リウマチ膠原病徒然日記

リウマチ膠原病徒然日記

リウマチ膠原病疾患に関して日々疑問になったことを中心にまとめたものです。

抗核抗体の国際分類基準2019

 抗核抗体をスクリーニング検査する時、『○○倍』だけでなく、『Homogeneous』や『Speckled』などと抗核抗体の染色パターンが一緒に帰って来ます。これは間接蛍光抗体法と呼ばれる手法を用いたものです(後述)。

 

 自己免疫リウマチ性疾患では自己の細胞の様々な成分(抗原)に対して自己抗体が作られますが、上記の間接蛍光抗体法の染色パターンによって、ある程度どの抗体があるのかが推測できます。

 

 日常診療においては、自己免疫疾患を疑う患者がいた場合に、網羅的に自己抗体を出す先生もいらっしゃいますが、抗核抗体をまずスクリーニングで提出し、そのパターンによって追加検査する方法がChoosing wiselyの場合もあるでしょう。

 

 さて今まで、上記の染色パターンの分類や判断は実は各施設や検査会社に委ねられており、そのため検査の精度はバラバラでした。せっかく自己抗体を推測するのに有用な検査なのに、結果に信憑性がないとなると困りますよね。

 

 よって、この度、2019年7月に米国リウマチ学会(ACR)から各施設間での誤差をなくすために、間接蛍光抗体法による抗核抗体の染色パターンの国際的な分類ガイドラインが出されたためご紹介致します。(※厳密に言えば抗核抗体だけではなく、あらゆる染色パターンについて分類しております)

 

 日本の検査会社や施設がこの基準を使うようになるのは、おそらく数年後以降でしょうか…

 

  簡易版を作成しました。お忙しい方はこちらをご覧ください。

 

 

間接蛍光抗体法の原理

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HEp-2細胞に患者血清をかけます

それに抗核抗体に結合する光るFITC標識された抗体を投与します

抗核抗体があれば結合した抗体が光ります

 

抗核抗体の大まかな分類

さて、抗核抗体の分類は大きく、

①Homogeneous

②Peripheral(Homogeneousと区別できず、含まれる場合もある)

③Speckled

④Centromere(Discrete speckled)

⑤Nucleolar

の5つに分けられます。

ではありませんが、時々、抗細胞質抗体を示す、⑥Cytoplasmicも抗核抗体の結果で報告されることがあります。

 

以下に新たに制定された分類ガイドラインの詳細をお示しします。

今回の新国際分類基準では上記の抗核抗体の5つのパターンをさらに細分化していることに加え、抗核抗体の代表である核パターンだけでなく、細胞質パターンや有糸分裂パターンについても細かく分類されております。そのため、合計で29パターンとなっております。

 

※厳密には抗核抗体は核に対する抗体であるため、細胞質パターンを示すものや融資分裂パターンを示すものは抗核抗体に含まれません。

 

Nuclear patterns

AC-1 Homogeneous

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●核の均一な染色。核小体は染色されたり、されなかったりする

●自己抗原:dsDNA、ヌクレオソーム、ヒストン

●SLE、薬剤性ループス、自己免疫性肝炎、若年性特発性関節炎患者で見られる

●SLEでは自己抗原はdsDNA/ヒストン複合体(ヌクレオソーム/クロマチン)

 →抗dsDNA抗体の追加が必要

●自己免疫性肝炎、若年性特発性関節炎では特異的な自己抗原はなし

●抗トポイソメラーゼI(以前のScl-70)抗体もHomogeneousパターンとして報告されることがあるが、通常はAC-29のパターンが明らかになる

 

AC-2 Dense fine speckled

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●斑点のサイズ、明るさ、分布に特徴的な不均一性を持つ核全体に散在する斑点

●自己抗原:DFS70/LEDGF-p75

健常者で多く全身性自己免疫リウマチ性疾患(SARD)では見られない

 →健常者でこのパターンの抗核抗体が見られた場合は抗DFS70抗体をチェック

 

AC-3 Centromere

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●分裂間期細胞に散在し、有糸分裂細胞のクロマチン塊に並ぶ荒い斑点

●自己抗原:CENP-B(CENP-A/C)

 →力価が低い場合は抗原特異的イムノアッセイによる確認を行う

限局型全身性強皮症で見られる

●このパターンの限局型全身性強皮症は皮膚症状は軽症だが、重度の外分泌腺機能障害やリンパ腫のリスクを伴う

レイノー現象と合わせて予後を規定する

原発性胆汁性肝硬変でも見られるが、しばしば全身性強皮症を合併している

●SLEの患者でも見られる場合がある(幾分か全身性強皮症と合併する)

