リウマチ膠原病徒然日記

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リウマチ膠原病疾患に関して日々疑問になったことを中心にまとめたものです。

TAFRO症候群 診断基準・重症度分類 2019年

 TAFRO症候群の2015年の診断基準が2019年にマイナー改訂され、2020年1月に発表されました。

 

 

TAFRO症候群について

原因不明全身性炎症性疾患である。

2010年に、高井らによって、発熱(Fever)胸腹水(Anasarca)肝脾腫(Organomegaly)を伴い、骨髄に軽度の線維化(Reticlin fibrosis)を認める血小板減少症(Thrombocytopenia)で、リンパ節生検でHyaline vascular型Castleman病様所見を呈した3例が報告され、頭文字を取って、TAFRO症候群命名された。 

2013年に川端先生らによって、TAFRO症候群は多中心性Castleman病の一亜型で新たな疾患概念であると提唱された。

2015年には日本から診断基準が発表された。

●年間発生率は100万人あたり0.9~4.9人。

●現在860~7240人が罹患しているとされている。

 

診断基準 2019年

疾患概要

●TAFRO症候群は発熱、全身性浮腫(胸水・腹水貯留)血小板減少を来し、腎障害、貧臓器腫大(肝脾腫、リンパ節腫大)などを伴う全身炎症性疾患である。

急性または亜急性に発症するが、原因は不明である。

●2010年高井先生らによりThrombocytopenia(血小板減少症) Anasarca(全身浮腫、胸腹水)Fever(発熱、全身炎症)Reticulin fibrosis(骨髄の細網線維化、骨髄巨核球増多)Organomegaly(臓器腫大:肝脾腫、リンパ節腫大)よりTAFRO症候群として報告され、その後に類似例の報告が相次いだ。

→報告された当初、RReticulin fibrosisでした!!

●リンパ節生検のいくつかの病理所見は古典的なCastleman病様の像を呈するが、臨床像はCastleman病と異なるため、現時点で研究者立ちはこの二つの疾患は異なるものであると考えている。

●一部の患者はグルココルチコイド、シクロスポリンAを含む免疫抑制薬、トシリズマブ、リツキシマブで治療が成功している。

●一方で他のものは治療抵抗性であり、致死的な経過をたどるため、早期診断と早期治療が良好な予後に不可欠である。

●Castelman病様の病理を呈するリンパ節腫脹が特徴的だが、リンパ節生検はしばしば浮腫や出血傾向、またはリンパ節腫脹が小さすぎるため、困難となる事がある。

●本診断基準ではリンパ節の病理組織は小項目となっている。しかし、可能な限りリンパ腫などの悪性腫瘍を除外するためにリンパ節生検は実施する必要がある。

 

必要項目と除外診断

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※必須項目3項目+小項目2項目以上を満たす場合TAFRO症候群と診断する

 

診断のポイント

●TAFRO症候群は顕著なポリクローナルな高γグロブリン血症

血清IgG値3000mg/dl未満が通常だが、それを超える場合は重篤な多中心性Castelman病を持っていると考えるべき。

明らかなモノクローナルなタンパク質は存在しない。M蛋白が存在する場合はPOEMS症候群と区別する。※POEMS症候群では多発神経障害を認める。

LDHが上昇する患者はほとんどいない。上昇する場合はリンパ腫を疑い、可溶性IL-2Rの測定画像検査が必要。

●特に血管内リンパ腫(大型B細胞リンパ腫)はTAFRO症候群と似た症状を呈するため、骨髄穿刺・生検、ランダム皮膚生検が必要。

●ほとんどの患者でALPが上昇する。

肝脾腫軽度であるため、CTで初めて分かる。顕著な肝脾腫リンパ腫肝硬変、他の疾患を示唆する。

●リンパ節腫脹は通常1.5cm未満であり、巨大なリンパ節腫脹はリンパ腫やその他の疾患を疑う。

Castelman病特発性血小板減少症は除外基準に含まれていないため、これらの疾患は除外されない可能性がある。

●自己免疫疾患の除外目的にRF抗核抗体抗SS-A/Ro抗体MPO-ANCA(P-ANCA)PR3-ANCA(C-ANCA)やその他の疾患特異的自己抗体を測定する必要がある。

結核の除外も重要であり、インターフェロンγ放出試験(QFTまたはT-SPOT)、胸水があれば胸水中のアデノシンデアミナーゼ(ADA)を測定する。

●TAFRO症候群の胸水、腹水はしばしば滲出性と判断される。これらの腔水中のIL-6VEGF濃度は通常が高く、漿膜炎の存在を示唆する。

 

2015年の診断基準からの変更点

●『疾患概要』が改訂されました。

●シェーグレン症候群が『除外診断』に追加されました。

→過去のデータベースでシェーグレン症候群がかなりの数報告されていたためです。

●IgG4関連疾患が『除外診断』から外されました。

→IgG4関連疾患では発熱、胸水、腹水、血小板減少症を来すことが少ないからです。

●鑑別疾患の除外方法が『診断ポイント』に追加されました。

 

重症度分類 2019年

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2015年の重症度分類からの変更点

●2015年の重症度分類では0-2点に『TAFRO症候群の診断としては不十分』、3-4点が『軽度 grade1』とされておりましたが、新重症度分類では0~4点が『軽度 grade1』とされました。
  

コメント

●あまり大きな改訂はありません。

●治療や病態について新たな知見が揃っていないというのが現状でしょう。

●しかし、疾患概要や診断ポイントなど、この論文を読むだけでTAFRO症候群の事を代替理解できそうです。

●TAFRO症候群と多中心性キャッスルマン病の関係については両者がオーバーラップしているか、全く別のものか、現時点では議論がついておりません。

 

【参考文献】

Masaki Y, et al. Int J Hematol. 2020 Jan; 111 (1): 155-158. "2019 Updated diagnostic criteria and disease severity classification for TAFRO syndrome."