”Vesperの呪い” ~夜間に増悪する腰痛の鑑別~
担当ではありませんでしたが、先日の当直中、肺炎で入院中、夜間に悪化する腰部から両下肢の疼痛を訴える患者さんの診察依頼がありました。腰部脊柱管狭窄症の既往があり、診察では軽度うっ血性心不全の兆候がありました。
調べてみると”Vasperの呪い”という現象があるそうです。
《Vasperの呪い》
右心不全があると臥位で脊柱管の圧が上がり、腰部脊柱管狭窄症の症状が悪化するというものです。
→心不全の治療で改善すると…意外と見逃しているかもしれません…
《機序》
①右心のコンプライアンスが減少
②静脈のボリュームが増加
③傍脊椎のバトソン静脈叢での圧が上昇
④脊柱管狭窄症症状が悪化する
"Vasperの呪い"は右心のコンプライアンスが低下する病態であればCOPDでも起こり得るとのこと、また臥床だけでもバトソン静脈叢の圧が上がるので、右心不全がなくとも何らかの原因で臥床になった方で腰痛が起こる場合は考えても良いかもしれません。
※ちなみにバトソン静脈叢とは、以下の通り椎体周囲の静脈叢を言います。
→弁構造がないため、うっ滞や逆流がしやすく、感染や転移の経路となり得ます。
【参考文献】
LaBan MM, et al. Am J Phys Med Rehabil. 1988 Aug;67(4):155-60. "Night pain associated with diminished cardiopulmonary compliance. A concomitant of lumbar spinal stenosis and degenerative spondylolisthesis."