 

AC-4 Fine speckled

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●核質に認める微細で小さな斑点。核小体は染色されてもされなくても良い

●有糸分裂細胞(中期、後期、終期)には染色されないクロマチン塊を認める

●自己抗原:SS-A / Ro、SS-B / La、Mi-2、TIF1γ、TIF1β、Ku

●SjS、SLE、亜急性皮膚エリテマトーデス、新生児エリテマトーデス、先天性心ブロック、皮膚筋炎、SSc、オーバーラップ症候群(SSc+自己免疫性筋炎)で認める

 →シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、亜急性皮膚エリテマトーデス、新生児エリテマトーデス、先天性心ブロックが疑われる場合は抗SS-A/Ro抗体抗SS-B/La抗体を測定する

 →皮膚筋炎、自己免疫性筋炎などが疑われる場合、抗Mi-2抗体抗TIF1γ抗体(抗TIF1β抗体)抗Ku抗体を測定する(抗Mi-2抗体、抗TIF1γ抗体は高齢患者の悪性腫瘍と強く関連)

 →SSc+自己免疫性筋炎、SLE+SSc+自己免疫性筋炎などのオーバーラップ症候群を疑う場合も抗Ku抗体を測定する

 

AC-5 Large/coarse speckled

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●全核質にわたる荒い斑点。核小体は染色されてもされなくても良い

●有糸分裂細胞には染色されていないクロマチン塊を認める

●自己抗原:hnRNP、U1RNP、Sm、RNAポリメラーゼIII

●SLE、SSc、MCTD、オーバーラップ症候群(SSc+自己免疫性筋炎)、UCTDで認める

●SLEを疑う場合、抗Sm抗体抗U1RNP抗体をチェックする

●SScを疑う場合、RNAポリメラーゼIII抗体をチェックする

●MCTDを疑う場合、抗U1RNP抗体をチェックする

●SSc+自己免疫性筋炎のオーバーラップ症候群を疑う場合、抗U1RNP抗体をチェックする(時に抗U2RNP抗体の場合もある)

●一般人口の非全身性自己免疫リウマチ性疾患患者ではAC-5パターンの存在は上記の自己抗原(抗体)と関連せず、ほとんどの場合、抗体価は低い

 

AC-6 Multiple nuclear dots

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●6-20個の核のドット

●自己抗原:Sp-100、PML蛋白、MJ/NXP-2

PBC、自己免疫性筋炎(皮膚筋炎など)で見られる

PBCが疑われる場合、抗Sp100(およびPML/Sp140)抗体をチェックする

 →抗Sp100抗体価と臨床症状は関連性がある(特に抗ミトコンドリア抗体と関連する場合)

●皮膚筋炎が疑われる場合は抗Mj/NXP-2抗体をチェックする

 →この抗体は自己免疫性筋炎に特異的で若年性皮膚筋炎の最大で3分の1に見られ、成人の自己免疫性筋炎患者では悪性腫瘍と関連する

 

AC-7 Few nuclear dots

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●1-6個の核のドット(これらはカハール体またはコイル体として知られる)

●自己抗原:p80-coilin、SMN

●抗p80-coilin抗体はSjS、SLE、SScに滅多に認めない

●抗SMN抗体(抗snRNPs抗体は陰性の場合に限る)は自己免疫性筋炎またはSSc+自己免疫性筋炎オーバーラップ症候群で報告されている

 

AC-8 Homogeneous nucleolar

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●均一な核小体

●自己抗原:PM / Scl-75、PM / Scl-100、Th / To、B23 /nucleophosmin、nucleolin、No55 / SC65

●SSc、SSc+自己免疫性筋炎オーバーラップ症候群

 ●限局型全身性強皮症が疑われる場合、抗Th/To抗体をチェックする

●SSc+自己免疫性筋炎オーバーラップ症候群が疑われる場合、抗PM / Scl抗体をチェックする

●抗PM / Scl抗体はDiffuse nuclear fine speckledを呈する事もある

AC-9 Clumpy nucleolar

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●塊状核小体

●中期での傍染色体染色を伴う核小体およびカハール体の不規則な染色

●自己抗原:U3-snoRNP/fibrillarin

●SScで見られる

 →SScが疑われる場合、抗U3RNP/フィブリラリン抗体をチェックする

 →この抗体は、臨床的にはびまん性SSc、肺高血圧症の発生率の増加、骨格筋病変、重度の心病変、胃腸運動障害と関連する

 →またアフリカ系アメリカ人ラテンアメリカ人患者によく見られる

 

