リウマチ膠原病徒然日記

リウマチ膠原病徒然日記

リウマチ膠原病疾患に関して日々疑問になったことを中心にまとめたものです。

大血管型の巨細胞性動脈炎(GCA)の診断、モニタリング、マネジメント

 

大血管型の巨細胞性動脈炎のReviewを読みましたので、以下にまとめます。

 

こちらもご覧下さい。

 

tuneyoshida.hatenablog.com

 

 

 

Introduction

GCAは慢性、特発性、肉芽腫性の中大血管炎

・側頭動脈炎と側頭動脈外のGCA(大血管のGCA=LV-GCA)を含む

・約8割に大血管病変を含む

・胸部大動脈瘤のリスクが17倍

・大動脈瘤や大動脈解離は5人に1人起こる

・大血管狭窄症は8人に1人起こる

・グルココルチコイドが治療のメインストリームだが、89%の患者で副作用が起こっているという報告あり

・最近はトシリズマブが効果的で安全な選択肢

 

分類と学名

・従来の側頭動脈GCAと大血管GCA(LV-GCA)は別もの

・正確なコンセンサスはないが、多くの研究はLV-GCAを大動脈やその分岐血管の炎症を含むと考えている(下記Table 1の内、少なくとも1つが証明される)

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GCAの分類基準は1990年のACRクライテリアに基づくが、これは側頭動脈症状に重点を置いている

・側頭動脈の生検がGCAのGold standardとなっている

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※3つ以上を満たすときに診断可能(感度93.5%、特異度91.2%)

 

・ある報告(Theumatology 2015;54:463-70)では放射線的にLV-GCAと診断された患者の39%にしかACRクライテリアを満たさなかった(側頭動脈GCAでは95%)

・側頭動脈GCAでは生検陰性が19-30%、LV-GCAでは生検陰性が48%あり得る

 

疫学

GCA罹患率は1.6-32.8/10万(50歳以上)

スカンジナビア人で罹患率が高い傾向

・ただし、GCAの疫学に関する研究はACRクライテリアに則っている

・実臨床ではGCAは孤発性側頭動脈GCA、LV-GCAを伴う側頭動脈GCA、孤発性LV-GCAに分けられる

・正確な定義や分類基準がないため、真の罹患率は不明確

 

LV-GCAの臨床症状

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・典型的な側頭動脈GCAの症状である頭痛、顎跛行、頭皮圧痛、視野異常ない、もしくは少ない

・LV-GCAは女性に多い、より若く発症する、診断まで時間がかかる、炎症マーカが側頭動脈GCAよりも低い傾向

・LV-GCAで典型的な症状は四肢跛行、血管雑音、脈拍不一致、AR雑音

・両側上肢の血圧、聴診、血管雑音や頸動脈や四肢血管での異常な脈拍は最低限チェックすべき

・孤発性のLV-GCAの場合、多発筋痛、炎症マーカ上昇、不明熱で受診することがある

・上記の場合は各種画像所見でTable3の疾患を除外することが大事

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GCAの診断アルゴリズムは下記

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画像的特徴とLV-GCAにおける頻度

・LV-GCAでは外科的生検はしばしば困難

・画像診断が発達してきたが、コンセンサスが欠如している

・CTAでは45-65%でGCAの大動脈炎を同定できた

GCAと診断された患者では全例でCTAとMRAが推奨される

・FDG-PETでは83%の患者で大動脈炎を同定できた

・肝臓と同等もしくはそれ以上のFDG取り込みをGCA患者の大動脈炎を同定するクライテリアとした場合、診断の正確性は高い(感度90%、特異度98%)

・カラーエコーのLV-GCA所見は血管の狭窄・閉塞、内膜中膜の肥厚、血管壁周囲の低エコー域(ハローサイン)が含まれる

GCA患者の腋窩動脈での内膜、中膜の肥厚が1mm以上の感度、特異度は100%

・カラーエコーでの新規GCA患者の大血管病変の同定率は29%

GCA患者で側頭動脈、鎖骨下、腋窩、上肢近位動脈でのカラーエコー所見は30%に見られる

・LV-GCA患者で各動脈のエコーでの異常所見率は腋窩動脈(98%)、鎖骨下(61%)、上肢近位動脈(21%)

 

LV-GCAの疾患活動性の評価

・画像所見のフォローのタイミングについてはエビデンス不足

・ESRやCRPの上昇がしばしば活動性の指標として用いられるが、活動性の血管の炎症を示唆するわけではない

・大動脈の拡張は慢性的な免疫抑制によるのか、過去の血管障害によるものか判断できない

MRIとFDG-PETの組み合わせが疾患活動性のアセスメントに有用だが、コストの問題があるため、推奨されない

・エコーでのハローサインは疾患活動性の根拠として考慮される

・側頭動脈の低エコー域はグルココルチコイド治療の2日後には改善したという報告あり

・しかし、腋窩動脈でのハローサインの改善は1-2か月要したという

・一部の専門家は6か月ごとに腋窩動脈の内膜、中膜肥厚の減少を疾患活動性の指標として使用している

 

LV-GCAの短期または長期予後

・予後はLV-GCAの血管病変のパターンによって変わる

・LV-GCAでは視力障害はあまり起こさない

・大動脈の狭窄は四肢の跛行につながる

・致死的な四肢虚血はあまり起こらないため、血管バイパス術はあまり必要ない

・血管バイパス術を行う場合は疾患活動性が治まっているときに行うこと

・胸部大動脈の強い炎症がある場合、大動脈拡張が起こる傾向

・予後因子:大動脈瘤/解離、GCA診断時の血管雑音、脂質異常症、冠動脈疾患、PMR症状を伴う炎症反応高値

・LV-GCAでは側頭動脈GCAと比較して大動脈瘤を起こしやすい(15% vs 35 at 5 years)

・大血管病変があると2.4倍死亡率が上がる、大動脈瘤/解離がある場合は心血管、肺疾患関連の死亡が多く、生存率が下がる

 

治療

・グルココルチコイド0.75-1mg/kg/dayで開始し、徐々に減量する

・免疫抑制薬はMTX、生物学的製剤はアバタセプト、トシリズマブ

・難治性の場合はウステキヌマブ(IL-12/IL-23阻害薬)

 

【参考文献】

Matthew J Koster, et al. Rheumatology (Oxford) . 2018 Feb 1;57(suppl_2):ii32-ii42. "Large-vessel giant cell arteritis: diagnosis, monitoring and management" PMID=29982778