SLEの鑑別~パルボウイルス感染症~
SLEの最大の鑑別にパルボウイルス感染症があります。
『SLEを疑ったら、パルボウイルス感染症を考える!!』という格言があるくらいパルボウイルス感染症の症状はSLEに類似します。発熱、関節炎、皮疹などの症状はもちろん、血清学的に、低補体や抗核抗体が陽性となる患者さんもおられます。さらにパルボウイルス感染症からSLEに発展する事も知られております。
今回、とある勉強会で教えて頂いた、SLE症状を呈するパルボウイルス感染症について調べた、2005年の論文をご紹介したいと思います。かなり古いですが良い論文です。
Methods
●1975年から2003年までの文献でSLEに関連したパルボウイルス感染症の症例を検索。
●SLEの分類基準は1997年のACRの基準を満たすものとした。
●パルボウイルス感染症は特異的IgMまたはDNAが陽性例を診断とした。
●文献検索の症例に筆者が経験した2例を加えて検討した。
Results
●文献検索の結果、SLEに関連したパルボウイルス感染症の症例は36例、筆者らの2例を加えて、38例で検討した。
●19/38例が自然にSLE症状が改善した。
●6/38例は既に診断確定していたSLEの症状が増悪した。
●6/38例はウイルス感染症が改善した後も、臨床症状や血清学的異常の数か月から数年持続し、ウイルス感染によってSLEの発症が誘発されたと考えられた。
●7/38例はウイルス感染からSLEへ発展するかどうかの記載がなかった。
臨床症状
●上記が38例の詳細な臨床症状。
●女性は35例(92%)で男性は3例だった。平均年齢は28.8歳(62~72歳)
●各症状の頻度は以下の通り。
血液学的異常
●上記が38例の詳細な血液学的異常。
●各血液学的異常の頻度は以下の通り。
●パルボウイルス感染症の診断は以下の通り。
特異的IgM陽性:28例
PCR陽性:2例
Discussion
●パルボウイルス感染症はSLEの臨床症状や血液学的異常を呈する事が分かった。
●パルボウイルス感染症による臨床症状や血液学的異常は改善に3か月要する事もあるが、6か月持続した症例も5例いた。
●ただし、全ての症例は7か月以内に臨床症状と血液学的異常が改善した。
●症状別では関節症状は4週間以内に改善する事が多かった。
●蝶形紅斑は小児では一般的だが、成人女性では50%、成人男性では35%にしか認められない。これらは2週間以内に改善した。
●症状とは異なり、自己抗体は回復期に陽性となる。
●症状が持続したり、特異抗体陽性が持続する場合はSLE発症を誘導したと考える。
SLEとパルボウイルス感染症の相違点
最後にSLEとパルボウイルス感染症の相違点を載せておきます。
【参考文献】
Sève P, et al. Semin Arthritis Rheum. 2005 Feb; 34 (4): 642-8."Lupus-like presentation of parvovirus B19 infection."