再発性多発軟骨炎①~症状~
先日外来で耳介軟骨が腫れて痛がる患者がいました。まだ確定診断はついておりませんが、再発性多発軟骨炎を想起しました。
再発性多発軟骨炎は耳介軟骨、鼻軟骨、気管軟骨などの軟骨に炎症が生じる再発性の疾患です。
それ以外にも関節や眼、心血管、中枢神経病変を合併すると言われております。
本稿では各症状の関連性についてまとめたいと思います。
こちらもご覧ください。
【ポイント】
・初発症状、全経過中の症状として外耳病変(耳介軟骨病変)が最多。
・鼻軟骨病変は気道病変と関連する。
・気道病変と外耳病変に強い負の相関を認める。
・外耳病変は内耳・関節・眼・腎・神経・心血管病変を伴う。
・今後、鼻軟骨・気管軟骨病変型(R: Respiratory)と外耳病変型(A: Auricular)、混合型(O: Overlap)に分けられるかもしれない。
比較的最近のフランスからの報告(1)と日本からの報告(2)について初発症状と全経過中の症状をまとめます。
・初発症状としても全経過中の症状としても耳介軟骨病変が最多となっております。
・フランスでは関節病変、鼻病変、皮膚病変、心血管病変、喉頭病変が多いのに対して、日本では気道病変、腎病変が多い傾向です。
稀な疾患である上、上記の通り、多彩な病変を呈するので、なかなか理解しづらい疾患ですが、最近、各々の病変が実は関連しているのではないかという考えが出てまいりました。
誇らしい日本からの報告(3)ですが、それぞれの病変は各々に正の相関、負の相関があるようです。
※赤は正の相関関係、青は負の相関関係
※数字が0.14以上で有意な相関関係
これをまとめると、以下のようになります。
・鼻軟骨病変は気道病変と関連する。
・気道病変と外耳病変に強い負の相関を認める。
・外耳病変は内耳・関節・眼・腎・神経・心血管病変を伴う。
ざっくり言うと症状は鼻軟骨病変・気道病変と外耳病変に分けられるということ
外耳病変は様々な合併症(内耳、眼、関節、心、腎、中枢神経病変)に関係するよう。
さらに筆者らは鼻軟骨・気管軟骨病変型(R: Respiratory)と外耳病変型(A: Auricular)、混合型(O: Overlap)に分けると臨床的な特徴が見いだされることを発表しました(4)。
・鼻軟骨・気管軟骨病変型と外耳病変型で疾患の発症年齢、罹病期間、男女には有意差なし。
・混合型では外耳病変型と比較して有意に罹病期間が長い。
それぞれの臨床的な特徴を比較すると、以下のようになります。
・鼻軟骨・気管軟骨病変型では外耳病変型と比較して有意に鞍鼻が多く、進行性の経過
・結膜炎、非びらん性関節炎、CNS病変は外耳病変型に多い。→既に述べました
・心血管病変を合併する患者はそうでない患者よりも罹病期間が長い。
・気管軟骨病変型は心血管病変を呈さなかった。
・混合型と外耳病変型の比較では混合型で鞍鼻、進行性の経過、MMP-3高値、心血管病変を多く認めた。
この分類は比較的、臨床的感覚に似ていると思います。今後、再発性多発軟骨炎の分類は鼻軟骨・気管軟骨病変型(R: Respiratory)と外耳病変型(A: Auricular)、混合型(O: Overlap)に分けられて来るのではないでしょうか、楽しみです。
【参考文献】
(1) Dion J, et al. Arthritis Rheumatol. 2016 Dec;68(12):2992-3001. Relapsing Polychondritis Can Be Characterized by Three Different Clinical Phenotypes: Analysis of a Recent Series of 142 Patients.
(2) Oka H, et al. Inflammation and Regeneration 2014 Vol 34 Issue 3 149-156. A large-scale survey of patients with relapsing polychondritis in Japan.
Shimizu J, et al. Arthritis Rheumatol. 2018 Jan;70(1):148-149. Organ involvement pattern suggests subgroups within relapsing polychondritis: comment on the article by Dion et al.
(3) Shimizu J, et al. Arthritis Rheumatol. 2018 Jan;70(1):148-149. Organ involvement pattern suggests subgroups within relapsing polychondritis: comment on the article by Dion et al.
(4) Shimizu J, et al. Medicine (Baltimore). 2018 Oct;97(42):e12837. Relapsing polychondritis patients were divided into three subgroups: patients with respiratory involvement (R subgroup), patients with auricular involvement (A subgroup), and overlapping patients with both involvements (O subgroup), and each group had distinctive clinical characteristics.