リウマチ膠原病徒然日記

リウマチ膠原病徒然日記

リウマチ膠原病疾患に関して日々疑問になったことを中心にまとめたものです。

2020-01-01から1年間の記事一覧

リウマチ性多発筋痛症の鑑別疾患

『リウマチ性多発筋痛症』という病名は、両上肢挙上困難+炎症マーカー上昇で比較的簡単に付けられてしまいますが、同じような症状を呈する疾患は多岐に渡ります。 簡単に診断する前に、以下の鑑別疾患について今一度、思いを巡らせて見てください。

クリオピリン関連周期熱症候群(CAPS)の診断基準2017

クリオピリン関連周期熱症候群は、NLRP3(クリオピリンタンパク)の遺伝子に異常があることにより発症する、稀な自己炎症症候群の一つです。 クリオピリンは細胞内に存在する自然免疫系のパターン認識受容体であるNOD様受容体の1つで、病原微生物などに反応し…

リウマチ因子(RF)~役割と他の疾患での陽性率~

健康診断の血液検査の項目に『リウマチ因子(RF)』がある影響で、しばしば『RF陽性』という紹介が来ます。 確かに関節リウマチの診断の役に立ち、予後に関連すると言われておりますが、関節リウマチ以外にも多数の疾患で陽性となり、さらに健常者でも一定の割…

SLE患者の死亡に関わるリスク因子

SLE

早期診断と強化治療のおかげでSLEの5年生存率は1950年代の50%から1990年代以降では90%以上となりました。 今までもSLE患者の死亡率に関連するリスク因子についての報告がありましたが、つい最近イギリスから報告されたものをご紹介します。

SLEの予防と治療戦略~Nature Review Rheumatology 2019~

SLE

2019年はSLE関連の論文が刷新された記念すべき年でした。 SLE、抗リン脂質抗体症候群に対するEULARのRecommendationも改訂され、さらにLancetやNature Review Rheumatologyなどの有名雑誌からもSLEの予防や治療戦略についての総説が続々と発表されました。 …

全身性エリテマトーデスの鑑別疾患

SLE

SLEのmimickerについてまとまった文献があったので、以下に日本語訳を示します。 ご参考になれば幸いです。 【参考文献】 Gatto M, et al. Nat Rev Rheumatol. 2019 Jan; 15 (1): 30-48. "New therapeutic strategies in systemic lupus erythematosus manag…

リウマチ性多発筋痛症 vs 血清反応陰性の高齢発症関節リウマチ

リウマチ性多発筋痛症(PMR)と血清反応陰性の関節リウマチ(Seronegative RA)はいずれも高齢者の炎症性リウマチ疾患の中で頻度の高い疾患です。 今回はそんな二つの相違点に着目したReviewをご紹介します。 おまけで血清反応陽性と陰性の関節リウマチの違いや…

強皮症の新しい治療ターゲット~IL-4/IL-13~

強皮症は皮膚硬化を起こす自己免疫疾患ですが、間質性肺炎、心血管疾患、腎病変、消化管病変など様々な合併症が起こります。 今までなかなか特効薬がなく、患者さんに申し訳なく思って来ましたが、病態が少しずつ解明され、新しい治療薬が出てくるようになり…

関節リウマチは予防可能か?

かつては関節の変形を防ぐことが出来なかった関節リウマチですが、早期発見、早期治療、そして治療選択の多様化のため、関節予後は各段と改善しました。 今では関節の著明な変形を見る事が少なくなったという言うぐらいです。 そこで、次の湧いてきたのは『…

関節リウマチはどうやって発症するのか?~関節リウマチの自然史~

関節リウマチがどうやって発症して行くのか分かりますか? EULAR(欧州リウマチ学会)は2012年に、関節リウマチになるまでの段階(自然史)を下図の通り、6つのフェーズに分けて定義しました(1)。 関節リウマチが発症してからの治療はかなり確立して来ましたが、…

ANCA関連血管炎の長期寛解維持にリツキシマブは有効か?

ANCA関連血管炎のMAINRITSAN3試験の結果が出ました。 ANCA関連血管炎(AAV)の寛解導入においてリツキシマブがエンドキサンと同等である事は既に示されております(RITUXVUS試験)。リツキシマブを含むレジメンが登場してから、AAVの寛解率は53%から88%へと改善…

関節リウマチ以外の疾患での抗CCP抗体陽性率

前回、抗CCP抗体は脊椎関節炎で高率に陽性になると話しました。 しかし、それ以外の疾患でも陽性になる事が知られています。 今回は関節リウマチ以外の疾患での抗CCP抗体陽性率についてまとめたいと思います。 お時間がない方は最後のまとめからお読み下さい…

脊椎関節炎でも抗CCP抗体は高い陽性率を示す

先日、他院で『関節リウマチ』として治療されている患者さんが、小生の一般内科外勤に降圧薬の処方と、ついでに関節痛の増悪を訴えて来院されました。 もともと『抗CCP抗体強陽性』のため、関節リウマチと診断されたとの事ですが、診察すると足関節炎、肘関…

軟骨の減少だけが変形性膝関節症の痛みの原因か?

変形性膝関節症の患者さんが痛みを訴える時、『軟骨が擦り減っているから』と説明している医師は少なくないかと思います。広告でも『軟骨を守る』などと謳っている健康食品も多いように思います。 果たして”軟骨のすり減り”と”関節痛”が本当に関係するのでし…

ITPはSLE発症のハイリスクである

本日ご紹介するのは、免疫性血小板減少減少性紫斑病(ITP)と全身性エリテマトーデス(SLE)の関係について考察した短い論文です。 結論から申し上げますと、ITPはSLE発症のハイリスクであるため、ITPの診断の入り口である血液中の先生とリウマチ内科医が協力し…

今すぐ使える輸液の基礎2020

医学生、研修医向けに輸液についてWebレクチャーを行いました。

RFや抗CCP抗体の陰性化は関節リウマチの寛解指標になるか?

