リウマチ膠原病徒然日記

リウマチ膠原病徒然日記

リウマチ膠原病疾患に関して日々疑問になったことを中心にまとめたものです。

MTXはむしろRAの間質性肺炎予防に有効

関節リウマチ(RA)を含めて、リウマチ膠原病疾患はしばしば間質性肺疾患(ILD)を合併します。

一方で今までそれらに使用されるメトトレキサート(MTX)も間質性肺疾患を起こす可能性があると懸念されてきました。

 

ゆえに、間質性肺炎が少しでもある関節リウマチ患者ではMTXの使用は避けられてきました。

 

2017年の小規模後ろ向きコホート研究ではMTXを使用していた方がILDによる死亡率が低くなるという結果が発表されました(PMID=28585060)。

 

この研究はコホートの規模が小さい事から、当時はほとんど無視をされておりましたが、そこから昨年にかけて大規模な後ろ向きコホート研究や前向きコホート研究がいくつも報告され、揃って『MTXの使用はRA-ILDに関連しない』ばかりではなく、むしろ『MTXがRA-ILDの発症を遅らせる』可能性すら出て来ました。

 

RAのILDは基本的には炎症がコントロールされていない事によるものと考えられ、免疫抑制効果のあるMTXはむしろ良い適応という訳です。

 

以下に2020年に報告された代表的なコホート研究の内訳をまとめました。

 

これから大きなパラダイムシフトが起こる予感がします。

 

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注意点

●これらのコホート研究では呼吸器疾患がある患者は最初から除外されているため、あくまで『もともと肺疾患がないRA患者さんでMTXを使用してもILDの発症は増えず、むしろリスクが減る』という事は言えますが、既にILDがあるRA患者さんの肺炎をMTXが治療できるという訳ではありません。というかこれはまだ分かりません。

●個人的な経験では、活動性のあるRA患者さんでILDも合併している場合で、急性期はMTXではなく、他の治療薬でRAをコントロールし、落ち着いた時にMTXを開始してもILDが悪化しない事はしばしば経験しています。

→MTXを用いないのは、MTXが間質性肺炎を悪化させるためというよりは(これは上記のコホート研究から否定的)、MTXに急性期の間質性肺炎を治療する力がないと考えられるためです。もちろん今後RA-ILDにMTXを使うという臨床試験が出てこないとは限りません。

 

【参考文献】

●Athol U Wells, Nat Rev Rheumatol. 2021 Feb; 17 (2): 79-80. "New insights into the treatment of CTD-ILD" PMID=33408337

●A Robles-Pérez, et al. Sci Rep. 2020 Sep 24; 10 (1): 15640. ”A prospective study of lung disease in a cohort of early rheumatoid arthritis patients” PMID=32973236

●Else Helene Ibfelt, et al. Rheumatology (Oxford). 2021 Jan 5; 60 (1): 346-352. "Methotrexate and risk of interstitial lung disease and respiratory failure in rheumatoid arthritis: a nationwide population-based study" PMID=32780828

●Luling Li, et al. Clin Rheumatol. 2020 May; 39 (5): 1457-1470. "A retrospective study on the predictive implications of clinical characteristics and therapeutic management in patients with rheumatoid arthritis-associated interstitial lung disease" PMID=31858341