リウマチ膠原病徒然日記

リウマチ膠原病徒然日記

リウマチ膠原病疾患に関して日々疑問になったことを中心にまとめたものです。

EGPA(好酸球性多発血管炎性肉芽腫症)①~分類基準2019~

 前回の好酸球性心筋炎に引き続き、その原因疾患となる好酸球性多発血管炎性肉芽腫症についてまとめたいと思います。英語で表記するとEosinophilic granulomatosis with polyangiitis、略してEGPAです。

 ANCA関連血管炎の一つですが、GPAやMPAと比較して症例が少なく、まだまだ治療についても発展途上の疾患です。

 これから何回かに分けて、EGPAについてまとめますが、第1回目は分類基準についてです。

 

ちなみに好酸球性心筋炎についてはこちらをどうぞ。

 

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の病因と組織病理についてはこちらをどうぞ。

 

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の疫学・症状・鑑別についてはこちらをどうぞ。 

 

 

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の治療と予後についてはこちらをどうぞ。 

 

 

【ポイント】

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の分類基準はACR1990年とLanham1994年を使用する

・日本で難病申請をするときには厚生労働省の診断基準を用いる

・もうすぐ新しい分類基準ができるかもしれない

 

【導入】

・1951年にChurgとStraussが喘息患者で多発血管炎(壊死性血管炎)を伴う好酸球性肉芽腫症を始めて報告した(そのため、以前まではChurg-Strauss症候群と呼ばれていた)

・現在では好酸球に富む肉芽腫性炎症と喘息、好酸球増多症に関連する中小血管炎を始めとする抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎(AAV)の1つの形態として認識されている

・EGPAはANCA関連血管炎の中では最も珍しい

・年間発生率0.9-2.4人/100万で、有病率10.7-17.8人/100万

・その希少性のため、他のANCA関連血管炎よりも数年研究が遅れている

・EGPAにおけるANCAの病因と役割はまだほとんどわかっていない

・治療に関しても標準的な治療はない

 

【定義と分類基準】

・1つの定義(CHCC2012)と2つの分類基準(ACR1990、Lanham1994)が存在する

 

・EGPAを含む原発性全身性血管炎症候群の命名法はチャペルヒルコンセンサス会議(CHCC)によって2012年に定義された(表1)

《表1:CHCC2012の定義》

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・もともと1994年に公開されたCHCC定義は2012年に改訂され、Churg-Strauss症候群もEGPAと改名された

 

・米国リウマチ学会(ACR)は1990年にChurg-Strauss症候群を含むいくつかの血管炎症候群の分類基準を提案した(表2)

《表2:米国リウマチ学会のChurg-Strauss症候群の分類基準1990年》

f:id:tuneYoshida:20190830153646p:plain※上記の6つのうち4つ以上を満たす時にEGPAと分類する

※注意すべき点はこの分類は抗好中球細胞質抗体(ANCA)が開発前に作成された分類基準であること

気管支喘息は必ずしも必須項目ではない

※ただしこの分類基準により診断率が上がり、早期治療介入が可能になったことも事実

 

・Lanhamらは1984年に改訂したクライテリアも用いられる(表3)

《表3:Lanhamらの分類基準1984年》

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※3つすべてを満たすときに分類する

※ANCA関連血管炎の概念が確立する前に開発され、組織学的所見を必要としない点が特徴的

好酸球増多症の鑑別には不向き

※簡便なので臨床には向いているが、研究には向いていない

※ACRと異なり、気管支喘息が必須項目となっている

 

因みに厚生労働省の分類基準は以下の通り

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・ACRのみだと各血管炎が頻繁に重複してしまう

・CHCC2012では組織学的所見が必要なため、多くの未分類症例が生じる

・診断の重複と未分類の症例を減らすためにWattsらが2007年にANCA関連血管炎と結節性多発動脈炎を診断するための段階的なアルゴリズムを開発した

・このアルゴリズムではEGPAは最上流にあり、ACRとLanhamの分類基準を用いて分類される

《Wattsらの原発性全身性血管炎の分類アルゴリズム2007年》

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(アルゴリズムはJ Jpn Coll Angiol, 2011, 51: 79-85から引用)

 

・現在新しい分類および診断基準を作成する動きがある

第19回国際血管炎およびANCAワークショップではそのドラフト案が提出され、現在EULARとACRの承認待ち(2019年)

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※5点以上でEGPAと分類

※感度88%、特異度98%

※この分類基準は血管炎と証明された患者の中でEGPAと分類するための基準です


【参考文献】
 

● Furuta S, et al. Allergol Int. 2019 Jun 29. pii: S1323-8930(19)30081-4. Update on eosinophilic granulomatosis with polyangiitis.

● Jennette JC, et al. Arthritis Rheum. 2013 Jan;65(1):1-11. 2012 revised International Chapel Hill Consensus Conference Nomenclature of Vasculitides.

● Masi AT et al. Arthritis Rheum. 1990 Aug;33(8):1094-100. The American College of Rheumatology 1990 criteria for the classification of Churg-Strauss syndrome (allergic granulomatosis and angiitis).

●Watts R, et al. Ann Rheum Dis. 2007 Feb;66(2):222-7. Epub 2006 Aug 10.Development and validation of a consensus methodology for the classification of the ANCA-associated vasculitides and polyarteritis nodosa for epidemiological studies.