IgG4関連疾患~新分類基準2019~
以前にACR/EULARのIgG4関連疾患の新分類基準の2018年ドラフト版についてご紹介させて頂きましたが、この度2019年に最終版が報告されましたので、ご紹介致します。
ドラフト版についてはこちらをどうぞ。
やはり、ドラフト版の通り、3つのステップに従って診断して行きましょうという事になりました。
まずは以下に全貌をお示しします。
それぞれのステップの項目の定義については後にお示します。
ACR/EULAR 2019 classification criteria for IgG4-RD
長かったですね。ここからはそれぞれのStepの項目の定義について見ていきます。
まずStep 1ですが、これはこの分類基準のEntry criteriaです。
平たく言うと、どんな時にこのIgG4関連疾患の新分類基準を使うかということです。
※注意ですが、このEntry criteriaを満たさない場合は、IgG4関連疾患と分類しません!!
Step 1 Entry criteriaの定義
①典型的な罹患臓器に特徴的な臨床症状、放射線画像的変化(臓器腫大 or 腫瘍様の腫瘤)がある時
②典型的な臓器から得られた病理標本で他に原因を認めないリンパ形質細胞の浸潤を伴う炎症所見を認める時
IgG4関連疾患の典型的な罹患臓器を以下にお示します。
【IgG4関連疾患の典型的な罹患臓器】
頭頚部:硬膜、眼窩、涙腺、大唾液腺、甲状腺(Riedel甲状腺炎は含むが橋本病は含まない)
腹部:膵臓、胆管、後腹膜、腎臓、大動脈
※特徴的な臨床症状には以下も含まれます。
【特徴的な臨床症状の例】
胆管:胆管の狭窄
大動脈:壁肥厚、瘤様の拡張
肺:気管支血管束の肥厚
続いて、Step 2の除外基準です。
Step 2 Exclusion criteriaの定義
ドラフト版と比較すると、項目の定義がかなり明確化されており、最後に除外すべき疾患についても明記されております。
注意すべきは、このExclusion cliteriaは必ず守らなければならないものではないのですが、一つでも満たす場合はIgG4関連疾患として分類しては行けません!!
最後にStep 3のInclusion criteriaの定義についてです。
Step 3 Inclusion criteriaの定義
このInclusion criteriaですが、各々の項目に点数が付けられており(詳細は分類基準を参照)、合計で20点以上でIgG4関連疾患と分類できます。
【ドラフト版からの変更点】
●各項目の点数が若干変更となりました(各項目は小数点以下が省略されました)。
●合計点数のカットオフ値が19点から20点となりました。
●『組織免疫染色』に『IgG4とIgGとの比』が追加となりました。
●『腎病変』に『両側腎皮質の低吸収域』が新規に追加されました。
【検証試験】
なお、この分類基準は2回の検証試験を行われております
検証試験の結果、感度、特異度はそれぞれ82.0~85.5%、97.8~99.2%となりました。
1回目428名と2回目267名のIgG4関連疾患例を用いた2回の検証試験で分類基準を満たさなかったのは62例(14%=62/428)と48例(18%=48/267)でした。
満たさなかった理由としては、
①全体のうち、Entry criteriaを満たさなかったのが1回目24例(4.9%=24/428)、2回目42例(8.7%=42/267)でした。
②全体のうち、Exclusion criteriaを満たしたのは1回目23例(5%=23/428)、2回目13例(4%=13/267)でした。Exclusion criteriaを満たした内訳を以下に示します。
③分類基準を満たさなかった例のうち、1回目43例(69%=43/62)と2回目39例(81%=39/48)がInclusion criteriaを満たさず、偽陰性でした。これらの症例の一部は生検がされなかったためと考えられております。
④分類基準を満たさなかった例のうち、1回目20例(32%=20/62)と2回目9例(19%=9/48)が少なくとも1つExclusion criteriiaを満たしました。
【Exclusion criteriaを満たした内訳】
1回目と2回目の検証で満たしたExclusion criteriaの項目が若干異なりますが、臨床的除外項目では発熱や末梢血好酸球増多が多く、血清学的除外項目では抗Ro抗体(抗SS-A抗体)、抗La抗体(抗SS-B抗体)の陽性が最も多かったです。
ちなみにここでIgG4関連疾患の対抗馬として挙げられているMimickerは血管炎、悪性腫瘍、シェーグレン症候群、その他の膵炎、その他となっております。
【メリット】
●この分類基準のメリットは生検出来なくても、診断が可能であるという事。
●血清IgG4値もそれほど診断に必須ではない事。
→血清IgG4値は疾患活動性には関与します。
【デメリット】
●分類基準であり、臨床に応用するための診断基準ではないという事。
●下垂体、乳房、皮膚、前立腺など、特定の部位にしか病変がない場合は分類困難。
【参考文献】
Wallace ZS, et al. Ann Rheum Dis. 2019 Dec 3. pii: annrheumdis-2019-216561. "The 2019 American College of Rheumatology/European League Against Rheumatism classification criteria for IgG4-related disease."