎝以上で数週から数か月持続し、瘢痕を伴い治癒する(1)

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ヘルペス状潰瘍は多発潰瘍の集簇として現れる、あらゆる口腔粘膜に散在する、名前は名前だが、単純ヘルペスウイルスとは関係ない(1)

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《3つのタイプの区別(1)

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・RASの内、Minorは75--90% 、Majorは10-15%、ヘルペス状潰瘍は5-10%(2)

・Minorは非角化粘膜(口唇、頬、舌)、Majorは角化(軟口蓋)+非角化粘膜、ヘルペス状潰瘍は非角化粘膜(舌の腹側)(2)

 

【疫学】

・一般人口の20%が再発性アフタ性口内炎を罹患する(1)

罹患率は5-50%で、民族や経済状況によって変わる(1)

・子供の場合、両心が再発性アフタ性口内炎を罹患している場合は90%に再発性アフタ性口内炎を罹患する(1)

・家族歴は24-46%に認める(2)

・女性(2)、白人(4)非喫煙者(4)でハイリスク

・社会経済的に高位の人に多いため、ストレスが誘因という説もある(1)

・発症年齢は10-19歳がピーク(1)

・30歳台以降に悪化する場合、背景疾患を考慮する(1)

・高齢でRASが減るには自然免疫と獲得免疫が低下するため(2)

・高齢者では好中球の遊走性と貪食性が低下し、メモリー細胞と比較してナイーブT細胞の割合が低下する(2)

・さらに免疫細胞はさらに異なるサイトカインを産生し、増殖反応が低下、シグナル伝達が欠損、抗原の認識能が低下する(2)

・高齢では末梢でのCD4陽性CD25高値FOXP陽性制御性T細胞が増加することで相対的に自己免疫性疾患の罹患率が減少する(2)

 

【病因】

外傷

・入れ歯やニコチン暴露がRASに関係するわけではない(1)

感染症

・ウイルスでは単純ヘルペスウイルスは実はあまり関係ない(1)

・むしろ水痘帯状疱疹ウイルスやサイトメガロウイルスが関係する(1)

・ピロリ菌は除菌によりVitB12値があがり、アフタの改善に関連するかも(1)

・連鎖球菌は特にStreptococcus sanguis 2AがRASに関連するかも(1)

Streptococcus orarisも(2)

栄養

・VitB12欠乏が代表的だが、補充して効果があったのは一部という報告と、血清の濃度に関わらず補充によって効果を認めたという報告あり(2)

亜鉛に関しても同様、補充が有効かはわかっていない

全身疾患

・自己免疫性疾患ではベーチェット病が最も多く、抗Saccharomyces cerevisiae抗体(ASCA)が高力価となる(ただしクローン病の70%、潰瘍性大腸炎の15%にも偽陽性となる)(1)

クローン病の10%にも口腔潰瘍を認め、消化管病変よりも先にでる(1)

・セリアック病の4-40%に再発性アフタ性口内炎を認め、口腔潰瘍は3-61%認める(1)

・AIDS患者ではCD4陽性細胞が100未満であればRASが頻回に起こる(1)

遺伝

・RAS患者で報告されている特異的なHLAとしてはHLA-A2、HLA-B5、HLA-B12、HLA-B44、HLA-B51、HLA-B52、HLA-DR2、HLA-DR7、HLA-DQ(1)

・その他、HLA-A33、HLA-B35、HLA-B81、HLA-DR5(2)

・HLA-B5、HLA-DR4は低い発症率

・IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-10、IL-12、IFN-γ、TNF-αの代謝の変化に関わるDNAポリメラーゼの遺伝的変化を認める(2)

セロトニン受容体遺伝子、内皮NOシンターゼ、細胞接着因子に関連するDNAポリメラーゼの役割も考えられている(2)

過敏反応

・特定の食物や口腔内菌(S. Sanguis)、微生物由来のHeat-shock proteinに対する過敏反応を原因と考えられる(1)

・RAS患者の一部には牛乳、チーズ、小麦アレルギーの方がいる(1)

・その他、グルテン、チョコレート、ナッツ、着色料がRASのカスケードを引き起こすと考えられている(2)

・歯磨き粉に含まれるラウリル硫酸ナトリウムの効果の変化がRASの原因とも考えられている(1)

・ラウリル硫酸ナトリウムを含む歯磨き粉では潰瘍の期間や疼痛スコアが高いという報告があるが(3)、含まれない歯磨き粉を使用してもRASを予防できなかったという報告もある(1)

免疫機序

・Minor RASの一部の患者では唾液中のIgAが急性期と回復期に高値となる(1)

・ある報告ではRASの重症度はCD4/CD8比に比例するとのこと、回復期はCD4陽性細胞がRAS部に多く、潰瘍期はCD8陽性細胞が多い(1)

・IL-2、IFNγ、TNFαのmRNAがRAS領域で見られる(1)