AC-10 Punctate nucleolar

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●間期細胞の点状核小体、中期細胞では核小体オーガナイザー領域(NOR)に最大5つの明るいペアがクロマチン本体内に見られる

●自己抗原:RNAポリメラーゼI、hUBF / NOR-90

●SSc、SjS、レイノー現象、癌を含む様々な疾患で見られる

 →これらが疑われる場合、抗NOR90(huBF)抗体をチェックする

●AC-10は抗RNAポリメラーゼI抗体と関連しているが、これらの抗体は常にAC-5パターンを示す抗RNAポリメラーゼIII抗体と共存する

 →SScが疑われる場合、RNAポリメラーゼIII抗体のチェックも推奨される

 

AC-11 Smooth nucleolar envelope

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●核の均一な染色は外縁でより強く認める、中期・後期では染色されない。隣接する細胞が互いに接触する部位で蛍光が強調される

●自己抗原:lamins A/B/C、lamin関連蛋白(LAP-2)

●自己免疫性血球減少症、自己免疫性肝炎、強皮症、APSなどの全身性自己免疫リウマチ性疾患で見られる

 

AC-12 Punctate nucleolar envelope

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● 間期細胞の核膜の点状の染色。隣接する細胞が互いに接触する点では蛍光が強調される

●自己抗原:核膜孔複合タンパク質(gp210)、p62ヌクレオポリン、LBR、Tpr

●抗p62ヌクレオポリン抗体はPBCやSLEに見られる

●抗gp210抗体、抗LBR抗体はPBCに見られる

●抗Tpr抗体はPBC、他の自己免疫性肝炎、SLE、SSc、SjSで見られる

 

AC-13 PCNA-like

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●斑点のサイズと明るさが変わる多形斑点核質染色。G1期では陰性、S期では染色は増強される。S期後期、G2期初期では核小体が染色され、散在する斑点を呈する

●自己抗原:PCNA(35kDa)

●以前はSLEに特異的であると言われていたが、現在は議論されている

●SLEが疑われる場合は抗PCNA抗体をチェックする

●その他にもSSc、自己免疫性筋炎、関節リウマチ、C型肝炎に関連している

 

AC-14 CENP-F-like

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●G2期の染色が最も強く、G1期の染色が最も弱いか陰性。著しく変動する核斑点。動原体は前中期、中期でのみ陽性となり、整列した小さくてかすかなドットが現れる。前中期細胞はしばしば核膜の弱い染色を示す。後期、終期の間にいくつかの血清は娘細胞の分裂が起こっている中間体に位置するリングで強い染色を示す。有糸分裂細胞の周囲の細胞質はびまん性に染色される

●自己抗原:CENP-F

●AC-14パターンを示す血清の大部分は悪性腫瘍患者(乳癌、肺癌、大腸癌、リンパ腫、卵巣癌、脳腫瘍)のもの。しかし逆説的だが、これらの悪性腫瘍患者のコホートではAC-14パターンの頻度は低い

●AC-14パターンは炎症状態(クローン病、自己免疫性肝炎、SjS、GVHD)でも見られる

 

AC-29 TOPOI-like

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●以下の5つの染色の複合パターンを示す

①間期細胞の著明な微細斑点AC-4型核染色

②有糸分裂細胞にける凝集クロマチンの著明に細かい斑点染色

③有糸分裂細胞の凝縮染色体に関連する核小体オーガナイザー領域(NOR)の強い染色

④間期及び有糸分裂細胞の弱い細胞質染色は核周囲から原形質膜に向かって放射状に広がる繊細なネットワークを示す

⑤間期細胞で点状核小体または核小体周辺の染色

●自己抗原:DNAトポイソメラーゼI

SScに非常に特異的。特にびまん性皮膚硬化型

 ●SScが疑われる場合、抗トポイソメラーゼI(以前のScl-70)抗体をチェック

 

Cytoplasmic patterns

AC-15 Fibrillar linear

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●細胞の長軸にまたがる線状染色

●自己抗原:アクチン(F>G)、非筋細胞ミオシン

●自己免疫性肝炎I型、慢性C型肝炎、セリアック病で見られる

●全身性自己免疫リウマチ性疾患では稀

●セリアック病ではIgA/IgG型抗アクチン抗体が高頻度で見られる

●抗非筋細胞ミオシン抗体はHCV陽性慢性肝炎、肝硬変患者で見られる

●非筋細胞ミオシンに対するモノクローナル抗体は慢性リンパ性白血病に見られる

●自己免疫性肝炎1型が疑われる場合、抗平滑筋抗体(IgGアイソタイプ)をチェック

 

