リウマチ膠原病徒然日記

リウマチ膠原病徒然日記

リウマチ膠原病疾患に関して日々疑問になったことを中心にまとめたものです。

強直性脊椎炎の診断への旅

 最近、ご紹介頂く原因不明の関節炎の患者さんの中に、何人か強直性脊椎炎の患者がおりました。

 

 関節リウマチは診断出来る先生が増えて来ているように思いますが、強直性脊椎炎に関しては未だに線維筋痛症②血清反応陰性関節リウマチ③慢性腰痛などと誤診されたり、診断が遅れたりしていることが多い気がします。

 

というのも

①一般人口の中で腰痛の割合が高い事

②強直性脊椎炎の進行が緩徐である事

③特異的な症状やバイオマーカがない事

などが原因であると思われます。

 

 今回ご紹介する論文は強直性脊椎炎の患者が実際どのように誤診されているか、どれだけ診断が遅れているかについて患者に直接聞くというリアルワールドのデータを示したものです。

 

【ポイント】

・強直性脊椎炎の6割の患者は発症してから1年以内に医療機関を受診している

・しかし、医療機関を受診してから強直性脊椎炎の診断がつくまでの期間は、1年以内、2~9年、10年以上がそれぞれ3割ずつ

・発症してから診断がつくまで平均で9年の遅れがある

医療機関を受診するきっかけとなる症状は背部痛、関節痛、こわばりが多かった

・診断までに時間がかかった患者では倦怠感、睡眠障害片頭痛、腱・靭帯痛、IBS症状が多かった(特に腱・靭帯痛)

・診断までに時間がかかった患者の初期症状は坐骨神経痛と歩行障害が多かった

・診断までの時間がかからなかった患者は背部痛、関節痛、線維筋痛症が多かった

・経過中、87.2%の患者が開業医や家庭医、65.1%がリウマチ医、26.8%が整形外科医を受診していた

・リウマチ医を受診していた患者では診断までの期間が短かった

・最も多い誤診が腰痛症精神障害、不安/抑うつであった

・女性は男性より線維筋痛症精神障害と誤診されることが多かった

 

【Methods】

・対象:米国の18歳以上で強直性脊椎炎と診断された、CreakyJoints(患者サポート団体), AethritisPower(患者調査登録)に登録されている患者

・方法:Webによるアンケート調査

・検定:t検定、χ2検定

 

【結果】

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・235名の回答者(174名(74%)が女性)

・平均年齢(SD)=女性48.6歳(10.6)、男性53.1歳(10.3)

・92.8%が白人

医療機関を受診してから強直性脊椎炎の診断がつくまでの期間は、

 1年以内が87名(37%)2~9年が71名(30.2%)10年以上が77名(32.8%)

・診断までに10年以上かかった患者は高齢で白人が多い(有意差なし)

・生物学的製剤(78.7%)、NSAIDs(84.3%)、DMARDs(65%)が処方された

・女性の方がDMARDsを処方されていた(71.8% vs 44.3% p=0.0002)

・症状発現からの平均期間(SD)は17.9年(12.6年)

・最終診断を受けるまで平均8.5年(SD9.3年)かかっていた

倦怠感睡眠障害片頭痛腱・靭帯痛IBS症状は診断までの期間が長い患者に多かった(特に腱・靭帯痛)

・一方で背部痛、関節痛、線維筋痛症は診断までの期間が短い患者で多かった

・女性では男性よりも倦怠感、背部痛、睡眠障害、不安、片頭痛、腱・靭帯痛、フットプロブレム、線維筋痛症IBS症状が多かった

・男性では高血圧が女性より多かった

 

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・RAPID3スコアの平均(SD)は15.4(5.4)、71.9%が高重症度であった

・高重症度患者の割合は診断までの期間が1年以内よりも2~9年、10年以上で高かった(65.5% vs 76.1% vs 75.3%)

・62.6%が再燃を経験していた

・一般的な症状はこわばり(86.4%)、倦怠感(84.3%)、背部痛(83.0%)であった

 

 

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・男性の方が女性よりも診断までの期間が短かった

・57%の患者が症状発現から1年以内に医療機関を受診している

・30.2%の患者が発症後、2年以上経過してから医療機関を受診している

 

 

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医療機関を受診するきっかけとなる症状は背部痛(73.3%)関節痛(63.%)こわばり(59.1%)が多かった

坐骨神経痛歩行障害が診断までに長時間要した患者でよく見られる症状であった

 

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・女性患者は男性患者よりもフットプロブレム医療機関を受診することが多い(31.6% vs 11.5%)

・一方で男性患者はブドウ膜炎で受診することが多い(31.1% vs 14.9%)

 

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・経過中、87.2%の患者がプライマリケア医や家庭医を受診していた

・経過中、65.1%の患者がリウマチ医を受診していた

・経過中、26.8%の患者が整形外科医を受診していた

・診断までの期間が1年以内の患者は2~9年、10年以上かかった患者と比べて、リウマチ医を受診していた割合が高かった(77% vs 67.6% vs 49.4%)

・診断までに時間がかかった患者は非リウマチ医(開業医、家庭医、スポーツ医、精神科医、皮膚科医、足病医、小児科医)をより受診する傾向であった

 

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・96.2%の患者が誤診されたと報告した

・特に診断までの期間が長い患者ほど誤診されたと思う傾向になった

・最も多い誤診が①腰痛症(44.3%)精神障害(36.2%)③不安/抑うつ(21.3%)

 ・診断までの期間が長い患者が受けた誤診は背部痛、精神障害坐骨神経痛、整形外科的問題、変形性関節症であった

 

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・女性は男性より線維筋痛症精神障害と誤診されることが多かった

 

【参考文献】

●Ogdie A, et al. Rheumatol Ther. 2019 Jun; 6 (2): 255-267. "Real-World Patient Experience on the Path to Diagnosis of Ankylosing Spondylitis."