リウマチ膠原病徒然日記

リウマチ膠原病徒然日記

リウマチ膠原病疾患に関して日々疑問になったことを中心にまとめたものです。

関節エコー~滑膜炎の新しい評価方法~

 リウマチ疾患に関節エコーが重要である事は言うまでもありません。

滑膜肥厚、滑液貯留、血流信号など様々な所見を観察することで、診断、鑑別、活動性評価などが簡便に出来る事が大きな利点です。

 

 今回は欧州リウマチ学会(EULAR)Outcome Measures in Rheumatology(OMERACT)という2大国際団体が2017年に提唱したスコアリングシステムをご紹介致します。

 

 まず、日本リウマチ学会についてですが、2011年に『リウマチ診療のための関節エコー撮像法ガイドライン』が出版されており、特に小関節(手指、足趾)について、滑膜肥厚と血流信号(パワードプラ)をGradeによって半定量的に評価するよう勧められております。

 この方法は2003年にSzkudlarek Mらが提唱した論文(1)を引用した方法です。

リウマチ診療のための関節エコー撮像法ガイドライン

リウマチ診療のための関節エコー撮像法ガイドライン

 

 

【滑膜肥厚の半定量スコア】

f:id:tuneYoshida:20191206135628p:plain


【血流信号(パワードプラシグナル)の半定量スコア】

f:id:tuneYoshida:20191206135644p:plain


 ただ、この定量方法は実は世界的に標準化されたものではありませんでした。

 

 標準化された評価方法がない事を危惧して、2017年に欧州リウマチ学会(EULAR)とOutcome Measures in Rheumatology(OMERACT)という2大団体が初めて滑膜肥厚と血流信号の半定量方法を提唱しました。これはSzkudlarek Mらが提唱した論文に改訂を加えたものですが、2003年から14年間、国際的な評価が定められていなかった関節エコー業界では画期的な発表となりました。

 

【滑膜肥厚の半定量スコア2017年】f:id:tuneYoshida:20191206154928p:plain

Grade 0=正常:滑膜肥厚なし(液体貯留の存在とは独立して)

Grade 1=軽度:滑膜肥厚±液体貯留(骨表面で作る線を超えない)

Grade 2=中等度:滑膜肥厚±液体貯留(骨表面で作る線を超えるが上面が凹または平坦)

Grade 3=重度:滑膜肥厚±液体貯留(骨表面で作る線を超えるが上面が平坦または凸)

 

《従来(2003年Szkudlarek Mらのスコア)との違い》

Grade 2

●従来:滑膜肥厚が骨表面で作る線を超えるが、骨幹部に及ばない

●新基準:滑膜肥厚が骨表面で作る線を超えるが、上面が凹または平坦

Grade 3

●従来:滑膜肥厚が、骨幹部に及ぶ

●新基準:滑膜肥厚が骨表面で作る線を超えるが、上面が平坦または凸

 

→新基準では肥厚した滑膜表面が上に凹か凸かでGrade 2か3か分けるようです。著明な滑膜肥厚があっても表面が凹であればGrade 2になってしまいます。さらに、平坦ならばGrade 2/3のどちらにも分類されてしまいます…

 

 【血流信号(パワードプラシグナル)の半定量スコア2017年】f:id:tuneYoshida:20191206155032p:plain

Grade 0=正常:ドップラー信号なし

Grade 1=軽度:シングルスポット(点)が3つまで

       or 1つの融合したスポットとシングルスポット(点)が2つ

       or 最大2つまでの融合したスポット

Grade 2=中等度:Grade 1よりも信号が多いが、

                              背景と比較してドップラー信号が50%に満たない

Grade 3=重度:背景と比較してドップラー信号が50%以上

 

《従来(2003年Szkudlarek Mらのスコア)との違い》

Grade 1

●従来:点状シグナルのみ

●新基準:血流シグナルが明確化された

     →シングルスポット(点)が3つまで

      or 1つの融合したスポットとシングルスポット(点)が2つ

      or 最大2つまでの融合したスポット

 

 2年前に発表されておりましたが、最近まで、全然知りませんでした。今後はこちらの基準が国際的に使われていくのでしょう。国内で関節エコーの普及をされている先生方も積極的に新基準を用いているようです。日本のガイドラインもゆくゆくは改訂されて行くと思います。

 

 

【参考文献】

(1) Szkudlarek M, et al. Arthritis Rheum. 2003 Apr; 48 (4): 955-62. "Interobserver agreement in ultrasonography of the finger and toe joints in rheumatoid arthritis."

(2) D'Agostino MA, et al. RMD Open. 2017 Jul 11; 3 (1): e000428. "Scoring ultrasound synovitis in rheumatoid arthritis: a EULAR-OMERACT ultrasound taskforce-Part 1: definition and development of a standardised, consensus-based scoring system."