関節リウマチの診断にRFや抗CCP抗体が有用であることは周知の事実だと思いますが、一昔前まで、RFや抗CCP抗体などの抗体が陰性化する事で、寛解に達する事が出来ると考えられておりました。 そのため、治療経過の中で、値をずっと測定している先生や、値が気…

リツキシマブによる二次性低ガンマグロブリン血症の補充療法

リツキシマブはANCA関連血管炎の導入療法、維持療法で注目されて来ておりますが、その副作用の一つである、低ガンマグロブリン血症はリツキシマブを使用する際には、必ずチェックしなければなりません。 昨年実はリツキシマブによる二次性の低ガンマグロブリ…

リツキシマブによるANCA関連血管炎の維持療法~BSR expert consensus guidelines~

世界的にANCA関連血管炎の寛解導入療法、維持療法におけるリツキシマブ(RTX)の立ち位置は徐々に上昇して来ました。しかし、リツキシマブの維持療法での使用方法については正直エビデンスが限られておりました。 今回、British Society of Rheumatology(BSR)…

リウマチ膠原病疾患患者のCOVID-19罹患

2020年4月1日の時点で、ヨーロッパ、北アメリカ、南アメリカ、アジア、アフリカ、オセアニアの6つの大陸から、COVID-19と診断されたリウマチ膠原病疾患患者は110人になります。その背景をまとめた報告があったので以下にまとめました。 DMARD=疾患修飾抗リウ…

リウマチ膠原病疾患患者におけるコロナウイルス対策~ACR COVID clinical guidance~

ACR(米国リウマチ学会)よりコロナウイルス感染におけるリウマチ膠原病疾患患者への推奨が発表されました。 なお、推奨文中の『中』や『高』は、声明文の発表に寄与したリウマチ専門医10名、感染症専門医4名のコンセンサス(合意)レベルを示しております。 『→…

味覚障害の鑑別疾患

味覚障害の鑑別も色々あります。こういうのは家庭医の先生の方が得意なのではないでしょうか。プライマリケアでかなり見ていそうです。 【嗅覚障害を起こすウイルス】 【嗅覚障害のウイルス以外の鑑別疾患】 【味覚障害の鑑別疾患】 【参考文献】 ●Malaty J,…

嗅覚障害の鑑別診断~ウイルス以外~

嗅覚障害を起こすウイルスについて前回書きましたが、ウイルス以外にもこんなに嗅覚障害を起こす病気があるんですね。 【嗅覚障害を起こすウイルス】 【嗅覚障害の原因】 【参考文献】 ●Malaty J, et al. Am Fam Physician. 2013 Dec 15; 88 (12): 852-9. "S…

嗅覚障害を起こすウイルス

世間ではコロナウイルスが嗅覚障害を起こす事が話題となっておりますが、 ウイルス感染症はもともと嗅覚障害を起こす最も頻繁な原因。 報告にもよりますが、ウイルス感染症の2~4割前後に嗅覚障害が起こります。 嗅覚障害を起こす可能性があるウイルスは200種…

OMAAVという病気を知っていますか?

OMAAVという病気をご存知でしょうか? ANCA関連血管炎が原因で起こる中耳炎のことで、 Otitis media with antineutrophil cytoplasmic antibody assiciated vasculitis の略語になります。 比較的最近出てきた概念で、抗菌薬や鼓膜換気チューブなどといった…

ループス腎炎 EULAR/ERA-EDTA Recommendations 2019

ループス腎炎は全身性エリテマトーデス患者の40%に認める病態です。 2012年にEULAR/ERA-EDTAのループス腎炎ガイドラインが出ましたが、その後、カルシニューリン阻害薬の使用や、マルチターゲット療法、モニタリング、治療目標などについて新しいエビデンス…

全身性アミロイドーシスに対する腹壁脂肪吸引生検の方法

アミロイドーシスに対する腹壁脂肪吸引生検の感度は消化管生検よりも高いといわれます。加えて安全かつ簡便であるため、一般内科医でも実施する事が可能です。 インターネットをサーフィンしていると、『アミロイドーシス診療支援サービス』というサイトにた…

ANCA関連血管炎のマネジメント BMJ2020

ANCA関連血管炎(AAV)は抗好中球細胞質抗体(ANCA)に関連した血管炎で、多発血管炎性肉芽腫症(GPA)、顕微鏡的多発血管炎(MPA)、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)の3つの総称です。 つい最近にマネジメントについてBMJからReviewが出たので、ご紹介致します…

関節リウマチの発症は予測できるか?

関節リウマチの早期治療は関節予後に関係すると言われております。2010年には早期関節リウマチを分類するための基準が設けられました。 しかし、もう少し遡って、関節炎を発症する前の関節痛の段階で、関節リウマチに進展するか、予測出来ないかは未だに不明…

DICとTMAの鑑別

播種性血管内凝固(DIC)と血栓性微小血管障害(TMA)はしばしば鑑別が困難な場合があります。両者とも血小板減少、出血傾向、臓器不全に関連した微小血管血栓症を呈します。これらは治療法が異なるため、臨床的に鑑別する事が重要です。 日本からの報告でこの両…