 

【鑑別】

・RASと診断する前に再発性の口腔潰瘍の鑑別をする必要がある

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※表の番号は参考文献の論文に対応しています。

※薬剤には天疱瘡やStevens-Jonson症候群、中毒性表皮壊死症を起こすものも含まれますが、上記表では省略しています。全身の皮疹が出る場合にはそれぞれの疾患を起こす原因薬剤をしっかり検索してください。

 

【メカニズム(2)

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・RASではTh2よりもTh1が活性化している(2)

クローン病、セリアック病、PFAPAではTh1が活性化している(2)

・RAS患者ではさらに炎症性サイトカインの発現を抑制するHeat-shock proteinが減少している(2)

・喫煙ではこのHeat-shock proteinが増加しているため、RASになりにくいと考えられている(2)

・RAS患者では細胞傷害性のあるIL-2を分泌するγ/δT細胞数も増加している(2)

・γ/δT細胞数は関節リウマチ、結核、セリアック病、ベーチェット病でも増加している(2)

 

《RAS患者のサイトカインの挙動(2)

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・TNFα、IL-2は増加、IL-10は低下(3)

 

【臨床症状】

・潰瘍病変に2-48時間先行する灼熱感(1)

・頬粘膜と亢口唇粘膜が最も侵されやすい(1)

・瘢痕を形成することなく、10-14日間持続する(1)

ベーチェット病の潰瘍はMajor RASに似る(1)

 

【病理】

・潰瘍形成前は上皮下の炎症性単核細胞と多数のマスト細胞、結合組織の浮腫、好中球の境界への浸潤を認める(1)

・上皮障害は基底層から始まり、上皮層に達する(1)

・潰瘍周辺には赤血球を認める(1)

・有棘層に非特異的に結合した免疫グロブリンや補体を認める(1)

・これらの所見は免疫複合体型血管炎に似る(1)

・RASの発症はT細胞由来の細胞性免疫、TNFαの産生に関連する(1)

・TNFαはToll like receptors(TLRs)の活性化によって産生される(1)

・TLRsには催炎症性と抗炎症性があり、RAS患者では催炎症性TLRsの発現が増加しており、抗炎症性TLRsの発現が減少している(1)

 

【マネジメント】

以下の表は(5)より抜粋編集したものです。

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・ラウリル硫酸ナトリウム含有の歯磨き粉は一応中止する(3)

・局所フッ素化コルチコステロイドを1-2時間毎に有症状部位に塗布する(3)

・全身疾患は原疾患の治療を行う(3)

ビタミンB12の補充(ある報告では1000μg/日、5-6か月)も血中濃度に関わらず有用かもしれない(3)

・コルチコステロイド内服を0.75mg/kg朝1回を1週間、0.25mg/kgを2週間使用し、中止する方法もある(3)

・NEJMでは30-60mgの経口プレドニゾロンを1週間投与する方法がある(4)

・コルヒチン単独処方でも有効であるが、ダプゾンの単独投与は効果なし(3)

・コルヒチンとダプゾンの併用は6割ぐらいの寛解(3)

・テトラサイクリン250mg口腔リンス・内服治療はあまり勧められない(3)

サリドマイドとコルヒチンまたはダプゾンの併用も6割ぐらいの寛解(3)

・ペントキシフィリン400mg1日1回を1か月投与するとTNFα値、好中球の機能、遊走能、貪食能が低下し、6割ぐらいに有効だが、中止すると全例で再発する(3)

・TNFα阻害薬が有効であったが副作用の問題もあり(3)

・経口プレドニゾロンは疼痛緩和と潰瘍治癒に有効(3)

プレドニゾロン(15mg/day)とレバミソール(150mg/day)を毎週連続する3日間併用すると2週間以内に全例が寛解したという報告もある(3)

・モンテルカストもプレドニゾロンに劣るが副作用がなく、長期使用が可能(3)

ベーチェット病のアフタ、性器潰瘍、皮膚病変にはシクロスポリンAが使われる、3-6mg/kg/dayが有効だが中止で再発する(3)

 

【参考文献】

(1) Akintoye SO et al. Dent Clin North Am. 2014 Apr;58(2):281-97. Recurrent aphthous stomatitis.

 (2)Slebioda Z et al. Arch Immunol Ther Exp (Warsz). 2014 Jun;62(3):205-15. Etiopathogenesis of recurrent aphthous stomatitis and the role of immunologic aspects- literature review.

(3)Cui RZ et al. Clin Dermatol. 2016 Jul-Aug;34(4):475-81. Recurrent aphthous stomatitis.

(4)Scully C. N Engl J Med. 2006 Jul 13;355(2):165-72. Clinical practice. Aphthous ulceration.

(5)Edgar NR et al. J Clin Aesthet Dermatol. 2017 Mar;10(3):26-36. Recurrent Aphthous Stomatitis: A Review.