リウマチ膠原病徒然日記

リウマチ膠原病徒然日記

リウマチ膠原病疾患に関して日々疑問になったことを中心にまとめたものです。

Seronegative RA vs Seropositive RA

 関節リウマチにはリウマチ因子(RF)と抗CCP抗体が陽性の『Seropositive RA』とそれらが陰性の『Seronegative RA』があります。

 

 Seronegative RAは関節リウマチ全体の15%程度を占めるという報告があります(PMID=27094444)が、Seropositive RAと臨床症状が異なると言われいます。

 

 今日はSeronegative RAとSeropositive RAの臨床症状の違いについて研究した論文をご紹介したいと思います。

 

 なお、Seronegative RAと診断する際には、必ず関節リウマチ以外の鑑別疾患を除外するようにしましょう。安易にSeronegative RAと診断しないように注意が必要です。

 

 

Patients & Methods

●2010年から2013年にかけて11のノルウェーのリウマチセンターで集められた2010年ACR/EULAR分類基準を満たす234人の関節リウマチ患者を対象としています。

●患者はARCTIC試験(NCT01205854)にも組み込まれている、発症してから2年以内で、まだDMARDsを使用開始していない方を対象としています。

●抗CCP抗体とRFの陽性カットオフ値はそれぞれ”≥10 IU/mL””≥25 IU/mL”であり、

日本と異なるELISAキットを使用している可能性があります。

●超音波の基準は古いものを使用しています(PMID=21784724)。

●評価関節は以下の関節(左右合計で36関節)。

-第1~5MCP関節

-第2~3PIP関節

-橈側手根関節

-手根間関節

-遠位橈尺関節

-肘関節

-膝関節

-距腿関節

-第1~5MTP関節

●評価された腱鞘滑膜は以下の通り。

-尺側手根伸筋腱

-後脛骨筋腱

 

Results

Seronegative vs Seropositive: 背景

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36人(15.4%)がSeronegative RAと分類されました。

●年齢はややSeronegative RAの方が上で、性差はありません。

●上記には記載がありませんが、本研究では2010年の分類基準を満たす患者を含めておりますが、1987年の分類基準を満たす割合は両群で差はなかったとのことです。

●また、表には示されておりませんが、Seronegative RA患者では3か所以上の手・手指関節炎の割合がSeropositive RA患者よりも高く(71% vs 26%, p=0.001)、手関節炎の割合も高かったです(79% vs 48%, p=0.04)。

超音波による関節滑膜炎、腱鞘滑膜炎などのスコアも、軒並みSeronegative RAで有意に上昇している事が分かります。

 

Seronegative vs Seropositive: 罹患関節

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●表の左半分はSeronegativeとSeropositive RAの臨床的に腫脹しているTop 10関節を示したものです。

Seronegativeでは手関節MCP関節の腫脹が多いのに対して、SeropositiveではMTP関節が腫脹する事が特徴と言えます。

●右半分は超音波で確認した滑膜炎についてですが、同様にSeronegativeでは手関節MCP関節、SeropositiveではMTP関節に滑膜炎を認めやすい事が分かります。

 

My comments

Seronegative RAでは手関節PIP関節の腫脹、滑膜炎が多いのに対して、Seropositive RAではMTP関節の腫脹、滑膜炎が多いのは興味深いです。ただし、『手だけの場合はSeronegative寄り』とまでは言い切れません…

●2010年のACR/EULARの分類基準では、RFや抗CCP抗体が分類基準の1項目となっており、合計で6点以上でRAと分類するため、Seropositiveの方が逆に罹患関節数が少なくても、CRPが低くてもRAと分類されやすくなっています。逆にSeronegative RAはRFや抗CCP抗体が陽性の分の点数が貰えないため、どうしても罹患関節数が多くならないと分類基準を満たしません(11か所以上腫脹または圧痛関節がないと2010年の分類基準を満たしません)。

●しかし、それを差し引いてもSeronegative RAでは腫脹関節の中央値が17か所であるのに対して、Seropositive RAでは8か所と圧倒的にSeronegative RAの方が関節炎を起こしやすいですので、Seronegative RAの方が活動性が高いと言ってもいいかもしれません。※CRPやESRは両者で違いはなさそうですが…

●この研究の最大の利点は患者がすべて治療開始前であるという事です。多くの研究は後ろ向き研究なので、すでに治療が開始となっている患者の比較になる事があるのですが、この研究では治療の就職がない段階での疾患活動性を比較している事が新しいです。

 

2010年ACR/EULAR分類基準

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6点以上を関節リウマチと分類

 

【参考文献】

 Lena Bugge Nordberg, et al. Ann Rheum Dis . 2017 Feb; 76 (2): 341-345. ”Patients with seronegative RA have more inflammatory activity compared with patients with seropositive RA in an inception cohort of DMARD-naïve patients classified according to the 2010 ACR/EULAR criteria” PMID=27094444