AC-16 Fibrillar filamentous

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●核縁から広がる微小管、中間径フィラメントの染色

●感染または炎症状態、長期血液透析、アルコール性肝硬変、乾癬、健常人など様々な状態で見られるが、通常、全身性自己免疫リウマチ性疾患では見られない

●自己抗原:ビメンチン、チューブリン、サイトケラチン(8、18、19)

●サイトケラチン8, 18, 19に対する抗体は自己免疫性肝炎患者でより見られる

●45kDaのヒトサイトケラチン18に対する抗体はCOPDで見られる

●抗サイトケラチン19抗体は特発性肺線維症、膠原病に伴う肺線維症で見られる

●抗tubulin抗体はアルコール性肝疾患や寄生虫感染で見られる

IgM型抗tubulin抗体は伝染性単核球症で見られる

●IgG型抗tubulin抗体は若年性鼻咽頭癌で見られる

●ポリクローナルな抗tubulin抗体は後天性脱髄性ポリニューロパチーで見られる

●健常者でも低抗体価の抗tubulin抗体が見られることがある

●抗tubulin抗体はSydenham舞踏病やPANDAS症候群のマーカーとして報告されている

●IgG/IgM型抗ビメンチン抗体は神経線維腫I型のマーカーとして報告されている

●関節リウマチや他の炎症性関節炎では抗シトルリン化ビメンチン抗体を認めるが、これらがAC-16パターンを示すことはない

●固形臓器移植後に出現すると報告されており、心・腎移植の拒絶反応や予後不良と関連する

 

AC-17 Fibrillar segmental

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●stress fiberに沿った短いsegmentや周期的なdense bodies

●自己抗原:αアクチニン、vinculin

●SLEやループス腎炎では抗αアクチニン抗体は抗ds-DNA抗体と交差反応を起こす

●抗αアクチニン抗体は抗細胞膜抗体の一部として報告されており、ループス腎炎患者で見られる

●自己免疫性肝炎I型の40%で見られ、重症化、臨床的・組織学的疾患活動性に関連。さらには治療反応性の指標にもなり、抗ss-DNA抗体と両者が陽性となる

●抗vinculin抗体は炎症性脱髄性ニューロパチー患者の一部に報告されている

 

AC-18 Discrete dots

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●間期細胞の細胞質GW bodies染色。S後期/G2期細胞に多数見られる

●自己抗原:GW体抗原(Ge-1/Hedls、GW182、Su / Ago2)、エンドソーム抗原(EEA1、CLIP-170、GRASP-1、LBPA)

●抗GW体抗体は神経学的症状(失調、運動・感覚ニューロパチー)、SjS、SLE、RA、PBCに関連

●Ge-1/Hedls、GW182、Su / Ago2に対する抗体陽性率はそれぞれ58%、40%、16%

●EEA1抗体は様々な状態で見られるが40%までが神経疾患患者で見られる

●抗CLIP-170抗体はSLE、自己免疫性筋炎、限局型全身性強皮症、神経膠芽腫、特発性胸水患者の一部で見られる

●抗GRASP-1抗体はPBCの一部に見られる

 

 

AC-19 Dense fine speckled 

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●細胞質全体がほぼ均一に染色される。

●AC-19との鑑別はHEp-2基質または抗体の濃度による場合がある

●自己抗原:PL-7、PL-12、SRP、リボソームPタンパク質

●ARS症候群、PM/DM、SLE(若年性SLE、NPSLE)で見られることがある

●SLEが疑われる場合、リボソームPタンパク質抗体をチェックする

 →これはNPSLEと自己免疫性溶血性貧血を伴う若年発症SLEと関連する

●抗リボソームPタンパク質抗体は自己免疫性肝炎の10%、SLEの8-35%に見られる

 ●ARS症候群が疑われる場合、抗ARS抗体をチェックする

●壊死性ミオパチーが疑われる場合、抗SRP抗体をチェックする

AC-20 Fine speckled

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●ほとんどが均一または密な細かい斑点のある背景を持つ細胞質内の散在する小斑点

●自己抗原:Jo-1/ヒスチジル-tRNAシンテターゼ

●ARS症候群、PM/DM、限局型全身性強皮症、特発性胸水で見られる

 

