AOSD 成人Still病の疫学
成人Still病の日本からの報告をご紹介致します。最近はこのようなリアルワールドデータの方がRCTよりも信憑性があるように感じます。
Asanuma YF. et al. Mod Rheumatol. 2015 May;25(3):393-400. "Nationwide epidemiological survey of 169 patients with adult Still's disease in Japan."
169例の成人Still病(Adult-onset still disease:AOSD)の解析です。
【ポイント】
・成人Still病は40代の女性に多い病気
・山口分類の大項目となっている発熱(9割)や関節痛(8割)は頻度が高いが、典型的皮疹(6割)、咽頭痛(6割)、リンパ節腫脹(4割)はそれほど頻度が高い症状ではない
・合併症にはマクロファージ活性化症候群が有名(15%)
・成人Still病は関節破壊が割とある(特に手関節、膝関節、肩関節)
・X線では手関節、PIP関節、膝関節に関節破壊所見を認める
・血液検査では山口分類の大項目の白血球増多(8割)、好中球増多(7割)が多い
・CRPやフェリチンは1割は正常
・フェリチンが3000ng/ml以上は成人Still病の可能性が高い
・治療はグルココルチコイドをしっかり効かせる
・再燃率は4割と高い、リンパ節腫脹とマクロファージ活性化症候群の合併がリスク
・メトトレキサート、シクロスポリンA、トシリズマブを併用しても再燃率は下がらない
・トシリズマブは寛解導入時に使用すると副反応が起こるが、維持期や再燃時に使用すると寛解が得られやすい
・再燃が多いが、寛解は最終的には9割近い
さっそく結果をお示し致します。
・上記の幼児は本文では16歳未満とされております(16歳で幼児!?)
・発症は40歳代が多く、女性に多い
・日本での罹患率は3.7人/100000人だそうです
《家族歴》
・家族歴はあまりなし
《症状》
・山口分類の大項目にもなっている発熱、関節痛の頻度が高いですね
・一方で典型的皮疹(大項目)、咽頭痛(小項目)は6割程度…
・リンパ節腫脹(小項目)は4割5分…
山口分類については以下になります(J Rheumatol. 1992;19:424-430)
→このときフェリチンは項目に含まれていなかった…
《合併症》
・当たり前ですが、マクロファージ活性化症候群(MAS)に注意する
《関節痛と関節炎》
・関節炎は関節痛(n=138)の内44.4%に認められた
・単関節炎:少関節炎:多関節炎はそれぞれ3例、33例、41例と多関節炎が最多
・罹患関節は手関節(27%)、膝関節(27%)、肩関節(15.8%)
・関節破壊は11.7%に認められ、内骨びらん(8.6%)、関節裂隙狭小化(7.8%)、強直(1.6%)であった→成人Still病は関節破壊があります!!ご注意を!!
以下は関節X線の所見と部位になります
※重複する関節があるので、数字は上記と異なります
・これによると、骨びらん・関節裂隙狭小化・強直のいずれかの所見が多いのは
手関節、PIP関節、膝関節の順
《検査所見》
・山口分類の大基準に含まれる白血球・好中球増多でも陽性率はそれぞれ8割と7割
・小項目に含まれる肝機能障害は7割
・CRPは9割が陽性だが、逆に陰性のものもある、同様にフェリチンも1割は正常
→再燃時は炎症マーカやフェリチンが上昇していなくても良い印象があります
→フェリチンが3000ng/ml以上では他の感染症などが除外されればかなり成人Still病を疑う所見です
・少ないですが、IL-6とIL-18を測定した例では高確率で上昇しており、これらのサイトカイン炎症に関与していることが示唆されます
《治療薬》
・治療薬として使用されたもので多いのはグルココルチコイド、NSAIDs、メトトレキサート、シクロスポリンA
寛解導入療法
・寛解導入療法としてグルココルチコイド単剤使用が5割
→まずはグルココルチコイドをがっつり効かせることが重要
・グルココルチコイドに免疫抑制薬を併用したのは3割であり、MTXが37例(23%)、CyAが30例(18.6%)
再燃時の治療
・グルココルチコイド単剤投与が最も多い
→再燃しそうでもグルココルチコイドを増量して対応する
・併用ではMTXが17例(25.4%)、CyAが8例(11.9%)
生物学的製剤の使用
・生物学的製剤は27例(16.3%)使用された
・内、TNFα阻害薬は12例(インフリキシマブ7例、エタネルセプト4例、アダリムマブ1例)、トシリズマブ21例
・トシリズマブ使用例の21例中、臨床情報が得られた19例を見ると、9例が寛解導入に使用された
・寛解導入に使用された9例の内、2例は寛解、5例は副作用(アレルギー反応、低血圧、マクロファージ活性化症候群、皮疹、感染症)のため中止となった
→トシリズマブは寛解導入で使用すると副作用が多い
・一方残りの10例は寛解維持で使用されたのが2例、8例は再燃時に使用された
→トシリズマブは寛解維持、または再燃時に使用した方がよい
・トシリズマブで寛解に達した患者は罹患期間が長かった
→罹患期間が長くてもトシリズマブを併用することで寛解に持ち込めるかも
《予後》
・データが得られた146例の内、58例(39.7%)のエピソードは単回であり、50例(34.2%)は複数回で全身性であった
・一方15例(10.3%)は単回であるが、慢性の関節病変を認め、23例(15.8%)は複数回全身性で慢性の関節病変を認める
・169例中66例(39.1%)は再燃を認める→驚異の再燃率
・寛解導入時にMTX、CyA、NSAIDs、TCZを併用しても再燃率は下がらない
・最終的には145例/164例(88.4%)が寛解に達する
・再燃に関与するのはリンパ節腫脹(OR1.99)、マクロファージ活性化症候群の合併(OR2.88)→ただし年齢、性別、診療症状や薬剤で調整すると関係するのはリンパ節腫脹(OR2.40)のみ
・マクロファージ活性化症候群のリスクはAST上昇(OR1.84)、LDH上昇(OR5.07)、高フェリチン血症(OR4.36)→ただし、これらはマクロファージ活性化症候群に見られる血液検査でもあるため、特別なものではないように思います