いよいよ再発性多発軟骨炎の最終記事、治療についてです。
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希少疾患であるため、治療に関しては症例報告やケースシリーズに限られます。
まずご紹介するのは2018年に欧州を中心に出されたClinical practice guidline(1)です。
この治療指針の特徴は罹患臓器毎に治療法を定めている所です。
しかし、よく見てみると、ほとんど同じ治療が示されております。
しかもそれぞれの罹患臓器が合併している場合は想定されておりません。
これではあまり使える気がしません。
続いては再発性多発軟骨炎のReview(2)です。こちらはかこの症例報告から治療法をまとめたものです。
こちらは重症度に応じた治療法となっております。こっちの方が臨床的には馴染みやすいです。
正直、臨床的にNSAIDs、コルヒチンだけで寛解に至る症例はほとんどいないように思います。"再発"と名が付くぐらい、治療経過中にしばしば再発します。
なので治療方針の一例を挙げますと、
①炎症をステロイドでしっかり抑える事
②ステロイドを減量中に免疫抑制薬を併用し、再発を予防する事
が重要ではないかと思います。
免疫抑制薬で最も使用しやすいのはメトトレキサートだと思います。
これで無効ならば、生物学的製剤を使用することを考慮すべきです。
再発性多発軟骨炎の生物学的製剤の使用についてはフランスから他施設合同研究が2018年に発表されました(3)。
まずは生物学的製剤の効果と副作用などによる治療中止率についてお示しします。
Bio開始6か月後の有効率
-アバタセプトが最低(50%), 次いでアナキンラ(53.3%)
-TNF阻害薬(63.3%), トシリズマブ(70.6%), リツキシマブ(71.4%)
継続率
-トシリズマブ, リツキシマブは継続率が高いがN数が少ない
-アナキンラは継続率が最も低い(効果不十分33.3%, 副作用46.7%)
-TNFで継続率が最も高いのはアダリムマブ, 最も低いのはエタネルセプト(効果不十分72.7%)
続いて、罹患臓器病変毎の6か月時点での治療反応性についてお示しします。
臓器病変毎の生物学的製剤の効果
-鼻軟骨, 耳介軟骨炎に最も有効なのはトシリズマブ、リツキシマブはN数が少ない
-関節病変にはTNF阻害薬(特にアダリムマブ)が有効
-眼病変にはインフリキシマブ, トシリズマブ, リツキシマブが有効
-気道病変にはトシリズマブとTNF阻害薬が最も有効
結論から申し上げますと、インフリキシマブ、トシリズマブ、リツキシマブが良いのかもしれません。
【参考文献】
(1) Rednic S, et al. RMD Open. 2018 Oct 18;4(Suppl 1):e000788. “Relapsing polychondritis: state of the art on clinical practice guideline” PMID=30402273
(2) Borgia F, et al. Biomedicines. 2018 Aug 2;6(3). pii: E84. "Relapsing Polychondritis: An Updated Review.“ PMID=30072598
(3) Moulis G, et al. Ann Rheum Dis. 2018 Aug; 77 (8) :1172-1178. "Efficacy and safety of biologics in relapsing polychondritis: a French national multicentre study." PMID=29535124