AC-21 Reticular/AMA

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●細胞質全体に広がる粗い粒状フィラメント染色

●自己抗原:PDC-E2 / M2、BCOADC-E2、OGDC-E2、PDCのE1α/E1βサブユニット、E3BP /プロテインX

●抗体:抗ミトコンドリア抗体

PBCでよく見られるが、PBC+SScまたはPBC+SjSオーバーラップ症候群でも見られる。他の全身性自己免疫リウマチ性疾患では稀

PBCが疑われる場合、ミトコンドリア抗体を測定する

 

AC-22 Polar/Golgi-like 

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●細胞質内の極性分布を伴う不連続な斑点状または顆粒状の核周囲リボン状染色

●自己抗原:giantin/macrogolgin、golgin-95/GM130、golgin-160、golgin-97、golgin-245

●抗体:抗ジャイアンチン、抗Golgin-245

●SjS、SLE、RA、MCTD、GPA、特発性小脳性運動失調、腫瘍随伴性小脳変性、ウイルス感染(HIV、EBV)など、様々な状態でわずかに見られる

●健常者では稀 

 

AC-23 Rods and Rings

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●間期細胞の細胞質に認める明瞭なrod体及びリング構造

●自己抗原:IMPDH2

HCV感染患者のIFN/リバビリン療法後に最もよく見られる

●SLE、ミコフェノール酸・アザチオプリン・メトトレキサート・アシクロビル治療中の患者、橋本病でわずかに見られる

 

Mitotic patterns

AC-24 Centrosome

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●細胞質、有糸分裂細胞紡錘体の極にある明確な中心小体(1-2/細胞)

●自己抗原:pericentrin、ninein、Cep250、Cep110、Mob1、PCM-1/2、α-エノラーゼ、γ-エノラーゼ

●SSc、レイノー現象、帯状疱疹後小脳失調、悪性腫瘍(特に乳癌)、感染症(ウイルス、マイコプラズマ)など、あらゆる疾患でわずかに見られる

●その他、全身性自己免疫リウマチ性疾患患者でAC-24パターンを示すのはレイノー現象、限局性強皮症、全身性強皮症、SLE、RA

●抗α-enolase抗体、抗γ-enolase抗体、抗Mob1抗体、抗PCM-1/2抗体、抗pericentrin抗体は小児の帯状疱疹後小脳失調で見られる

●抗α-enolase抗体、抗γ-enolase抗体は全身性自己免疫リウマチ性疾患を伴わないレイノー現象や甲状腺機能亢進症で見られるという報告がある

●SLE、RAで見られるのは抗ninein抗体、抗Cep250抗体

 

AC-25 Spindle fibers

f:id:tuneYoshida:20191220004605p:plain ●極の間の紡錘線維は有糸分裂細胞で染色され、有糸分裂細極の円錐形の装飾に関連

●自己抗原:H2Eg5

●SjS、SLEでしばしば見られる。その他のCTDでは稀

 

AC-26 NuMA-like

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●紡錘線維による核斑点染色

●自己抗原:NuMA、セントロフィリン、SP-H抗原、NMP-22

●AC-26パターンの患者の半分はSjS、SLE、UCTD、限局型全身性強皮症、RAなどの全身性自己免疫リウマチ性疾患を持っている

●低力価の場合、非自己免疫状態では頻度が低い

 

AC-27 Intercellular bridge

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細胞分裂の終わりまでに見られる細胞間ブリッジ

●自己抗原:CENO-E、CENP-F、TD60、MSA36、KIF-14、MKLP-1/KF208、INCENP

●SSc、レイノー現象、悪性腫瘍で時に見られる

●CENO-E、CENP-F、TD60、MSA36、KIF-14、MKLP-1に対する抗体はSSc、SLE、悪性腫瘍患者で見られることがある

●INCENPに対する抗体はGraham-Littile-Piccardi-Lasseur症候群で見られることがある

●MPP1/KIF20B(M期phosphoprotein 1)に対する抗体は特発性失調症を含む神経症状、発作性夜間ヘモグロビン尿症で見られる

 

AC-28 Mitotic chromosomal

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●間期細胞では染色されず、前期及び中期の染色体の点状染色

●自己抗原:DCA、MCA1、MCA5

●抗DCA抗体はSLEで見られる

●抗MCA1抗体は悪性腫瘍で見られる

●抗MCA5抗体は円板状エリテマトーデス、慢性リンパ性白血病、SjS、PMRで見られる

 

【参考文献】

●Damoiseaux J, et al. Ann Rheum Dis. 2019 Jul; 78 (7): 879-889. "Clinical relevance of HEp-2 indirect immunofluorescent patterns: the International Consensus on ANA patterns (ICAP) perspective."

●核染色パターンの画像:https://www.anapatterns.org/index.php