ステロイドの副作用の新しい評価スケール~複合グルココルチコイド毒性指標~
先日『SLEの慢性期のステロイドは中止できるか? 』というテーマの論文をご紹介しましたが、その中で、ステロイドの副作用の評価スケールを使用しておりました。
恥ずかしながらステロイドの副作用って、例えば骨粗鬆症は『ある』か『なし』で評価しておりましたが、この評価スケールは項目ごとに点数化されているため、同じ患者さんで数字の変動がステロイドの副作用の改善・悪化の判定(特に臨床研究の時)に使えるな、と思いました。
今日はそのステロイドの副作用の評価スケールである『複合グルココルチコイド毒性指標』についてご紹介したいと思います。
複合グルココルチコイド毒性指標
概要
●11分野(リウマチ科、小児科、呼吸器科、腎臓内科、神経内科、眼科、皮膚科、感染症科、精神科など)から19人のステロイド使用経験が豊富で薬理学に詳しい専門家19人が招集され、電話会議や対面会議によってコンセンサスが得られました。
●その後、各服作用のカテゴリーに相対的な重み付けが加えられました。
●評価者間の信頼性は専門家でκ=0.88 (p<0.01)独立した評価者ではκ=0.90 (p<0.01)、と高度の一致が認められました。
●妥当性の検討では、専門家と独立した評価者でそれぞれκ=0.87 (p<0.01)、κ=0.77(p<0.01)と、優れた一致率でした。
項目の定め方
●点数化された項目は以下の原則に基づいて定められています。
①発生頻度が5%を超える可能性のあるもの
②互いに独立したもの
③項目の同等性(同領域で毒性の程度が同等である場合、単一の項目に含める事が可能)
④毒性は疾患よりもグルココルチコイドによる可能性が高い
⑤毒性は試験開始前のグルココルチコイド治療の結果である可能性が低い
⑥測定は原則、侵襲的な検査や画像検査を必要としない
上記を満たさない場合でも、副作用として重要なものは特定リストとして残しています。
注意点
●これは絶対値を患者毎に比較するものではなく、『ある患者での変化』を見るためのものです。したがって少なくとも2点以上で評価をして変化率を見る事が重要です。
●アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞、脳卒中などは併存疾患(例:喫煙)や原疾患の影響(例:全身性エリテマトーデス)によって起こることがあるため、ステロイドの副作用と混同する可能性があり、項目から除外されています。
●画像検査が必要なものは除外されています。
●骨密度は12か月毎よりも頻繁に測定されるべきではないので、1年未満の評価の際には、骨密度のカテゴリーを除外する必要があります。
各項目の定義
特定リストの定義
【参考文献】
Eli M Miloslavsky, et al. Ann Rheum Dis. 2017 Mar; 76 (3): 543-546. "Development of a Glucocorticoid Toxicity Index (GTI) using multicriteria decision analysis" PMID=27474764