リウマチ膠原病徒然日記

リウマチ膠原病徒然日記

リウマチ膠原病疾患に関して日々疑問になったことを中心にまとめたものです。

免疫抑制患者へのワクチン接種

Immunology: Prevention of infections in patients with autoimmune diseases.

Meyer-Olson D et al. Nat Rev Rheumatol. 2011 Apr; 7(4): 198-200.

 

多くの自己免疫性炎症性リウマチ性疾患(AIRDs)において、最も多く見られる死因は感染症であるため、適切なワクチン接種が重要です。上記論文はEULAR2011年のワクチンに対する勧告をまとめたものです。

 

ちなみにEULAR 2019のワクチン接種に関するRecommendationsはこちら。

 

【推奨されるマネジメント】

・患者のワクチン接種状況を聴取する

・肺炎球菌ワクチン、未接種のワクチン、リスクに応じた特異的なワクチン接種の推奨と実施をする

・B細胞抑制療法(リツキシマブ)を始める前にワクチン接種を行う

 

【推奨されないワクチン】

・免疫抑制患者への生ワクチン(ポリオ、腸チフス、黄熱)

・BCGワクチン

 

【一般的に推奨されるワクチン】

・毎年のインフルエンザワクチン

・23価多糖体肺炎球菌ワクチン

 

【特異的なサブグループの患者に推奨されるワクチン】

・過度な免疫抑制でない患者への水痘帯状疱疹ワクチン

 (下記『水痘帯状疱疹ワクチンを接種できる患者(専門家意見)』参照)

・25歳までのSLE女性へのHPVワクチン

・無脾症、脾機能低下患者へのインフルエンザ桿菌、髄膜炎菌ワクチン

・リスクがある患者(流行地への旅行歴、感染者への接触)のA型肝炎B型肝炎ワクチン

・24週以内にリツキシマブ治療しており、大きい外傷または汚染された創部を持つ患者の破傷風免疫グロブリン(EULAR推奨原文では破傷風ワクチンは免疫抑制患者全例で推奨されている)

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以下にEULAR2011年の推奨原文を載せます。

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EULAR recommendations for vaccination in adult patients with autoimmune inflammatory rheumatic diseases.

van Assen S et al. Ann Rheum Dis. 2011 Mar;70(3):414-22.

 

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最初の論文に追加すべき情報としては

・DMARDs、TNFα阻害薬使用中でもワクチン接種は出来るが、理想的にはB細胞除去療法(リツキシマブ)前にワクチン接種は済ませる

渡航を考えている自己免疫性炎症性リウマチ性疾患患者は旅行先の感染症流行に則ってワクチン接種をすべきであるが、生ワクチンは禁止

ということ 

 

以下は特筆すべき項目についてまとめたものです。

 

《治療開始前にチェックすべきワクチン接種歴》

※自己免疫性炎症性リウマチ性疾患全例でチェックすべき

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帯状疱疹

・RA自体が帯状疱疹のリスクであり、コルチコステロイド、TNFα阻害薬、DMARDs(シクロホスファミド、アザチオプリン、レフルノミド)を使用しているとさらにリスクが上がる

・リツキシマブを使用しているSLEは帯状疱疹のリスクが上がる

・SLEの活動性はそれ自体帯状疱疹のリスクではない 

 

《水痘帯状疱疹ワクチンを接種できる患者(専門家意見)》

・コルチコステロイドの投与が14日以内

・コルチコステロイドの投与が20mg/日以内

・関節内、滑液包、腱へのコルチコステロイド注射

・長期間の低または中等量のコルチコステロイドを隔日投与している患者

・MTX0.4mg/kg/week

・Azathioprine<3.0mg/kg/day

 

結核

結核はリウマチ膠原病疾患、特にDMARDs、コルチコステロイドを使用している場合、TNFα阻害薬を使用している場合は発症率が上昇する

・BCGワクチンはTBの発症予防に効果があるか不明

・免疫抑制患者ではBCGによる結核発症のリスクあり

 

《ワクチンの効果減弱について》
・SLEでアザチオプリンを使用している患者ではインフルエンザワクチンの効果が落ちる報告あり(Ann Rheum Dis 2006;65:913-8.)(Rheumatology(Oxford) 2007;46:608-11.)

・TNFα阻害薬とMTXの併用では肺炎球菌ワクチンへの反応性が低下する報告あり(Rheumatology(Oxford) 2006;45:106-11.)(Rheumatology(Oxford) 2007;46:608-11.)(Vaccine 2008;26:3528-33.)

・リツキシマブ投与1-3か月後のインフルエンザワクチン、投与28週後の肺炎球菌ワクチンの液性免疫は強力に抑制される

・B細胞除去療法(リツキシマブ)を開始する前にワクチンを接種しておくことが望ましい

・6-mercaptopurine<1.5mg/kg/day