再発性多発軟骨炎③~病理~
今回は病理についてまとめたいと思います。
こちらもご覧ください。
※再発性多発軟骨炎の病理像は生検が行われる時期に依存します
初期
●軟骨周囲、特に初期は軟骨真皮接合部にリンパ球、様々な割合の多型核細胞、単球/マクロファージ、形質細胞の浸潤が見られる
※耳の生検:プロテオグリカンの枯渇と関連し、軟骨-真皮接合部での多形細胞浸潤を認める
●リンパ球はCD8陽性細胞傷害性T細胞よりもCD4陽性ヘルパーT細胞が優位
●軟骨に隣接する領域ではプロテオグリカンの著明な減少が見られる
●IgGやC3で構成される沈着物が接合部に粗く粒状に見られる
進行期
●軟骨は肉芽組織の侵入によって破壊され、変性した軟骨細胞と枯渇したマトリックスが隔離された島を形成する
※肉芽組織の侵入と軟骨(矢印)の置換により、島を形成する
●IgGとC3がマトリックスの至る所で見られる
●マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)が軟骨周囲の肉芽組織と軟骨の両方に見られる
●軟骨細胞のアポトーシスは軟骨炎領域で増加し、カスプシン-KやMMP-3の発現と相関する
●一酸化窒素の発現は増加するが、プロアポトーシスのMMPを産生する軟骨細胞を反映している
晩期
●組織の構造が完全に破壊され、線維化する
※肉芽組織の浸潤および軟骨の破壊を伴う慢性炎症を認める
●局所の石灰化や骨形成を伴うゼラチン嚢胞が見られることがある
●電子顕微鏡では傷害に至るまでの著明な軟骨細胞プロセスが見られる
●未だ特定されているわけではないが、電子鼻都度の高い小顆粒や様々なサイズや形や密度の小嚢胞が見られる
●軟骨細胞は分解された物質を活発に貪食している。そのため、リソソーム、脂質、グリコーゲンに富んでいる
●コラーゲンや弾性繊維は最終的に破壊される
●細かく粒状の電子密度の高い沈着物が線維を覆うように見られ、軟骨の表面にも認められる
《部位毎の病理》
大動脈
●大動脈病変では中膜に血管新生しているように見え、栄養血管のカフにリンパ球が認められる
●グリコサミノグリカン含有量の減少を伴い、単核球細胞が浸潤し、それに続いてコラーゲンと弾性繊維の断片化と破壊が起こる
●炎症は大動脈壁全体に広がることがある
●平滑筋の破壊は動脈瘤の形成につながる可能性がある
●大動脈輪が拡張し、弁尖の肥厚や破壊が起こる可能性がある
気管気管支
●気管気管支粘膜は浮腫状になり、それらの軟骨輪は軽度の炎症から肉芽組織により完全に吸収されるなど、様々な変化を生じる
●大および中サイズの気管支は斑状に拡大したり、広範囲に狭窄を示したり、破壊されたりする
●病変は限局性であるが、上気道全体に及ぶ場合もある
滑膜
●滑膜組織の生検は浮腫及び単核細胞の浸潤を伴う滑膜炎の病理像を示す
腎臓
●再発性多発軟骨は様々な自己免疫疾患や結合組織病、免疫グロブリンA(IgA)腎症と関連するため、腎病理は様々な像を呈する
●腎障害は再発性多発軟骨炎と関連疾患の両方を反映している可能性がある
●再発性多発軟骨炎に起因する主要な変化は以下の3つ
①軽度のメサンギウム基質の拡大と細胞浸潤
②分節状半月体形成性壊死性糸球体腎炎
③尿細管間質性腎疾患
●IgG、IgM、および/またはC3のメサンギウム沈着は免疫蛍光顕微鏡で観察でき、電子密度の高いメサンギウム沈着の電子顕微鏡所見と相関する
●様々なサイズの血管と糸球体の硬化症、尿細管喪失が剖検時に見られる
眼
●上強膜血管は形質細胞、リンパ球、マスト細胞に囲われる
●強膜、結膜の血管に免疫グロブリンが沈着し、血管炎を起こしている場合もある
●これらの変化は好塩基球の減少と強結膜角での弾性組織の断片化に関連する
●慢性両側性濾胞性結膜炎の症例が報告されており、結膜生検で固有層に多数の好酸球、形質細胞、リンパ球、類上皮細胞を伴う肉芽腫性閉塞性微小血管障害が認められた(Cornea. 2006;25(5):621.)
●慢性の結膜炎がMTXを使用した後に改善したことがある例を見ると、それらの症状がくすぶり型の再発性多発軟骨炎を示しており、潜在的な内臓疾患の前兆である可能性がある
●炎症細胞は角膜周辺領域を浸潤し、浮腫や壊死変化を示す
●虹彩にも慢性炎症細胞が浸潤し、肉芽組織が含まれる可能性がある
●再発性多発軟骨炎の珍しい症状である視神経障害は虚血、視神経の内因性炎症、または隣接する円錐内眼窩組織から神経への炎症の広がりに起因する
●視神経ニューロパチーは眼窩頂点や近接した頭蓋内領域での骨髄炎に矛盾しない骨膜肥厚や増強所見に関連するという報告もある
【参考文献】
UpToDate "Pathology of relapsing polychondritis" Last update: Apr 17, 2019.