好酸球性心筋炎UpToDate
好酸球増多症ではしばしば心筋障害が起こります。好酸球増多症の原因精査目的で入院された方で、心筋肥大を認めた患者がいらしたので、以前に発表したスライドを掘り起こし、復習しました。
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ちなみに好酸球性心筋炎の原因として特に多い、特発性、過敏性、EGPA、HESのそれぞれの特徴を比較した論文があったので、以下に要点だけをまとめます。スライドにまとめたのが上記3枚目です。
まずは患者背景について。
《患者背景》
・喘息やアレルギー疾患の併存は意外と少ない
・症状として多いのは呼吸困難感(59.4%)、胸痛(43.4%)、発熱(35.5%)
・心電図ではST異常が多い
・エコーではEFが低下する(25-50%)、冠動脈造影は正常(97.2%)
・急性期には27.2%が心停止する
《組織学的に好酸球性心筋炎と診断された群に有意》
・若い、喘息の既往が少ない、末梢血好酸球数が少ない
・心電図でST上昇を認めやすい、心エコーでLVEFが低下しやすい
・心停止を起こしやすい
《組織学的に好酸球性心筋炎と診断されなかった群に有意》
《検査》
・末梢血好酸球数増多は75%しか見られない
《背景(組織学的に証明された好酸球性心筋炎の179例)》
・Hypersensitivity reaction:61例、34.1%
・好酸球性多発血管炎性肉芽腫症:23例、12.8%
・好酸球増多症候群(HES)/骨髄増殖性疾患:15例、8.4%
・感染症:9例、5%(主にToxocara canis:6例、3.4%)
・妊娠:3例、1.7%
・癌:2例、1.1%
・薬物過剰摂取(OD):1例、0.6%
・その他の免疫介在性疾患(Omenn症候群):1例、0.6%
・原因不明:64例、35.7%
《予後》
・死亡:40例、22.3%、全244例(組織学的証明がないものも含む)の院内死亡率(31.4%)
・長期VAD・人工心臓:5例、2.8%
・心臓移植例はなし
・Hypersensitivity reactionが高い院内死亡率(36.1%)、中期予後不良(53.7%)と関連
・平均在院日数は14日(6-30日)
・入院から死亡または長期VAD/TAHまでの平均日数は3日(1-9日)
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特発性、過敏性、EGPA、HESのそれぞれの特徴を比較したものです。
・平均年齢:41歳(24-58歳)
・症状:呼吸苦(68.3%)、胸痛(41.3%)、発熱(26.7%)
・院内死亡(12.5%)、TAH(1.6%)、長期LVAD(3.1%)
・退院時の平均LVEF57%(35-60%)
■Hypersensitivity reactionに伴う好酸球性心筋炎(61例)
・組織学的に診断された115例の中では51%と最多
・平均年齢:35歳(25-47歳)、有意差はないが小児が多い(16.4%)
・有意差はないが男性が多い(63.5%)
・症状:呼吸苦(47.5%)、胸痛(35.5%)、発熱(54.2%)、非特異的症状(27.9%)
・既往で喘息が少ない
・機械的循環補助:MCS(19.7%)
・心停止が他の原因よりも有意に上昇(up to 44.6%)
・院内死亡は高い(36.1%)、長期LVAD(3.3%)
・退院時の平均LVEF60%(45-60%)
・被疑薬は抗菌薬が最も多い(36.5%)、βラクタム系とミノサイクリン
中枢神経作動薬(21.1%)、クロザピンが最多でカルバマゼピンが続く
ワクチン(7.7%)、抗結核薬(1.9%)、その他(32.8%)
■EGPAに伴う好酸球性心筋炎(23例)
・平均年齢50歳(26-65歳)
・症状:呼吸苦(68.2%)、胸痛(45.4%)、発熱は最少(15%)
・喘息の既往率が最多(uo to 68.2%)
・機械的循環補助:MCS(21.7%)
・院内死亡(21.7%)
・退院時の平均LVEF40%(31-49%)
■HESに伴う好酸球性心筋炎(15例)
・平均年齢41歳(32-53歳)
・他群と有意差はないが女性に多い傾向(66.7%, p=0.11)
・症状:呼吸苦(71.4%)、胸痛(50.0%)、発熱(23.1%)
・機械的循環補助:MCS(6.7%)少ない
・院内死亡(13.3%)
・退院時の平均LVEF49%(23-58%)
【参考文献】
(1) Brambatti M, et al. J Am Coll Cardiol. 2017 Nov 7;70(19):2363-2375. Eosinophilic Myocarditis: Characteristics, Treatment, and Outcomes.
(2) Kuchynka P, et al. Biomed Res Int. 2016;2016:2829583. Current Diagnostic and Therapeutic Aspects of Eosinophilic Myocarditis.