リウマチ膠原病徒然日記

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リウマチ膠原病疾患に関して日々疑問になったことを中心にまとめたものです。

再発性多発軟骨炎④~診断基準~

 再発性多発軟骨炎の診断基準には、McAdamら、Damianiら、Michetらによる診断基準が大きく3つあります。

 

 本稿では、それぞれの内容と比較をしていこうと思います。

 

 こちらもご覧ください。 

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 まずはMcAdamらの診断基準。1976年に自身の23例と文献的考察で得られた136例から以下の6項目を再発性多発軟骨炎の臨床的な特徴であると結論づけました。

 

《McAdamらの診断基準(1976年)(1)

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※上記6つの内、3つを満たすものを再発性多発軟骨炎と診断する

 

 この診断基準の利点は何と言っても生検組織が不要である点です。

 

 ただし、再発性多発軟骨炎は経過が長く、症状も様々な時相で出現するため、診断時に必ずしも(というかほとんど)、上記症状が同時に出現するわけではありませんMcAdamらの診断基準では6つのうち、3つを満たさないといけないため、厳しすぎるという現状がありました。

 

 また、耳介軟骨炎に関しては両側性でないといけない縛りがあります。実際は片側性でも、他の所見があり、明らかに再発性多発軟骨炎だろうと考えられる症例が少なくありません。

 

 そこで、Damianiらは10名の患者から、McAdamらの診断基準を改訂し、以下のいずれかを満たす場合に再発性多発軟骨炎と診断するとしました。

 

《Damianiらの診断基準(1979年)(2)

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※上記のいずれかを満たす場合、再発性多発軟骨炎と診断する

 

 この基準はMcAdamらの診断基準を踏襲しつつ、基準が緩くなっている点が特徴的です。

 ②でMcAdamらの診断基準を2つしか満たさない場合でも、ステロイドなどの治療反応があれば再発性多発軟骨炎と診断しても良いとなっています。

 また、③でMcAdamらの診断基準が最悪1つしか満たさない場合でも、組織所見があれば確定診断して良いと、かなり優しい基準です。

 

 このように、かなり緩い基準となっておりますが、当然ながら特異性は下がるため、偽陽性のリスクが上がる可能性があります。

 

 また、McAdamを踏襲しているため、耳介軟骨炎も両側性でなければなりません。

 

 全く別の診断基準ですが、Michetらは1986年に主要症状に着目して、112名の患者から、以下の診断基準を作りました。

 

《Michetらの診断基準(1986年)(3)

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※上記のいずれかを満たす場合、再発性多発軟骨炎と診断する

 再発性多発軟骨炎の主病変は耳介、鼻、喉頭気管であるため、これらを重要視した基準は理にかなっています。

 

 しかし、『証明された』の部分が曖昧な表現となっております。また、耳介軟骨が両側性か片側性か定かではありません。

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 3つの診断基準の感度を検討した研究があります(4)。患者はたった18名ですが、それによると、感度はそれぞれMcAdam 50%Damiani 88.9%Michet 66.7%でした。

 

 この報告によると、Michetの診断基準の特徴的な3つの臓器に『眼の炎症』を加えて、4つの臓器から選ぶようにすると、感度88.9%まで上昇するとのことでした。

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 さて、世界的には3つの診断基準のうち、いずれかを満たす場合に再発性多発軟骨炎と言うようです。以下にそれぞれの利点と欠点をまとめておきます。あくまでも筆者の主観が入っておりますので、二次利用の際にはご注意下さい。 

 

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長くなったので、今回はここまで。


【参考文献】

(1) McAdam LP, et al. Medicine (Baltimore). 1976 May;55(3):193-215. "Relapsing polychondritis: prospective study of 23 patients and a review of the literature."

(2) Damiani JM, et al. Laryngoscope. 1979 Jun;89(6 Pt 1):929-46. "Relapsing polychondritis--report of ten cases."

(3) Michet CJ Jr, et al. Ann Intern Med. 1986 Jan;104(1):74-8. "Relapsing polychondritis. Survival and predictive role of early disease manifestations."

(4) Rose T, et al. Rheumatol Int. 2018 Nov;38(11):2095-2101. "Observational study and brief analysis of diagnostic criteria in relapsing polychondritis."